機動戦士ガンダムSEED Gladius   作:プワプー

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お久しぶりです。ようやく更新できました(汗)


PHASE-30 星降る夜に

 

 

 なんで、ここにザフトが…?

 カガリは息を殺し、岩場から様子を伺っていた。

 救難信号をセットし、この島で救助を待つまで上陸をし、島の全容を知るため散策したところで思わぬものが目に入った。

 モビルスーツである。しかも、近くにザフト兵がいた。

 カガリはホルスターから銃をとり、身構えた。

 

 

 なんとか追撃をかわしたアークエンジェルでは、思わぬアクシデントが舞い込んだ。 スカイグラスパー2号機で出撃したカガリが戻ってきてないのだ。被弾こそしたが、飛行に支障はなかった。しかし、戻ってきてない。

 「MIAと認定されますか、艦長?」

 ブリッジに不安と戸惑いの空気が流れ始める中、ナタルはマリューに問うた。MIAとはミッシング・イン・アクションの略で、戦闘中行方不明のことである。つまり確認できないが、戦死という判断を下すのである。

 その言葉に、トノムラから小声で聞いたサイとミリアリアは驚き、マリューは眉をひそめた。

 「それは早計ね、撃墜は確認されてないわ。」

 マリューはそう言いながらパルの方へ向いた。

 「日没までの時間は?」

 「約1時間です。」

 そのやりとりにナタルは驚いて声を上げた。

 「捜索されるおつもりですか!?ここはザフトの勢力圏ですよ!」

 ナタルとしては、いつまた襲撃があるかわからない敵の勢力圏で、自軍の兵士ではい民間人の捜索に時間をかけるのは危険を伴うし、時間の無駄であると思っていた。しかし、マリューはかまわず続ける。

 「日没までは上空からの捜索を、日が沈んだら海中の捜索をしてもらうわ。今戻って来たパイロットたちに伝えて。」

 「艦長っ!」

 「報告にでも記録にでも、好きに書きなさい!」

 なおも抗議するナタルであったが、マリューに気押され、それきり黙った。

 

 (こっちも潜水艦で探してみる。アクティブ・ソナーと使えば海底の様子もわかる。それに、夜でも動けるしな。)

 ネモからも通信が入る。事情を聞いた彼らも協力してくれることになったのだ。アクティブ・ソナーとは、自ら音波を出して、その音波が反射して戻ってくるまでの時間差から位置を把握するものである。音を発するため、敵に感知されやすいのと、現在ではあまり使用されるものではないが、今は隠密行動を隠す必要もないこともあり使用を試みようとしている。一度浮上していたケートゥスはゆっくりと動き出し、ふたたび海中に潜っていった。

 そしてアークエンジェルからも捜索のモビルスーツを発進準備に取り掛かった。ナタルの懸念するようにまたザフトの襲撃があるかわからない。交代しながらの捜索となった。

 

 

 

 ザフトのカーペンタリア基地の1室でニコルは落ち着かない様子で右にと左にと、行ったり来たりしていた。それに対しディアッカはのんびりと椅子に腰をかけ雑誌を読んでいる。

 カーペンタリア基地に到着した彼らであったが、マシントラブルで彼らより遅く到着することになっていたアスランが一向に到着せず、そこに輸送機がインド洋で消息を絶ったというニュースが届いたのであった。

 ニコルがなおも落ち着かない様子でいると、そこへ司令部に情報を聞きに言ったイザークが部屋に戻って来た。

 「イザーク、アスランの消息…。」

 ニコルが司令部からの情報を尋ねようとした時、イザークは芝居がかった声を上げた。

 「ザラ隊の諸君っ!さて、我が隊初任務の内容を通達する!それは、これ以上ないというほど重要な……隊長殿の捜索である!」

 言い終わると同時に、イザークとディアッカは同時に笑い出した。その様子を見ながらニコルはムッとした表情になった。イザークは笑いながら続けた。

 「本部もいろいろと忙しいってことでね。自分たちの隊は自分たちで探せとさ。とは言っても、もう日が落ちる。捜索は明日かな?」

 「そんなっ!」

 イザークの言葉にニコルは抗議の言葉を上げるんだ。

 イザークが出て行こうと入り口に立ったとき、目の前に緑の制服に包まれた兵士が立っていた。年齢はイザークたちより一回り上程度で、背は高く兵士らしく引き締まった体つきをしていて、鋭い眼光をのぞかせていた。

 いきなりのことでの驚きとその異様な威圧感にイザークは思わず一歩後ろに下がってしまった。3人ともそのまま黙ってしまい、彼が何者か尋ねるのを失念していた。先に、その男の方から口を開いた。

 「本日付でザラ隊に配属したクトラド・タルカンです。隊長に挨拶に来たのですが…。」

 クトラドと名乗った兵士は敬礼し、挨拶する。

 ニコルは、たしかクルーゼ隊長が1人別の隊から配属させると言っていたのを思い出した。ニコルはクトラドの方へ向かう。

 「すみません、今、アスラン…ザラ隊長はここに向かう途中、消息を絶って…。」

 「行方不明と言うことですか?」

 「はい、捜索が僕たちだけで行えとのことですが…。」

 「そうですか…。」

 クトラドは納得した顔をし、頷いた。

 「ですが、もう日没です。レーダーが使えない現状、夜の捜索は困難を極めますし、いくら我々の勢力圏でも危険を伴います。」

 「しかし…。」

 もしかしたら協力を得られると思っていたニコルは食い下がった。

 「地球に住んだこともなく、まだ地球に来て間もないあなた方では、かえって迷惑なのです。心配の気持ちがおありでしょうが、お分かりいただけたい。」

 正論をつかれ、ニコルはぐっと黙ってしまった。

 「では、自分は宿舎の方に戻りますので…。また、明日、捜索時にこちらに伺います。」

 一礼し、クトラドは部屋を出た。イザークはまるで自分たちをバカにしているのではないかと言う物言いに癇癪を起こし、ディアッカがそれをなだめいた。ニコルは溜息をつき、窓の外へ見やった。たしかに自分は地球のことを全然知らない。そとは赤い夕焼け空をしているが、それが翌日晴れる意味だったか、雨の意味だったか、確信できなかった。

 

 

 

 「おまえ、本当に地球軍か?」

 手と足を縛られ身動きが取れなくなり転がっているカガリにザフト兵は少しあきれ気味の口調で聞いた。

 「認識票もないようだし…。俺は戦場で、ああいう悲鳴を聞いたことがないぞ。」

 「悪かったな!」

 そう言われ、カガリは顔を赤らめ、怒り返した。応戦したはいいものの、結局返り討ちにあってしまい、このような状況になってしまった。

 「所属部隊は?なぜあんなところを単機で飛んでいた?」

 ふたたびザフト兵‐アスランは尋ねた。カーペンタリアに移動中、自分が乗っていた輸送機がこの少女が乗っていた戦闘機の攻撃を受け、アスランはイージスとともに脱出し、この島に不時着した。

 「私は軍人じゃない!所属部隊なんかないさ!こんなとこ来たくて、うわっ…。」

 カガリは反論しようと身を起こしたが、バランスを崩し転がってしまった。その様子を見ていたアスランは噴き出しそうになった笑いをこらえていた。そして、カガリを背に再びイージスのコクピットに向かって歩き出した。

 カガリはザフト兵が向かう先にあるモノに目を向けた。V字アンテナ、ツインアイ、そしてメタリックグレーの色をしている機体…ヘリオポリスで造られ、そしてザフトに奪われたXナンバーの1つであるとわかった。

 ストライクといい、この機体といい、自分の目の前にふたたび現れたことに、これが造られた背景を考えれば、何か因縁を感じてしまう。そういえば、ヒロの乗っているのもXナンバーのようだが…。話では5機と聞いていたが、いったい…。と考えつつもそんな場合ではなかった。

 「おまえ、あのときヘリオポリス(・・・・・・)を襲ったやつらの1人か?」

 カガリはザフト兵に問いただした。アスランは思わず歩みを止め振り返った。

 「私もあの時、あそこにいた。お前たちがぶっ壊した、あのヘリオポリスの中にな!」

 アスランは何も答えず、ふたたび歩きだし、イージスのコクピットに乗り込んだ。通信機を試し、友軍と連絡を取ってみようと思ったが、やはり繋がらなかった。

 ヘリオポリス…。今思えば、あそこがすべての始まりかもしれない。そこで開発が行われた地球軍のモビルスーツを奪取することがアスランにとって初陣だった。そして、そこでキラと思いがけない再会をし、お互い敵同士となってしまい、今では、自分が彼の追討任務の隊長として指揮を執ることになった。あれが始まりだとすれば、終わりはどこなのだろうか?それは、やはり…。

 ふとアスランの頭によぎったものに背筋が凍るような感じがした。

 

 

 

 インド洋、マラッカ海峡に近い海域にて2隻のボズゴロフ級の潜水艦、エルブルス及びロンゴノットが浮上していた。ロンゴノット艦長ブーフハイムがカーペンタリア基地からの報告を知らせにエンブルスにやって来た。

 エルブルスの艦長マレル・イストレフィは浮上しているのをこの時とばかり上部甲板で夕日を眺めながら横になっていた。

 「モラシム隊がやられたようだ、イストレフィ。」

 「…だそうだな。さっき損傷した1機が緊急着艦してきた。」

 マレルの言葉にブーフハイムは眉をひそめた。

 「そう、怒るなよ。つい先ほどだったんだ。パイロットもここまで来るのにギリギリだったし、今は休ませてるんだ。で、カーペンタリアからはなんて?」

 ブーフハイムの表情を読み取ったマレルは弁明し、もたらされた報告を促した。ブーフハイムはまったく身勝手なと思いながらも彼に話し始めた。

 「クルーゼ隊の奪取した機体のパイロットたちの隊が結成され、『足つき』を追うことになった。1週間後ぐらいに合流できるだろうから俺たちはそのバックアップをしろとの事だ。」

 ブーフハイムはおもしろくない面持ちで話す。

 「なるほどね…。まあ、妥当だろうよ。バルトフェルト隊もモラシム隊も落とせなかったんだ。俺たちでだけでは無理だろう?」

 「宇宙(そら)のやつらに海の戦いの何が分かる?」

 そう吐き捨て、ブーフハイムが憤然として己の艦に戻るのを見送りながらマレルは溜息をついた。そしてふたたび夕日を眺めた。

 地球とプラントの交流の懸け橋になるためにプラントに行ってからどれくらいの月日が経っただろうか。ナチュラルとともにそれを目指していたなんてことは、今ではもう考えられないことだった。もう、そのナチュラルもいない。それからはプラントの独立の機運が高まり地上のことなど考える余裕などなくなっていた。そして、その空気に流されるまま軍に身を置くことになった。

 

 

 

 

 日が水平線の先へと沈み、あたりが暗くなってだいぶ時間が過ぎた。

 「休めって言われてもな~。」

 ヒロは困り顔で自室に向かっていた。

 日没によってカガリの捜索は一旦中断され、パイロットは休むよう言われた。現在はケートゥスが周辺海域を捜索しているが、いまだに連絡もこない。手掛かりがまったくないこんな状況では休む気にもなれない。機体のメンテナンスなどと理由を見つけて、格納庫にずっといたが、とうとう半ば無理やりに戻された。

 ドアの前に立ち、やはり休めないと思ったヒロは逸る気持ちを落ち着かせるようと展望デッキに向かった。

 そこには、すでに先客がいた。

 「ルキナもここにいたんだ。」

 ヒロはルキナの方にやって来た。

 「ええ。眠れないからちょっとここにいただけよ。」

 「ぼくも同じだ。」

 2人はしばらく展望デッキから見える星空を見ていた。

 「そういえば砂漠を出てから、こうルキナと話す機会なかったね。他のみんなともそうらしいけど…。」

 「心配してくれるの、いいけど…、あまり私と関わらない方がいいわよ。」

 「え?」

 思ってもなかった返答にヒロは戸惑った。

 「私は…疫病神だから。」

 「疫病神って…。いきなり、なんでそんなこと言うのさ?」

 ヒロは驚きながら尋ねた。

 「言った通りの意味よ。私はナチュラルからも、コーディネイターからも嫌われ者。そんな私と居たら、災難が降りかかるわ。」

 「そんなこと…。」

 「なくはないわ。」

 ルキナの言葉に、否定しようとしたヒロは最後まで言えなかった。

 「ヒロは知らないだけ。だから、そう言えるのよ。わかってからじゃ遅いのよ。それに、1人は慣れているし…。」

 「そんな1人だなんて!?じゃあ、アンヴァルの人たちは!?みんな…。」

 ルキナは何も言わず、そのまま展望室を後にした。

 ポツンと取り残されたヒロはふたたび展望デッキの外へ見やった。外は星が瞬き綺麗であったが、先ほどとは違い寂しい感じがした。

 1人。

 その言葉に、突き刺さるような胸の痛みを感じた。あの時(・・・)の記憶が脳裏によみがえる。

 「…1人は、つらいよ。」

 ヒロはポツリと呟いた。

 

 

 

 「どうだ?」

 ケートゥスの発令所にネモは入って来て、副長のテオドアに聞いた。

 「いや、まだハックのヘッドホンに反応はない。」

 テオドアは首を横に振り答えた。その間もハックはずっとヘッドホンの音に集中していた。

 アクティブ・ソナーの超音波を用いて、物体に反射し返って来た音から距離からモニター画面に海にある物体の姿を捉えるようにしているが、スカイグラスパーらしき機体の姿は確認されていない。ザフトの中型輸送機の姿はあったが…。

 「そうか…。もうすぐ夜が明ける。そしたら向こうも捜索を再開する。ハック、少し休んで…。」

 「あっ、船長。」

 その時、ハックは何か音を捉えたのかヘッドホンに耳を立てていた。それに気付いたネモとテオドアも近くにやって来た。

 「どうした?」

 「何かの音が聞こえます。電子音か…。」

 ハックはさらに音がどういうものか探っていた。

 「この規則的な音は…救難信号です!」

 ハックの言葉にネモも食いついた。

 「方角、距離は!?」

 「待ってください、今…。」

 ハックは計器をいじりながら、位置を特定しようとしていた。それを待つ間、ネモは別のクルーに指示を出した。

 「アークエンジェルにも通信を開け。」

 

 

 

 (海賊との話はついたのか?)

 発令所のモニター越しでブーフハイムはマレルに確認した。クルーゼ隊のパイロットたちが来る前に、アークエンジェルを討つための準備の話をしていた。

 「ああ、したさ。向こうには金を払っとけばぁ大丈夫だろう。おまえはいつも気に食わないようだが、余計な戦闘はしたくないだろう?」

 (赤道連合の怠慢だ。海賊を野放しにするなどっ!)

 「そんなの俺に言ってもしょうがないだろう。」

 (とにかく、本当に通るのか?)

 「ああ、確実だろう。」

 マレルはこのあたりの海域を映し出されたモニターに目を移した。

 「ここから下の方を通るのはリスクがありすぎるし、上の半島の方を通るのであれば、初めから内陸部を通っている。…間違いないさ、『足つき』はマラッカ海峡を通る。」

 

 

 

 




 えー、実に2か月半ぶりの更新です。いきなり何も告知なくそんな期間をあけてしまい申し訳ございません。
 9月末に1度更新して、それからしばらく1ヶ月以上あいていまうという旨を伝えたかったのですが、予定より早く忙しくなり…。結局、そのまま来てしまいました。他にも理由があり、それは追々にでも…。
 その時に後書きに書くことをメモしたものに目を通すと、それだけ期間が過ぎたことを改めて思います。
 だって、ガンダムの新作がもうすぐ始まりますねって…、もう7話ですよ!?
 そんなこんなで、こんなノロノロ更新な小説ですが、完結までなにとぞご付き合いよろしくお願いします。


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