機動戦士ガンダムSEED Gladius   作:プワプー

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PHASE‐2 太陽の都(ヘリオポリス)Ⅱ‐ガンダム、起動

 

 

 モルゲンレーテ社の建物、入り口。

 そこには、ここの社員ではない見慣れぬ2人の人物が立っていた。

 「さて…。入ったはいいものの…、一体どこにあるんでしょうかね?例のモノは。小…いえ、ルキナさん。」

 そのうちの一人の男が自分より年下の女の子に聞いた。

 「そう簡単にあります、ってものじゃないでしょ?それに外ではザフトもいるっぽい話よ。おそらくあれを狙っているのかも。早いとこ、探しましょ、ギース。」

 「とは言っても、連中、結構ガード高そうですよ。自分たちがここに入った時に追尾されますからね。一応、面会のアポとった教授を探し…ても、広すぎませんか?」

 一応、怪しまれずに入るため、事前の準備はしてきているが、なかなかの難所であった。

 建物の入り口で案内図を見たが、果たしてうまく入り込めるか。

 それが問題であった。

 

 

 

 

 

 「おーい、ヒロ。来てたのか。」

 ヒロが振り返ると、ちょうどエレカが止まっていて、3人の学生が降りていた。

 彼らは、モルゲンレーテの中にラボがあるカトウ教授のゼミ生たちである。

 よく、ここで顔を合わせ、同じ年代ということもあり、仲良くなった。

 もちろん、彼らには自分が傭兵であることも任務も話してない。

 モルゲンレーテに手伝いにきたジャンク屋ということにしている。

 「これからラボに行くの?」

 ヒロは3人の方へ向かった。

 「そう。それに…サイに手紙のこと聞かないといけないし…な、キラ?」

 「ト、トール!しつこいぞ。」

 なにかトールは意味ありげにキラに向けて話した。

 「手紙って?」

 ヒロは話がつかめず尋ねた。

 「な、何でもないよ、ヒロ。」

 キラは動揺しながらも話を切ろうとしていた。

 「いいじゃんか、ヒロに教えてやっても。あのな…。」

 「だから、トール!」

 ミリアリアが入り口近くにいる人影を見た。

 「あれ?あそこに誰か人がいるよ?」

 3人もそっちに顔を向けた。

 見かけない人たちだった。

 どうやら迷っているらしかった。

 向こうもこちらに気付いたのか、1人の女の子がこっちに来た。

 ちょうど、自分たちと同じぐらいの女の子である。

 髪の長さは、肩より少し長め。

 印象的だったのが、その瞳の深緑の色である。

 まるで、常緑樹の森を思わせるような…

 と、ヒロは思った。

 「すみません!私たち、カトウ教授にお会いしたいのですが、どちらに行けばよろしいのですか?」

 「えっと…。」

 「あっ、自己紹介遅れましたね。私たち、ヘファイストス社の者でして…。ルキナ・セルシウスと申します。こちらは、ギース・バットゥータです。このモルゲンレーテの技術力をぜひわが社も学びたいと思い、サイバネッティク工学の第一人者であるカトウ教授に会いに来たのですが…。ここが広くて…。」

 「え!ヘファイストス社。」

 さきに反応したのはミリアリアであった。

 「確か、ユーラシアにある企業ですよね。アクタイオン・インダストリーに並ぶ。」

 「詳しいんだね、ミリィ。」

 キラが感心していた。

 「だって、就職の事考えたら…ね。」

「ええー!モルゲンレーテじゃないの?」

「確かにモルゲンレーテが1番だけど…、いろいろ調べとかなきゃね。将来のために。」

 トールの驚きにミリアリアは答えた。

 「へ~、ヒロはジャンク屋だから聞いたことあるか?」

トールの質問にヒロは答えなくただぼうっとしていた。

「お~い、ヒロ。」

ふたたびトールの言葉にヒロは我に返った.

どうしたんだ?なんか上の空だったけど…。」

 「なっ、なんでもないよ。それよりも、カトウ教授に会うためなんでしょ。そしたら…。」

 「あっ、私たち、カトウ教授のラボにこれから行くので、案内しますよ?」

 ヒロに逆に指摘され、気付いたミリアリアはルキナに提案した。

 「けど…、この時間、教授ラボにいないと思うかも?どこか、この中にはいると思うけど…。」

 「じゃあ、僕が教授を探してくるよ。」

 ヒロはそう言い、カトウ教授を探しに行った。

 ヒロの手に抱えられていたジーニアスは、『…なるほど。』と意味ありげに思った。

 

 「それじゃあ、行きましょうか。彼が探しに行ってる間、待っていただければ。」

 ミリアリアはそう言い、2人を案内し始めた。

 「ありがとうございます。」

 

 ギースがボソっとルキナに声をかけた。

 「よく、あそこまで言葉が出ますね。」

 「うーん、ユリシーズのせい…かも。」

 

 

 

 ヴァサリルス、ガモフ、ゼーベックは、ヘリポリスに向け発進させた。

 そして、まずヴェサリウスよりカタパルトデッキが開かれ、ジン3機が発進していった。

 へリオポリスの管制官は慌ただしくなった。

 中立の立場であるこのコロニーには戦艦の入港を認めてない。

 何度も停船勧告を出しても返事は来なかった。そして、全通信がノイズだけになった。

Nジャマーがまかれたのである。

 それは、つまり向こうは戦闘行為を仕掛けてきた、ということになる。

 

 港に入港している貨物船でも緊迫していた。

 「敵は!?」

 20代後半の金髪の男が艦長に聞いた。

 「3隻だ。ナスカ級およびローラシア級2隻。1隻は他の2隻より後方にいる。あと、MSの発信も確認されている。」

 「ちっ、ルークとゲイルはメビウスにて待機。まだ出すなよ。」

 この船は偽装した地球軍の輸送艦である。

 彼は自分のMAに乗るために格納庫へ向かった。

 彼の名はムウ・ラ・フラガ。

 Gのパイロットたちをここに送り届ける任務のために来ていた。

 

 

 「おいおい、マジで来るのかよ。」

 同じころそんな管制室の様子を通信で傍受していた、フォルテは独り言ちた。

 周りは真っ暗で、計器類の光が頼りだった。

 このG計画自体極秘なため、護衛にあたっている自分たちの機体も悟られないため港のコンテナに隠しているからである。

 レーダより接近を伝えていた。

 もう通信は聞こえない。

 「3隻…、でさっき発進したMSは3機…?…やっぱりヒロに来てもらえばよかったか。」

 おそらく別働隊がいるだろう。その際、MSに乗っていた方がいい。

 裏目にでてしまった。

 ヒロに連絡しようにも、Nジャマーの影響でできない。

 とにもかくにも、自分はここで迎撃しなければいけなくなった。

 港には地球軍の船があるが…、それだけでは、あの3隻とやりあうのは無理があった。

 そうこう思っていると、爆音が聞こえてきた。

 来たか…。

 コンテナから突き破って、ジンが姿を現した。

 その背中にはウイングスラスターではなく、大きな2つの砲がついていた。

 港を通過して、コロニー中に入った数機のジンに遅れていた1機が立ち止まった。

 いきなりジンが現れたからである。

 が、止まったのが、運のつきだった。

 フォルテのジンの突撃銃の餌食になった。

 「数機…、中に入っちまったか。とにかく、外の方が先だ。」

 ジンの2つの大きな砲の下部にあるスラスターを全開にし、港の外へと向かった。

 

 「あれは…傭兵か?」

 輸送艦より発進し、すでに外で交戦中のメビウス・ゼロのパイロット、ムウ・ラ・フラガは自分たち援護をしているジンを見た。

 この状況下で、ありがたいが…果たして、この戦力差で切り抜けるか…。

 その思いは、フォルテも同じだった。

 

 

 「エーアスト隊長、クルーゼ隊のMSがすでに先行しています。予想通りヘリオポリスより数機MAが出てきました。また、傭兵と思われるMSも確認しました。お気を付けください。」

 オペレータのリーネから外の状況を伝える通信が来た

 「わかった。…他のパイロットも聞いているだろう。簡単な任務と思うと、痛い目見るぞ。…発進する。」

 青いシグーは真っ直ぐ、閃光が飛び散る中に向かって行った。

 

 さきほどの通信。

 やはり傭兵をつけていたか。

 地球軍にとっては重要な兵器だ。

 おそらく、それなりの腕を持っているだろう。

 オデルはそのMSを探し、見つけ出した。

 そのジンは傭兵ならではか、カスタムされていた。

 見たところ、見事な操縦をしていた。

 ほかのジンを翻弄している。

 (一体、どこの傭兵だ?)

 バーツの通信を聞き、オデルもその機体に集中した。

 その左肩にあるマーク、白い狼、数字の2を見た。

 そして思わず笑みがこぼれた。

 (あんな、傭兵ごとき。撃ち落とす。)

 シャルロットの通信が聞こえた。

 彼女は果敢に挑もうとしていた。

 が、オデルはシグーのスラスターを上げ、向かおうとしたシャルロットのジンを止めた。

 (隊長!)

 「行くな、シャルロット。あの機体は俺が相手する。もちろん、シャンもだ。お前たちは、防衛にでてきたミストラルたちを迎え撃て。バーツ、2人のフォロー頼むぞ。いいな。」

 (しかし、隊長…。)

 「あれは、まだお前たちの腕じゃ、太刀打ちできない。返り討ちにあうぞ。」

 シャルロット、シャンは不思議に思った。

 隊長の知り合いなのか。

 そう思いながら、彼らは他のMA群の所へMSを向かわした。

 オデルは3機がミストラルの方へ向かうのを確認し、ジンの方へスラスターを全開にした。

 「まったく…偶然とはいえ、こんなところで会うとはな…フォルテ。」

 彼は臨戦態勢に入った。

 向こうもこちらに気付いたのか、銃を構えた。

 

 

 

 キラたちが部屋に入っていくと、すでに3人いた。

 うち2人、サイとカズィはゼミ生だが、もう1人は見知らぬ人だった。

 金髪で帽子を深く被っている。その奥より金色の瞳をのぞかせる。

 「誰?」

 トールがカズィに聞いた。

 「教授のお客さん、ここで待ってろって言われたんだと。」

 「ありゃりゃ、先客がいたのか。」

 「そしたら、私たちも、ここで待ってます。」

 そう言い、2人も先に来ていたお客さんの方へ行った。

 

 そこへ教授を探していたヒロも入ってきた。

 「カトウ教授…、見つからなかった。」

 「一体どこいっちゃったんだ、教授?」

 トールが呆れたように言った。

 「…ずっと立ってるのもなんだから、どっかから椅子を持ってくるよ。」

 カトウ教授が忙しいのはわかるが、お客さんを待たせてしまうのも悪いのではないか。

 それにあまり待たせると、みんなも作業に集中できないのでは。

 ヒロはそう思い、教授のお客たちに気を使った。

 そんな心配をよそに、男たちはさきほどの手紙の件についての騒いでいた。

 「何か…ヒロ、いつもより親切だね。さっきも、なんかぼうっとしてたけど、もしかして…あの子に惚れたとか?」

 様子を見ていたミリアリアが小声で言った。

 「えっ、いや、そうじゃなくて…。せっかく遠いところから来たのに、待たせるのは悪いかなって思って…。」

 思わずヒロはドキッとした。

 「その、慌てよう…、余計怪しいわよ~。」

 「なになに。何かあったの?」

 先ほどまで、手紙のことでやり取りしていた4人がこちらの方にやって来た。

 「何もないって。とにかく、僕、もう一度、探しに行くね。」

 そう言い、出ようとした瞬間

 突然、激しい揺れと音が襲った。

 「隕石か?」

 ヒロはハッとした。

 まさか…。

 『この宙域一帯からNジャマー反応だ。』

 ジーニアスがビーブ音を鳴らし、知らせた。

 ザフトが攻めてきたんだ。だとすると狙いは…。

 「みんなは、いそいで避難して。絶対、工場区には行かないで。」

 ヒロはみんなに言い、工場区へ向かった。

 「おい、ヒロ!」

 サイが止めようとしたが、行ってしまった。

 

 とにかく一同、言われた通り避難のため、部屋から出てエレベーターへ向かった。

 が、エレベーターはなかなか来ない。

 その間も激しい揺れが続く。

 仕方なく非常階段へ向かった。

 そこで避難している職員から驚くべき言葉が出た。

 「ザフトに攻撃されているんだ。」

 みんな、その言葉を聞いて、驚愕した。

 先ほどの帽子を被った少年が身をひるがえし、工場区へ行ってしまった。

 「…きみ。」

 その人を追ってキラも行ってしまった。

 「キラ!」

 トールがキラに声をかけたが、キラは「すぐ行く。」と言い、走って行った。

 

 「ルキナさん…。」

 ギースは小声で話しかけた。

 おそらく自分たちが狙ってるものは彼らが向かった場所にあると確信した。

 それはルキナも同じだった。

 「工場区に行ってくる。おそらく、例のモノはそこにある。この混乱の中なら持ち出せるかも。ギースはみんなをお願いね。…そのあと合流しましょ。」

 そう言い、彼女も行ってしまった。

 「…はぁ、そんな気がしたというか。」

 溜息をついたが、今はここにいる民間人の避難が先であった。彼は非常階段を下りて行った。

 

 

 ヒロは工場区へ急いで向かう途中、なにか気配を感じた。

 一体…何が。

 その気配は工場区とは別の場所、自分の足元、工場区の地下の部分からだった。

 もしかしたら、そっちにもザフトがいるのかもしれない。

 そう思い、その感じる方へ向かった。

 

 

 

 

 たどり着くと、部屋は暗いが広々とした感じだった。そして、そこになにか置かれていた。

 ザフトがいるようではなかった。

 一体何が…。

 その時、また揺れた。

 ここまで、振動が来ているってことはコロニーにも攻撃されているのではないか。

 彼は部屋の明かりをつけた。

 そこに置かれていたモノが鮮明に姿を現した。

 それはメタリックグレーの色をしたMSであった。

 「これって…。」

 それは地球軍が開発していた。G兵器の同じ形をしていた。

 全部で5機と聞いていたはずなのに…。

 どうする、これも奪われないようにした方がいいのか、起動してここから出した方がいいか。

 そう思案していた

 その時、

 チャキっと、銃を構えたのか、そんな音がした。

 「動かないで。」

 手を挙げ、その声のした方に顔を向けた。

 そこにいたのは、さっきラボに案内したヘファイストス社の人だった。

 「大丈夫。余計なことしなければ、こちらも撃たないから。このMSに用事があるの。」

 彼女はヒロを通り過ぎMSへ近づいていった。

 まだ、銃は向けられていた。

 「君は…一体?」

 なぜ、ここに来たのか。

 何者なのか?

 そう思っているとき、再び激しい揺れがした。

 今度のはかなり大きかった。

 上の天井が崩れかけていた。

 まずい。このままでは!

 ヒロはルキナの方へ向かった。

 「え?…ちょっと!」

 ルキナはヒロがいきなりこちらに向かうという、予想外の動きに困惑してた。

 そのまま、手で押し倒された。

 その勢いでルキナは後ろへと飛ばされた。

 ヒロも、勢い余ったのか、そのままともにすべった。

 その時、天井の瓦礫が先程までいた場所に落ちきた。

 もし、一歩遅かったら、自分たちも下敷きになっているところだった。

 間一髪…、ヒロはそう思ったが、天井のあったところより見える影にハッとした。

 ジンである。

 向こうも気付いたのかこちらの方を向いている。

 見つかったか!

 「こっち!」

 「え?」

 ヒロは彼女の手を引き、コクピットに向かった。

 どの道、避難する場所はここにはない…、なら!

 彼は彼女を連れ、コクピットに入った。

 「一体、どうするの?」

 ルキナがヒロに聞いた。

 「ここにすぐ逃げられるような場所はない…、なら。」

 ヒロはジーニアスを繋げ、起動させた。

 「…MS、動かしたことあるの?」

 ルキナが不安げにシートの横から聞いた。

 「…動かしたことはある。」

 ブゥンと音が鳴り計器類が光り始めた。

  ―General

  Unilateral

  Neuro-Link

  Dispersive

  Autonomic

  Maneuver …

 

 モニター画面には、そんな表示が出た。

 

 

 

 

 「どういうことだ。まだ、1機あったのかよ。」

 工場区の地下を破壊した直後、地面に穴が開き、地下にMSが横たわっているのが見えた。地球軍のものと同じ形をしていた。

 「とにかく、あれも持っていくぞ。今なら誰も…。」

 一緒にいたもう1機のジンのパイロットが言った。

 「おい、待て!こいつ…動き出した。」

 

 

 先程まで沈黙していたはずのメタリックグレーのMSの両目に光が灯った。

 ブゥンと、エンジンの唸り音を立て始める。

 そして、固定されていたボルトがバシッとはじけ飛び、そこから解放されたように、ゆっくりと起き上がっていった。

 

 




序章含めた16話目でヒロイン登場。
そして、ガンダムも登場。

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