限界なんてない、といっても…さすがにきつかったです。(笑)
ザフトの潜水艦では、発令所にてこの潜水艦の艦長と隊長がやり取りをしていた。
艦長は壮年に達していた。一方、隊長はまだ若い女性であった。
艦長がその隊長に意見した。
「ここは仮にも、地球軍の支配地域だ。これ以上長居できませんぞ。アルテナ・ノヴァーク隊長。」
いくらMSによってこちらの方が優位であっても、一国の軍事力が一艦船に向けられれば、大きな損害がでる。そういう懸念もあった。それに、ここで固執しなくても、また次の機会もあるのでは、という思いもあった
「わかっています。しかし、ここで引き下がれば、チャンスは…ありません。」
「まあ、いいでしょう。」
「では、動きがありましたら、連絡を。」
アルテナは発令所をでていった。
「やれやれ…」
艦長はあきれた様子で見送った。
「ノヴァーク隊長。」
隊長室に戻る途中、二人の隊員に呼び止められた。
「どうですか。動きはありましたか?」
片方の四十過ぎの隊員が尋ねた。
「他の隊員の中には、出てくるのを待たないで町ごと攻撃しよう、っていう意見も出てますが…」
もう一人若い男も言った。
「町を攻撃するわけにはいかないわ。それに…向こうも動かないわけにはいかない。ブライス、マシュー、そのように伝えて。」
マシューは何か言いたそうにしていた。
「ノヴァーク隊長、…うーん…アルテナ、これでいいのか?」
隣にいるブライスはマシューが何を言いたいのか、わかっているようであった。
彼の話を止めようとはしなかった。
「マシュー、相手はプラントを裏切ったコーディネイターよ。それにこのまま放置してナチュラルもMSを開発したら、プラントは攻められる。ここで何が何でも墜とさないと…たとえ相手が…誰でも。」
アルテナは二人に念を押すように言い、隊長室に向かって行った。
「これでいいのですか、ブライスさん。」
ブライスもウェインの事を知っている。もちろん、二人の関係も…
「マシュー、これが…戦争だ。」
そう言い、他の隊員に先ほどのアルテナの指示を伝えに、その場を去った。
一人残ったマシューは何とも言えない気持ちになった。
「アルテナ…それでいいのか?お前たち二人は恋人だったんだろ…。」
ヒロは作業用ジンをただ見ていた。
結局、ウェインがいる間に、乗ることはなかった。
先ほど、ウェインが来た。
明日発つと聞いたとき、何も言えなかった。
そのまま、二、三言しか言わず、ウェインは野営地に帰っていった。
そこへ、
「どうしたんだ?こんなところにいて。」
声がした。
ヒロは振り返った。確か、あの傭兵の…
「まだ名乗ってなかったな。シグルド・ダンファードだ。ヴァイスウルフのリーダーだ。」
「僕は傭兵に入りませんよ。」
「別に勧誘しに来たわけではない。」
では、どうして来たんですか、という目を向けられ、シグルドはあまり歓迎されてない、と思った。
「まあ…、ルドルフが何を言ったかわからないが…そんなに傭兵が嫌いか?実際に傭兵に会ったことあるのか?」
ヒロに聞いてみた。
「会ったことは…ないけど…、あまりいい話を聞きません。」
「まあ、確かに、傭兵はあまりいいイメージを持ってはくれないな。君のようにあからさまに嫌う人たちもいる。」
シグルドは続けた。
「だが、俺たちは…戦う。」
ヒロはえ?とした。
「俺たちは依頼人の思いを守るために戦っている。自分の命をかけ、他人のために戦う。それが、俺たち…ヴァイスウルフの戦い方だ。」
「どうだったか、ヒロは?」
シグルドはヒロと会った後、ヴァルファウに戻る道の途中、ルドルフがやってきた。
ミレーユも一緒だった。
「そんなに心配なら、自分で直接行って見たらどうです?」
「いやいや、俺が行ったら、またひと騒動起こすぞ~。」
「で、一体何かあったのですか?」
シグルドは尋ねた。ミレーユと共に来るということは何かあったということだ。
「うん、まあな…。」
ルドルフはシグルドに説明した。
「…そうですか。こっちは戻ってフォルテとともにいつでもMS出せるようにしときます。」
シグルドは二人から事情を聴き、準備に取り掛かろうとした。
「ああ、頼む。こっちはこっちでやっとくよ。ミレーユ、万が一に備えてレーベンに連絡しといてくれ。」
「わかりました。」
彼らはその場を後にした。
簡単な登場人物紹介Ⅲ
主要ではないけど、紹介した方がいい登場人物を載せます。
今回はザフトの方です。
アルテナ・ノヴァーク
「地球軍に寝返ったコーディナイター、ウェイン・ギュンターおよびMSの撃墜」とい う特務を受けたノヴァーク隊隊長。
マンデンブロー号事件で両親を失い、それがきっかけでザフトに入隊。ナチュラルを 憎んでいる。
そして、ナチュラルに味方したウェインに対しても恨みを持つ。
ブライス・シュマイザー
四十過ぎと、MS操縦の適齢期を過ぎているが、他の若い世代に劣らず操縦ができる。
唯一、彼の脱走および地球軍への寝返りの真意を知っている。
マシュー・ベタンクール
アルテナ、ウェインとは同時期にザフトに入隊した。任務とはわかっているが、納得 できない部分もある。
次回からいよいよ、このタイトルの話の終盤に入ります。