機動戦士ガンダムSEED Gladius   作:プワプー

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どうも、序章から読んでいただいた方、お久しぶりです。
序章なんて長いよ、本編から読むぜってひとも初めまして。
この話より本編開始いたします。


PHASE‐1 太陽の都(ヘリオポリス)Ⅰ‐幕が開かれる

 「血のバレンタイン」の悲劇から端を発した地球、プラント間の戦争は、戦局は疲弊したまま、すでに11ヶ月がたっていた。

 しかし、今、その流れが大きく動こうとしていた。

 

 

C.E.71年1月25日

 

 

  L3宙域、中立国オーブのコロニー、ヘリオポリス。

 この近くに3隻の戦艦がいた。1隻はナスカ級ヴァサリウス。クルーゼ隊の旗艦である。 2隻はローラシア級。そのうちガモフはクルーゼ隊のもう1つ戦艦である。

 そしてもう1隻。名はゼーベック。アスナール隊の艦である。

 

 「しかし…、よろしいのですか、艦長?」

 オペレータのリーネ・イルマリが艦長のエレン・アスナールに聞いた。

 「いくら、あそこに地球軍の秘密兵器があるとはいえ、中立国に攻撃するなんて…。それに我が隊も共同作戦の意味あるのでしょうか」

「だが…、もしあれを運び出されれば、我々の脅威になる。そうクルーゼ隊が判断したのだ。そうですよね、艦長。」

 代わりに答えたのは副艦長のハルヴァン・ラーシュであった。

 「ええ…そうね。」

 

  事の発端は、これより少し前に遡る。

 

 

 

 クルーゼ隊隊長、ラウ・ル・クルーゼよりMS奪取の共同の作戦を持ち掛けられたからである。

 その提案をヴェサリウスに呼び出されたオデルとエレンは、その話を訝しげに聞いた。

 「で、その情報の信ぴょう性は?」

 オデルはラウに尋ねた。

 確かに、地球軍がMSを開発しているかもしれないという話は何度か聞いていた。他の隊がその実験部隊とされる部隊を交戦したというのもある。しかし、どれも確証は得られていなかった。

 ラウが写真を取り出した。

 「これが…証拠だ。」

 確かに、写真には見たことがないMSが写っていた。

 「これが、今我々が近くにいるオーブのヘリオポリスで開発されているとのことだ。我々は、MS部隊でも陽動と潜入部隊での破壊工作を行おうと思う。」

 「それで…。我々の部隊も加わってほしい…と。」

 エレンが口を開いた。

 「本来なら、我々だけでもしようと思えばできるのだがね…。」

 「潜入部隊に行く者たちは、腕はよくても銃撃戦は初めて。MS部隊も先の宇宙ステーション防衛任務で、『黄昏の魔弾』専用の機体は破損していて、万全ではない…。」

 オデルがクルーゼの意図を読み取ったか、彼が言う前に答えた。

 「そうだな。この作戦は…確実性が欲しいのでね。どうかな?」

 それをきいてふたたびオデルは口を開いた。

 「なあ、クルーゼ。そういう話なら艦長だけでいい。なぜ俺もこれに加わらした?」

 「君なら気付いているだろう。これは…まだ議会に話をしていない。彼らの回答を待つのでは遅いと思ったからだ。故に、君がそれではいけないと思うなら「フェイス」としての権限を行使して、この作戦を阻止しても構わない。それも含めて、考えてほしいと思ったのさ。」

 「フェイス」。それは、国防委員会直属の指揮下に置かれる特務隊である。オデルは以前より、この特務隊への転属を打診されていたが、拒み続けていた。が、この艦のMSの隊長として配属するのであればという、条件で「フェイス」となった。故に、彼はとても特務隊の者であり、アスナール隊のMS部隊隊長という奇妙な立ち位置にいる。

 「ゼーベックでは艦長で隊長の彼女の意志が最優先だ。俺が口出しすることではない。で、どうです?アスナール艦長。」

 オデルはエレンにこの作戦を行うかの決定をゆだねた。

 「…先ほどからクルーゼ隊長の話を伺ってると、もう我々が加わる前提で話してるように聞こえますが…。わかりました。我々は後方支援、および潜入部隊の助っ人を出します。そして、この作戦を行うにあたってですが、一つ約束を。これが秘密裏に作られているとすれば、おそらく住民の多くは知らないでしょう。なるだけ、住民の住む街には被害を出さないように。…それでよろしいですね。」

 エレンは溜息を付きながら、承諾した。

 「その件については我々も善処するよ、アスナール艦長。そして、我々にとって、貴艦が加わるのは大きな助力だ。感謝するよ。」

 

 

 「果たして…、どうなることか。」

 クルーゼは約束の際、口元は笑って答えたが、仮面に覆われているため、真意は見えなかった。

 エレンは時間とモニターを見やり、自分の中にある疑念を抱きつつ、独り言ちた。

 

 

 「アビーさん、隊長のシグーにアサルト装着しなくていいんですか?」

 ゼーベックのMSデッキでは、出撃の準備に追われていた。

 「いいの、今回は。」

 「アビーさん。こっちの方もお願いします。」

 「まったく、少しはパイロットに聞きながら、自分で考えなさい!これじゃ、進歩しないよ!」

 騒然としているデッキで、彼女は叫んだ。

 「大変そうだな…。」

 パイロットスーツに着替えてきたオデルがやって来た。

 「まったく…、あたしがチーフになった途端、何でもかんでも頼って来るから困るんだけど…。」

 「それだけ、信頼されていることだよ。」

 「そう?褒め言葉としてもらっとくよ。けど、まだ出撃まだでしょ?来るの早くない?」

 もうすぐ、潜入部隊が出始めるころだが、まだ、MSが出撃するには早い。

 「なに…、俺より早く来すぎてしまった緊張しっぱなしのパイロットたちに激励をっと思ってね。」

 オデルは微笑んだ。

 これから出撃するパイロットのうち2人はアカデミーを卒業し隊に配属されまだ4ヶ月の若いパイロットである。むろん今まで自分のMSを持たなかったので、これが初の実戦である。

 オデルはシグーのコクピットに入り、初めてのMSで調整を行っている、若いパイロットたちに通信を開いた。

 

 1人緊張気味の者がいた。

 整備士の話もはいと、返事はするが実際頭に入っているか、自分でもわからなかった。

 そこにもう1人の初めて乗るパイロットから通信が来た。

 「いい、シャン。演習通りにすればいいんだからね。もうちょっと自分に自信をもって。」

 シャルロットは持ち前の明るく快活な声で励ましてきた。

 「わかっている。というか…、なんでシャルロットは平気なんだ?」

 「そりゃ、私も緊張してるけど…。シャンのそんなガチガチな姿見たら、私まで緊張しちゃダメじゃんって思っちゃうぐらいガチガチなのよ!」

 「…ていわれてもなぁ。」

 「制服の色は関係ないぞ。頑張れ、シャン。」

 ザフトは階級がない。代わりに兵科、アカデミーの成績で制服の色が異なる。

 シャルロットは卒業成績上位20位以上の「赤服」。対して、シャンは「緑服」であった。

 「シャン、いいか。制服の色も、初心もベテランも関係ない。自分の普段をすればいいだけだ。あまり、思いつめると、逆に動けなくなってしまうぞ。」

 オデルより通信が来た。

 「隊長…。」

 「大丈夫だ、俺たちがいる。迷惑と思わず、思いっきり俺たちに後ろを守ってもらえ。おまえは、ただ、出撃して戻って来るだけを考えればいい。

 少し、シャンの緊張もほぐれた。

 「そうだ、そうだ。俺を見てみろ。緑でもあんなひよっこのエリートに勝っちまうんだかなら。」

 「バーツ…だから…。」

 「そうそう。それにシャンの実力は本来なら「赤」と変わらないよ。ただ、同期に運がなかっただけ…。」

 「フォローになってない。」

 「要は、まだ実戦でMSに乗ってないイザークたちにここで差をつけろってことよ。」

 「…だから、フォローになってないって。」

 せっかく、隊長の言葉で少しは落ち着いたのに…。

 シャルロットとしては励ましのつもりだったのだろう。

 だが、逆効果だ、とシャンはがっくしした。

 

 

 モルゲンレーテ工場区。

 

 そこは作業する人たちで活気にあふれて、周囲は雑然としていた。

 「大尉―っ。んじゃ、俺たちゃ、先にアークエンジェルに行ってますんでー!」

 「お願い!」

 無精ひげのコジロー・マードックから呼ばれ、マリュー・ラミアスは返事した。

 「これが終わったら、一杯どうです?いい店知ってるんですよ!」

 「おいおい、おまえがこのねぇちゃん、口説くなんて、十年も早いよ。」

 みんな、陽気になっている。

 それもそのはずである。

 いよいよ、この地球軍の新型MSである「G」が完成し、同じく製造された新型の戦艦、アークエンジェルに搬出され出航するのだ。

 長かった…。

 マリューは感慨にあふれた。

 

 そんな工場区の賑わいの様子を上のキャットウォークから見ている人影があった。

 手にはタブレットを持っている。

 まだ、少年である。

 彼は、地球軍の軍人ではない。

 この「G」の護衛任務を受けた傭兵の1人である。

 「ヒロ、な~にぼけっとしてるんだ?」

 その時、フォルテがやって来て、声をかけてきた。

 「ぼけっとはしてないよ。ただ、もうすぐ終わるんだなぁって…。」

 彼にとって、これは初めての仕事であった。

 そのためか、彼にとって、これには思うものがあった。

 「だが…安心するのは早いぞ。どうやらこの宙域にザフトの艦が来ている。」

 「え?まさか…。」

 ザフトが情報を得て来たかもしれない。

 だが、一応、ここは中立である。

 「この兵器が目的で来ているかまだわからないが…、念のため俺は港に置いてあるMSで待機している。ヒロ、おまえはここに残って何か起こったときは、向かえるようにしとけ。」

 そう言い、フォルテはジンを置いている港へ向かっていた。

 ヒロは上を見上げた。

 地球にいた時の空とは違い、上は円筒の側面が見え、それらを支えるようにシャフトがいくつもある。

 この外は宇宙である。

 このヘリオポリスについたとき、街はのどかで賑やかだった。

 プラントも賑やかであったが、やはり戦争をしている、そんな雰囲気があった。

 が、ここではそんなものは感じられない。

 まだ、こういうところもある。

 ヒロは、なるだけここで戦闘は起こってほしくない、と願いながら、工場区を後にした。

 

 

 


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