機動戦士ガンダムSEED Gladius   作:プワプー

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最近なかなか作業が進まないワケ…。
作業にとガンダム関連の音楽聞いているのですが…それを聞き入って作業が進まない…。


PHASE‐11 守れなかったもの

 

 オデルがシグーアサルトのメンテの確認を終え、ヴェサリウスのパイロット待機室に戻るとアスランがいた。

 何か考え事をしているようだ。

 「アスラン、どうした?」

 「あっ、エーアスト隊長…。」

 オデルはアスランの横に並んだ。

 「大丈夫だ…。ラクス嬢はきっと無事だ。」

 「はい…。自分もそう信じています。隊長こそ、ヴェサリウスに加わっていただきありがとうございます。」

 「なに…こっちこそ、すまないな。もう1人付いてきてしまって…。」

 オデルが苦笑交じりに返した。目を格納庫に向ける。

 このヴェサリウスの整備兵の中に、アビーが混じっていた。

 同行が決まり、もちろんシグーアサルトもこちらに運んだのだが…。その機体の整備は他に人間にいじらせない、とアビーは言い、半ば押し通してやって来た。

 「エーアスト隊長、あれは…?」

 アスランはラウのシグーに、見たことのない円盤状の左右に砲を備えたバックパックが取り付けられていた。

 「あれは、ザフトが新たに開発をすすめている多角攻撃、その試作型だよ。」

 紳士的な声が聞こえた。

 2人が振り返るとサントス・エリオットがいた。

 「サントス技師…、いらっしゃっていたのですか?」

 オデルは驚いた。

 本来、このように前線に来ることはないからである。

 「その試作を見るためにね…。君がアスラン・ザラ君だね。初めまして。」

 「初めまして。」

 アスランはきっと姿勢を正した。

 プラントの人間、そして、MSのパイロットであれば、だれでも知っている人物だ。

 「地球軍のガンバレルを見たことがあるかね?ザフトでもあれを取り入れようとしてね。本来は、もっと設計を重ねてから開発をしたかったんだが。ヘリオポリスの件で、地球軍のMS開発が明らかになって、ザラ委員長は急務と考えたのだよ…。けど、これには問題があったんだ。…パイロットの適正がちょうど、クルーゼ隊長でね…。私も同行させてもらうことになったのだよ。もともとガンバレルの機能には興味があってね…。そうそうアスラン君、君の機体も今度…。」

 すっかり、MSのことに熱弁を振るい始めたサントスを見て、アスランはただ驚き呆然と彼の話を聞き、オデルはしまったという顔をした。

 その時、幸運なことにブリッジからラウより連絡が入った。

 彼らはブリッジへと向かって行った。

 

 

 

 ブリッジに向かったとき、2人はラクスが見つかった知らせだと思ったが、彼らの予想は外れた。

 地球軍の艦隊を捉えたとのことだった。

 ラウはこれをあの新造艦‐『足つき』の補給、もしくは出迎えの艦艇ではないかと判断した。

 「ラコーニとポルトの隊の合流が遅れている。もしあれが『足つき』に補給を運ぶ艦ならば、見過ごすわけにはいかない。」

 「しかし…。」

 アスランが反論しようとした。

 「我々は軍人だ。いくらラクス嬢の捜索の任があるとはいえ…な。どうだ、オデルは?」

 ラウもフェイスの彼の意見を聞こうとした。

 むろん、場合によっては、彼は権限を行使できる。

 「…俺がこの艦に同行したのは、ラクス嬢捜索の任だ。それ以外はクルーゼ、お前の判断に任せる。」

 オデルはラウの判断に従った。

 

 

 「レーダーに艦影3を捕捉。護衛艦モントゴメリ、バーナード、ローです。」

 パルの報告にブリッジは喜びの声にあふれた。

 しかし、報告したパルがパネルをみてけげんな表情になった。

 ノイズが入り、画面が乱れているのだ。

 「これは…!」

 「どうしたの?」

 マリューが目をやり、尋ねた。

 「ジャマーです!エリア一帯、干渉を受けています。」

 パルは声を上げた。

 ブリッジはさきほどの空気から一転した。

 それが意味するもの。

 先遣隊が敵に見つかったのである。

 モントゴメリより通信が来た。

 「モントゴメリより入電!『ランデブーは中止、アークエンジェルはただちに反転離脱』とのことです!」

 「そんなあの艦には…。」

 サイが思わず声を上げた。

 「敵の戦力は?」

 この艦の重要性を考えると離脱することが賢明だが、先遣隊を見捨てることもできない。

 場合によっては、助けられるかもしれない。

 マリューは確認のため、CICに戦力を聞いた。

 「ナスカ級!熱紋照合、ジン3、シグー1、それと・・・X303イージスです!」

 トノムラが叫んだ。

 その言葉にブリッジは息を飲んだ。

 「では…あのナスカ級だというの?」

 そうであるなら先遣隊は太刀打ちできない。

 ここで退き下がるか…。

 ブリッジには緊張が漂う。

 そして、しばらく考えていたマリューは静かに言い、頭を起こした。

 「今から反転しても、逃げ切れるという保証もないわ…。総員第一戦闘配備!アークエンジェルは先遣隊の援護に向かいます!」

 

 艦内に警報がけたたましく鳴り響いた。

 キラとヒロは急いでパイロットロッカーへ向かった。

 途中、避難民たちに不安な顔が広がっていた。

 無理もない。

 その時、フレイに呼び止められた。

 「キラ!ヒロ!」

 「戦闘配備って、どういうこと?先遣隊は?」

 「わからない…。まだ何も…。」

 自分たちはまだ、状況が分からないので、何とも言えなかった。

 「大丈夫よね?パパの船、やられたりしないわよね?ね!?」

 フレイが不安の顔で2人に確認した。

 「大丈夫だから、僕たちも行くから。」

 なおも不安げな顔をするフレイをキラは微笑んで答え、向かった。

 

 先遣隊とザフトの交戦は一方的であった。

 もともと、MSに対して、不利な状況にさらに奪われた機体も参戦しているのである。

 「バーナード、沈黙!イージス、ローに向かっていきます!」

 モントゴメリのブリッジでの戦況の報告を聞いていたジョージ。・アルスター事務次官は唖然とした。

 「奪われた味方機に落とされる…。そんなことがあっていいのか。」

 一方的であった。

 その時、こちらに近づいてくる艦影があった。

 アークエンジェルであった。

 「来てくれたのか!」

 「…バカな!」

 喜ぶアルスターの一方でコープマンは愕然とし、握りしめた拳をシートにたたきつけた。

 あの艦は地球軍の今後に必要な大事な艦である。そんな艦がここに来て、落とされてはならない。

 ハルバートンの思いを理解しているコープマンだからこそ悔しい思いであった。

 

 

 アークエンジェルが来たことは、ヴェサリウスからも確認できた。

 「本命のご登場だ。」

 モニターからアークエンジェルより発進したMA、MSも確認できた。

 ラウは一人考えた。

 ムウ・ラ・フラガ以外に感じたもう1人…。あの時、ヘリオポリスでもそうであったが…。あれのテストも兼ね、確かめてみるのもいいだろう。

 「おもしろい…。私も出る。」

 アデスは驚いたが、止める間もなく、ラウはブリッジを出た。

 

 

 

 (つくづく縁がありようだな…。あの隊や機体に。)

 フォルテから飄々としたもの言いの通信が聞こえた。

 モニターからザフトのMSが確認できる。イージスと青いシグーもいた。

 

 ストライクはイージスと交戦し始めた。

 ほかのMSもこちらに気付き、やってくる。

 青いシグーがクリーガーに迫って来る。

 ビームライフル構え、放った。

 シグーのシールドに防がれた。

 「何で!?」

 ヒロは驚いた。

 (対ビームコーティングを施しているのか!?)

 向こうはすでに対策をとってきていた。

 そこにアラートが鳴った。

 もう1機シグーがやって来たのである。

 バックパックがシグーとは別の形状をしていた。

 (やべぇ、増援が来た。)

 2対1、もしくはオデルを相手にしているうちに、どっちかが先遣隊の援護に向かえる状況だったが、不利になった。

 自分が向かえばいいが、エース2人を相手にするわけにいかない。

 といって、ヒロを向かわせたいが、2機がクリーガーの方へ向かうので変わらない。

 とても、先遣隊を助けにいける状況ではなくなった。

 「クルーゼか!?」

 それはオデルも驚いた。

 「エーアスト、仕掛けるぞ。」

 そして、備えられたオールレンジの砲を展開した。

 連合のガンバレルと同様のシステム、それの試作型。

 「ふん、あの男にできて、私にできるはずがない。」

 ラウは、これを使う男への対抗意識が自然と出ていた。

 そして、トリガーを引いた。

 

 (あれは…ガンバレルか?ヒロ、気を付けろ!)

 「これはフラガ大尉の乗っているゼロと同じ…。」

 多角攻撃をできる砲。それは、本体からだけではなく、分離した砲がどこからくるか見極めて避けなければならない。が、それは至難の技であった。

 事実、ガンバレルを搭載したメビウス・ゼロによって、落とされたMSは数多くある。今現在は、メビウス・ゼロを駆るのはムウ・ラ・フラガ一人となったが、それまで大きな脅威であった。

 どこから来る…。

 ヒロは意識を集中した。

 シグー自身も突撃機銃を構え、迫っている。

 大抵の人は見切れない。それがたとえ砲が2門でも。

 砲はすばやく動き、クリーガーの死角に入り込んできた。

 が、ヒロは何か直感に動かされ、クリーガーのスラスターをうまく調整しクリーガーを駆った。

 死角の左後ろの砲を右脚のスラスターを強め、避け、さらにそれを先読みしようとして回り込んだもう1つの砲を今度はシールドで塞ぎ、シグー本体の攻撃に備えるため、その態勢から習いを定めビームライフルを撃ってきた。

 「ほぉ…。」

 ビームライフルを避けたラウは少し驚いた。

 今の攻撃で捉えたと思ったからだ。

 以前も…そうであった。

 このMSの動きはまだ実戦慣れしていない動きをしているが、それと一変した見事な操縦になるときがある。

 「なるほど…。」

 ラウの中にあった疑問が確信に変わった。

 そして、その口元はかすかに笑った。

 「そうか…。やはり…、君もその力を持って生まれたようだね。いや…そのはずだ。…つくづく、不幸なものだよ。この一族は!」

 その愉悦の口調にはどこか憎しみが混ざっていた。

 

 

 その頃、ムウのメビウス・ゼロはジン1機に損傷を与えたが、別のジンにつかまった。すばやくガンバレルを展開し、応戦し、退かせたが、その際、交代しながら撃ってきた1発が当たってしまった。

 「これじゃ、立つ瀬ないでしょ!俺は!」

 ムウは歯噛みして、アークエンジェルへ帰還した。

 どの機体も先遣隊を助けにいける状況ではなくなった。

 

 

 居住区の廊下で立っていたフレイは、ブリッジへ向かった。

 そこでは、戦況が目まぐるしくやりとりがなされていた。

 「ゴットフリート1番、照準合わせ!てェッ!」

 「メビウス・ゼロ帰還します!機体に損傷!」

 みな自分の持ち場に手いっぱいで自分には気付かなかった。

 「ヴェサリウスよりミサイル!ローへ向かっています!」

 モニターにはヴェサリウスのミサイルが撃ち込まれ、爆散した映像が流れた。

 フレイは青ざめ、飛び出した。

 「パパ…パパの船はどれなの…?」

 「今は戦闘中です!非戦闘員はブリッジを出て!」

 サイがCICより飛び出て、彼女を連れだそうとした。

 「パパぁ、パパぁ!」

 「フレイ!さ、行こう!ここに居ちゃだめだ!」

 サイはなんとか彼女をブリッジから連れ出した。

 

 身を縮め青ざめるフレイを抱き寄せる。

 「キラは?…ヒロは?あの子たちはなにやっているの!?」

 「がんばって戦っているよ。でも…。」

 「でも、『大丈夫』って言ったのよ、大丈夫だって!」

 サイはフレイをなだめながら居住区へ連れ戻そうとした。

 そこへ、歌声が聞こえた。

 それを聞いたフレイはふいにサイの手を振り切って、その部屋へ向かった。

 

 

 

 これより少し前、ルキナはMSを発進させた後、ラクスの部屋へ向かった。

 戦闘になり彼女を不安にさせないため、また、何か起こらせないようにもある。

 いくら民間人でも、この艦にとっては敵対関係にあるプラントの人間である。何かで、彼女に怒りや憎しみをぶつけさせない、そんな思いもあった。

 「もう…戦いは始まっているのでしょうか?」

 ラクスは静かにルキナに尋ねた。

 「ええ。」

 「キラさまも…、ヒロも行かれたのですか?」

 「彼らは…パイロットですので…。」

 来てはみたものの、こう尋ねられると、答えに戸惑った。

 どこかラクスの表情は切なげだった。

 ラクスにとって、戦場を見るのはこれが初めてだ。

 ふとラクスは歌いだした。

 自分にできることはない。だが、せめて、歌うことでここに散った命が、そして戦う者の心が安らいで欲しい、そんな思いを込めた。

 ルキナはただ何も言わず、聞いていた。

 保護されてからこれまでラクスの歌声は何度か聞いていた。

 この歌声を聞いた人の中には、こう歌がうまいのは、やはり遺伝子を調整されたからだという人もいた。しかし、うまいだけで、ここまで多くの人の心に響くことはない。ここまで、彼女の歌に多くの人が魅了されるのは、そう心から願って歌っているからであって、遺伝子調整で得られるものではない。

 そう…、ルキナは思った。

 しかし、今この状況でこの穏やかな歌声がかえって心を逆撫でにされる人もいた。

 

 突然、部屋のドアが開いた。

 ラクスは歌をやま、ルキナは身構えた。が、そこに立っていた者に驚いた。

 「フレイ!」

 サイはフレイが部屋に入るのを止めようとした。

 フレイの目には何かを決意したのか、ラクスに顔を向けた。

 

 

 

 

 戦況は一層悪くなるばかりだ。

 バーナードが爆散し、残りはモントゴメリ1隻となった。

 最後の1機のメビウスも落とされた。

 ジンがモントゴメリへ接近する。

 (艦長…。駄目だ。離脱しなきゃこっちまでやられるぞ!)

 帰投したムウから通信が入った。

 しかし、マリューは決断できなかった。

 

 そこへ、フレイがラクスを連れ、再び入って来た。

 「この子を殺すわ!パパの船を撃ったら、この子を殺すって!あいつらに言って!」

 フレイが絶叫した。

 「フレイ!」

 後から追ってきたサイとルキナはその言葉に驚いた。

 「そう言ってー!」

 金切り声で叫ぶ声。目には涙で溢れ無重力空間を漂った。

 が…、

 ヴェサリウスの主砲が放たれ、モントゴメリの艦を貫いた。

 そして、モントゴメリは爆発した。

 

 

 「いやぁぁぁぁぁ!」

 その様子を見たフレイは悲鳴が響き、体は力失ってただ漂うばかりだった。

 それをサイが抱き留めた。

 ラクスもルキナも何も言えず、その様子を沈痛な面持ちで見ているしかなかった。

 

 モントゴメリが爆発した光景はMSからも確認できた。

 急いで周囲を確認するため、モニターを拡大したが、救命ポッドは見当たらなかった。

 何もできなかった。

 ヒロは打ちひしがれた。

 結局、自分たちは助けることができなかった。

 だが、その間も事態は動いていた。

 3隻を撃ち落としたジンたちが、アークエンジェルへと向かって行く。

 「くっ!」

 このままでは、アークエンジェルも…。

 その時、

 (ザフト軍に告ぐ!こちらは地球連合所属艦アークエンジェル!)

 ナタルの声が通信より全周派放送が聞こえた。

 一体どうしたのか?

 そう思っていると、次のナタルの言葉から思いがけない言葉が流れた。

 (当艦は現在、プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの令嬢、ラクス・クラインを保護している。偶発的に救命ボートを発見し、人道的立場から保護したのであるが、以降、当艦へ攻撃が加えられた場合、それは貴艦のラクス・クライン嬢に対する責任放棄と判断し、当方は自由意志で、この件を処理するつもりであることをお伝えする!)

 その通達にザフトの兵士たちは驚いた。

 また、ヒロやキラも呆然とした。

 「これは…どういうこと、フォルテ!?」

 (いや…俺に聞かれても…。)

 

 「格好の悪いことだな。」

 ラウはせせら笑った。

 (隊長…。)

 アデスからどうするか通信が入った。

 しかし、もう答えは決まっている。

 自分たちはラクス・クラインの捜索に来たのだ。

 ここで艦を攻撃など、さすがにできない。

 「ああ、わかっている、全軍攻撃中止だ。」

 

 

 アークエンジェルはとりあえずの危機は脱した。

 救助した民間人を人質にするという手を使って。

 

 




サントス技師のMS語りはもうちょっと長くなる予定でした。…あと1000字ぐらい(笑)
そんな冗談はさておき(半分は本当です)、前々回よりフレイ・アルスターが登場しました。
いろいろと話題のある彼女…、今後どうなっていくか?どう絡むか…。

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