機動戦士ガンダムSEED Gladius   作:プワプー

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その内機体解説を追加します。


PHASE‐17 砂塵の洗礼

 

 

 「どうだ?噂の『大天使』の様子は?」

 上官の問いにマーチン・ダコスタは顔を上げ振り向き答えた。

 「はっ、依然何の動きもありません!」

 「地上はNジャマーの影響で電波状況がめちゃくちゃだからな。『彼女』はいまだにスヤスヤお休みか…。」

 と言いながら、今度は彼はコーヒーのブレンド方法に集中し始めた。

 「次はシバモカあたりを試すか」など言いながら砂丘を降りて行った。

 彼の名は、アンドリュー・バルドフェルド。

 ザフトの地上部隊のエースパイロットで、名将である。彼は「砂漠の虎」と言われていた。

 彼が歩き向かう先には、ヘリコプターや6輪の車両、そして巨大な機体があり、周りには男たちがいた。

 彼らはバルドフェルドが近づいてくると、すばやく整列した。

 「では、これより地球連合軍新造艦‐アークエンジェルに対する作戦を行う。目的は、敵艦および搭載モビルスーツの戦力評価である!」

 彼の言葉を受け、パイロットの1人が質問した。

 「倒してはいけないのでありますかぁ?」

 どこか冗談交じりの入った質問に周りの兵士もつられて笑う。

 バルドフェルドはしばらく考えた。

 「う~ん。まあ、そのときはそのときだが…。ただあれは、クルーゼ隊がついにしとめられず、第八艦隊がその身を犠牲にして地上に降ろした艦だ。そのことを忘れるな。…一応な。」

 「では、諸君の無事と健闘を祈る!」

 それを合図に兵士たちは敬礼した。

 「総員、搭乗!」

 ダコスタが号令をかけ、みな各々の機体へと乗り込んだ。

 バルトフェルドもダコスタが運転する指揮車に乗り込んだ。

 「さあ、戦争しに行くぞ!」

 一斉にアークエンジェルへと向かった。

 

 

 ザフトの動きを先に捉えたのは、アークエンジェルではなく、昨日の一団だった。

 「ザフトが先に仕掛けましたよ。」

 1人の兵士が隊長に報告する。

 が、肝心の彼はバギーのシートで寝入っていた。

 「隊長、いい加減起きてください…。ここは一応戦場です。それに私たちも出撃準備ぐらいしたほうがいいじゃないのですか?」

 隣のシートにいた20代の女性士官が半ばあきれながら彼をいさめた。

 「ふぁ~、いいじゃないか。どうせ、「虎」もここで一気に仕留めようなんて思ってないだろう?せっかくだし、見物でもする程度で…。てなわけでもう一眠りするから…何かあったら起こして。」

 ふたたび寝ようとするのを、とうとうその女性士官は隊長の耳元で叫んだ。

 「もう十二分に事はおきていますから!起きてください、隊長!」

 「わかったよ…。まったく、ほんとそういうところは姉にそっくり…。」

 「何か言いました?」

 「いやいや、まじめでよろしくて…。さてと。」

 渋々と彼は起き上がり、スコープを手に持って同じようにこれらの戦闘を見学しようとしている士官たちの下まで来た。

 「…アークエンジェルは、地上戦の方は?」

 隊長の問いに眼鏡をかけた士官が答える。

 「皆無でしょうな…。みんな宇宙軍でしょ?」

 さてさて、地上戦が皆無なアークエンジェル。その艦と搭載されているMSの性能はいかほどのものか?

 彼はスコープを覗いた。

 

 

 「接地圧?」

 (そう、おまえ砂漠の砂丘の上を歩いたことあるか?)

目を覚まし、シャワーに入った後、フォルテに呼び出され、ヒロは今、クリーガーのコクピット内でOSをカスタマイズしている。

 『ヒロ、次はそこを…。』

 「ないけど…。」

 フォルテからの通信にヒロは答える。

(砂丘っていうのは言うまでもないが、要は砂が堆積したものだからな…。土やコンクリ―トより柔らかいんだよ。普段歩くように踏み込むと、そのまま沈んで足をとられちまうんだ。こういう砂漠に暮らしている人たちはコツを知っているから、なんなく歩けるが、MSにそんな器用なマネできないだろ?ザフトのMSはいろいろ工夫しているが、おまえたちのは、OSで書き換えればいいだけだろ?)

 「なるほど…。」

 ヒロはキーボードをたたき進めていく。

 敵が襲撃してこない間にしなければならないことはある。

 ヒロは宇宙空間とは違う砂漠の地での運動プログラムの書き換え、フォルテはジンの性能をさらに引き上げるために調整している。

 ジンはGAT‐Xシリーズとは違い、簡単にOSを書き換えることは出来ないので、時間がかかっている。

 『あとは、この砂地でどれだけ接地圧が逃げるか、だな。表に出れればいいが…。』

 「それじゃ、せっかくアークエンジェルが探知されないようにしているのに、見つかっちゃうじゃん。」

 『だから、出れればいいが…と言ったのだ。いざとなったら、戦闘のときに試すのだな。ある程度書き換えているから、すぐにできるはずだ。』

 (そっち終わったか?ならジーニアス借りていくぜ。)

 フォルテは一旦コクピットを出た。

 このままでは今日中に終わりそうにないから、ヒロの調整が終わった後、ジーニアスの手も借ることになった。

 『まったく、人使いが荒いものだ!』

 ジーニアスは不満を漏らした。

 「そんなこと言ったら、降下してから不眠不休のギースさんどうするの?」

 「いやいや、俺は強制じゃなくて自発的だから…。」

 コクピットの入り口からギースが顔をのぞかせる。

 ものすごく眠そうな顔をしていた。

 「しかしまあ、いくらルキナがずっと休まずに看病してたからってあんたも不眠不休じゃくてもいいんじゃない?」

 「このことルキナ少尉に内緒ですよ。あとで知ったら、謝りってきそうで、自分が自ら進んで起きているのに…。」

 なにか言い方がもう変な感じだった。

 「ほらっ、もしルキナ少尉がたとえ許しても、自分だけ寝てましたってのがばれたら、数名怖い人が…。それにこの作業さえ終われば、もうすこしで不眠不休も終わるから…それまでの辛抱です。」

 ギースの話を聞きながらヒロは、後でルキナにお礼を言わなければと思った。

 その時、

 (第二戦闘配備発令!繰り返す、第二戦闘配備発令!)

 艦内に警報が鳴り響いた。

 

 

 「敵…!」

 その警報を聞いたキラはベッドより身を起こした。

 「…もう誰も死なせない…。死なせるもんか…。」

 キラはまるですべての敵を屠る獣のような瞳で上着を引っかけながら部屋を飛び出していった。

 彼らが去った部屋のベッドから身を起こす者がいた。

 「ふ…ふふ。」

 フレイは渇いた笑みをした。

 「…守って、ね…。」

 これで、もうキラは後戻りできない。

 これから、キラは自分を守るために同胞に手をかける。

 それが友であっても。

 そして、それにヒロをも巻込める。

 彼も知っているはずだ。向こうにキラの友達がいることを。

 だからこそ、人質を返すという行動もできた。

 そんな彼が、キラが友と戦うことを嫌がるはずだ。

 きっと、その時は無理にでも止めに入るであろう。

 同じコーディネイター同士で戦い、血を流し、そして死ぬ。

 それこそが自分にとって大切な親を死なせた者たちへの復讐だった。

 

 

 ヒロはパイロットスーツに着替え、クリーガーのコクピットに入り、ブリッジの通信回線を開いた。

 ブリッジでは敵の捕捉に戸惑っていた。

 (5時の方向に敵影3!ザフト戦闘ヘリ‐アジャイルと確認!)

 (ミサイル接近っ!)

 (機影ロスト!)

 どうやら敵の位置が把握できていないらしい。

 (敵はどこだ!?ストライク発進する!)

 キラは我慢できず、ブリッジに通信を開き、発進許可を求めた。

 (キラ、待って、まだ…。)

 ミリアリアが驚いた声を上げる。

 (早くハッチ開けて!)

 (待て、まだ敵の位置も戦力もわかってないんだぞ、焦るな。発進命令も出ていない!)

 (なにのんきなことを言ってるんだ!いいから早くハッチ開けろよ!僕がいってやっつけてやる!)

 いつもとは違うキラの様子にヒロは驚いた。

 (艦長!)

 (言いようは気に入らないけど、出てもらうしかないわね。艦の砲では小回りはきかないから…。MSたちを発進させて!)

 マリューは少しむっとしてような言い方で指示を出した。

 ナタルの号令のもと、ハッチが開き、発進準備が始まる。

(重力を忘れるな!)

 発進直前のナタルの忠告もあったが、ハッチを出た後いつもとはちがう1Gに戸惑った。ここは、宇宙空間でもないし、コロニーでもない。3ヶ月ぶりに戻った地上はいままで普段から暮らしていたのも関わらず重い感じがした。

 とにかく着地をしなければ…。

 ヒロはクリーガーを砂丘に着地させた。

 が、あくまで接地圧は着地してからの設定であったため、案の定、砂地にMSの重さがかかり、動いていった。

 おもわず、バランスを崩しそうになった。

 戦闘ヘリ、アジャイルがこちらに迫ってきてミサイルを撃ってくる。

 まだ、接地圧を完全にはしていないので、いまから避けても、バランスを崩してしまう可能性がある。

 ヒロは、レーダーセンサーの左上のボタンを押す。

 クリーガーは黒と白、赤い色に変わっていく。

 ミサイルが着弾するが、無傷であった。

 「この間に…。」

 PS装甲のため実体弾が当たっても、無効にはできるが、その分バッテリーは消費してしまう。しかし、接地圧の修正をするのは今だった。

 今、ここに敵がビーム兵器を持ってないのが幸いだった。

 

 

 「おっ、MSがでてきた。」

 眼鏡をかけた士官はスコープからその姿を捉えた。

 「あれが話にきいていた大西洋連邦が開発したMSですよね?」

 「間違いないだろう。アルテミスでもあれが戦闘していたんだろう?」

 実は、アークエンジェルが脱出した後、光波防御帯を失ったアルテミスは海賊からの防衛のため、傭兵を雇っていた。

 その傭兵が乗っていた機体、そして、その時、ひと騒動おきたジャンク屋のMSもザフトの従来の機体とは違うMSであり、どちらかというと、ストライクやクリーガーと似ていた。

 それらの大きな違いはPS装甲があるかないかであり、こちらはさきほどのメタリックグレーから色が変わったので、大西洋連邦の機体で間違いないだろう。

 「…バクゥが出てきた。」

 隊長風の男は、ザフトの方の動きを見ていた。

 どうやら、「虎」はあのMSの性能も見るのだろうか。

 ならば、こっちはゆっくり見学させてもらおう。

 

 

 

なんとか足場を確保したが、今度はアジャイルではなく別の機体の接近を伝える警告音が鳴り、モニターをみた。

 見ると、すばやい動きをした何かが迫って来た。

 バルカン砲を撃ち、対応するが、向こうはすぐに避けた。

 「あれは…一体!?」

 よく見ると、キャタピラを駆動させて砂丘を疾走したかと思うと、宙に浮いた瞬間、4本足で砂丘を蹴り駆けて行った。

 そして、すぐさま反転し、ミサイルを撃ってきた。

 この場から避け、間合いをとろうとするが、向こうの機動力に翻弄させられる。

 TMF/A‐802バクゥ。

 ザフトの陸戦用の機体だ。

 大きな特徴は、人型であるジンやシグーとは違い、4本足である。

 これにより、不整地でも安定した走行、そして機動力を確保している。

 その間にもバクゥは執拗に攻撃してくる。

 自分たちをあざ笑うかのように俊敏に動く。

 数機が迫って来る。

 ヒロはなんとか応戦するためにカービンを向ける。

 が、その時脳裏に大気圏で撃ったジンの爆散する姿がよぎった。

 銃口を向けるが、トリガーが引けない。

 「くっ…、こんなときにっ…。」

 ヒロは撃つのをあきらめ、向かってきたバクゥをシールドで受け止め、払った。

 飛ばされたバクゥは4本足を駆使し、すぐさま態勢を直し、着地した。

 「僕は…。」

 息が自然と荒くなった。

 

 

 「遅くなりました。」

 ルキナが急いで格納庫にやって来た。

 「いいとことに来た、こっちのほうを手伝ってくれ!」

 マードックが大声で叫んだ。

 そこに向かうと、整備士たちがフォルテのジンの作業を総出で手伝っていた。

 すでにストライクとクリーガーは発進していて、ムウのスカイグラスパーも先ほどの艦砲射撃で、位置特定のため、出て行った。

 「ジーニアスまだか!?」

 計器類をいじりながら、フォルテはジーニアスを急かした。

 『今、全力でやっている!』

 「早くしてくれ。あとは俺だけなんだから。こういうとき、ストライクやクリーガーのようにシステムの書き換えが楽なのにな…。」

 マードックを含め、整備士たちもこちらのを手伝ってくれてはいるため、時間を短縮でき、あとはジーニアスがなかのソフトをアップデートしてくれるのみとなった。

 通信から、目まぐるしいやりとりが聞こえてくる。

 そこからヒロとキラが苦戦しているのが読み取れた。

 キラの方も接地圧のプログラムを書き換えたようであるのだが、ストライクやクリーガーは汎用型である。たいしてバクゥは環境に特化した機体である。

 「ちくしょー、こういう時、もう1人ぐらいパイロットがいれば…。」

 マードックは毒づいた。

 スカイグラスパーはもう1機ある。

 それならバクゥの機動力にある程度対抗できる、

が、残念なことにパイロットがいないため、機体を余らす形になってしまった。

 「とはいっても、まだ弾薬つめてないからどのみちムリか…。」

 マードックの何気ない言葉ではあったが、それを聞いていた思わず、ルキナは心臓が跳ねるようにドキッとした。

 それに気づいたのか、ギースがこちらを心配そうに見た。

 …パイロットならいる。が、出て行って、どうする?

 あの時は動かせたのは、戦闘をしなかったからだ。

 いざ、戦闘になったら、自分は動かせるか…。

 

 『終わったぞ!』

 ようやくジーニアスがアップデートを完了したことを知らせた。

 「よし、ブリッジ!こっちも出れる。発進させてもらうぜ。」

 すばやくジンをカタパルトに移送し、発進準備をする。

 フォルテはコクピット内で、計器類を確認した。そして、カタパルトの地上からの高さ。現在のクリーガーのいる位置を再度頭に入れた。

 もちろん、フォルテのジンも砂漠に対応してないし、バクゥの機動力には勝てないが…。

 「ジーニアスには悪いが…いきなりダメにするかもな…。」

 まだ、この改修代の支払いも終わってないというのもあるが、今はそれを気にしている余裕はなかった。

 タイミングは1回だけだ。

 リニアカタパルトから勢いよく打ち出され、ジンはその勢いも加え、スラスターを全力にし、ヒロのいるクリーガーまで勢いよくジャンプした。

 

 

 「くぅ…どうすれば…。」

 先ほどからビームライフルを発射するが、バクゥに避けられる。

 精密射撃のため、照準器を出し、ビームライフルを構えるが、その隙を狙って、バクゥがミサイルを撃ってくる。

 それを避けるため、構えを解いてしまうのなかなか撃てないでいた。

 その時、後方から勢いよく飛んできた。

 フォルテのジンだった。

 (ヒロ、俺がバクゥを引き付ける。その間に撃てるようにしておけ。)

 そう言い、バクゥに向け、スラスターを全開にし、前傾姿勢で滑走した。

 「もってくれよ…。」

 フォルテは独り言ちた。

 ジンはバクゥがクリーガーに向かうのを阻んでいる。

 ヒロはその間に、再び照準器で目標を捉え、ビームライフルを右腕はトリガー、左腕は前方のグリップに持ち、構えた。

 が、いざ、スコープで捉えたバクゥを撃とうとするが、トリガーが引けない。

 足元を狙おうとするが、すぐ避けられてしまいかねない。

 正面では、腹部にコクピットがあるバクゥのため、パイロットを死なせてしまう。

 だが、撃たなければならない。

 いつまでもフォルテが持つわけでもない。

 このままではやられてしまう…。

 わかっているのに…。

 心の中で必死に撃てと叫ぶが、体が言うことを聞かなかった。

 

 

 「ヒロ…撃たないのか!?」

 バクゥを引き付けながら、撃ってくるタイミングを見計らっているが、クリーガーはいっこうに撃ってこない。

 ユニウスセブン以来の彼の行動、そして、戦闘記録からみて取れたもの、あくめでフォルテ自身の憶測でしかないが、今ヒロは大きな壁にぶつかっている。

 だが、今ここで言っても駄目だろう。それに…。

 「1人で何とかするしかないか…。」

 フォルテは、バクゥを引き付けたところを急速反転し、ジャンプし、タイミングを合わせ、さらにバーニアを吹かせ、勢いでバクゥを蹴り飛ばした。

 いきなりの事で、バクゥは倒れてしまった。

 すぐさま攻勢に出ようとするが、コクピット内に警告音が鳴り響いた。

 どうやら、今までの動きと先ほどのがとどめだったのか、関節部に限界が来た。

 そこで、ジンはガクと膝をつき動かなくなった。

 「無茶しすぎたか…。」

 ずっと警告音がなり、モニターにエラー表示がでている。

 「…今度はこっちがピンチっていうのはシャレにならねえな…。」

 倒れたバクゥが起き上がり、もう1機と共にこちらに迫ってこようとした。

 やはり敵もバカではないか…。

 「これはマジでやばいかもな…。」

 フォルテは冷や汗をかいた。

 

 

 「フォルテ!」

 クリーガーはライフルを捨て、スラスターを必死に吹かせた。

 自分が撃てなかったために、仲間が危機的な状況に陥らせてしまった。

 「間に合えー!」 

 バクゥがジンにレールガンを放とうとしていた。

 もうだめか…。

 その時、上空よりビームが一線ジンとバクゥの間に割るように降って来た。

 バクゥも驚いたのか、すぐさま後ろに飛びのいた。

 フォルテもヒロも驚き、それが来た方向、上空へ目を向けた。

 「あれは!」

 見ると、その姿は青と白の、戦闘機のような、しかし、地球軍のスピアヘッド、ザフトのインフェストゥスとも違う機体であった。

 さきほどのは、その機体の左に装備されているライフルのような形状より放たれた。

 ただ、操縦者は不慣れなのか、反転する際飛行のバランスを崩し、近くにいるディンにフォローしてもらっていた。

 そのフォローしていたディンが、まるで鷹が獲物を捕らえるようにこちらに急降下し、2丁の突撃機銃をバクゥに向け放った。

バクゥたちは避け、後ろに後退した。

フォルテのジンのそばにディンは降り立った。

 フォルテはそのディンの肩のマークを見て思わず、笑みがこぼれた。

 「マジかよ…。」

 (大丈夫か、フォルテ。)

 いつもと変わらず落ち着いた口調で通信が来た。

 「大丈夫だが…相も変わらず、かっこよく登場してくるね~、シグルド。」

 「シグルド…なんでここに?」

  ヒロもマークが目に入ったのか、驚いている様子で、クリーガーも近づいてきた。

 (ヒロー!あっち、あっち!)

 その時、別のところから通信がきた。

 ヒロはその声の主にさらに驚いた

 「え?アバン…なの!?というか、それに乗っていたの!?」

 ヒロもモニターごしより見慣れぬ戦闘機に目を向けた。

 (ヒロ、あのストライクとともに指定されたポイントに行け!そこにバクゥをおびき出すんだ。)

 シグルドから地図が転送されてくる。この付近の地図である。一か所が点滅している。

 周りに、バギーがいて、一団がいた。

 よく見ると、その中にルドルフもいる。

 「けど…。」

 いきなりのことだったので戸惑った。

 (大丈夫だ、今は、とりあえず味方だ。)

 ヒロはシグルドの言葉を信じ、指定されたポイントに向かった。

 ストライクもバギーに従い、ポイントに向かっている。

 バギーを見ると、民族風の衣装や迷彩服をきている男たちであった。

 その中で、紅一点。ここの地元の人たちとは雰囲気の違う金髪の少女がいた。

 その少女が今、二人に指示をだしている。

 不安はあったが、エネルギーの残量も少ない。あとバクゥを3機相手にすることはとてもできない。

 ポイントに着いた。

 本当に大丈夫だろうか?

 不安があったが、今は信じるしかなかった。

 追いかけてきたバクゥはこれを好機と襲って来る。

 2機はタイミングはかりそこから飛びのいた。

 それの入れ替わりにバクゥが着地した瞬間、その地面が爆発し陥没した。

 そして、その地の穴に落ちたバクゥ3機を爆炎に飲み込まれた。

 バクゥが落ちたタイミングで、バギーにのっていた少女たちが点火し爆発を起こしたのであった。

 

 「助かったのか?」

 その様子を見ていたアークエンジェルのブリッジでも驚いた様子だった。

 「アジャイル接近!」

 その時、トノムラが驚きすばやく報告した。

 バクゥをやられ、反撃に来たのか、

 その時、

 どこからよりキャノンが迫って来たアジャイルを貫いた。

 撃ってきた方角は先ほど助けにきた戦闘機のようなものやMSがいる方角ではなかった。

 「一体…。」

 その先に、リニアガンタンクがいて、その周りに人や軍用のバギーカーがいた。

 先ほどバギーに乗っていた者たちとはまた違う様相の者たちだった。

 その様子はバクゥを仕留めたレジスタンスからも見えた。

 が、その攻撃にリーダー格の男が苦々しい顔を向けていた。

 「…あいつら、まだいたのか?」

 

 それを見ていたアークエンジェルのブリッジでは敵の位置の特定に出たムウのスカイグラスパーからの通信が来た。

ミリアリアがマリューに報告した。

 「フラガ大…いえ、少佐より入電です!『敵母艦を発見するも攻撃を断念。敵母艦はレセップス!』」

 「レセップス!?」

 マリューは単語に驚き、声を上げた。

 レセップス。それはバルトフェルド隊の母艦である。

 そして、その隊長、アンドリュー・バルトフェルドは地球軍でも彼を知らないものはいないザフトの名将であった。

 

 

 

 「いや~、相も変わらずいい腕してるね。」

 リニアガンタンクの手前にいた眼鏡をかけた士官が乗っていた砲術士に向け、称賛の言葉を口にした。

 「中尉から賛辞をもらうと嫌な予感しかないんですけど…。」

 「なに、バクゥには大敗しても、さすがに戦闘ヘリには負けないんだなぁって思っただけさ。」

 「やっぱり、嫌味じゃないですか!?」

 彼の抗議もどこ吹く風の顔をし、その士官はふたたびアークエンジェルの方へ目を向けた。

「さてさて、大将が来る前に俺たちの目的果たさないといけませんね、ディアス隊長?」

 「ああ、まったく、ここまで来た道のりも骨が折れたのに、これで、Uターンにはしたくないからな。」

 ディアスと呼ばれた眼帯の男は、眠たそうにしながらも頷いた。

 

 

 

 「撤収する。この戦闘の目的は達した。残存部隊をまとめろ。」

 バルトフェルドはダコスタに指示し、指揮車に戻った。

 ダコスタはバクゥが5機、アジャイルが1機落とされたのに信じられない様子だった。

 無理もない。

 途中の介入した勢力もあったが、まだ、不慣れな戦艦と機体相手にここまでの損失になるとは、当初だれも予想してなかった。

 が、バルトフェルドは別のことを考えていた。

 まず大型の砲をつけていたMS。とっさに運動プログラムを書き換える離れ業をやってのけ、さらに戦艦への数発のミサイルを一発のランチャーで撃ち落としたのだ。

 報告では、奪えなかった機体のパイロットはナチュラルとされていた。

が、どうみてもナチュラルとは思えない動きであった。

 そして、もう1機。こちらはあらかじめ書き換えていたのか、砂地に苦慮することはなかったが、どこが撃つことにためらいを感じながらの戦い方をしていた。

 「ふっ、いずれにせよ、久々に手ごたえのある相手のようだな。」

 去りながら、バルトフェルドは独り言ちた。

 

 

 

 夜が明け始めて来たのか、暗かった空がだんだんと青くなり、地平からは太陽をのぞかせ始めた。

 今、アークエンジェルが降りたこの地でさまざまな勢力の思惑がからみ始める。

 

 

 

 




全開の前書きで投稿がスローペースになるかもと言いましたが、そのことを含め、前書き、後書きだけではなく、活動報告でお知らせできればと思い、匿名設定を解除しました。

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