機動戦士ガンダムSEED Gladius   作:プワプー

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ようやく、オリジナルのガンダムのお披露目です。


PHASE‐3 幻のXナンバー

 

 

 先程まで沈黙していたMSがいきなり動き出たのを見て、ザフトのパイロットは驚き狼狽した。

 「このMS…動いた!?何で…。」

 「何をしている。はやく、こいつを捕獲するんだ!」

 もう1人のパイロットが叱咤しジンの突撃銃をいま立ち上がったMSに放った。

 MSはそれを避け、飛び上がって、地上によろめきながら着地した。

 動きがぎごちなかった。

 

 「ちょっと、ちゃんと動かしなさいよ!」

 コクピットではルキナはシートにしがみつきながらヒロに言った。

 「わかってるよ。…けど、このMS、なにか…鈍い。」

 ヒロは必死にレバーやスロットルを動かしていた。

 牽制のため、頭部のバルカン砲を撃っても全然当たらない。

 「ジーニアス、何かわかった?」

 繋いでいたジーニアスにこのおかしい原因を聞こうとした。

 『機体とOSの調整がまだ不備なんだ。』

 「…だから、こんなに動きがおかしいのか。」

 再び銃を撃ってきた。

 避けきれない。

 『レーダーセンサーの左上のボタンを押すんだ。』

 「これか!」

 ジーニアスに指摘され、ヒロはボタンを押した。

 そのボタンを押してとたん、MSの色がメタリックグレーから黒と白そして赤に変わった。

 装甲は無傷だった。

 『フェイズシフト装甲だ。これで実弾は効かない。』

 けど、モニターを見るとバッテリーが急激に減っていった。このままでは…。

 「ジーニアス…。このOS、書き換えることできる?」

 ヒロはジーニアスに聞いた。

 『そんなこと、なぜ私がやらなければ、ならないのだ!』

 「このままじゃ、ジーニアスもスクラップになるよ!それでもいいなら、いいけど…」

 『ムムム。えーい、仕方ない。一度だけだぞ、一度だけ!私がこのOSを書き換える。だから、何とか追い払え。私とてスクラップになりたくない!』

 そう言い、ジーニアスは書き換えを始めた。

 モニターでは次々と画面が変わっていく。

 

 その時、再び1機のジンが剣を振りかざしてきた。

 ヒロはそちらに意識を戻し、避けるためペダルを踏み、レバーを引いた。

 MSはすぐに反応し、避けて行った。

 先ほどより動きがよくなっていった。

 これなら…。

 先程試したバルカン砲を放った。

 さきほどと打って変わって、しっかり当たった。

 ジンはそれを避けるため、後ろに下がっていった。

 よし、これなら…。

 「他に武器は?」

 『腰部…ビームサーベルだ。』

 モニターに移される機体に腰部にマウントされているモノを表示した。

 MSは腰にマウントされている2本の棒を手にした。

 そこからピンク色のビームがサーベルの形状をしてでてきた。

 ヒロはMSのバーニアを吹かした。

 先ほどとはちがうなめらかな動き、そして…ジンとは違う、スラスターの出力だった。

 そのまま2機のジンに斬りかかった。

 1機目のジンは反応できず、肩を斬られた。

 ジンは応戦しようと剣を構えたが、それをも斬っていった。

 とっさに反転し、もう1機のジンへ向けた。

 そして、そのまま、もう1本のサーベルでジンの首部分を突いた。

 「くっ、脱出するぞ。」

 機体が損傷し、動かないMSより2人は脱出していった。

 2機の爆発から避けるため、そのMSも後方へ避けた。

 「…ふぅ、助かった。」

 ヒロはホッとした。

 「この人…。」

 ルキナは驚いていた。

 これだけの動かせるということは…。

 そして…彼は一体何者か。

 大西洋連邦の人間には見えない。

 では、自分たちと同じか…と思ったが違う。

 するとヒロはルキナの方へ向いた。

 「とりあえず、退けたけど…。この状況じゃシェルター…空いてないよね…。」

 工場区は爆発とかの影響で跡はひどかった。

 襲撃前まであったMSもなかった。

 モニターを拡大させながら、どこか安全な場所を探した。

 すると、工場区の外、公園らしいところにG兵器の1機が佇んでいた。

 コンテナトレーラーもあった。

 1機だけ無事だったのか。

 とにかく、後ろにいるルキナの事もある。

 ヒロは、そちらの方へ向かった。

 

 

 

 周辺宙域では、地球軍は押されていた。

 というより、一方的であった。

 先ほどMAが出てきた輸送艦もコロニーの外壁に衝突し、大破した。

 「ちっ、このままじゃぁ。」

 フォルテは毒づいた。

 さすがに無理があるか…。

 残るは自分とメビウス・ゼロのみである。

 その間にも、青いシグーが突撃銃を撃ってくる。

 フォルテはジンのバーニアを思いっきり吹かせた。

 「あの青いシグー…そうだよな。」

 フォルテはシグーと対峙した時、嫌な予感はした。

 ジンとシグーの剣がバウンドしたとき、通信が入った。

 やはり…。

 「…久しぶりで、オデル。」

 (の割に、あまり再会を嬉しそうにしてないぞ、フォルテ?)

 シグーのシールドから撃たれるバルカン砲を回転しながら避けた。

 「俺も再会を喜びたいんだがね…。こんな状況じゃムリだ。」

 (ふっ、それもそうだ。)

 「再会の喜びついでに、このまま退いてくれないかな?こっちは任務でね…。失敗すると、後でこっわ~い美人に怒られるんだが…。」

 (残念だが…、それは無理な願いだな。)

 シグーを相手にしている間に、ヘリオポリスからMSが3機出てきた。見たところ、G兵器であった。

 だが、こちらに加勢するわけでもなく、ザフト艦の方に向かって行ってしまった。

 奪われたか…。

 まずい、とフォルテは思い、せめて奪われるなら、と3機に近づこうとしたが、シグーに阻まれた。

 「…さっきから俺を引き離さないのも狙ってやってるってか?」

 「おまえの実力はよく知ってるからな。別に倒せるとまでは思わないさ。」

 ふたたびシグーの突撃銃が襲った。

 

 

 

 一方、ヴェサリウスのブリッチでは驚くべき報告が上がった。

 「オロール機、被弾。緊急帰投。」

 「オロールが被弾だと。こんな戦闘で。」

 この部隊はザフトの中でもエリート部隊だ。

 こんな相手にやられるとは…。

 アデスをはじめ、他のクルーは意外だという声が上がった。

 …一人を除いて。

 「どうやら、ひささかうるさいハエがいるようだな…。」

 「は?」

 アデスはラウの言葉の意味がわからず、聞き返した。

 その前にふたたび通信兵から報告が上がった。

「ミゲル・アイマンよりレーザービーコン受信です。エマージェンシーです。また、同じく他の2名もです。その者たちより6機目のMSを確認したとの報告もあります。」

 「なんだと!」

 艦長のアデスはさらに驚いた。ミゲルが機体を失うことはもちろん、本来あるとされたのは全部で5機のはずではなかったのか。

 「ほう…。ミゲルが機体を失うほどの動きをした最後の1機。そして、6機目の機体。そのままにはしておけないな。」

 そう言い、ラウはブリッジを後にした。

 

 

 突然、ヴェサリウスより退却の信号弾が打ち出された。

 他のジンがヴェサリウスに戻っていく。

 「引き上げる!?だが…まだ何か…。これは。」

 ムウは感じた方へ向かった。

 「私がお前を感じるように、お前も私を感じるのか…。不幸な宿縁だな…、ムウ・ラ・フラガ。」

 

 

 「退却!?」

 フォルテは驚いた。

 それはオデルもだった。

 その時、ヘリオポリスの近くで戦闘の光が見えた。

 メビウス・ゼロと交戦した後、中へと入っていった。

 「あれは…クルーゼ。」

 1人で行くつもりか。オデルはシャン達にゼーベックへの帰還命令を出し、彼もまたヘリオポリスへ向かった。

 「ヘリオポリスの中に…。させるか。…と、忘れ物。」

 ファルテも彼らを追い、港まで入った。

 そして、あることに気付き、港に置いていたもう1つのコンテナを持ち、バーニアを吹かせ、向かった。

 

 

 

 「持ってきました。で、この後、僕たちはどうすればいいのです。」

 コンテナが積まれたトレーラーを運転してきたサイは、地球軍の士官、マリュー・ラミアスに尋ねた。

 「ありがとう。ストライカーパックを…。そしたら、キラ君、もう一度通信を…お願い。」

 マリューは、銃弾の傷を受けた右肩を抑えながら、キラにお願いした。

 「はい。」

 キラは“ストライク”の方に向かった。

 「なるほど…。これは予備電源になってるのか。これをストライク本体につなげればいいのですね。」

 コンテナでコンピュータを動かしていたギースはマリューに言った。

 「そうよ。お願い。」

 マリューはこのような状況になったことを思い返した。

 あの子のおかげで、1機奪取されずにすんだ。

 とはいえ、機密に触れてしまった者たちを解放することもできない。

 それに、今は友軍と連絡を取ることが先だ。

 いまは、この学生たちと一企業の社員‐民間人に手伝ってもらうしかない。

 

 

 そこに遠くからガチャンと動く音が聞こえた。

 「何だ?まだ、ザフトがいたのか?」

 みんな不安がった。

 現れたのは、ストライクや先ほど奪われたMSと似たような形状のMSだった。

 それを見て一番驚いたのは、マリューだった。

 「あれは…、X106“クリーガー”!でも、なぜ…?」

 あの機体は別の場所に置いていたので、奪われなかったんだろう。けど…誰が?

 「マリューさん?無事だったんですね。」

 クリーガーのコクピットが開いた。

 「ヒロ君!…そう、あなたが…。」

 ヒロは周りを見回し、みんながいたことに驚いた。

 どうしてここにいるか知らないが、とりあえず無事を確認し、ホッとした。

 向こうも、自分がこの機体に乗っていること、そしてマリューと知り合いだということに驚いている顔をしていた。

 後で、話した方がいいかな。

 そう思いつつ、ヒロはコクピットの中に目を向けた。

 「君と一緒にいた人…ギースさんもいるようだね。降りられる?」

 ヒロは手を差し伸べ、コクピットにいたルキナに言った。

 すると、彼女は手を払いのけ、コクピットの外に出た。。

 「さっきはありがとう。けど、大丈夫よ。自分で、降りられるわ。」

 と、サッサとケーブルから降りて行ってしまった。

 そして、ギースの下へ向かって行った。

 「……あれ?」

 思わぬ反応に1人取り残されたヒロはただ茫然としているだけだった。

 

 

 

 「つまり、ヒロ君はX106が置かれている部屋に赴いてしまい、キラ君が行ってしまったのを追いかけたルキナさんもそちらに辿り着いてしまい、そこで、ジンが来たために乗ったのね。」

 「はい、そうです。…すみません、他の機体…奪われてしまって。」

 マリューはヒロからクリーガーに乗っていた経緯を聞いていた。

 「でも、これを守ってくれただけでも、大きいわ。とにかく、今は彼らに手伝ってもらって友軍とのコンタクトをとっているんだけど…。」

 この状況では、なかなか出来ていなかった。

 彼らはストライクのバックパックを取り付け作業を見守っていた。

 「けど、ヒロって、傭兵だったんだ…。そう見えないな。」

 ヒロから自分が傭兵であることを聞いたトールは改めて驚いた。そして彼の言葉に、近くにいた他のヘリオポリスの学生たちみんな、頷いた。

 「そんな…。」

 思わずガックシした。

 『まあ、まだまだ駆け出しの見習いだ!』

 ジーニアスもちゃかした。

 

 「…マリューさん、僕もクリーガーから通信を試してみましょうか?」

 彼らの言葉から気を取り直してヒロはマリューに尋ねた。

 「そうね…。ヒロ君にはクリーガーが置いていた場所に、武装や部品を取りに行ってもらえるかしら。通信はストライクだけでできそうだし。」

 「わかりました。」

 ヒロはふたたびクリーガーに乗るために、昇降ケーブルに足をかけた。

 その時、

 なにか、ぞわりとする感覚に襲われた。

 何だ、今の?

 2つの気配をそれぞれ認識した。

 そんな感じがした。

 ヒロは上のメインシャフトの方に目を向けた。

 

 「ぬ…。」

 「なに?」

 シャフトの中でお互い戦闘をしていたラウとムウは奇妙な感覚に襲われた。

 この感じ…。

 いつもお互いがその場に居合わせた際に襲う感覚だが…。

 「…まさかな。何かあるのか…。」

 ラウはムウのメビウス・ゼロのガンバレルを撃ちぬき突破し、中へ向かった。

 「あいつ…、くそ。」

 ムウも毒つきながら、追いかけた。

 

 「シャフトを!…クルーゼ!」

 オデルは追いかけながら、なんとかクルーゼを通信を取ろうとしていた。

 この作戦の前に話したこと…。おかまいなしか。

 その時、

 後ろより大きなコンテナが迫ってきていた。

 それをよけ、踏み台にした。

 追って来るジンが再びコンテナを持った。

 「無茶苦茶なことをする。」

 「なに…、あるものは何でも使うのさ…。」

 無理やり投げたのがいけなかったか。さすがにアームの部分の警告音が鳴っている。

 「とにかく…、今は邪魔するな。おまえだってコロニーを傷つけたくないだろ!」

 こちらもどんどんとヘリオポリスの中へと入っていった。

 

 

 「どうしたの?ヒロ君。」

 マリューは、ケーブルに足をかけたままでずっと止まって上を向いているヒロを不思議に思い聞いた。

 「…何か、迫ってきています。はやく、この場から…!」

 その時、メインシャフトから大きな爆発がした。

 そして、そこから、シグーとメビウス・ゼロが現れた。

 「…まずい。」

 先ほどの感じ、あの機体からだ。

 「ほう…。あれがか。そして、向こうが謎のもう1機か…。」

 「最後の1機。何!?もう1機あったのか!?」

 ムウは驚いていた。

 ここに送り届けたパイロットは5人だったからである。

 シグーがメビウス・ゼロを払いのけ、こちらに向かってきた。

 「どちらにせよ、今のうちに沈んでもらう。」

 ここに近づかせてはいけない。

 シグーを牽制するため、ヒロは再び、クリーガーを操作した。

 「さっきのバルカン砲じゃ、届かない…。これか!」

 モニターに表示された武器を選択した。

 右腕からガトリングガンが出てきて、撃った。

 シグーは一度、引き下がった。

 「…どうやら、あちらの方を落とすのが、先か。」

 再び迫ってきた。

 応戦しようと今度はビームサーベルを出し、構えた。

 その時、

 ピー

 警告音が鳴り、クリーガーの装甲がメタリックグレーに戻った。

 「フェイズシフトダウン。まずいわ。ヒロ君、下がって。」

 マリューがはっと気づいて、大声で彼を呼んだ。

 「エネルギー切れ。…しまった。」

 ヒロは計器がエネルギー切れを示していることに戸惑った。

 そんなに動かしてないのに、もう…。

 シグーが迫って来る。

 その時、

 「やめろー!」

 キラがランチャーストライカーの大型ビーム砲をシグーに向け、発射した。

 

 メインシフトからは遅れてフォルテのジンと、オデルのシグーが出てきた。

 「あれが…。」

 オデルはモニタより2機のMSを確認した。

 「もう1機…いたのかよ!?」

 フォルテは驚いていた。

 話には5機と聞いていたからである。

 ピピピ!

 突如、機体から警告音が聞こえた。

 瞬間、高エネルギーのビームが彼らの方に来た。

 「く!」

 「うぇ!」

 2人は驚き、なんとか避けた。

 エネルギー砲は、そのまま、コロニーに穴を空けた。

 

 「こ、こんな…。」

 キラは青ざめた。

 「コロニーに穴が…。」

 ヒロも驚いていた。

 キラが自分を助けてくれるためとはいえ、このようになってしまって…。

 

 さらに、鉱山より轟音と共に爆発がした。

 「今度は何だ!」

 フォルテの近くで起きた音に目を向けた。

 その立ち込めて煙から白亜の戦艦が現れた。

 「あれは…アークエンジェル!」

 マリューは叫んだ。

 「まずいって!」

 この位置だと、戦艦にぶつかってしまう。

 フォルテはスラスターを全開にし、勢いよく上へ避けた。

 

 

 「くっ…。戦艦の方も落とせなかったのか…。」

 ラウは毒づいた。

 その時、通信が開いた。

 (クルーゼ。ここは引き上げるぞ。お前の機体も損傷している。)

 先ほどのストライクからの攻撃でシグーの右腕を損傷していた。

 「…そうだな。帰投しよう。行くぞ、エーアスト。」

 2機のシグーは先ほど空いた穴より去っていった。

 帰投中、ラウは先ほど応戦したMSの方をモニターで拡大した。

 コクピットが開かれている。

 先ほど、感じたのは、あそこからだった。

 そこから少年が出てきている。

 確か…、ヒロと言っていたが…。

 「まさかな…。年齢が違う。」

 ラウは独り言ちた。

 

 




オリジナル機体の説明は、カスタム機たちと含めて後日投稿します。

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