機動戦士ガンダムSEED Gladius   作:プワプー

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どんどんと話を進めたいのに、なかなか進まん(泣)
自分の文章力のなさに涙っす…。


PHASE‐9 悲劇の地

 

 宇宙空間に浮かぶ砂時計型のコロニー群、プラント。

 その首都であるアププリウス市のあるプラント最高評議会本部。

 その議場で12人の最高評議会議員たちが湾曲したテーブルについていた。

 彼らに向き合う形で、ラウ、アスラン、そしてオデルは座っている。

 今、この場でヘリオポリス崩壊の臨時査問会が行われている。

 

 「…以上の経過から、ご理解いただけると思いますが、我々の行動は決してヘリオポリス事態を攻撃したのではなく、あの崩壊の最大原因は、むしろ地球軍にあったものとご報告いたします。」

 ラウは報告を終え、席に着いた。

 「やはりオーブは地球軍に与していたのだ!」

 「しかし、アスハ代表は…。」

 「地球に住む者の言葉などあてになるか!」

 議員たちが口々に己の主張を論じ始めようとした。

 「しかし、クルーゼ隊長。」

 それを重々しい声で圧した者がいた。

 国防委員会委員長パトリック・ザラである。

 「その地球軍のMS、はたしてそこまでの犠牲を払ってでも、手に入れる価値のあったものなのかね?」

 「その驚異的な性能について、実際にその1機に乗り、取り逃がした最後の機体と交戦経験のあるアスラン・ザラと、現在ザフトの技術のMSで交戦したオデル・エーアストより報告させていただきます。」

 アスランが立ち上がり、機体の説明を始めた。

 アスランが奪取した機体の性能の報告を聞きながら、なるほど…、とオデルは納得した。

 おそらく、いやほぼザラ委員長とクルーゼは示し合わせている。

 これを機に、強硬派の力を増そうと、奪取した機体を材料にしている。

 アスランが最後の機体に乗っているのがコーディネイターであることを言わないのもそうであろう。

 とはいえ、アスランが自分の親友が地球軍にいるなんてつらいことを報告できるわけがない。

 キラ・ヤマト…。ヒロ・グライナー。

 その名前が頭から離れられない。

 そうこう思案しているうち、アスランが報告を終えた。

 自分の報告の番になった。

 「君が戦闘に加わっても、落とせなかった機体。実際交戦してどうであった。」

 「はい、さきほどアスラン・ザラの説明の通り、これらの機体にはPS装甲が備えられており、現在配備されているMSでは…。」

 説明しながら、あたりを見回すとこの筋書きに気付いている者たちがいる。

 クライン議長はそうであろう。

 オデルの視線が議場の傍聴席にいる2人の男にいった。

 片方の40近くの男性はサントス・エリオット。

 最初のMS開発に関わった技師であり、今もMSの設計・製造に関わっている人物である。おそらく、地球軍の新型兵器を報告書ではなく、直に戦った自分たちの話を聞きたくて来たのだろう。

 もう1人の若い男の名はイェン・ハン。

 シャンルーの兄にして、オデルとは同期で、赤服でパイロットである。

 本来なら、彼も1部隊を率いているか、エースパイロットとして前線にいるのだが、彼は本職のプラント本国での議会職員の仕事の多忙ため、現在ザフトの司法局に配属になっている。

 彼もこの筋書きを勘づいているようだ。

 イェンから、わかっていてその筋書きに乗るのか、という顔を向けてきた。

 とはいえ、仕方がない。

 自分とて嫌である。

 本来、これはMS開発の転換になるのに、政治材料に使われるのは、嫌であるが、事実であるため、報告するしかない。

 そう思いながら、オデルは報告を続けた。

 

 

 あちらこちらに戦闘によって損傷した戦艦やMA、MSそして宇宙船などが散乱していた。

 今、アークエンジェルはデブリ(ベルト)にいる。

 補給のためである。

 デブリ(ベルト)は、人類が宇宙に進出して以来、廃棄された人工衛星やさまざまな廃棄物が宇宙空間に捨てられてきた。そしてそれらは地球の重力にひかれ、地球の周りを漂い形成された地帯である。

 そのような場所であるが、だからこそ補給できそうなモノがありそうと判断した。

 ちなみに、思いついたのはムウである。

 みんな、あまり乗り気ではなかったが、他の手立てはなかった。

 ヒロとフォルテも作業に駆り出されることになった。

 『ヒロ、あれを見ろ!これは、かなり珍しい宇宙船だぞ!』

 「…ジーニアス、僕たちそのために来たんじゃないんだけど…。」

 ヒロはガックシした。

 なぜかジーニアスも来たいと言い出し、連れてきたが…、どうやらデブリ(ベルト)にある、昔の宇宙船とかに興味があったようだ。

 (しかし、意外だな。結構、抵抗あると思っていたが、意外になかったな。)

 フォルテから通信が入った。

 「僕だって、こうやって墓荒らしみたいなことしたくないよ。でも、生きていくっていうのは、とても大変っていうのは、知っているつもりだよ。」

 自分が過ごしてきた村はそうであった。

 そこで生活するための過酷さである。

 便利から離れた中での生活は大変なものであった。

 自分たちで食糧を手にしなければならない時もあった。

 それが、どういうことか、ヒロはそれを初めて知った時のことは忘れられなかった。

 「…だからか。」

 フォルテは独り言ち、納得した。

 ヒロの戦い方の、その行動の根を垣間見た気がした。

 

 ミストラル、MSたちはさらに奥へと進んでいくと、他の周りにある残骸とはまた違う異質な光景が広がっていた。

 それはアークエンジェルからも確認できた。

 マリューも驚愕し、シートより立ち上がった。

 「あ…。」

 「これって…。」

 それを目にした誰もが息を飲み、声を上げた。

 「そんな…。」

 その大地にヒロは見覚えがあった。

 正確にはこれと同じ形をしたコロニーを。

 底面が人の住む場所となっており、その中心から上に伸びる中央シャフト。それが反対側も同じ形になっていて遠くから見れば、それは砂時計のような形をしている。

 しかし、これはすでに中央シャフトは無残に折れ、底面のみしかなかった。

 その大地に降りた皆、その光景に言葉が出なかった。

 

 約1年前の2月14日、地球軍のMA母艦「ルーズベルト」に極秘に持ち込まれた核ミサイルを搭載し発艦したメビウスがプラントのコロニーに放った。

 その名は、「ユニウスセブン」。

 このプラントでは、これまで生産を厳禁されていた食料生産を行うため改装された重要なプラントの1基であった。

 この攻撃により、コロニーは瞬く間に崩壊、24万3721名もの人の命が失われた。

 この事件を直接契機に、地球連合軍とザフトの地球圏全土を巻き込む戦争へと発展していった。

 

 

 

 「あそこの水を!本気なんですか!?」

 一帯を見回った後、一度アークエンジェルに戻ったが、ブリッジでマリューから言われた言葉に驚愕した。そして、キラはおもわず声を上げた。

 「あそこには1億t近い水が凍りついているんだ。」

 ナタルは理由を言わず事実のみ説明した。

 「そんな…。」

 「何で、あそこから何ですか!?」

 「でも、あそこじゃくてもいいじゃないですか!あそこは…。」

 キラに続いてヒロも抗議した。

 彼らだけでなく、他の周りも抵抗を感じていた。

 「ヒロ…、これは艦長たちが決めたことだ。」

 事情を知っているのか、フォルテが説得しようとした。

 「フォルテ…。でも、あそこで人が亡くなったんだよ!…ただ、そこに住んでいただけなのに!…日常があったのに。…今日をどう過ごそうとか、明日の予定とか…。」

 ヒロの声のトーンがどんどんさがっていき、彼は俯いた。

 フォルテはしばしの間黙っていた。

 あの時、ザフトにいたフォルテにも、あの事件の事も、ここが特別の意味もわかっている。

 が…。

 次のマリューの言葉がすべてを決定した。

 「水は、あれしか見つかってないの。」

 ヒロは目を見開いた。

 そして、ムウが口を開いた。

 「誰も大喜びしてるわけじゃない。あそこには踏み込みたくないさ。けど、しょうがねえだろ。俺たちは生きてるんだってことは、生きなきゃなんねえってことなんだよ!」

 「…そんなこと、わかっている。でも…。」

 ムウの言葉には、ヒロもわかっている。

しかし、頭で理解するのと、心で納得するのは別であった。

 その言葉にできないもどかしさにヒロはそのまま、ブリッジから出て行ってしまった。

 「ヒロ!」

 彼を呼び止めようとしたが、フォルテが遮った。

 「ヒロもわかっている。作業もやるさ。ただ…場所、というか、その場所がどういうところっか、というか…。」

 さっきほどのデブリ帯での会話からすれば、作業はするだろう。

 フォルテは彼らになんと言えばいいか、言葉が見つからなかった。

 それを話すと、ヒロの個人的なことを話すことになる。

 『…あいつも、そうだからだ。突然、故郷を、家族を、日常を失った。』

 そこへビーブ音を立ててジーニアスが無重力空間を漂いながら、割り込んだ。

 「…ジーニアス、いつの間に?」

 『いたさ、ずっと。ヒロが投げ出しちまって…。それに私が説明する分にはいいだろう!』

 不満を漏らした。

 

 

 

 

 

 査問会が終了し、オデルが評議会本部から出たとき、イェンに呼び止められた。

 「オデル。」

 「イェン…。」

 「…少し、歩きながらでもいいか?」

 「大丈夫だが…、いいのか?」

 「この査問会は俺の担当ではない。無理言って傍聴させてもらったのさ。」

 「…そうか。」

 「これは…ただの立ち話だ。だから、それを言ったからといって何か先の査問会に影響することはない。」

 イェンが念を押すように言った。

 「あの奪取し損ねた機体そしてもう1機…、あれに乗っているのはコーディネイターだな?」

 その問いにオデルは黙った。

 「…査問会に提出された映像、あれの編集されてないのも見た。」

 一体どこから入手したのか…。

 と思いつつ、オデルは彼の仮説を聞いた。

 「起動した直後、動きがおかしかった機体が突然、動きがよくなった。それがナチュラルにできるか?そして、他の機体も然り。戦闘に出すまで、搭載されたOSを調整した跡があった。…どうだ?」

 さすがは…だな、とオデルは思った。

 「沈黙が答え…ではダメか?」

 「…これは政治上のことで聞いたことだ。それを答えとして受けとっておく。」

 「『戦わねば守れぬのならば、戦うしかない』か…。」

 オデルが議場にてパトリックが放った言葉を口にした。

 たしかに、そうだ…。

 というより、戦争を行う者が人々を納得させるため、だいたい口にする言葉だ。

 だが、

 「昔、そう言えば国民を戦争に参加させることができるって言ったの…なかったか?」

 「…確かにいたな。」

 「かと言って、彼の言葉を批判するのもな…。俺たちだって、そうだろ?」

 彼の言葉には一理ある。

 現に自分たちもザフトに身を置いている。

 が、そう言って、戦うのは彼ら政治家たちではない。兵士たちが行くのだ。

 その言葉を信じ、自分の国のために、愛する人のために、と。

 開戦から1年近くたち、穏健派と強硬派の対立が増し始めている。

 イェンはこのように政治に身を置くことになった時、亡き自分の親がザフトの前身「黄道同盟」の結成のメンバーであったこともあり、シーゲル・クライン、パトリック・ザラに師事してきた。

 周りからは穏健派と捉えられているが、彼自身ゆえに、2人の対立には考えるものがあるようだ。

 

 しばらく沈黙がながれ、イェンが口を静かに開いた。

 「…シャンは、どうだ?ヘリオポリスの時、いろいろあったと聞いた…。」

 イェンはシャンの事をオデルに尋ねた。

 やはり、兄として、たった1人の弟のことが気になるのであろう。

 「…大丈夫だ。ただ、ちょっと…同期の死を知らされてな…。今は一応無断出撃…といことで休日返上で機体整備をさせている。」

 「そうか。」

 イェンは少しほっとしたような顔をした。

 

 

 

 

 イェンと別れ、オデルは一人街を歩いていた。

 先程の議場でのやり取り、そして、イェンの話。

 自分にとって穏健派も強硬派も、どちらの言い分はわかる。

 が…、戦場とは、彼らが思うものではない。

 地球すべてを巻き込む戦争は今までなかったが、世界のどこかで必ず紛争はあった。

 そこにいたことのあるオデルはその時の記憶がいまだに想起した。

 今のようにMSで戦う前のことを…。

 ふと、街中に音楽が流れ始めた。

 そして、映像にピンク色の髪の少女が映し出された。ラクス・クライン。彼女はこのプラントの歌姫として絶大な人気がある。今回、ユニウスセブン1周年式典に流れる曲も歌うことにもなったっている。

 しばらく立ち止まり聞き入っていた。

 ふと人の気配がした。

 横にエレンがいた。

 「…いい歌ね。」

 彼女は静かに言った。

 「…ああ。」

 オデルは思った。

 もし、エレンに出会わなかったら、今頃自分はどうしていただろうか…。

 戦場の中にいることは間違いないだろう。

 だが、こうして音楽を聞き入るような、ことをするような人間にはなっていなかったはずだ。

 かつて…そうであった。

 荒みきった心。あの時はどんな美味きれいな言葉も受け付けないと思っていた。

しかし、あの時、心に不思議と響いた音楽があった。

 2人はしばらく曲を聞いていた。

 

 

 

 ユニウスセブンを望む場所よりミリアリアは両手いっぱいに花を投げた。

 艦に花はないので、みんなで折り紙の花を作った。

 花々が舞っていく。

 そして、その後ろで、ブリッジでみな黙禱した。

 気休めにしかならないかもしれない。しかし、せめてそれだけでもしたいという思いが強かった。

 

 

 作業が始まった。

 (あと、どのくらい?)

 マリューから通信が入る。

 「水はあと4時間ぐらいですね。弾薬の方は…あと1往復ですね。」

 ギースが答える。

 「ギース、弾薬はそっちに運ばせた方がいい?」

 「ええ。お願いします、ルキナさん。」

 ルキナとギースは積み込みされた物資の整理を行っている。

 作業中、ルキナはミストラルで運ばれてくる氷の塊に目を向けた。

 ユニウスセブンでの核攻撃により、プラントのコーディネイターの、ナチュラルへの憎しみの感情を大きくした。一方、ナチュラルもプラントからの物資の輸出が停止し、窮乏さらに、Nジャマーによって、さらに危機に瀕し、プラント、コーディネイターへの感情を最悪になった。

 お互いがお互い敵として銃を下ろさない状況、それはどこまで続くのか?

 人は簡単に敵か、味方かと簡単に二分したがる。

 そう…中間を存在させたがらない。

 どっちかしかないのだろうか?

 ルキナは今まで、ずっとし続けてきた答えの見えない自問を繰り返した。

 

 

 MSたちは付近の哨戒を行いながら、ミストラルの作業を守っていた。

 ヒロは、クリーガーのコクピットのモニターからユニウスセブンに目を向けた。

 ここにいた人たちのように、この戦争で住んでいた場所や命が失われる。

 守りたい。

 多くの人はその思いをもって戦っているはずなのに…。

 なぜ…。

 そう思っていると警告音がなった。

 あわててそれを確認した。

 そこにはMSがいた。

 ZGMF‐LRP704Bジン長距離強行偵察複座型である。

 何かを探しているようだ。

 ライフルを構える。

 ストライクもあのMSに気付いたのか、ライフルを構えていた。

 どうする…。

 ヒロは迷った。

 このまま行ってくれるならいいのだが、ことはそう簡単にはいかないものであった。

 一旦はここから離脱する姿勢をみせたジンではあったが、偶然、近くで作業していたミストラルを見つけてしまったようだ。

 ジンがミストラルに向け銃を撃っている。銃弾がミストラルをかすめていった。

 このままでは、危険だ。増援を呼ぶ可能性だってある。撃たなければ!

 トリガーを引こうとしたが、ハッと気付いた。

 そうだ…増援を呼ぶ。その可能性はある。それはあのジンを帰らせてはいけないということである。

 そして、あれを撃つということはコクピットにいる人を殺すということだ。

 トリガーを引かなければいけないのに、引けなかった。

 結局、ストライクがライフルを放ち、ジンは爆発した。

 直後、通信が流れた。

 (何があった!)

 ヒロはナタルの通信に答えることができなかった。

 手が震えている。

 引けなかった。

 そうだ…。この傭兵という仕事をするということは、人を殺す、それをすることもあるのだ。わかっていたが、今、直面して、それがはっきりとした。

 自分にその覚悟がなかったのか…。

 そして…。

 自分がしなかった代わりに、キラに撃たせてしまった。

 彼だって、人を殺したくないはずなのに…。

 悔恨の念でいっぱいになった。

 

 その様子をフォルテは見ていた。

 ライフルを構えていても撃たなかった様子を。

 「う~ん、とうとう知っちゃった…、てことかな?」

 

 

 再びクリーガーのコクピットに警告音が鳴った。

 何かと思い、モニターであたりを探した

 ふとストライクが何かに近づいているのが見えた。

 それは、救命ポッドであった。

 

 

 




そろそろ登場人物を上げます。
宇宙(1)編が終わるまでには…。

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