機動戦士ガンダムSEED Gladius   作:プワプー

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今週中までには低軌道会戦まで終われれば…と思っています。


PHASE‐13 前哨戦

 

 

 「失礼しました。」

 艦長室より出てきたキラ、ヒロ。

 外で待っていたトール、ミリアリア、ルキナが近寄った。

 「大丈夫?なんて言われたの?」

 「おまえもトイレ掃除1週間とか?」

 トールが尋ねた。

 「おー、それいいねぇ。」

 あとから出てきたムウが笑い、去って行った。

 対照的にナタルは冷たい視線を送った。

 「大丈夫だよ。」

 キラは微笑んだ。

 本来、勝手に捕虜を引き渡すことは軍法違反ではあるが、キラは民間人、ヒロは傭兵なので、免れた。ちなみにヒロの勝手な行動を止めなかったとして、フォルテもこれより前、怒られたのである。

 「…ところで、トイレ掃除って?」

 キラはトールに尋ねた。

 「トールとルキナ、マードック軍曹にすごく怒られたの。それで罰としてトイレ掃除1週間を言われたの。」

 「ふん、どうせ月艦隊と合流するんだ。それまでの辛抱だろ。」

 ミリアリアが笑いながら、説明した。トールは面白くない顔をした。

 「…まあ、艦体の合流まで1週間もかからないのが、せめてもの救いかしら。」

 ルキナも苦笑いした。

 しばし、なごやかな雰囲気が流れた。

 「ホント言うと、ちょっと心配だったんだ。」

 途中、トールが急に真顔になり、キラに話し始めた。

 「え?」

 「あのイージスに乗ってんの…、友だちだったんだろ…。ごめん、聞いちゃった。」

 どうやら、あの場にトールもいたらしい。

 キラは不安に思った。どう思ったのか。しかし、それは杞憂だった。

 「でもよかった。おまえ、ちゃんと帰って来たもんな!」

 トールはうれしそうに笑顔で言った

 キラもそれを聞き、微笑んだ。

 

 

 この会話を聞いていた者がいたことを彼らは気付いてなかった。

 フレイは通路の陰に隠れて、その会話を聞いていた。

 「このままに…しないわ…。」

 憎しみに満ちた声で誰に話すわけもなく、彼女は口にした。

 

 ここ2、3日、アークエンジェルは敵艦とは遭遇せずにすんだ。

 あともう少しで第八艦隊と合流できる。

 が、油断はならなかった。

 

 ここ数日あったこと。いろいろ考えても考えがいたらない。

 本当に自分の戦い方でいいのか。

 ラクスを引き渡した後、この数日ずっとこればかりであった。

 息を抜くため、ヒロは食堂に入っていった。

 食堂にはサイ、カズィ、キラがいた。

 さらにフレイも。

 そこで、キラとフレイが何か話していた。

 フレイがこちらに気付いたのか、振り返った。

 「ヒロにも謝らないと…ね。ほんとうにごめんなさい。ひどいこと言って…。」

 いきなりのフレイの言葉にヒロは驚いた。

 「キラもヒロも一生懸命戦っているのに…。」

 フレイは申し訳ない感じでしゃべっていた。

 どうやらさきほどキラにも謝りたいと話していたのだ。

 「戦争って嫌よね…。早く終わればいいのに…。」

 しかし、その言葉を発した時、ヒロは何か違和感を持った。

 が、その違和感を口では表せなかった。

 その時、艦内に警報が鳴り響いた。

 

 急いで食堂を出ようとした時、一番後ろにいたキラは女の子にぶつかってしまった。

 それに気づいたヒロも振り返った。

 急ぐ気持ちもあったが、女の子もほっとけない。

 「大丈夫?」

 キラは女の子を助け起こそうとした時、フレイがきて、その女の子を起こした。

 「ごめんねぇ、お兄ちゃん急いでるから。」

 「また戦争だけど、大丈夫。お兄ちゃんたちが戦って守ってくれるからね。」

 「ほんとぉ?」

 女の子は彼らを見上げた。

 「うん、悪いやつは、みぃんなやっつけてくれるんだよ。」

 サイから声がかかり、キラとヒロは走り出した。

 「そうよ…。」

 彼らを見送るフレイは女の子のてを握りながらつぶやいた。

 「みぃんなやっつけてもらわなくちゃ…。」

 その声に何か恐ろしい物言いが含んでいた。

 そして、自然と手に力がこもった。

 女の子はその手を振り払い、母親の下へ駆け出した。

 それに気づかないフレイはずっと繰り返した。

 「そうよ…。やっつけてくれなきゃ…。」

 

 

 

 ローラシア級より、デュエル、バスター、ブリッツが出撃した。

 「今日こそ、あの艦とMSを落とすぞ!」

 アークエンジェルが艦隊までの合流にあと10分ほどしかないが、ここであの艦を落として、アスランを、ライバルを引き離したいと考えたイザークとディアッカは押し切った。

 

 3機のMSが密集陣形でこちらに向かうかと思いきや、散開した。

 そして、その射線上からガモフの砲が貫く。

 彼らはガモフの砲をこちらから見えないようにしていたのである。

 「回避!」

 マリューは叫んだが、2発のうち、1発が着弾してしまった。

 

 展開したMSのうち、ストライクはデュエル交戦し、バスターはクリーガーとメビウス・ゼロ、ジンを相手に始めた。

 その隙を狙ってブリッツがアークエンジェルへと行った。

 (ヒロ、お前はアークエンジェルへ行け!)

 「でも…。」

 2機は実弾しかない。バスターを押さえられるか不安だった。

 (おまえの機体の方が機動力あるんだ。それに、おれたちはそんなやわじゃない。)

 そう言い、フォルテはジンが持っていたショットガンを放り投げた。

 宙に浮いたショットガンを受け取り、ヒロはクリーガーのスラスターを全開にし、アークエンジェルへ向かった。

 

 アークエンジェルでもそれは確認できた。

 「バリアント、てぇー!」

 迎撃したが、ブリッツは難なくかわし、ふいに見えなくなった。

 「ブリッツ、ロスト!」

 ミラージュロイドを展開されたのである。

 マリューはすばやく対策を指示し始めようとした。

 この武装を己が対峙することになるとは思わなかったが、こちらが造ったモノである。応戦プランは知っている。

 ただ、こちらはローラシア級も相手にしなければいけない。

 そう思案していると、モニターよりクリーガーが近づいてくるのがわかった。

 なら…。

 マリューは指示を出した。

 「アンチビーム爆雷!」

 指示に従って爆雷が打ち出され、飛散した。

 ふいに何もないような空間からビームが発せられ、爆雷に散らされてあたりを照らした。

 すぐさま、マリューは次の指示を出した。

 「ビーム角からブリッツの位置を推測させて!それをクリーガーに送って!」

 ブリッツの予測位置が算出され、そのデータおよび通信がクリーガーに送られた。

 そのデータを見たヒロはショットガンを構え、その位置へ撃った。そして、続けざまにショットガンを放り投げ、右腕のガトリングガンを放ち、まき散らした。

 ブリッツのミラージュコロイドには弱点がある。

 稼働時間が制限されているだけではなく、展開中、PS装甲は使えない。

 そのため、ミラージュコロイドを解除しなければ、この攻撃を防げない。

 ショットガン、ガトリングガンでまき散らされたため、避けることもできず、ブリッツは姿を現して防いだ。

 その隙をついて、クリーガーが腰にマウントしていたビームサーベルを取り、ブリッツに斬りかかろうとする。

 ブリッツは盾でそれを防いだ。

 クリーガーの機体の動きを封じるため、左腕のグレイプニールを放った。

 が、すぐさまクリーガーの頭部バルカンで破損された。

 ブリッツの武装は、今防いでいる盾に集中しているので、この状態では手立てがない。

 これではミラージュコロイドを展開している暇はない。ブリッツは一旦、引き下がった。

 こちらの方は対処できた。

 が、アークエンジェルに迫るのはブリッツだけではない。

 後方より、ガモフが撃ってくる。

 クリーガーの装備には中・長距離の武装はない。

 「このままでは…!」

 マリューは唸った。

 こうしている間もアークエンジェルの装甲の排熱が限界を迎え始めている。

 ブリッツもクリーガーの隙をついてこちらを撃ってくる。

 クリーガーを先に撃墜するよりも、アークエンジェルを落とせば、かの機体も立ち行かなくなる。

 ニコルにはそのように考え、アークエンジェルの攻撃を優先して行った。

 

 (キラ…戻って!アークエンジェルが!)

 デュエルと交戦していたキラはミリアリアからの通信を受け、ハッとアークエンジェルに目を向けた。

 「アークエンジェルが…。」

 白い艦体の一部が赤く熱されていた。

 クリーガーがなんとか応戦しているが、ブリッツ、遠くにいるガモフの攻撃に防ぎきれてなかった。

 メビウス・ゼロとジンもバスターを相手にしていて、駆け付けられない。

 キラの脳裏に先ほどのフレイの言葉が思い出された。

 …このお兄ちゃんが守ってくれるからね…。

 沈めさせない…。絶対に!

 そう思ったとき、キラの中でなにか弾けた。

 デュエルがサーベルを振り下ろしてくる。

 が、今のキラにとってその太刀筋がはっきり見えた。

 デュエルの攻撃をさっとかわし、サーベルをデュエルのわきへ薙ぎ、すぐにスラスターとバーニアを噴射しストライクを振り向かせた。

 イザークが攻撃をうけ、デュエルの体勢を戻すころには、すでにストライクはアークエンジェルへと向かって行っていた。

 それを受けデュエルが追いかけ、ビームライフルを発射するが、ストライクはそれをなんなくかわしていった。

 キラが見ているのはブリッツだけであった。

 そして、ブリッツに斬りかかる。

 ブリッツもストライクが来るのに気付いて、避けようとしたが、降り下げた瞬間、ストライクはすぐさまブリッツを蹴り上げ、アークエンジェルから引き離した。

 その時、追ってきていたデュエルが死角からサーベルをふるった。

 「キラ、危ない!」

 近くにいたヒロはキラに叫んだ。

 間に合わないと思った。

 が、キラはすばやくストライクを振りかえさせ、宙に浮いていたショットガンを手に持った。

 そして、デュエルの至近距離で放った。

 一瞬視界が遮り、デュエルは怯んだ。

 その隙を狙ってアーマーシュナイダーをとりだし、先ほどサーベルが当たった装甲に向けたたきつけた。

 デュエルに激しいスパークが走り、そのまま沈黙した。

 漂うデュエルをブリッツが抱えるようにし、離脱していった。

 

 それまでの動作があまりの速さで、その様子を見ていたヒロは驚き呆然としてしまった。

 ヒロはクリーガーをストライクの近くに寄せた。

 当のキラは、自分でも本当にこのような動きをしたのかわからず、きょとんとしていた。

 バスターも離脱し、ジンとメビウス・ゼロもこちらに近づいてきた。

 なんとか危機を脱したのであった。

 そして、アークエンジェルは第八艦隊と無事合流した。

 

 

 

 ヴェサリウスはラコーニ隊の艦と合流し、かの隊にラクスをプラントへ送り届けることになった。

 「残念ですわねぇ…。せっかくお会いできたのに…。」

 「プラントでは、みな心配していますよ。」

 ラクスは残念そうにアスランに言った。

 今、アスランは彼女を連れ格納庫へ向かっている。

 ラウもオデルも見送りに来ていた。

 「クルーゼ隊長にも、いろいろとお世話をおかけしました。」

 「お身柄はラコーニが責任を持ってお送りするとのことです。」

 ラウは一礼して応じた。

 「ヴェサリウスは追悼式典には戻られますの?」

 「さあ…それはわかりかねます。」

 「戦果も重要なことでしょうが、犠牲になる者のこともどうか、お忘れなきよう…。」

 「…肝に銘じましょう。」

 この2人のやりとりにアスランはふたたび驚いた。

 ラクスにこのような面もあったことを初めて知ったのであった。

 「エーアスト隊長もありがとうございます。…お戻りにはならないのでしょうか?」

 オデルはパトリックからラクスの捜索でこのヴェサリウスに合流した。

 本来なら彼も戻ってもよいはずだ。

 「…ラコーニ隊に代わり、アスナール隊がヴェサリウスに合流するとのことで…。」

 「そうですか…。」

 ラクスはアスランに向き直った。

 いつもと同じ穏やかな表情だった。

 「何と戦わねばならないのか…。戦争は難しいですわね。」

 アスランはその言葉に答えることは出来なかった。

 「では、また…お会いできる日を楽しみにしておりますわ。」

 そう言い、彼女はシャトルに乗りヴェサリウスを後にした。

 そして、ヴェサリウスはふたたびアークエンジェルを追った。

 

 

 




最近、ガンダムに縁がないというか、なにかあるのか…、ダビングして保存するぞと意気込んで録画したのが1話だけ録画失敗しておしゃかになったり、ゲームのデータ吹っ飛んだり…(汗)
この物語の保存データはなくならないように気を付けます…。

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