ブラック・ブレット 星の後継者(完結)   作:ファルメール

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最終話 新世界へ

 

「さてと……私達も、そろそろ行かなきゃ」

 

 ルイン・フェクダは何気なくそう言って歩きだした。小町と影胤・小比奈ペア、それに100名のイニシエーター達は当然のように彼女に従い、民警達も暫くは呆けたようにその姿を見送っていたが、数秒ほどの間を置いて「はっ」とした顔になった蓮太郎がXD拳銃を彼女の背中に照準した。

 

 彼の姿を見て他の幾名かのプロモーターも、銃口を彼女に向ける。

 

「どさくさに紛れて逃げる気だろうが、そうは行かねぇ。お前達の身柄を拘束させてもらう」

 

「心配しなくても、綾耶ちゃんとの約束通り必ず出頭するわ。仲間を説得しに戻るだけだから」

 

 無数の銃口を前にしても、ルインは少しの緊張も見せずにしれっと言い放った。

 

「……それを、信じろってのか?」

 

 蓮太郎の反応も当然である。ルインの言は、浮気した妻が「もう二度とこんな事はしないから」という言葉を信じろと言っているのに等しかった。

 

 小比奈は小太刀を抜き放ち、100名の群星達は応戦すべく手にしたライフルやショットガンを構える。

 

 アルデバランを失い統制を欠いたガストレア群を撃退したばかりと言うのに、今度は人間同士の戦いが勃発するのかと思われたが……

 

「まぁ、待てよお前等」

 

 その火ぶたが切って落とされるのを阻止したのはこの場の最高責任者である枢であった。ぱんぱんと手を叩いて場を統制し、銃を下ろせと両陣営に指示する。

 

「止めとけ止めとけ。ここで俺等が争ったら、どっちも無事では済まねぇ。そうなったら東京エリアを衛る者が居なくなる。そりゃ拙いだろ。心配すンな。こいつらは逃げやしねぇよ」

 

 彼の判断を受け、当然と言えば当然の流れでプロモーター達から抗議の声が上がるが、そこは枢が「責任は全て俺が取る」と鶴の一声で黙らせた。

 

 実際には、このやり取りもマッチポンプである。何しろ一色枢の正体は“七星の一”ルイン・ドゥベなのだ。同志である“七星の三”ルイン・フェクダに不利な提案など、する訳が無い。

 

 とは言え、フェクダの言葉も嘘ではない。未踏査領域で綾耶と交わした約束は、全てが本当だ。仲間を説得する事も、東京エリアに協力する事も。

 

「またね、綾耶ちゃん……私は、あなたの事が好きだから……だからどうか……長生きしてね」

 

 ルイン・フェクダはそう言って、優しく綾耶の頭を撫でる。抵抗はせずに上目遣いで綾耶が見た彼女は、目も顔も嘘を吐いてはいなかった。綾耶は一つの確信を抱いて、会心の笑みを見せる。きっと自分達はこの先、手を携えて一緒に同じ未来を見て進めると。

 

「ルインさんも、お元気で。早めに戻ってきて下さいね。忘れないでよ、僕達の戦いはまだ始まったばかり……いえ、これからの戦いこそが、大変なんですから」

 

「……そうね」

 

 やはりこの子は、大切な事を自然に分かっている。生まれ持った気質か、良き出会いを重ねてきたのか、あるいはその両方であろうか。ルインは満足そうに笑って頷いた。

 

 ガストレアとの戦いなど、取るに足りない些事でしかない。

 

 本当の戦いとは、この世界を救う事。

 

 10分の9が殺されても未だ団結せず破滅への道を辿る人類に新たなる視座を与え、より良き存在へと導く事。真にこの地球を受け継ぐに相応しき存在「星の後継者」へと。

 

 そして綾耶こそが自分が知る限り「星の後継者」に最も近い存在であると、ルイン・フェクダは思う。

 

 他者を慈しみ、友を愛し。大切な人を奪われながらも奪った者達と世界を衛り、会った事も無い誰かともう二度と会わないかも知れない誰かの涙の代わりに自分の血を流す事を恐れない勇気を持つ。そんな綾耶は、光だ。この絶望の闇に閉ざされた世界で、進むべき道を示す灯台の燈。

 

 喪わせはしない。絶対に。

 

 

 

 

 

 もし。仮に。歴史の流れに“もしも”は無いが……それでももしも、綾耶と出会った”ルイン”が三番目(フェクダ)でなかったのなら。あるいはこの時、蓮太郎や木更、もしくは彰磨が団長である枢の反対を押し切ってルイン・フェクダを拘束していたとしたら……

 

 その時は、東京エリアの……人類の……そして地球の運命はまた違った方向へと流れていたであろう。

 

 

 

 

 

「木更さん、大変だ!!」

 

 第三次関東会戦の勝利から二週間が経過したその日の朝、息せき切った蓮太郎が蹴破る勢いでドアを開き、事務所へと飛び込んできた。

 

「どうしたの里見くん、朝からそんなに慌てて……」

 

「テレビを見ろ!! 和光義兄さんが大変な事になってるぞ!!」

 

「!!」

 

 和光、天童和光。自分にとって仇の一人であるその男の名を聞いて、木更はぴくりと眉を動かした。

 

 若くして国土交通省副大臣という要職に就いている彼だが、しかしその裏では32号モノリスに使用されるバラニウムに不純物を混入させて浮いた工費の一部を懐に入れている。木更はその証拠を掴んでおり、これをネタに彼を引きずり出して父母の死の真相を聞き出そうと考えていた。

 

 それにしても蓮太郎の様子は只事ではない。何が起こったのかと取り敢えずリモコンを取るとスイッチを押す。

 

 映し出されたニュースを見て、彼女が言葉を失うのに時間は要らなかった。

 

<今朝早く、国土交通省副大臣・天童和光氏が自宅の一室で首を吊っている所を発見されました。和光氏はすぐに病院へと搬送されましたが、既に死亡している事が確認されました>

 

<本日未明、天童和光国土交通省副大臣が、32号モノリス建造に当たって使用されるバラニウムに不純物を混入し、浮いた金を着服している事の自白動画がネット上に公開されました。天童菊之丞閣下はこの件に関してはノーコメントを貫いておられますが、映像・音声の専門家による分析によるとこの動画の証拠能力は極めて高く……>

 

<警察は二つの事件についての関連性についても捜査を……>

 

 どのチャンネルでも、同じニュースを扱っている。

 

 木更はしばらくは立ち尽くしたまま呆然と報道を見ていたが、やがて全ての力が抜けたように社長椅子へと体を投げ出した。

 

「き……木更さん……」

 

「悪いけど、里見くん……しばらく、一人にしてくれるかしら」

 

「で、でもよ……」

 

「お願い」

 

 消え入りそうな声でそう言われて、蓮太郎はそれでも食い下がろうとしたが何も言う事が出来ずに「何かあったらすぐに連絡をくれ」とだけ言って退出していった。

 

 残された木更は、思わず下腹部を押さえる。ここ暫く治まっていた痛みが、ぶりかえしてきたようだった。

 

 十年年掛けてここまで来て、やっと復讐の手掛かりを掴んだのに。

 

 机の棚から書類を取り出す。ここには和光の不正の証拠と、それによって彼が得た金の流れが克明に記されている。

 

 これは十年も待ち望んだ復讐の足掛かりであり、天童へ肉迫する為の手掛かりでもあった。これを手にする為に木更は多大な労力と膨大な時間、多額の資金を費やしてきた。そうまでして手に入れた切り札は、一夜にして無価値な紙切れと化した。そして仇の一人も、もうこの世には居ない。

 

 こんな筈ではなかった。今日にも和光に連絡を取って、天童流の道場へと呼び付けて、そこで復讐を果たす筈だったのに。

 

 これからどうすれば良い? 自分の十年は何だったのだ?

 

 復讐など止めろと、運命が言っているのだろうか? 両親の魂が、闇に堕ちるなと叫んでいるのだろうか?

 

 考えて、木更は自嘲するように首を振った。

 

「それでも……私はもう、止まれない。止まる訳に行かない」

 

 余命は全て、復讐の為に費やすと誓った。

 

 今の自分にとって、復讐する事は生きる事に等しい。復讐を止めたら、自分は死ぬ。

 

 ぎりっと、噛み締めた歯が鳴った。

 

「私の息がある限り、天童を皆殺さずにはおかない……!! お父様お母様の仇は、全て地獄に送ってやる……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 綾耶の実家である教会を校舎として使っている第39区第三小学校。

 

 第三次関東会戦終結と共に都市機能が麻痺していた東京エリアの各施設は徐々に機能を取り戻しつつあり、学校も再開しつつある。青空教室に毛が生えたようなこの学校も例外ではなかった。

 

 礼拝堂を利用した教室では、呪われた子供たちが興味津々という顔で目を輝かせている。彼女達の視線は一様に、教壇に立つ二人へと注がれていた。新任の先生と、転入生の少女へと。

 

「あぁ……今日からお前達の教師をする事になった、薙沢彰磨だ。よろしく頼む」

 

 彰磨はサンバイザーを外すと、ホワイトボードに達筆な字で名前を書いて自己紹介する。

 

 しかし子供たちは反応を示さず、じっと彰磨を見詰めているだけだ。

 

「趣味は……鍛錬、だな……天童式戦闘術の、八段を修めている」

 

 ガストレア相手には八面六臂の活躍を見せる達人も、子供相手では勝手が違うらしい。戸惑いが前面に出てしまっている。

 

「……他に何か、質問があるか?」

 

「「「ハイハイハイハイハーーイ!!!!」」」

 

 壁際に立ってこれを見ている蓮太郎は、思わず吹き出しそうになった。以前の自分もちょうど、今の彰磨のようだった。

 

 と、続いては転入生の紹介だ。

 

「……布施翠といいましゅ。特技は匂い占いです」

 

 とんがり帽子を外してお辞儀する翠。露わになったネコミミを見て、子供たちはわっと彼女へと駆け寄る。

 

「わぁ、かわいいーっ」「その耳、ホンモノですか?」「触っても良いですか?」

 

「にゃ、にゃあああっ!?」

 

 もみくちゃにされる彰磨と翠を遠目に眺めつつ、蓮太郎はすぐ傍に立っていた松崎へと向き直った。

 

「そう言えば、琉生先生は居ないのか?」

 

「あぁ、彼女でしたら今日は大切な用事があるとの事で、お休みされているのですよ」

 

「ふぅん?」

 

 別段それ以上疑う意味も無いので、納得した蓮太郎は話を切り上げると、逆隣に立っているティナを見た。

 

 戦闘終結後、ソニアの特攻を知らされた彼女はまず泣き叫び、その後は部屋に閉じこもって誰にも会わない日々が続いていた。こうして外へ出てこれるだけでも、随分と回復したと言える。

 

 とは言え、完全とはとても言い難い。光のような金髪には艶が無く、枝毛も目立つ。顔色も悪くあまりよく眠れていないのだろう、目許にはうっすらと隈が見える。綾耶がこの様子ではとても聖室護衛隊の任を果たす事など無理と判断し、しばらくは心の静養も兼ねてこの学校で過ごすようにと言ってきていた。松崎老人にも気を遣ってやってほしいと話は通っており、無論彼は快く了承してくれていた。

 

「ティナ……もう、良いのか?」

 

 どこか腫れ物に触るような蓮太郎の言葉を受け、ティナは寂しそうに微笑んで返した。

 

「ええ、蓮太郎さん……お姉さんが、言ってくれていましたから。もう、会えない世界でも生きてって……だから私は」

 

 言い掛けたティナの頭が、脇から伸びてきた手に引っ張られて、ぐいっと引き寄せられた。ティナの頭を掻き抱いたのは、延珠だった。

 

「延珠……さん?」

 

「良いのだ、ティナ。我慢する必要など無い。泣きたい時には泣け。妾の胸で良ければ、いつでも貸させてもらうぞ」

 

 ウサギのイニシエーターはそれ以上は何も言わずに、ティナを抱き締めていた。フクロウのイニシエーターは、しばらくは戸惑ったように無言であったがやがて、堪えきれなくなったのだろう。その体が震え始めた。蓮太郎には見えないが、泣いているのだろう。

 

 パートナーと視線を合わせて、蓮太郎と延珠は頷き合った。今日は綾耶は居ないが、彼女がここに居ればきっとそうしただろう。

 

「あれ? そういやぁ、綾耶はどうした?」

 

「蓮太郎さんはご存じなかったですか?」

 

 声を掛けてきたのは、夏世だった。

 

「綾耶さんなら、今日は聖居ですよ。聖天子様の政策発表に立ち合うと言ってました」

 

 

 

 

 

 

 

<この国難を乗り切った我々に、再び融和の機会が訪れたのです。ガストレア新法を成立させる事こそが、この戦いで亡くなった多くの人々への鎮魂になると信じます。私達は今、本来ならば年端も行かぬ子供たちに、あまりにも多くの物を背負わせてしまっています。今はそれ以外に、選択肢が無いのかも知れません。ですが未来にはきっと、彼女達が重荷を下ろせる日が来る筈です。いえ、私達が必ず、その日を創るのです!!>

 

 聖居に詰め掛けた五千とも一万ともつかない群衆は、聖天子の演説が終わると同時に喝采と、万雷の拍手を贈る。

 

 この東京エリアが大絶滅を乗り切った最初のエリアとなった事。そしてその最前線で戦った一人が、聖天子の傍に侍る綾耶である事。それらの要素が重なり合って、世論は戸籍剥奪法が国会で棄却されガストレア新法承認へと傾いている。

 

 しかも法案制定に反対派である菊之丞の派閥は今、身内の不祥事によって致命的にではないにせよ一時的に力を失っている。そういう意味でも聖天子が新法を制定しようとするのなら、今を於いて他にはなかった。

 

 鳴り止まぬ拍手に手を振って返すと、聖天子は降壇して聖居の奥へと戻っていく。綾耶はその後を影のように付き従っていた。

 

 私室に戻ると、綾耶は何も言わずに煎れたお茶を聖天子に差し出す。国家元首は目礼して感謝を伝えると、カップに口を付ける。そうして「ふうっ」と一息吐いた。

 

「お疲れ様でした、聖天子様。素晴らしい演説でした」

 

 それまでは沈黙を貫いていた綾耶が、ここで初めて口を開いた。

 

 これはおべっかではなく、偽らざる彼女の本音である。少なくとも綾耶は、先程の聖天子の演説に感動を覚えていた。

 

 本当にこの東京エリアの、そして世界の未来を真剣に考えたいと、そう思わせるような見事な演説だった。

 

「ガストレア新法は、今度こそ制定されるでしょう。これで……沢山の呪われた子供たちが救われます。聖天子様には……この東京エリア全ての呪われた子供たちを代表してお礼の言葉を申し上げます」

 

 だが、それを受けて聖天子はとても悲しそうな顔になった。綾耶は戸惑ったようになる。いつもなら、優しく微笑み返してくださる筈なのに。

 

「綾耶……私が何故、ガストレア新法を成立させようとしていたのか……分かりますか?」

 

「それは……聖天子様がお優しい方だから……」

 

 ここで、やっと聖天子は笑みを見せた。だがそれは、深い悲しみを内に湛えたものだと綾耶にはすぐ分かった。

 

「……勿論、呪われた子供たちが健やかに育つようにと……その想いも決して偽りではありませんが」

 

 一度言葉を句切ると、若く美しい国家元首は手を振って側に来いと綾耶を呼ぶ。そうしてとてとてと近付いてきた自分のイニシエーターの頭を、聖天子はそっと撫でた。

 

「私がガストレア新法を発案した切っ掛けは……あなたなのですよ、綾耶」

 

「ボ……私、ですか?」

 

「そう……言いましたよね? 私はあなたを、妹だと思っていると。妹の幸せを願わない姉など、この世には居ませんよ」

 

 ソニアの、ティナへの想いを綾耶は思い出してぐっと言葉に詰まる。あれと同じものを、聖天子様は自分に向けてくれていたというのだろうか。だとしたらこれに勝る喜びは、彼女には想像出来なかった。

 

「……私は政治家として失格なのでしょうね。こんな個人的な感情で、法を定めようというのですから。国家元首という立場を使って自分の願いを叶えようとする私は、誰より浅ましいのかも知れません……でも……それでもあなたには……幸せになって欲しいのです」

 

 誰より尊敬する人からこれほどに想われていると知って、綾耶は涙を堪える作業に多大な労力を割かねばならなかった。

 

 一分ほどそうしていて、やっと涙腺が落ち着いた所で彼女は「失礼します」と先に断っておいて、背伸びすると両手を伸ばして聖天子の頬に触れた。

 

「……綾耶?」

 

「聖天子様、僕は今でも十分幸せです」

 

 実際に、自分は恵まれていると綾耶はそう思っている。勿論、両親を反ガストレア団体が起こしたテロで殺されている時点で幸せばかりの人生という訳ではない。だがそれでも雨風凌げる場所で暮らして、暖かい布団で寝て、飢えに苦しむ事もない。何よりも、数は多いとは言えないが自分を受け入れてくれる人達が居る。

 

 差別されて不当な暴力に晒されるどころか、嬰児の段階で人知れず殺される事すら珍しくない呪われた子供たちの中では望外の幸運に恵まれていると言えるだろう。

 

「だから僕は、その幸せを他の人にも分けてあげたいんです」

 

「……そうですか」

 

 聖天子は椅子から立つとしゃがみ込んで、綾耶と目線の高さを合わせた。

 

「……聖天子様?」

 

 主の意図を掴みかねて、綾耶はきょとんと首を傾げる。少しだけ間を置いて、聖天子が尋ねてきた。

 

「……綾耶、あなたを抱き締めて良いですか?」

 

「はっ?」

 

 一瞬、聖天子が何を言っているのか分からなくなって綾耶は間の抜けた声を上げてしまったが、瞳を見てこれが真面目な話だと察するとすぐに態度を改めた。

 

「はい、ぼ、私で良ければ……」

 

 了承の意図を受けて、聖天子はほっそりした両手を綾耶の背中に回し、小さな体を抱き寄せた。綾耶は抵抗する事もなくされるがままに任せている。

 

「……この世界に、あなたほど優しい子は居ませんよ。私は一人の人間として、あなたの優しさと勇気を尊敬しています。あなたのような子こそが……これからの世界に必要なのです。それなのに……それなのに……!!」

 

「……聖天子様?」

 

 聖天子の体は、震えていた。

 

 最新の検査によると、綾耶の体内侵食率は30.9%。予測生存可能日数消費まで、残り1530日。およそ、4年と少し。

 

 たったそれだけ。

 

 現在の技術では、どう足掻いても綾耶は成人するまで生きられない。

 

 聖天子にとって、綾耶と過ごしているこの一日一日はずっと別れの一部なのだ。その先にある、綾耶が居ない永遠への。

 

 何故、この子が。こんなに優しい子が、どうして大切な人と結ばれる事もなく、子を授かる事もなく死ななければならない?

 

「……死なないで……逝かないで……何でもしますから……一緒にいて下さい……!! お願いです……!!」

 

「聖天子様……どうか、泣かないで」

 

 主の嗚咽を受けた綾耶の小さな手がすっと動いて、美貌を伝っていた涙を拭った。

 

「僕はもう……聖天子様からあらゆるものを頂いています。もう、十二分に。それでも、聖天子様が僕に与えていないものがあるとお思いでしたら……どうか、その分は今この世界に生きている全ての人と、これから生まれてくる子供たちにあげてください。僕が居なくなった後に……僕が見られなかったものをその人達に見せてあげて下さい。モノリスの無い景色を……どこまでも走れる大地を……同じ空を……」

 

「綾耶……」

 

 聖天子はこの時、綾耶の両親に会いたくなった。こんなに優しい子に育つのだ。立派な人達であったに違いない。

 

 そう思った時、聖天子は一つの事に気付いた。この子とはそれなりに長い時間一緒に居たが、自分は今の今まで重大な勘違いを犯していた。

 

 綾耶は、特別な子だと思っていた。これほど優しく、勇敢な子が特別でなくて何なのかと。

 

 でも違う。違っていた。綾耶は特別でも何でもない、普通の女の子だ。彼女が持っている光は、彼女の親から受け継いだもの。そして綾耶の両親もまた、その親かあるいは近しい人から光を継いでいたのだろう。

 

 綾耶はきっと聖天子を残して逝ってしまう。でも彼女が遺していく光は消えはしない。受け継ぐ者が居る限り。継いだ者はその光を守り、更に力強く輝かせる。今はまだ螢のようなその光は多くの人へと伝わりながら星となり、月となり、太陽となるだろう。

 

 そうして人がより良き存在となり、世界をより良く変えていく事こそが本当の命なのだ。

 

 聖天子はもう一度強く、綾耶を抱き締めた。

 

「あなたと会えた事は……私の誇りです、綾耶……どうか、一日でも長生きして下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 東京エリア上空数千メートル。雲の平原を眼下に臨むその景色を、巨大な飛行船がゆったりと進んでいた。

 

 こんな形状の飛行船は、古今東西どこの国の企業や空軍にも存在していない。

 

 それも当然、これは個人の発注によって造られた物であるからだ。

 

 いつの時代にも、あまりにも先進的な発想の為にその分野から爪弾きにされる天才は存在する。この飛行船を設計したのも、航空部門では狂っているとしか思えないアイディアを提出して業界から干されたエンジニア達だった。彼等の狂気のアイディアは、無尽蔵の資金を持ったスポンサーによって具現化される事となった。スポンサーとは、当然ルイン達だ。

 

 ルインには、モデル・ブランクのガストレアウィルスとウィルス適合因子によってどんな姿にでも変身する能力がある。この力を以てすれば、大金を手にする方法などダース単位で用意する事が可能だった。

 

 この飛行船は、無着陸で空中を移動する基地として設計されている。更にステルス機能によって電子探索は勿論、機体全面に施された光学迷彩システムによって肉眼での発見も不可能な、まさに見えざる天空の神殿であった。

 

 そして神殿には、祭壇の間が付き物である。

 

 その祭壇には今、同じ顔をした女性が8人、それぞれ傍らに呪われた子供たちを従えて顔を突き合わせていた。彼女達からは少し離れた所に、影胤・小比奈も姿勢を正して立っている。

 

 同じ顔の女性達は、8人のルインだ。

 

 “七星の一”ルイン・ドゥベとモデル・ウルヴァリン(クズリ)のイニシエーター、エックス。

 

 “七星の二”ルイン・メラクとモデル・パラサイト(寄生虫)のイニシエーター、アリエッタ・ディープダウン。

 

 “七星の三”ルイン・フェクダとモデル・ライス(稲)のイニシエーター、魚沼小町。

 

 “七星の四”ルイン・メグレズとモデル・オルカ(シャチ)のイニシエーター、ティコ・シンプソン。

 

 “七星の五”ルイン・アリオトとモデル・スネイル(巻き貝)のイニシエーター、アナスタシア・ラスプーチン。

 

 “七星の六”ルイン・ミザールとモデル・コーラル(珊瑚)のイニシエーター、数多群星。

 

 “七星の七”ルイン・ベネトナーシュとモデル・シースラグ(ウミウシ)のイニシエーター、アンナマリー・ローグ。

 

 “七星の番外”ルイン・アルコルとモデル・マッシュルーム(キノコ)のイニシエーター、ステラ・グリームシャイン。

 

 彼女達と、蛭子親子と、そしてもう一人。

 

「ああ、ごめんなさいね。少し、遅れてしまったわね」

 

 気安い声と共に入室してきたのは一人の少女。

 

 ボリュームのある蒼い髪をポニーテールに束ね凛とした空気を纏った呪われた子供たち。

 

 モデル・エレクトリックイール(デンキウナギ)。IP序列元11位、星を統べる雷帝(マスターオブライトニング)、ソニア・ライアン。第三次関東会戦でアルデバランを道連れに死んだ筈の彼女が、そこに居た。勿論、両足はきちんとついている。どころか、その体には目立った外傷の一つとして無かった。

 

「……生きてたんだね」

 

 小比奈が、流石に度肝を抜かれたらしくぽかんとした顔でそう呟く。

 

 彼女の疑問も当然だ。如何に呪われた子供たちが高い再生能力を持つとは言え、地形をも変える爆発の爆心地に居て手足一つの欠損も無いなど、有り得るのだろうか。

 

「驚く事じゃないわよ」

 

 と、ソニア。目に炎を点すと、ばちっと指先に火花を作ってみせる。

 

「私の電磁バリアは、最大出力で展開すれば核爆発ですら防ぎ切る。あの程度の爆発をガードするぐらいは造作もないのよ」

 

「……あ、そう」

 

 流石の小比奈も、頭痛を感じたように頭を押さえた。

 

 EP爆弾の爆心地にいて生き残っていた理由は分かったが、それを成し遂げた理由がムチャクチャだった。本当に、ソニアは常識を超越している。何でもありにも程があるというものだ。

 

「……それで、良かったの? あなたさえ良ければ、今からでもティナちゃんの所へ帰っても……」

 

 気遣うように言ったのは、ベネトナーシュだった。彼女は39区第三小学校の教師・琉生としての顔を持ち、他の面々と比べてもソニアやティナと過ごした時間が長い。だからこその問いだった。

 

「分かってるでしょ? 私が生きている限りティナや、周りの人達は安全じゃないって。だから、私は死ぬ必要があったのよ」

 

 あの時、綾耶に語った言葉は嘘ではない。寧ろ本当の事が多い。

 

 最強のイニシエーターであるソニアの力は、比類無く強大だ。

 

 周囲数キロの砂をガラス化させる程の電熱を生み出し、あらゆる金属を操り、電位レーダーで周囲の状況を把握し、星の裏側の地殻変動を操り、マッハ400以上のスピードで走り、超電磁砲・粒機波形高速砲を撃ち、マイクロブラックホールすら作ってみせる。一個人が持って良い力の範疇を、遥かに逸脱している。

 

 ソニアを手に入れる事はそのまま世界を手に入れる事にも等しい。逆に手に入れられないなら、その力が自分達に向けられる可能性がある。ならば殺さねばならない。そうした欲と恐怖に取り憑かれた連中は叩いても払っても湧いてくる。自分一人だけならそれこそハエのように払って終わりだが、周りにティナや綾耶、戦う力を持たない子供たちが居るのではそうも行かない。

 

 だから、ソニア・ライアンは死ななければならなかった。

 

 まず、翠を救った後で駆け付けた木更達の記憶を書き換えた。人間の思考・記憶とは、極論すれば脳内での電気信号。電気を操るソニアは微弱電流を綾耶へ用いて彼女が忘れてしまっていた記憶を蘇らせたように、数十分前までの事象なら頭に触れた人間の記憶を書き換える事が出来るのだ。

 

 そうして3回目の出撃を2回目と誤認させたソニアは、回帰の炎を動かした3回目(実際には4回目)の能力使用の際、ウィルス適合因子の恩恵による形象崩壊のコントロールによってガストレア化間近を装い、アルデバランに特攻する”口実”を作った。EP爆弾の爆心地に居れば、死体が見付からなかったとしても不自然ではない。勿論、司馬重工でEP爆弾が開発中であるという情報は事前に電磁波を操って行ったコンピューターのダイレクトハッキングによって入手している。アルデバランを確実に倒す為には、これが使われるだろうと彼女はアタリを付けていた。

 

 全ては計画通りに進み、そして見事にソニア・ライアンは“死んだ”。こうなれば、最早彼女は追われる事もない。周りの者が、巻き込まれる事もない。

 

 後一つ、懸念すべき事があるとすれば……

 

「ティナちゃんは、良いの?」

 

「綾耶ちゃんが居れば、大丈夫よ。あの子が一緒なら、何があっても」

 

「そう……」

 

 琉生先生として綾耶を知るルイン・ベネトナーシュは、それ以上は何も言わなかった。

 

「じゃあ……本題に入るとしますか」

 

 進み出たルイン・アルコルが白衣のポケットから取り出したリモコンのスイッチを押すと、床全体がモニターとなって複雑な化学式や元素記号が表示される。

 

 イニシエーター達はその意味がさっぱり分からないという様子であったが……アルコル以外の7人のルインは一様に喜色を浮かべた。

 

「とうとう……完成したのね」

 

「CLAMPが……」

 

「10年の時を越えて……」

 

「遂に……私達の夢が叶うのね」

 

 感無量という風にプロモーターだけで盛り上がって、イニシエーター達は居心地が悪そうになった。エックスが、主の袖をくいっと引く。

 

「……マスター・ドゥベ。クランプって何? 教えて」

 

「ああ……ごめんなさいね、エックス。じゃあ、アルコル……お願い」

 

 白衣を羽織ったルインの一人は頷いて、進み出る。

 

「CLAMPとはつまり……天秤宮(リブラ)の殺人ウィルスのデータをフィードバックして完成させた空気感染型ガストレアウィルスと、侵入した生物にガストレアウィルス適合因子を組み込む機能をプログラミングしたナノマシンの事よ」

 

「く……空気感染型ガストレアウィルス……!!」

 

 小町が、ぞっとした顔になった。

 

 ガストレアウィルスによって人間が滅亡していないのは、偏にこれが血液感染しかしないという特性による。ガストレアを食べたり性交したりしても、感染する事はない。だが、アルコルが品種改良によって作り出したこの新型ウィルスはそれを覆す。これだけなら、まさに人類史を終わらせる悪夢である。

 

 そこで物を言うのがもう一つ、ウィルス適合因子を組み込む機能を持たせたナノマシンである。ナノマシンとはつまり極小の機械、人工のウィルスと呼ぶべき物だ。

 

「ここで問題。当たったら50点獲得よ」

 

 いつも通りの調子で、アルコルが尋ねる。

 

「この二つをバラ撒いたら……世界に何が起こると思う?」

 

 イニシエーター達はそれぞれ顔を見合わせて、ややあってはっとした顔になって視線をアルコルへと集中させた。

 

「そう、最初に散布したナノマシンによってウィルスへの適合因子を持った人達の頭上に、空気感染するガストレアウィルスが降り注ぐ……すると……?」

 

「適合因子を持った人達は、当然ガストレア化しない……」

 

「ウィルスの保菌者になる……」

 

「私達、呪われた子供たちと、同じような……」

 

「つまり……」

 

「全ての人が、イニシエーターになる?」

 

「見事に50点獲得ね」

 

 上機嫌に、くっくっと喉を鳴らすアルコル。

 

「補足するなら、まずは散布するのはこの東京エリアだけに限定するつもりよ。流石にいきなり世界全部に散布するのはリスクが大き過ぎるし……それに、住民全てがイニシエーターになったエリアの統治をどのように行うのか……そのモデルケースが必要になるからね」

 

 ルイン達がアルデバランの侵攻から東京エリアを衛ろうとした理由が、これだったのだ。最悪CLAMPに何かしらの不具合があった場合でも、被害はエリア一つ分で止まる。

 

「マスター・ベネトナーシュ、どうして人類全てをイニシエーターにするのですか?」

 

「平和な世界の為よ」

 

 アンナマリーの問いに、ベネトナーシュが答える。

 

「アン……この世の全ての争いは、詰まる所……あなたは私と違う。此方は彼方と違う……そこから始まるのよ」

 

「人は今まで、住む所・貧富・肌の色……そんなものを理由に、あるいは拠り所として争いを続けてきたわ……それは2000年前から今まで、残念ながら変わっていない」

 

「でも、今の世界では人類同士の争いは驚くほど少なくなっている」

 

「それはガストレアという、時間には左右されない絶対的な敵と、紅い目を持った呪われた子供たちという分かり易い“差別階層”が生まれたから」

 

「特に後者……要するに“紅い目ではない”というのが、差別する人達の拠り所であるのよ。ならば、それが“無ければ”? ある日、一瞬にして喪われたのなら?」

 

「人種差別だって、ガストレアがこの地球に現れる前の時代では既に、声高に叫ぶような人は極一部に限られていたのよ? それは差別意識を持つ事は恥だという、健全な理念を人が獲得しつつあった事に他ならない」

 

「でも残念だけど、理念と感情は別物……差別の意識は、未だ全ての人の中に燻り続けていた。不用意に触れれば爆発する、不発弾のように……それは、今の世界で差別されている呪われた子供たちを見れば分かるわね?」

 

「だから私達は……その不発弾の信管をブッ叩くのよ。CLAMPを使って……!!」

 

 ルイン達が代わる代わる、説明していく。

 

「危険では……?」

 

 ティコの疑問も、尤もであった。

 

「そう、危険で乱暴な方法ね」

 

「でもどんなに危険な方法でも、その壁を乗り越えない限り……この世界から差別は無くならない……!!」

 

「本当ならこれは、10年前に成される筈の事だったのよ……」

 

「私達は、ずっとその為に研究していた」

 

「一姫(かずき)ちゃん、双葉(ふたば)ちゃん、来三(くるみ)ちゃん、五澄(いずみ)ちゃん、六花(りっか)ちゃん、七海(ななみ)ちゃん、八尋(やひろ)ちゃん、九音(くおん)ちゃん、乙十葉(おとは)ちゃん、土萌(ともえ)ちゃん、王里栄(おりえ)ちゃん……あの子達も、その為に……」

 

「あいつらの、暴走さえなければね……」

 

「まぁ……過ぎた事は良いわ」

 

 ぱん、と手を叩いてアルコルが締め括る。

 

「さて、このCLAMPだけど……使うには、私達8人の全員一致が大原則なのよ」

 

 ルイン達にしても、このCLAMPがどれほどの劇薬であるかは百も承知。それ故の全員一致だった。

 

「それで、フェクダ……あなたの意見は、変わらないの?」

 

 実は8人のルインの中で、三番目のルイン・フェクダだけはCLAMPの即時使用には反対していた。

 

 彼女達が生み出す事を目的とする星の後継者とは、人間が肉体・精神の両面でより良く進化した新たな種である。CLAMPはその開発コードの通り、肉体面を進化させて現行の人類と星の後継者を繋ぐ鎹(かすがい)だ。だが肉体だけが進化しても……と言うのが、フェクダが反対する理由だった。

 

 ガストレアとの戦いが永遠に続き、人間同士で争うという概念が消滅したその時にこそ、CLAMPは使われるべきだ。その時こそが、星の後継者が誕生する栄光の日なのだと。それまでは自分達ルインはCLAMPを守り続け、その日が一刻も早く来るように、人類を導くべきなのだと。

 

 それがフェクダの意見だった。

 

 昨日までは。

 

「いえ……私も、CLAMPの即時使用に賛成するわ」

 

「フェクダ……」

 

「良いの? 私達に気を遣っているなら……」

 

 ドゥベとミザールの問いに、フェクダは首を振って返す。

 

「そんなんじゃないわ……私は、もっと個人的な事情でこの案に賛成票を投じるの」

 

 CLAMPの効果は、人類全てをイニシエーターにするだけではない。ガストレアウィルス適合因子を全ての人が持つようになるという事はつまり、現存する全ての呪われた子供たちが完全なウィルスへの適応能力を持つようになるという事。つまり彼女達は侵食率の上昇による、命の枷から解放される。

 

「私はあの子に……綾耶ちゃんに、長生きして欲しいの。それだけよ」

 

「……そう」

 

「まぁ、良いんじゃない?」

 

「私達だって賛成する理由の、動機の根本は結構違っているんだし」

 

 メラクと、ベネトナーシュが頷く。

 

 元々10年前に起きる筈だった事が今起きるだけという意見の者も居る。

 

 同時に、あまり大きな変化が起きないではないのかという者も居た。

 

 ガストレア戦争が始まる前、アメリカ合衆国ではセルフディフェンスの為に銃の所持が認められていた。ある時、二つの市で同時に市長が替わって、銃に関して二つの市では正反対の政策が執られた。一方の市では銃器の所持を全面的に禁止し、もう一方の市では小火器や弾薬を家に常備する事を義務付けた。しかしこの二つの市で、犯罪の発生率はどちらも全く変化しなかったという。それはつまり、犯罪を犯すのは銃ではなく人であるからだ。ならば同じように力を得ても、人は変わらないのではないだろうかと。

 

 誰もが、ガストレアに抗う事が出来る力を持つべきという者も居る。

 

 使用を待っている間にCLAMPが何者かに奪われない保証は無い。ならばすぐに使うべきだという者も居る。

 

 理由は各人それぞれだがしかしこの時、8人のルインの間で、意思の統一は成された。

 

「じゃあ……始めますか」

 

 アルコルがリモコンを操作するとガコン、という音が振動と共に伝わってくる。

 

 飛行船下部の、爆撃ハッチが開いた音だ。そこにはCLAMPを充填したポッドが格納されている。計算ではこの高度でポッドを開放すれば、CLAMPは気流に乗って一日と経たず東京エリア全域へと拡散する。

 

「永遠の平和と、永遠の闘争の始まり……ヒヒッ、面白くなりますね。我が王達よ」

 

「強い奴が、沢山生まれる世界になるんだよね? あはっ、会いたいな、斬りたいな、会いたいな、斬りたいな♪」

 

 蛭子親子は壊れた機械のように、どこか調子を外して笑い。

 

「私は……見届けさせてもらうわ。ルイン、あなた達が世界への義務を……どう果たすのかを」

 

 ソニアは、少し離れた所で静かにそう言い放った。もしルイン達が自分達の理想を自ら裏切るようならば、その時は自分が裁定者としてルインを滅ぼす。それがソニアとルイン達との契約だった。

 

「さあ……始めましょう。これより全てが終わり、これより全てが始まるのよ」

 

 そうしてアルコルはCLAMP発動の最終スイッチを、押した。

 


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