機動戦士ガンダムSEED Gladius   作:プワプー

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PHASE-29 心のさざ波

 

 海上でザフトの襲撃、そして思わぬ救援を受けたアークエンジェルはふたたび着水し、停止していた。モビルスーツを着艦させるためカタパルトが開き、そして突如現れた潜水艦の艦長と話をするため、貨物搬入口が開いた。

 「俺たちは、宅配便ですかね?」

 潜水艦の上部ハッチから出て来て、入り口と繋がるのを待っていたハックはぽつりと感想をもらした。それを聞いたネモは思わず笑い声を上げた。

 「はははっ、まあいつもそんなことしてるからそう思うんだろう。どう考えてもこの入り口からの方が入りやすいだろう?なんなら、あっちのカタパルトまでがんばって登るか?」

 「イヤですよ。それに、もし登るなんて言ったら、船長もやるでしょうっ!?」

 そう言ってハックは、これで本当にやるのではないかという不安がかすめた。が、ネモは搬入口のタラップを上がり始めたので少しほっとした。

「というか、俺もなんで行くんですか?話なら船長だけでも…。」

 「別にいいぞ、戻っても。彼らは宇宙軍だからソナーの使い方にも慣れてないだろうって思って連れてきたが、[ヴァーグ]もアークエンジェルに入っていったし、ここはサイラスにでも…。」

 「やります、やりますっ!俺の方が耳がいいんですからねっ、船長。あいつに譲れるかって…。」

 そう意気込みながら搬入口を駆けのぼり始めた。その後姿を見ながら、ネモは笑みを浮かべ、アークエンジェルの中へ入っていった。

 

 

 (そりゃあさ、ありがたいぜ。こっちはほとんどが、海の戦闘なんて初めてなんだし…。)

 (しかし、軍人ではないと言っています。ここは慎重にした方が…。)

 (とにかく、詳しいことを聞かなければなりません。少佐、お願いしますね。)

 コクピット内からの通信機からはムウとマリュー、ナタルのやりとりが聞こえてくる。一応、ギースから確認をとったものの、まだ相手の意図を測りかねているようだ。

 「う~ん、ルキナ、知ってる人?」

 クリーガーをカタパルトに戻りながら、もう1つのカタパルトに着艦させているルキナに通信をいれた。しかし、ルキナからは何も返事がなかった。モニターからは何か考え事をしているようだった。

 「…ルキナ?」

 (えっ?ああ、ごめんなさい。私も詳しくは…。)

 メカニックたちの指示に従いながら、モビルスーツをデッキのメンテナンスベッドへと移動させる。格納庫では[ヴァーグ]とストライクが先に戻っていた。

 ルキナが[トゥルビオン]を停止させ、コクピットを開くとギースが待っていた。

 「どうですか、[トゥルビオン]は?」

 「ええ、大丈夫よ。」

 キャットウォークへと出ると、下の方の人に気付き、そちらの方へ向けた。ちょうど、貨物口から入って来た潜水艦の艦長とクルーが[ヴァーグ]のパイロットとムウと合流して艦長室に向かおうとしていた。その内、艦長の方が気付いたのか、ふと目線を上にあげ、こちらの方を見た。周囲が戦闘後の機体のチェックメンテナンスで騒がしい中、2人の間のみ、静かな沈黙が流れていて。その沈黙が破れたのは、潜水艦のクルーの1人が「船長―、行きますよぉ!」と呼ばれ、艦長がそちらの方へ向かうため視線をはずした時だった。ルキナはまだ、ムウに伴われ格納庫を去って行く艦長の後ろ姿を見続けていたが、彼女も声をかけられ、その場を後にした。

 

 

 

 マリュー、ナタル、ムウの3人は潜水艦の艦長とクルー2名と艦長室で会談が行われた

 「改めて、とでも言っときましょうか。船長のネモです。」

 警戒されている中にも関わらず、男は堂々と、かつ物腰を柔らかめに名乗った。

 「へえ~、ネモ船長ね…。じゃあ、あの潜水艦はノーチラス号とか?」

  ムウはからかうように尋ねる。

 「残念ながら、アレは私が乗る以前からあるもので…。『ケートゥス』と言います。」

 ネモは苦笑しながら答える。

 「しかし、フェルナン准将からというのは…?そもそもあなた方は何者ですか?」

 ナタルはそんなやりとりを不機嫌に見ながら本題に入った。が、彼女の疑問はマリューたちにとっても同じだった。

 「確かにあなた方にとって、我々のことを不審に思うでしょう。あえて一言で言うならば、潜水艦『ケートゥス』はアンヴァル部隊とヘファイストス社の使いパシリ(・・・・・)である、ということですかね。」

 「はぁ…。」

 「ようは、表立っての動きができないときにちょうどいい艦ということです。今回も聞くところによると、アラスカまで自力でかつ無補給で行かなければならないとか…。」

 ネモの言葉を聞きながらマリューは痛いところを衝かれたような気がした。アークエンジェル及びストライクは地球軍の大きな切り札になるとして造られたはずなのに、いくらザフトの勢力圏といえども、地球軍本部は救援も補給もよこさない。

 「そこで、インド洋まで我々に同行してほしい、とフェルナン准将から頼まれました。本当は、アラスカ近くまで行きたいのですが、こちらにもいろいろ都合がありましてね…。」

 「いえ…、そんなことは。」

 マリューたちにとってはありがたい話だった。ナタルはあまり納得していない様子だが、この海域でさきほども戦闘になったのだ。アークエンジェル単独で行けるとは楽観視していない。

 「あと、ソナーの使い方も心得ているクルーを連れてきましたので、そちらはまだ不慣れでしょう?分からないことがあったら何でも聞いてください。」

 ネモはちらりと後ろを振り返り、ハックを見やる。

 なにか、いろいろと手配をしてくれている心配りにマリューは口元を緩めた。

 「ええ、ありがとうございます。こちらも助かります。」

 

 

 ふたたびアラスカに向け航海を始めた、アークエンジェル。その甲板上にルキナは1人佇んでいた。風に当たれば、複雑な感情もどこかに飛ぶのではと思ったが、無理であった。

 「なんで…。」

 手に持っていたキーホルダーを眺めながらつぶやいた。

 潜水艦が来た理由はフェルナン准将の頼みであることは人づてに聞いた。だが、ルキナの中に納得できない部分があるのはそこではなかった。

 「ここにいたんだ、ルキナ。」

 そこへヒロが顔を出した。

 「ギースさんが探していたよ。どうしたの?」

 ヒロはルキナが浮かない顔をしていたことに気付き尋ねた。

 「なんでもないわ。今から行くわ。」

 あの人がいるのはインド洋までだ。それまで極力会うのを避ければいい。

 ルキナは自分に言い聞かせながら甲板を後にした。

 

 

 

 地球へ降下し、ジブラルタル基地に降り立ったアスランとニコルはブリーフィングルームへ向かっていた。ここで先に降りていたイザークとディアッカに合流することになっていた。部屋に近づくにつれ、イザークの声が聞こえてきた。

 「お願いします、隊長!アイツを追わせてください!」

 「イザーク、感情的になりすぎだぞ。」

 どうやら、イザークがラウに何か懇願しているようだ。しかし、アスランはそれよりもイザークの傷に驚いた。

 「イザーク、その傷…。」

 思わずアスランは口に出すが、イザークは「ふんっ。」と顔をそむけた。

 「傷はもういいのだが、ストライクを討つまでは痕を消すつもりはないと言うことでな…。そして、その追討任務を志願してな…。確かに、『足つき』がアラスカにデータを持って入るのは阻止しなければならないが…、今は別の隊が追っているし、我々には別の任務がある。」

 そう、そもそも宇宙軍の自分たちが降下してきたのはオペレーション・スピットブレイクのためであった。しかし、イザークはなお食って掛かる。

 「宇宙(そら)からずっと我々の仕事でした、隊長!アイツは我々の手でっ!」

 「私も同じ気持ちです、隊長!」

 するとディアッカもイザークに賛同した。ふだん、斜に構えた性格であまり熱くなったりしないディアッカの態度にアスランとニコルは驚いた。

 「俺もね、散々屈辱を味わされたんだよ、あいつにはっ!」

 アスランとニコルの視線に気づいたディアッカは顔をしかめながら言葉を吐いた。2人の言葉を受けたラウはしばし考え込んだ後、口を開いた。

 「私は作戦準備のため動けないが…、きみたちでやってみるかね?」

 イザークとディアックはそろって「はい!」と意気込んで答えた。

 「では、イザーク、ディアッカ、ニコル、アスラン、そして、あとでもう1人、別の隊から配属させてもらう。まだ地上に来て日が浅い君たちの大きな力になる。そして、指揮は…アスラン君に任せよう。」

 「えっ!?」

 アスランは思いがけない言葉に動揺したが、ラウは続けた。

 「カーペンタリアで母艦を受領できるよう、手配する。そこで彼にも合流させる。ただちに移動準備にかかりたまえ。」

 「いろいろと因縁のある艦だ。難しいだろうが、君に期待しているよ、アスラン。」

 さらにラウは畳みかけるように言葉を発した。そう、彼はストライクのパイロットがアスランにとって大事な存在と知っている。その上であえて指名したのだ。こうまで言われては断ることもできない。アスランは複雑な表情になった。

 「ザラ隊…ね。」

 「ふん…お手並み拝見といこう。」

 一方、イザークとディアッカはアスランが隊長に指名されたことをあまり快く思ってないようだった。しかし、言いだしたのは自分たちだ。この追悼任務を無下にすることは出来ない。そう思いつつ、2人は足早に部屋を出た。

 「アスラン、約束(・・)は覚えているだろうね?」

 ニコルとアスランも部屋を出ようとした時、ラウはアスランを呼び止め、確認するように尋ねた。約束、それはラウにキラの事を話した時に交わしたものだ。もし説得に失敗したら、自分がストライクを撃つと。

 「…はい。」

 アスランは向き直り、声を硬くしながら答えた。

 「ならいい。もし撃たねば、次に撃たれるのは君かもしれんぞ。」

 ラウは頷き、低い声で言った。その言葉はアスランの胸に深く突き刺さった。

 

 

 

 アークエンジェルにふたたび襲撃が来た。

 「レーダーに反応、ディン3機です!」

 「ソナーに感あり、7時の方向、モビルスーツです!」

 そして、ソナーにも数日前の襲撃の同様の反応があり、トノムラは叫んだ。

 「数は?」

 「音紋照合、グーン2、それと不明が1ですが…間違いありません。」

 ここ数日、ハックから教わったトノムラは今回はてきぱきとした動きになっていた。

 (ラミアス艦長っ!こっちは潜水母艦に攻撃を仕掛ける。)

 ケートゥスも動きを捉えたのか、ネモから通信が入った。アークエンジェルは浅瀬の方に行き、ケートゥスはモビルスーツの航跡から母艦の位置を特定し、スカイグラスパーと連携して叩く。あらかじめ、話し合われた作戦である。

 「ええ、お願いします。」

 マリューは通信を切ると、艦内に戦闘配備の号令をかけた。ケートゥスもすぐさま潜航を開始した。

 上空より先日同様、ディンが迫ってきていた。

 アークエンジェルからふたたびクリーガー、[トゥルビオン]が発進し、応戦に入った。フォルテのジンは艦の上で、迎撃に加わった。

 

 

 

 一方、海中ではモビルスーツ3機が水中航行形態で近づきつつあった。2機はグーンであるが、1機は見たことがないモビルスーツであった。

 「ふんっ、浅い海を行ってくれるとは、むしろ好都合だ。今日こそ沈めてやるぞ。」

 謎のMSに乗っているモラシムはアークエンジェルのとった行動をあざ笑うように、魚雷を発射した。つづいてグーンもそれぞれ前腕部より魚雷を発射する。

 アークエンジェルは前回同様、離水して魚雷の直撃を逃れるが、向こうもそれを想定し、グーンが海面にでてライフルダーツを放たれ、艦首に命中した

 カタパルトでは、水中MSの応戦のため、[ヴァーグ]が発進し、つづいてソードストライカーを装備したストライクが発進しようとしていた。

 (本当にソードでいいのか?)

 通信機からマードックは怪訝そうに聞くが、対して、キラはてきぱきと答える。

 「レーザーを切れば実剣として使えますから!」

 前回の戦闘で、バズーカは失ってしまった。だからといって、空中戦・水中戦ができないからと甲板上で手をこまねいていたくなかった。どの道、この方法しかなかった。そうしてストライクはカタパルトから射出され、水中に入っていった。

 水中ではすでに[ヴァーグ]とグーンが戦闘を始めている。そのうちの1機がストライクに気付いたのかフォノン・メーザー砲を放った。ストライクは盾代わりのパイツァーアイゼンの本体キャニスターでそれを防ぎながら岩場に身を隠していく。向こうの方が水中での機動力は上なのは承知済みだ。迫って来るグーンにうまく取りつき、シュベルトゲーベルを振り下ろそうとした時、コクピット内に右側からの警告音が鳴り響いた。

 キラがハッとしそちら側に目を向けた瞬間、激しい衝撃が機体を襲った。魚雷がストライクに命中したのだ。

 一体何が…?

 なんとかストライクを立て直し、魚雷が来た方をみると、なにかオウムガイみたいな形状をした機体であった。その機体が変形すると、猿人類みたいな形状になった。

 その機体がやってくるとグーン2機が海上へ上がっていった。アークエンジェルを再び攻撃するためだ。しかし、キラはそちらを気にする余裕がなかった。謎のモビルスーツがこちらに迫って来たのである。

 それはグーンを相手にしていた[ヴァーグ]もそうであった。[ヴァーグ]は海上のグーンを追いかけたかったが、海中でのストライクの戦闘は明らかに不利だ。

 「UMF-5 ゾノ、か…。」

 サイラスはコンピュータで照合し、機種の特定をした。どうやらザフトがグーンの陸上戦闘の低い問題解消を取り入れた最新機種であった。その特徴を鑑みると、なおさらそっちの方が重要だ。[ヴァーグ]もゾノの方へ向かった。

 

 アークエンジェルの格納庫では、ムウがランチャーストライカーを装備したスカイグラスパーの発進準備にかかり始めた。モビルスーツの航跡からケートゥスが潜水母艦に攻撃をしかけ、誘い込み、スカイグラスパーで叩くためだ。

 「だから何で機体を遊ばせておくんだよ!私は乗れるんだぞ!」

 その隣、スカイグラスパー2号機の前ではカガリがマードックに噛みつくような勢いで迫っていた。

 「いや、でも、あんたは…。」

 マードックは渋った。それもそのはずだ。カガリは民間人だ。そんな彼女に機体は任せるにはできないし、砂漠でアバンのように勝手に乗られ、しかも壊されたりでもしたらたまったもんじゃない。しかし、カガリは勢いを増し強い口調で言った。

 「アークエンジェルが沈んだらみんな終わりなんだぞ!?なのに、なにもさせないで、それでやられたら恨んで化けて出るぞ!」

 「お嬢ちゃんの勝ちだな、曹長。2号機、用意してやれよ。」

 「え~!?」

 「母艦をやりに行くんだ。火力が多い方がいい。だが、これは遊びじゃないんだぜ。わかってるだろうな?」

 「もちろんだ。私はいつでも真剣だ!」

 そうして、1号機と2号機は発進した。

 

 

 海中の戦闘から離れたところにボズゴロフ級潜水母艦クストーはいた。先日の戦闘で所属不明の潜水艦が現れたため、念のため警戒していたが、いっこうに気配がなくソナーからも探知できなかった。

 「よし、さらにMSを出すぞ。」

 警戒を解いた艦長のモンローはクルーに告げた。アークエンジェルへの攻撃をさらに畳みかけるためだ。まずグーンを出すため、前方のドライチューブの開閉が始まった。

 その音をハックは聞き逃さなかった。

 「船長っ!」

 「よし、魚雷、発射っ!」

 ケートゥスからクストーに向け、魚雷を発射した。その突発音がクストーにも聞こえた。

 「っ、突発音です!」

 「回避っ!」

 「間に合いませんっ!」

 魚雷がドライチューブに命中した。

 「上空に機影っ!」

 「浮上しろ!そして、ディンだけでも出す。」

 激しい揺れの中クストーは叫んだ。潜水艦だけでも手いっぱいになるのに上空から狙われては厄介だ。

 クストーは浮上し、上部のドライチューブのハッチが開いた。

 浮上したクストーをスカイグラスパーが捉え、ムウはアグニを放ち、艦隊の真ん中を貫いた。ちょうど燃料部のところだったのか、艦隊が膨らみそこから一気に弾けるように爆発した。

 「やったかっ!?」

 爆炎と水しぶきをかいくぐりながら低空飛行しているカガリであったが、いきなりディンが目の前に現れ、驚き旋回させる。

 どうやら1機だけ難を逃れたのがいたのだ。

 ムウのそれに気づき、上空から降下しながら狙う。ディンに狙いを定め、トリガーを引こうとした時、目の前にカガリ機が横切った。

 「ちょろちょろするなよ!俺が撃っちゃうじゃないか!」

 「なにをっ!」

 カガリだって必死にやっているのに邪魔者扱いされカチンときた。しかし、後ろから衝撃が走り言い返すことができなかった。

 どうやらディンの放った突撃機銃に被弾したようだ。

 (大丈夫かっ!?)

 ムウは驚きと心配の声で尋ねた。

 「ナビゲーションモジュールをやられただけだ!大丈夫。」

 (帰投できるな?はやく離脱しろ。)

 ムウは少し安堵したのち、カガリに命じた。

 「大丈夫だ、まだ…。」

 (フラフラ飛ばれても邪魔なだけなんだよ!それくらいのこと、わかるだろう!?)

 ムウの言葉にカガリはムッとしたが、言い返さなかった。ムウの言っていることが正しかった。

 「…わかったよ。」

 渋々の態度で、カガリは機体をアークエンジェルのいる方向へ向けた。

 

 

 海上からはグーンが海中から出ては攻撃し、また海中に身を隠していた。アークエンジェルも下部のイーゲルシュテルンで応戦するが、ほとんど無意味だった。

 「ストライクと[ヴァーグ]は何をしている。」

 頼れるのは2機だけなのだが、なかなか姿を表さない。

 「ゴットフリートの射線がとれれば…。」

サイは毒づいた。主砲のゴットフリートであれば、一撃で敵機を撃破できるのだが、両舷上部にあり構造上真下には撃てない。が、それを聞いていたマリューは何か思いついた顔をした。

 「ノイマン少尉!一度でいい、艦をバレルロールさせて!」

 「ええっ!?」

 マリューの言葉にノイマンをはじめ他のクルーも驚いた顔をした。無理もない。小型の戦闘機ならともかく、巨大な戦艦を、しかも有重力下で行うのだ。

 「ゴットフリートの射線をとる!一度で当ててよね、ナタルっ!」

 「わっ…、わかりました。」

 しかし、マリューは続けてナタルに命じて、彼女は本気のようだ。マリューの気迫にナタルも珍しく上ずった声で答えた。

 (本艦はこれよりバレルロールを行う!衝撃に備えよ!繰り返す…。)

 艦内に放送が入り、みな驚いた顔をし、あわてて機材や物を固定をし始めた。

 それは甲板上にいるフォルテも同じだった。

 「俺どこに避難すればいいんだよっ!」

 いくら改造されているとはいえ、もとはノーマルのジンだ。飛ぶことも水中に入ることもできない。グゥルは地球軍のカタパルトと規格が合わないため持ってきていない。

 こうなったら…。

 「マードック曹長っ!機体の固定ベルトあるか!?」

 フォルテはマードックに通信を入れた。

 「グーン2機、浮上しますっ!」

 「ゴットフリート照準、いいか?」

 マリューはシートベルトを締めながら、確認する。クルーもあわてて体を固定する。

 「行きますよ…!」

 ノイマンがスラスターと舵を操作し、巨大な艦は傾き始める。

 アークエンジェルに攻撃を仕掛けようとして海面にでたグーンのパイロットも、まさか目標が逆さまになっている状況になっているとは知らず驚愕した。主砲と固定ベルトを命綱のように使用しぶら下がっているジンが自分を捉えているのを見えたが、間髪いれずゴットフリートをジンの無反動砲を放たれ撃沈した。もう1機も、もう1つの砲で撃たれ沈んだ。

 回転して戻っていく艦橋からそれを捉え、歓声が上がった。

 

 

 水中ではなお激しい戦闘が続いていた。

 ちょうどその時、海面でグーン2機を吹き飛ばした衝撃が来た。

 ゾノはそれに思わず気をとられ動きを止めた。

 その隙を逃さなかった[ヴァーグ]は魚雷を発射した。一瞬遅れたゾノは慌てて回避するが、同じく隙をついてきたストライクがシュベルトゲーベルをゾノに突き刺した。

 ゾノは一瞬動きが止まったかのように見えたが、ゾノは急にガシっとストライクの頭部を掴み、そのまま海底の岩場に叩きつけた。そして、最後の力を振り絞るように掌部のレーザを発射しようとした。

 「こんな至近距離でっ!?」

 その時、[ヴァーグ]が銛をゾノの手首あたりの隙間に突き刺した。掴まれた力が弱まった隙を狙い、ストライクは腰部のアーマーシュナイダーを突き立て、蹴飛ばした。

 まるで生気を失ったように海中に投げ出されたゾノはそのまま爆発した。

 

 

 

 バックパックユニットのミサイルを放ちディンを牽制したヒロは照準器を出し、ライフルを構える。1発だけのチャンス。全神経をトリガーに集中した。

 両腕に銃を構えていたディンはミサイルをかいくぐり、態勢を整え始めた。

 その隙を狙い、ライフルを放つ。

 ディンはあわてて突撃機銃を構えるが間に合わず、銃を貫通し、右腕を失った。そして、ひるんだところで、ふたたびライフルを撃ちもう1丁の銃を撃ち落とす。

 攻撃能力を失ったディンは反転し、母艦があるであろう方向へ去って行った。

 これで、1機。

 ヒロは肩で息をしながら周りを見た。もうすでに周りの戦闘は終わっていた。どうやら他の2機はルキナが撃退したらしい。[トゥルビオン]がこちらにやって来る。

 (…また、来るわよ。)

 先ほどのディンの事を言っているのだろう。ルキナはそんな懸念を述べた。

 「そしたら、また追い返すよ。…何度も。」

 ヒロは息を整えながら、答えた。

 (…そう。)

 「どうしたの?何かあったの?」

 なにかそっけにない態度に違和感を覚えたヒロはルキナに尋ねた。

 「何もないわよ。なんでそんなこと聞くの。」

 「だって…ルキナ、ここ最近様子がおかしいし、何かあるんだったら…。」

 「何もないわよっ!余計なお節介はやめてっ!」

 通信機からのルキナの声がコクピット内に響き渡った。しばらく2人の間に沈黙が流れた。ルキナの方からポツリと言った。モニターから暗く苦い表情をしていた。

 (…強く言ってごめんなさい。でも、ヒロには関係ない話なの。だから、ごめん。今は話しかけないで…。)

 そのまま[トゥルビオン]を翻し、アークエンジェルへ帰投した。そのまま、1人残されたヒロは、ふたたび何か言いかけようとしたが、そのまま口をつぐみ、帰投した。

 

 

 

 あたりの波打つ音、キャノピーで遮っていても通り抜ける太陽光がおぼろげに知覚し始め、カガリは目を開けた。しばらくはぼっとしていたが、どうして自分がここにいるのか、その経緯を思い出し始めた。

 被弾したためにアークエンジェルに帰投しようとしていたが、途中、ザフトの輸送機に遭遇してしまった。応戦し、放った銃弾は敵機を捉えたが、己の機体もまた被弾し、墜落してしまった。

 とにかくアークエンジェルとコンタクトをとらなければ…。

 そう思い、計器類をいじるが、なにも反応がなかった。

 「こちら、カガリ。アークエンジェル、どうぞ…。」

 通信機もダメなようだ。

 カガリは仕方なく、諦め前の方を見た。

 どうやら自分が不時着したのは、どこかの島の一部でここは浜のようだった。

 

 

 

 

 




 いろいろやりたいことがあるのにどれも進まない…。(もちろんこの小説も。)なにより一番この夏できなくてガッカリだったのはガンプラを作れなかったこと!
 どんどん買ってしまうからたまる一方…(涙目)。


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