機動戦士ガンダムSEED Gladius   作:プワプー

14 / 74
序章、最後のお話です。
この話も…また長くなってしまった(泣)


第13話 白銀の砂時計の街‐証明

 

 

 宇宙に浮かぶ何十基もの砂時計の形をした構造物。

 ここがコーディネイターが住むコロニー、プラントであった。

 ルドルフとヒロが入国審査を終え出てくると、正面に一人の品のよい男性とその娘らしき可愛らしい少女がいた。

ルドルフも気付き、そちらの方へ向かった。どうやら自分たちを出迎えに来た人たちらしい。

 「忙しい身なのに…わざわざ迎えに来てくれるとは思わなかったよ。」

 「他でもないルドルフさんが来るのだから。娘も楽しみにしてたのですよ。」

 「お久しぶりですわ、ルド。」

 「そうか。実はもう一人、連れてきていてね。ヒロ、俺の知り合いで、シーゲル・クラインだ。」

 ルドルフはヒロに目をやった。

「ようこそ、プラントへ。初めまして。」

 「あら、もしかして…ルドのお孫さん?」

 シーゲルの隣にいた少女からの思わぬ質問にルドルフもヒロも吹き出してしまった。

 「!。待て待て、ラクス。どこからそういう発想が来るんだ…。俺には子どもがいないって知ってるだろうに。…こいつは、ヒロだ。まあ、傭兵見習いってとこかな?」

 「初めまして。ヒロ・グライナーです。ええと…」

 「あら、ご挨拶がまだでしたわ。わたくし、ラクス・クラインと申します。これは友達のハロ、ピンクちゃんですわ。」

 差し出されたピンクのボール状の物体が『ハロ、ハロ。まいど。』と音声を出していた。

 「そちらの…お手に持っているタブレットは…あなたのお友達ですか?」

 ラクスはヒロがさっきからビーブ音を出し、ハロに反応しているタブレットに興味を持ち、尋ねた。

 「あっ…えっと、友達というか…、何だろう?こんな性格じゃなかったら…そうなるのかな?」

 『何だと!私のどこが悪い!』

 「人工知能なのかね?」

 シーゲルも興味津々に聞いてきた。

 「ええ、僕が工学を独学で学ぶ手助けとして作ってもらったんですけど、どうも製作者に似てしまったのか…、自分から『天才』ていう意味の『ジーニアス』って名前、決めちゃうんですよ。」 

 『私は天才なのだ。事実ではないか。いいではないか。』

 「面白い方なのですわね、ジーニアスさまって。」

 ビー♪、とジーニアスは自分に「さま」づけされ、上機嫌になった。

 「というか、そろそろ、行かないか?そろそろ、護衛のヤツらも待たせているんだろ?それに、おまえたち二人はこのプラントじゃ、有名人なんだから…あまり目立ちすぎるだろ。」

 「そうですね。では、行きましょうか。あちらから行きましょう。」

 ルドルフの言葉にシーゲルが続いた。

 「有名人?」

 『シーゲル・クライン氏は、プラントの最高評議会議長。そして、ラクス・クライン嬢はプラント国民に人気の歌手だ。…てか、聞いたことぐらいあるだろう?』

 「あれ?そういえば…。」

 説明されるまでピンと来てなかったヒロに、ジーニアスは『やれやれ』と付け加えた。

 

 

 宇宙船ドックより居住分のある底部への移動するエレベータを降下中、ヒロはそこから見える景色に圧倒されていた。

 あの暗く広い宇宙空間のなかにあるとは思えなかった。

 「プラントは初めてかね?」

 その様子を見ていたシーゲルが聞いてきた。

 「え…はい。今まで地球で暮らしていたので…。」

 「まあ、地球に暮らしていらっしゃたのですか。ぜひ、お話くださいまし。わたくしは行ったことがないので…。」

 ラクスがにこやかに言った。

 「これこれ、ラクス。彼はお客様だぞ…。」

 「とか言いつつ、シーゲル、おまえも興味あるんだろ?ここ数十年、地球に戻ってないんだし。」

 「あら、そうなのですか?お父様。」

 「実はそうなのです。…いいかな?ヒロ君。」

 「それは、僕が知るかぎりなら…。」

 「それでしたら、代わりにわたくしたちがプラントの案内をするのはいかがでしょう?」

「ええ、ぜひ。…というか、ルドルフ、仕事じゃなかったの?」

 てっきり仕事だと、思っていたヒロはルドルフに聞いた。

 「俺がここに来るときは、傭兵としては来ない。さらに言えば、傭兵という肩書はとっぱらう。」

 「ルドルフさんとは昔、私がカルロッタ・スメラルドを訪れたときに知り合ってね。 その頃からお世話になっているんだ。」

「そうそう。まあ、滅多にない機会だ。プラントの観光でも今のうちにしとけ。」

 

 

 

 次の日。ヒロは二人に伴われ、中心街へと向かい色々な場所を案内された。

 ルドルフは、自分は行かないと言い、ついて来なかった。

 そして、プラント最高評議会本部に着いた。

 この中に、あるものが観光として置かれているのである。

 中に入っていき、ホールあたりまで行くと、そこには巨大なモニュメントがあった。

 それを見てヒロは圧倒された。

 「これは…。」

 「Evidence(エヴィデンス)01。通称くじら石じゃよ。」

 一人の車いすに乗った老人がやって来た。

 「ゴードンさん。いらっしゃたんですか。」

 シーゲルが彼の方へ向かった。

 「また、見たくてね。もうこんな老人だ。いつでも心置きなくいけるように、見なくてはと思い。それにここに来れば、またあのころの自分に戻ったようで若返った気分になるんだよ。」

 「君もこれを見るのは初めてかね?」

 ゴードンは車いすを動かし近くまで来て、ヒロに尋ねた。

 「はい。」

 「彼は、地球からここに来たのです。」

 シーゲルが説明した。

 「そうか…。地球か。…懐かしいのぉ。」

 彼はかつて自分が住んでいた地球に思いを馳せた。

 そして、ヒロが自分の事に不思議な顔をしているのを見て、ああと思い、言った。

 「私は、ナチュラルだよ。子供がコーディネイターだからね。一緒にこのプラントに住んだのさ。しかし、この歳になるとなにもかも懐かしくなってしまう。地球の景色をもう一度見たくなってしまったわい。」

 プラントはコーディネイターだけが住んでいるというわけではなく、例外として、自分の子供をコーディネイターにしたナチュラルも住んでいる。とはいえ、その数はかなり少なくない。彼もその一人であった。

 「地球に…戻りたいと思うことはないんですか?」

 ヒロはとても懐かしいそうにしている様子をみて、尋ねた。

 「戻りたくない…といえば、嘘になる。できれば、自分の故郷で最期を迎えたい。けど、私はここに残ることを決めたんだ。それが…私なりのけじめかな。」

 ゴードンは微笑んだ。

 そんな和やかな雰囲気であったが、ふと何か嫌な気配をヒロは感じた。

 以前、感じたのと同じような悪意。

 誰かがこの石を狙っている…。

 そんな感じがした。

 その感じた方に集中した。

 一人の男がやって来るのが見えた。

 周りの人たちとは変わらない、観光客のようであった。

 が、他の人たちとは違う、この石に向ける憎悪があるように感じた。

 「三人とも下がってください。」

 ヒロは警戒し、そう三人に言い、その人物の方へ足を進めた。

 向こうはこちらに気付いてない。

 石に近づいてくる彼は持っている鞄からマシンガンを取り出した。

 それを見た周りの人が悲鳴を上げた。

 あたりは騒然となった。

 警備の者も気付き、彼を確保しようと動き出した。

 「これさえ無ければ…、宇宙を独占しやがって!」

 銃がEvidence(エヴィデンス)の方に向けられていた。

 まずい

 急いで走った。

 このままでは間に合わない。

 引き金を引く瞬間、

 「ゴメン、ジーニアス!」

 『おい!(怒)』

 ヒロは持っていたジーニアスをとっさに男に投げた。

 男はいきなり投げつけられ、一瞬、ひるんだ。

 それを見逃さなかったヒロはさっと向かい、相手からマシンガンを取り上げ、押し倒した。

 警備達も続けてやって来た。

 

 

 最高評議会議事堂は一時、騒然となった。

 「いやはや、大きな騒ぎにならなくてなによりだな。お手柄、お手柄。」

 話を聞きつけたルドルフがやって来た。

 ジーニアスは投げられたことに腹を立て、ずっと抗議のビーブ音を鳴らしていた。

 彼は憲兵により連行されていった。

 だが、それで終わりというわけにはいかない人たちがいた。

 プラントの議会である。

 議事堂には、事態を受け、他の議員も来ていた。

 「これから、いろいろやるべきことがあるようだ。すまないね、ヒロ君。せっかくの所を。」

 「いいえ。ありがとうございます。案内していただいて。」

 シーゲルはこれからこの問題の処理をしなければならなくなった。

 ここで、観光案内は終わりとなってしまった。

 「それに、ヒロ。休暇は終わりになりそうだ。」

 ルドルフがヒロに言った。

 「え?」

 

 

 

 

 「もう、行ってしまわれるのですね。さみしいですわ。」

 ラクスは残念がっていた。

 宇宙港には、ラクスとルドルフ、そしてゴードンが見送りに来ていた。

 「ありがとう。あの石を守ってくれて…。残念なことに、あのようにあの石を破壊すべきものと考えておる者もいる。…確かに、Evidence(エヴィデンス)01は証明なんだ。コーディネイターにとって。故に、あの石を壊すことでコーディネイターの存在を消そうとする者がいる。だが、彼らも。このプラントに住む多くの者たちも、コーディネイターの本当の意味、その証明の意味を忘れてしまっている。」

 「本当の意味?」

 ゴードンの言葉にヒロは尋ねた。

 「そうじゃ。今はコーディネイターとは、遺伝子を操作し誕生した人類と思われておる。が本来コーディネイターとは、ジョージ・グレンが『人類と、新たに生まれてくるであろう人類と、そして宇宙との懸け橋になる調整者(コーディネイター)』という思いを込めて命名したのだよ。」

 「初めて知った…。」

 「この混乱の時代…、その願いはどこに行ってしまうのか…。」

 

 

 そろそろ出発の時間が迫ってきた。

 「すまないのぉ。老人の長い話を聞いてくれて。この歳になると、ついつい長くなってしまう。」

 「いえ…そのようなことは、ありがとうございます。ラクスも…プラントを案内してくれてありがとう。また、機会があったら、ここに来るよ。」

 「どういたしまして。今度、わたくしが地球に来た時は、案内をお願いしますわ。」

 「はい。」

 「俺は、まだプラントにいるからな。ミレーユに伝えておいてくれ。」

 ルドルフはまだ、ここにいるらしい。

 彼らに見送られ、ヒロはプラントを後にした。

 

 

 

 ようやく、さきの案件が片づいたその夜、シーゲルとルドルフはクライン邸で酒を酌み交わしていた。

 「今回はありがとうございます。」

 「ん?何がだ?」

 「彼を連れてきてくれて。娘もものすごく興味を持ちましたし…。」

 「まだまだ、私も頑張らなければいけない、と思いましたよ。」

 この一か月近く前、この戦争の落としどころを求め、会談したが、結局交渉は決裂した。

 まだ、戦争の終わりは見えそうになかった。

 さらに強硬派と穏健派が対立を深めて行っている。

 ナチュラルはもう古い人類だ。彼らとは共に生きられない。

 そんな声もある。

 しかし、ナチュラルもコーディネイターが共に暮らす。そんなところで育った、ヒロはまさに、それができることを証明してくれている。

 自分自身、奮い立った。

 少々、疲れている様子を見て、ルドルフは一度、酒を口にし、言った。

 「戦争…終わったらラクスも連れて、カルロッタへ来い。ジネットも会いたがっていたぞ。」

 その言葉を聞き、シーゲルも微笑んだ。

 「ええ、ぜひ。ラクスも喜ぶでしょう。あのバーで歌いたい、と言っています。」

 

 

 宇宙ステーション。その内部にも「カルロッタ・スメラルド」の系列のホテルがある。

 そこで、ミレーユと待ち合わせた。

 初の仕事を受けるためだ。

 「おまたせ。プラントはどうだった?息抜きになったかしら?」

 「ええ、よかったです。」

 地球の事について、ラクスから質問攻めにあったり、ハロたちに遊ばれたり、と息抜きになったかは定かでは部分もあるが、とても楽しい時間を過ごしたことは確かだった。

 「早速だけど、あなたに仕事をしてもらうわ。場所はオーブの資源コロニー、ヘリオポリス。もうすぐ地球連合軍の新型MSが完成されるの。それの受け渡しまでの間の護衛任務に就いてもらうわ。一応、念のためこちらからジンを送っておくから。」

 「わかりました。」

 「これが、あなたにとって初めての仕事になるわ。まあ、向こうにはフォルテもいるから、わからないことがあったら、彼に聞いてね。」

 「はい。」

 …ヘリオポリス。

 自分にとって、初めての任務。

 ここで自分ができること。それをしよう。

 改めて、ヒロは思った。

 

 

 




これで、序章は終了となります。
1ヶ月近くかかってしまったのですね。
ここまで、お付き合いしていただいてありがとうございます。
いや~、長かった。
特に「別れ、そして旅立ち」の部分。
しかも、1話の文字数も長い。目標は1000~2000字を目標にしているのですか…。
実は、ザフトと地球軍の戦闘シーンは一番作者がやりたかったところなのです。
自分、ガンダム作品でああいう感じのは好きなので(笑)。
しかし、結構「ジン」祭りになってましたね(笑)。
まあ、この時代はジンが主力ですしね。


次からようやく本編に入ります。
…これで、「あらすじ詐欺」と言われずに済む(笑)。
本編に入って、何が楽しみかというと、ようやくガンダムを出せる、MSのバリエーションが増えるぜ。
な、ことですね。
ではでは、改めて、ここまで序章を読んでいただきありがとうございました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。