2095年10月11日(火) -国立魔法大学付属第三高校
「吉祥寺くん!はやく~」
「三島さん、まだ時間大分あるよ。そんなに急がなくても」
「だって寮に居たって楽しくないんだもん。学校の方が楽しいよ」
いつも授業中は寝ているのに楽しいのかと思う/彼女は楽しそうだった。
成績の方も気になるが大丈夫だった――彼女もある種の天才なのだから。
天才と言われた吉祥寺 真紅郎――努力をし研究し成果を出す/努力を積み重ねた天才。
灯子の場合――何もしなくても解る/物事がそうであると/過程も論理も全てすっ飛ばしてわかってしまう天才。
多少の劣等感――そんな彼女が何故か吉祥寺に懐いていた。
餌をほしがる子犬/そう感じてしまう。
「シンくん。遅~い」
「し、シンくん?」
急に別の名前で呼ばれ驚く――勝手に付けられるあだ名。
真紅郎の真を取ってのシンなのだろう/ありがちな付け方/ぱたぱた近寄ってくる。
「ねえ、どう? シンくんて」
あだ名で呼ばれるのは初めてだった/どうにもむず痒い。
顔を上目遣いで覗きこんでる灯子――女性を感じるより、子供や小動物を連想してしまう。
「早くいこ」
「ちょ、走ると危ないよ!」
「だいじょーぶ」
手を引かれながら学校に向かう/元気のいい妹に手を焼いている兄のような図になっている。
黒いスカートをはためかせ走る――少し周囲の目が気になる。
親友である将輝に性対象を何故か12歳以下と間違われている/これ以上ペドフィリアなどと思われてはたまったものではない。
一応灯子は15歳の立派な女子高生。
しかし体の発達は胸を除いてかなり幼児を思わせる体型をしている。
背に関しては成長障害なのではと思ってしまうくらい小柄な背丈だった。
背に行くはずの栄養が胸と頭に全て吸われているのかと思ってしまう。
「シンくん、論文コンペの原稿、何処までできたの?」
「大まかには、でも細かい部分はまだかな」
「ふ~ん」
どうでもよさそうな返答/子供のような思考。
にわかに思い出す――最近放課後によく資料室や研究棟などに顔を出しているそうだ。
吉祥寺は灯子にたいし、いつも遊びまわっていると想像していた/その想像が違い彼女も勉強をするのだと安心する。
成績の心配などではなく/ちゃんと勉強して知識を蓄えるということに安心していた。
授業でも寝ていて教科書を読めと言われても、全て暗記している彼女はどこか別の次元にいるのではないかと思うことがあった。
「最近研究棟のほうにも着ているそうだね」
「うん、わたしも勉強するの」
「君が勉強って想像できないな、いつも何でもわかる子って思ってたから」
「わたしも勉強はするよ~、無からは何も生まれないよ~」
腕を引き抱きついてくる/彼女の柔らかい感触が伝わってくる。
少々気まずい――話題を出す。
「何を研究してるの?」
「うーとね、不確定の確率を物体に定着させる収束系魔法の実用化」
「......量子物理?」
「うん、でもね。シュレディンガーの猫を魔法化しよとしてるの、でもなんか実現しないだ。観測者を自分にしたらまずいのかな? 生きてる状態になっちゃうんだ」
「不死に近い状態を作ろうとしてるか......さすがに学校の設備じゃ不足してるよ」
「そうなの。でもね、《あの理論》なら不死は作りだる」
「あの理論? どんな?」
彼女はにこっと笑って言う「ヒミツ」
研究者の探求の毒が抜かれてしまう。
子供が過大な知識得ている――彼女に対する真紅朗の評価だ。
大切な友でもある。
「以外だなちゃんとした研究してるんだ。しかも君の苦手な収束・放出系魔法の研究なんて」
「そうでしょ! もっと褒めて褒めて!」
嬉しそうにひょんひょん跳ねる/それに合わせ大きな胸も跳ね回る。
青少年には刺激が強い――目をそらす。
視線の先に親友の姿――一条将輝。
その隣を並んで歩く女性――ナナ・イースター。
会話が盛り上がっている――両者楽しそうに笑っていた。
「ナナちゃん、いい雰囲気......」
吉祥寺を盾にするようにその状況を覗く灯子――羨みそうに。
「いいなー、灯子もほしいな」
ぱっと吉祥寺の顔を見る/目を輝かせる灯子。
「ぼ、僕!?」
「量子だって恋をするさ。だからわたし達も恋をできよ!」
「えぇー」
幼女や幼女体型に好意を持たれ続ける吉祥寺。
数メートル離れた電柱に人影――真紅朗たちの様子を遠巻きに見ていた大隅。
ぼそりと呟く。
「ろ、ロリコン......」
***/****
淡々と過ぎていく時間/耳に入る授業の始まり――退屈な時間。
ずかずかと教室に入ってくる沖山先生――バインダーに資料を大量に入れ、いつもの着崩したスーツ。
「よっしゃ、授業するぞー。魔法歴史な」
資料を広げ授業を始めた。
「今日は
タブレットに送られるデータ/何度も見返した資料の数々。
「魔法的な性質を持つオーパーツを意味する物質、これらを
「日本刀です」
「
タブレットを操作する/送られてくる画像/文献。
「一本目は備中青江派の刀工・青江貞次の作とされるものだ。有名な呼び方では『にっかり青江』これは伝承で女性の幽霊を切ったとされている。成分検査やサイオン検知をしたところ青江の使われたとされる
タブレットの振動/また送られてくるデータ。
「次だ、これは刀は身震いするほど飾り気が無く無骨で日本刀のキャッチコピーの“折れず曲がらずよく切れる”をもじって“折れず曲がらず同田貫”などとも言われていた刀鍛冶達が作った刀だ。九州肥後国、今で言う熊本を本拠地に、永禄頃から活躍した刀匠集団が作ったとされる同田貫、その中で
タブレットの振動/また送られてくるデータ。
「次は南北朝時代に、南朝方として戦った肥後国の武将
タブレットを置き話し出す/身振り手振りで話す。楽しそうに。
「これらに使われた
教壇を降りゆっくりと歩いていく沖山――行先には
「三島! 三種の神器の一つ天叢雲剣の使用
声に驚いた灯子/丸まっていた背がぴんと伸びる。
「
忌々しそうに舌打ち/灯子が眠たそうにあくびを一つ。
「お前のせいで説教のタネが減りそうだ。そうだヒヒイロカネだ。天叢雲剣に
チャイムが響き授業の終わりを知らせる/音に反応し資料を収めだす沖山。
「よし、終わりだ。予習しとけよ、号令!」
立ち上がる窓の外を見る/10月ともなれば日の傾くのも早い。
夕日の赤にビジョンがチラつく。
研究所の日々――焔の揺らめきの刀を持つ少女の影を。
***/****
共に足を並べ帰る――ここ最近は決まって銃の話。
さらに深く知識を得ようと質問や提案をする将輝/そのれを真摯に返すナナ。
楽しく/嬉しい時――時時刻刻と過ぎる。
家に着いてほしくない/まだ話していたい――そう心の中で思う。
「ナナの撃っていた銃、俺も早く撃てる様になりたいな」
「五〇口径リボルバーは将輝には早いわ、今撃ったら腕を痛めちゃう」
「君はもっとでかいのを撃っていたな」
「五六口径はウフコックが作った物よ、そうそう撃たしてくれないわ。それにあれを彼方が撃ったら腕を壊す何処ろじゃなく腕が無くなっちゃう」
「......聞かなかった事にしておこう」
「ふふ」
人とこんなに楽しく会話が出来たのは初めてだ/殆どがいがみ合いや、素っ気ない会話ばかりだった。
傾いた日が影を照らす――その影を見て不意に思う。
私かこれは?
他の子供達のために他の人間を送り続けた――彼らが飽きないために。
そんな事を考えると冷めていく/気持ちが/気分が。
見えてくる一条邸――その先のナナの家。
家の前に車が一台止まっている――見ない車。
街灯にカメラを
車が止まる/ドアが開き降りる人物。ノイズが走る。
「どうした? ナナ」
「ごめん、将輝。今日の練習は無理になっちゃった」
「そうか、そいつは残念だ」
一条邸に着き将輝と分かれる/足早に離れる。
チョーカーになっているウフコックをオートマチック拳銃に
門に手を掛ける――防犯装置が機能していない。玄関のノブに手を掛ける。
電子ロックが外されている。開ける。
ヒールが玄関に置かれている。
「やけに礼儀正しい強盗ね」
セーフティーを外す/スライドを引く事。客間に気配。
上がり向かう。
ソファーに腰掛ける人物。
黒の髪/後ろで束ねたポニーテール。
肌の感覚では女性/メリハリのあるプロポーション。
「あら、おかえりなさい。勝手に上がってごめんなさい」
無頭竜では顔を合わせなかった藤林 響子であった。
どうも、こんにちはこんばんは。運珍です。
祝!お気に入り100突破!
いつも読んで下さる皆様に感謝申し上げます。
前回の投稿で今までに無い位のUAの伸びようにビビッてしまった運珍です。
さて今回はなんちゃって授業を書いてみました。どうだったでしょうか。
日本刀を引き合いに出したのは私の趣味です。
決して最近流行の『刀剣乱舞』に乗って出したわけではありません。
私が刀の知識を手に入れだした理由は『装甲悪鬼村正』です。
次回大まかなストーリーは考えていますが細かいところはまだなので。
投稿が長くなるかもしれません。ではまた、ばいばい。
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