コズミック・イラ(C.E)
1人の天才が現れた。彼の名はジョージ・グレン。彼は様々な分野において活躍し、多くの人々は彼に称賛の目を向けた。
そして、C.E.15年、彼が設計した探査船に船長として木星探査に旅立つとき、自らの出生を明かした。「ぼくの秘密を今明かそうー。ぼくは、人の自然そのままに、この世界に生まれたものではない。ぼくは受精卵の段階で、人為的な遺伝子操作を受けた者。」と。同時に、遺伝子操作技術を世界中のネットに公開した。
これはそして14年後、ジョージ・グレンの木星帰還後、彼が持ち帰ってきた地球外生命「Evidence01」により親たちは密かに我が子に遺伝子操作を行っていった。
その子供たちは成長するにしたがって、他の自然に生まれた子供たちとの差異を明らかにしていった。
彼らは後に遺伝子操作を受けた人類―コーディネイターと、呼ばれていった。
しかし、遺伝子操作を受けてない人類―ナチュラルの中には彼らに嫉妬、恐怖を抱き始め、コーディネイターたちを迫害していった。
コーディネイター達も迫害から逃れるため、宇宙へ行き大規模なスペースコロニーを建造、発展させ次第に大規模な独立への運動に行っていった。
それをナチュラルたちが承認するわけもなく、彼らは地球連合軍を組織し、彼らに圧力をかけていく。
両者の対立は、C.E.70年2月14日、地球連合軍がプラントのコロニーの1つに核が放ち24万もの死者を出した、後に「血のバレンタイン」と呼ばれる事件を契機に本格的な戦争へと突入していった。
「この宇宙空間から地球を見ながらこう思う。地球と未知なる宇宙の架け橋、そしてヒトの今と未来に立つ者、調整者(ちょうせいしゃ)‐コーディネイター。このようにあるものだと。ぼくに続いてくれるひとがいることを切に願う。」
このジョージ・グレンの思いとは裏腹に世界は混迷していった。
南アメリカ合衆国‐南アメリカ大陸にあるこの国は開戦から5日後の2月19日、大西洋連邦に併合され、傀儡国家になってしまったが、元々はプラントに食糧輸出を行ったり、開戦直後はクライン議長からの積極的中立勧告を受諾したり、と親プラントの一面があった。
その国の太平洋側の南に位置する海辺の町から緑豊かな森の奥進んだところにその村はあった。
その村は町の人も一部しか知らない、ナチュラルとコーディネイターが共に住んでいる村であった。
見慣れない景色だった。
たくさんの水槽、多く並ばれている標本。白衣を着た大人たち。男女が言い争う姿。自分より二つぐらい上の男の子。
自分はここにいたことある?
一体ここは…?
そして…。
ぼんやりと目を開けると、目の前は真っ暗であった。そして、息苦しかった…。まだ夢を見ているのかと思ったが、どうやら違う。なぜか自分の顔にたくさんの葉っぱが覆い被さっていた。
起き上がりながら、なんとか掻き分け葉っぱの山から抜け出すと、そこに二人の男が立っていた。
「やっと、起きたか、ヒロ?」
隻眼のひかつい風貌をした男が笑いながら言った。
「…これ、ジェラルドがやったの?」
まだぼんやりとしながらもいたずらをされ不満げなヒロに、もう一人の中年の男、ハーディが答えた。
「何度も起こしはしたんだがな…なかなか起きないから、とうとうジェラルドが『サボっている罰だ』と言ってやったのさ。」
「まったく…。山菜取りに一緒に行くってついて来て、寝てるなんてな…」
「あっ…」
今日は二人とともに村の外れで山菜取りをしていた。手分けして山菜を探している途中の少しの休憩のつもりだったが、もうあたりは夕暮れ。ヒロは申し訳ない気持ちになった。ハーディはフゥと息を付きながら、
「まあ、籠の中にはしっかり入っているし、疲れてたんだろう。」
とヒロをそれ以上は責めなかった。
「なんか、俺の時と態度が違くね?」
とジェラルドは少々ハーディに不満げだった。どうやら当のジェラルドもサボっていたらしい。
「それは普段の行いだよ。普段ヒロはお前と違って真面目にやってくれてるからな。」
そう言われてしまい、ジェラルドは何も言えなくなってしまった。
「さあ。もう日も暮れる。早く村に戻ろう。」
と、ハーディは先程のやり取りに思わず笑っていたヒロに向かって言った。
「そうだな。あまり遅いと俺たちがセシルに怒られるしな。行くぞ、ヒロ!」
「うん。待って!」
ヒロはまだ体についている葉っぱを払落し、二人の方へ走って向かった。
そんな変わらないいつもの日常であった。
初めての投稿作品です。作者はめっちゃ緊張しています。
温かい目で見てくれるとうれしいです。