本当はもうちょっと早く投稿する予定だったのですが…
なかなか、うまくいかないものですね。
アドリア海に浮かぶ二つの小さな島。
そのうちの一つの島にあるホテル「カルロッタ・スメラルド」。
ここには亡命者や活動家、資産家などいろいろな人たちが宿泊をしている。
このホテルより少し離れた小島の方を傭兵ヴァイスウルフが根城にしている。
この二つの島を含め、ホテルは、ルドルフの昔なじみのジネット・エレオノーラが所有、経営している。ちなみに現在は、経営はミレーユの方に一部、任せている。
そのホテルにあるバー。
ルドルフがそこでウィスキー酒を飲んでいると一人の老女が現れ、彼の隣に座った。
「ジネットか。」
ルドルフはマスターのガスパールに彼女に自分と同じ酒を注文した。
「リィズ・ウェイドリィの件、こっちの方で面倒見るわ。」
「そうか。わざわざ、ありがとうな。」
「珍しいわね。あなたが了承するなんて。」
「…なんとなく、そんな感じがしたんだ。」
結局アバンもヴァイスウルフに入ることになった。妹のリィズはジネットが面倒をみることになった。アバンとしても、ついてきたリィズを危険に合わせたくなく、ダグラスの下へ帰らせようとしたが、リィズに拒否されてしまったので、このことを了承した。
「ヒロの方は嫌がっていたのに?」
「それはそれ、これはこれ、だ。本当は…あいつをこの傭兵稼業に入れたくなかった。自分の宿命に縛らせてしまう気がしてな…。」
カランとウィスキーグラスを揺らした。
ガスパールがウィスキー酒をジネットに渡した。
沈黙が訪れた。
「…で、あなたはいつ引退するの?」
突如、話題を切り替えた。
「もう、引退してるよ。」
本当の質問はこっちか。
ルドルフが笑いながら答えた。
「その割に、またひと暴れしたって、聞いたわ。」
「仕方ないだろ。こんな情勢だ。おとなしくしてるのが、無理だ。…そんなに心配か?」
「もう昔なじみはあなただけなのよ。知り合いはもういないの。わかってる?」
彼女はバーに飾られている写真に目を向けた。
バーには、ここに訪れた者、そしてジネットたちのかつての知人の古い写真がいくつか飾られていた。
彼はその中の一つに目を向けた。
「…あいつが生きてたら…どうしていただろうな?」
「さあ…、どうでしょう。」
二十年近く前の写真。そこにはまだ現役のルドルフともう一人若い男性が写っていた。
ヴァイスウルフ…白き狼。
この傭兵部隊の名前は彼の異名からとられたものであった。
再び沈黙が流れた。
彼は別の写真を見て、思いついたようにジネットに言った。
「…よし。じゃあ、引退ではないが、少し休暇でもとるか。ジネット、早速だが手配してくれ。二人分だ。」
「…わかったわ。でも、二人分?」
「ああ、ちょうどいいしな。あいつに見せたいしな。連れていく。」
シミュレーターを終え、立ち上がったヒロは大きく息をついた。
ここに来て、一か月たった。
シグルドとフォルテは各々、任務に出てここにはいない。
ヒロは、まだMSに乗って戦えるレベルではないといわれ、まだ仕事はない。今はこのようにシミュレーターでMSを動かす毎日であった。
「全然、ダメだ!ノロクサしか動かない…。何でだー!?」
もう一台、シミュレーターからゼィゼィと息を荒げ、出てきアバンは嘆いていた。
『そりゃ、コーディネイターでもさらに訓練積んでようやく操縦できるものだ。おまえなぞ、操縦できるのは百年たっても無理だ。』
近くに置いていたジーニアスがアバンをバカにしながら答えた。
「百年なんて、じいさんになってるじゃないか。…今に見てろ。シグルドのように俺だって動かせるんだって証明して見せる。」
といい、シミュレーターのシートに座って、またやりだした。
…アバン、そのときは百十六歳だよ…。そこまで長生きするの?
と思いつつ、ヒロはシミュレーションをしている彼を見た。
彼がここに来た理由、
「自分が妹を守るために、人に頼らず強くなりたい。」
たった一人の肉親だから。リィズを幸せにしたい。
いつもアバンが言っていたことだ。
アバンが自分で決めたことだから、自分は言うことはできない。
自分も、自身で決めたことだからだ。
が、それでも傭兵になるいう選択でよかったのか?彼も来ることはなかったのにと思ってしまう。
そこへ二人の下に壮年の男性がやって来た。
「ヒロ、ここにいたのか。少し、いいか?」
彼の名は、オーティス。
彼はヴァイスウルフの一員というわけではないが、いろいろ協力してもらっている人である。
「なんですか?」
ヒロは彼に尋ねた。
「ちょっと、格納庫の方に来てくれないかな?君の持ってきた作業用MSのことでね。」
オーティスと共に向かった格納庫では多くの作業をしている人がいて、賑わい、活気にあふれていた。
ヒロが持ってきた作業用MSもいじくっていた。
一体、この人たちは。
「この人たちはファブローニ社の人たちだよ。もともとパワーローダーとかの機械の製作・修理する製作所だったんだ。今はMSに目をつけ、作業用に改修して民間に販売しているのだ。ヴァイスウルフのMSやMAは、ここの製作所の人たちに修理や改修などをしてくれているんだ。」
戸惑っているヒロにオーティスが説明してくれた。
その中で、彼らに気付いて、一人の眼鏡をかけた男性がやって来た。
ヒロより身長が低い。
「おお、来たか。待ってくれ。おれはエンリコ・ファブローニだ。今、担当のヤツ、呼ぶから。まだ作業中でね。おーい、フィオ!」
フィオと呼ばれた少女はコクピットで作業していたのか、中から出てきて声をかけた。
「はーい。あっ、ちょっと待っててね。今こっちの方を終わらせてからくるから。」
その明るい声が響いた。
そこへルドルフがやって来た。
「ピッコロのおやじ、あれ誰だ?」
ルドルフも初めて会うらしい。
「ピッコロ言うな。…おれの孫だ。名前はフィオリーナ・カーウィル。手ぇ出したら許さんからな。」
エンリコはヒロたちをみて言った。
「カーウィル…。てことは、おまえの娘の方の…。」
「そうだ。娘夫婦が数年前、宇宙での事故死した後、引き取ったのさ。今まで、プラントやコロニー『世界樹』に行っていたんだが…。世界樹があんなことになったんで、戻って来たんだ。腕は確かだ。安心しろ。あと、いい加減ピッコロ、ピッコロと言うな!俺にはちゃんとエンリコ・ファブローニっていう名があるんだよ!」
「ピッコロ…おやじ?」
ヒロが不思議に思い、聞いた。
「ああ、あいつ、昔から小さくてな。結局、背もそんなに伸びなくてそれであだ名が、
だーかーら、とエンリコが反論していた。
ちょうど、フィオリーナも来た。
「おまたせ。あなたのMSをこちらで預けることになったの。これから任務とかあると、中々メンテナンスできないでしょ?」
「ああ、それで…。」
「はい、ここにサインを。」
と、書類を渡した。
ヒロはサインをした。
「で、なんでルドルフも来ているんだ。おまえにはMSは必要ないんじゃないんか?」
エンリコがルドルフに聞いた。
ああ、とルドルフはヒロの方に行った。
「ヒロ、すぐに出かけるぞ。用意しとけ。」
「え?どこに?」
ヒロの質問にルドルフは上を指さした。
「宇宙に…だ。」