ブラック・ブレット 星の後継者(完結)   作:ファルメール

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第28話 少女達の戦場(中編)

 

 強烈な蹴りで延珠を壁にめり込ませたイニシエーターは、これで脅威を完全に排除できたと判断したのだろう。恐らくはエックスと交戦中のウーパールーパーのイニシエーターを援護する為に、くるりと背を向ける。

 

 が、三歩も進まない内にその足が止まった。

 

「何処へ行く? まだ終わっておらぬぞ?」

 

 壁に叩き付けて、衝撃の逃げ場の無い状態から必殺の蹴りを叩き込んで仕留めた筈の延珠は、しかし何事も無く立ち上がってきていた。

 

 イニシエーターの表情は変わらなかったが、瞳が僅かに大きく見開かれた。これは穏やかな驚きの反応である。

 

「凄い脚力だな。明らかに妾よりも強い」

 

「……」

 

 今度は、イニシエーターの視線が僅かに左右へブレる。これは戸惑いの反応だ。

 

「今、お主が何を考えているか当ててみせよう。その脚力で蹴りを叩き込んだのに、どうして倒せない? ……で、あろう?」

 

 延珠の言葉が終わるか終わらないかという所で、イニシエーターは自慢の脚力に物言わせて再び突貫してくる。そのスピードを乗せて発射される、必殺の蹴り。まともに当たれば人間の頭蓋など容易く、熟れた果実を石畳に落としたかの如く爆ぜさせるであろうキック。先程までの蹴りの応酬では延珠を終始圧倒していた恐るべき攻撃である。

 

 しかし。

 

「シッ!!」

 

 今度は、延珠の繰り出した蹴りとぶつかって、弾く事が出来ずに止められた。

 

「……」

 

 イニシエーターは相変わらず無言だが、先程と同じように瞳が大きくなった。再び蹴りを繰り出すが、まるでビデオのリプレイのように延珠の蹴りと激突し、吹っ飛ばす事は出来ずに止められてしまった。

 

 何故!? 先程までは、明らかに自分が押していたのに。

 

 無表情ではあるが、今度は明らかに分かるほどの動揺の所作を見せるイニシエーター。延珠はにやりと笑って返す。

 

「確かにお主の脚力は妾よりも上で、蹴りの速度も速い……が、それだけだ。攻撃に移る前の動きにはクセがあり、蹴りの軌道は大振りでフォームも力任せの無駄だらけ。力も分散する。対して妾の蹴りは、小さく鋭く、最短距離を走る。だから、脚力の差を埋める事が出来るのだ……もし、お主が妾と同じように技術を使っていたのなら……恐らく妾は立ち上がれなかったであろうな」

 

「……!!」

 

 その言葉を理解出来たかどうかは定かではないが、ともかくイニシエーターは次の攻撃に移った。回し蹴り。

 

 だがそれよりも速く。

 

「シッ!!」

 

 延珠の上段蹴りが、イニシエーターの顔面を打っていた。

 

 イニシエーターは白目を剥いて、ひとたまりもなく崩れ落ちる。

 

 呪われた子供たちは保菌するガストレアウィルスの恩恵によって超人的な身体能力・再生能力を有するが、肉体の構造それ自体は(綾耶のような例外もいるが)基本的に人間と同じだ。つまり急所の位置も同じなら、その急所にダメージを受けた際の反応も同じ。延珠の蹴りの威力はイニシエーターの脳を揺さぶり、典型的な脳震盪の症状を作り出して昏倒させたのだ。

 

「ふうっ」

 

 大きく息を吐いた延珠は、口元の血を拭いつつ前に訓練でソニアが言っていた事を思い出していた。

 

『いい、延珠ちゃん? 私達イニシエーターは共通して高い身体能力と再生能力、そしてモデル動物に由来する固有能力を持っているけど、それだけだと単なる劣化ガストレアか良くてガストレアのレプリカでしかないわ』

 

 ソニアのその意見は、確かに一つの正論である。例えば延珠は兎の因子により強大な脚力を持っているが、同じモデルを持つモデル・ラビットのガストレアならば同等以上の脚力を持っているのである。つまり単純なスペックだけでぶつかり合えば、良くて五分の勝負にしかならない。

 

 ならばどうして、呪われた子供たちが勝つ事が出来るのか? それは、彼女達が人間だからだ。

 

『超人の身体能力を活かした技か……ガストレアの弱点となるバラニウムの武器か……あるいは固有能力を応用する知恵……それらの人間しか持ち得ないプラスアルファを上乗せするから、ガストレアに勝てるの。ガストレアウィルスがもたらす生物としての超スペックと、人間の技術。その組み合わせこそが、イニシエーターの最強の戦闘スタイルなのよ』

 

 綾耶は象の鼻が持つ流体の吸引能力を応用し、切断・防御・飛翔・衝撃波の発生までやってのける。

 

 ティナはフクロウの視力を狙撃手としての能力に転用し、しかも機械化兵士としての能力をも併せ持っている。

 

 ソニアはデンキウナギの発電能力から電磁石のように磁力を作り出し、金属を自在に操り、磁場を地磁気とシンクロさせて地球規模での天変地異すらも引き起こす事が出来る。

 

 ならば延珠は?

 

 答えは、簡単だった。

 

 彼女は天童流戦闘術の使い手である蓮太郎のパートナーであり、彼の戦い振りを誰より近くで誰より多く目の当たりにしている。

 

 そのやり取り以来、見様見真似ながら天童流の蹴り技を練習していたが……それが今回、延珠を助けた。そもそも格闘技とは、爪も牙も持たない生物としては弱者の部類に位置する人間が、その弱さを補う為に生み出したもの。ならば強者であるイニシエーターがそれを使えばどうなるのか? たった今の攻防が、その答えだった。

 

「さて、エックスを助けねば……」

 

 彼女が戦っていたイニシエーターは、手足が千切れても生えてくるような強力な再生能力を持っていた。そしてグチャグチャに千切られたような傷よりも、すぱっと綺麗に切れた傷の方が回復は早い。刀剣のような鉤爪による”斬る”攻撃を主体とするエックスには、不利な相手だ。

 

 加勢すべく延珠が振り返ったそこには……

 

「……少し、苦戦した? 延珠……」

 

 余裕の顔で、相対していたイニシエーターにチョークスリーパーを掛けているエックスの姿があった。首を締め上げられているウーパールーパーのイニシエーターは白目を剥いて口からは泡を噴いて、失禁している。落ちていると、一目で分かった。

 

 エックスが腕を解くと、イニシエーターは糸が切れたマリオネットのように倒れて床に転がった。

 

「う、うむ……」

 

 意外な結果に、延珠は少し圧倒されているようだった。

 

「エックス、お主こそもっと苦戦していると思ったが……」

 

「……別に。高い再生能力を持った敵との戦いは、初めてじゃないから……」

 

 エックスの戦法も、延珠と同じでイニシエーターの肉体の構造が基本的に人間と同じであるという点を衝いたものだった。

 

 どんなに傷が治っても、脳に血が行かなければ意識は飛ぶ。頭や脊髄を破壊されても再生した時点でエックスはこの相手を殺害する事を諦め、無力化する方に頭を切り換えたのだ。

 

「延珠、手伝って」

 

「ん? 何をだ?」

 

「こいつらが目を覚ましてまた襲ってこられたら面倒だから……関節を全部外しておく」

 

 言いながらもエックスは手際良く、イニシエーターの手足を引っ張ってごきごきと音を立てさせる。思わず、延珠は体をぶるっと震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

「思ったより手強かったけど、最後はあっけなかったわね……行くわよ、シズク……シズク?」

 

 倒れたアンナマリーを一瞥して、ハミングバードはこの場を立ち去ろうとしたがしかし、彼女のイニシエーターは剣を構えたまま警戒態勢を解いていなかった。

 

 アンナマリーの心臓めがけて、突きを繰り出すハチドリのイニシエーター・シズク。するとアンナマリーはバネ仕掛けのように跳ね起きてすんでの所で回避。剣は教会の床に突き刺さっただけだった。

 

「!!」

 

 思わず、ハミングバードは数歩後退って身構える。

 

「い、いくらバラニウムの武器でなかったとは言え、あれだけ斬られたのに生きているなんて……」

 

「まぁ、確かに普通に攻撃を受けたのでは流石の私もやばかったけどね……でも、私は未知の相手と戦う時は、常に再生強化の能力を発動しておくようにしてるの」

 

「さ、再生強化……?」

 

「そう、モデル・プラナリアの再生能力にモデル・アホロートルとモデル・スターフィッシュ……つまり、ウーパールーパーとヒトデね。その、再生能力に優れたモデル動物の特性を上乗せしてるのよ」

 

 アンナマリーはモデル・シースラグ、ウミウシのイニシエーター。その固有能力は、他の生物の細胞を自らの中に取り込む事でその生物が持っていた能力を自分が使えるようになるというもの。アンナマリーは自分が能力を使える生物の種類は軽く1000を越えると豪語していたが……それは、嘘ではないらしい。

 

 しかし、ハミングバードは驚きながらもまだ慌ててはいなかった。

 

「ふん……じゃあ、シズク。今度はミリ単位で切り刻みなさい。二度と再生できないぐらいに」

 

 主からの命を受けて、ハチドリのイニシエーターはアンナマリーへと突進、斬り掛かる。

 

 モデル・ハミングバードの特性は超高速の羽ばたきを可能とするその瞬発力。モデル生物はこれを滞空をも可能とする浮力・推進力として用いるが、このイニシエーターはそれを攻撃へと転化し、秒間数百発にもなろうかという超連続斬撃として繰り出してくる。

 

 ただ、速い。シンプルではあるがそれ故に回避も防御も絶対に不可能な連続攻撃。

 

 先程はアンナマリーも初見であった事もあってまともに喰らったが……今回は、数百という斬撃を全てかわしきった。

 

「……!!」

 

「なっ!?」

 

 ハチドリのイニシエーターとハミングバードは、揃って驚きの表情を見せる。

 

 回避も防御も不可能な筈の斬撃を、避けられた!! アンナマリーは今度はかすり傷一つ負ってはいなかった。

 

「くっ……も、もう一度よ!!」

 

 プロモーターの指示に従い、シズクは再び超高速斬撃を放ちはするものの、結果は同じ。アンナマリーは全ての攻撃をしかも危なげなく避けた。マグレではない。

 

「そんな……どうやって……!!」

 

「モデル・ドラゴンフライ、トンボの複眼による動態視力プラスモデル・スクイラァ、シャコの視力で攻撃を見切り!!」

 

 昆虫の複眼はピントが一定の為に殆どのものがぼやけて見えるが、個眼の一つ一つが少しずつ違う方向を向いている為、どの方向にどれぐらいの速さで動いているかがすぐに分かる。それは視力を捨てる代わりに発達した動態視力。

 

 対してシャコの眼は、紫外線・赤外線・電波すらも見えているという説まである。更には自然光に加えて、デジタル技術に使われる円偏光の方向すらも全て捉える事が出来る。

 

 その二つの組み合わせが、どんなに速い攻撃であろうとその動きの全てを手に取るように把握して。

 

「モデル・コックローチ、ゴキブリの瞬発力に、モデル・スパイダー、アシダカグモとモデル・ワーフローチ、フナムシの瞬発力を上乗せしてそれをかわす!!」

 

 ゴキブリの瞬発力は、もし人間と同サイズであったのならば初速から時速320キロ……つまり、新幹線並のスピードを出す事ができる。そしてアシダカグモは、そのゴキブリを走って捕らえる程に足が速い。フナムシに至っては、更にその数倍のスピードを持っている。この3つの高速生物の特性の重ね合わせがもたらす超体術の前には、どんな攻撃も当たらない。

 

 どんな攻撃も見切る眼と、どんな攻撃もかわすスピード。およそ回避に於いては無敵と言って良い組み合わせだが……しかし、アンナマリーのこの能力には一つだけ弱点があった。

 

「オ……オエーーーー……」

 

 突然うずくまると、盛大に嘔吐するアンナマリー。

 

 トンボの複眼とシャコの視力を組み合わせた視界など、どう説明すれば良いのか分からないほど凄いものがあるだろう。その視界で、ジェットコースターも真っ青なスピードで動くのだ。酔うのは当たり前である。アンナマリーは最低限の防御手段としてモデル・キャット、猫の三半規管の能力を発現させていたが……それでも、キツかったようだ。

 

 勝機!!

 

 隙だらけの姿を見て、そう判断したハチドリのイニシエーターは未だゲロゲロ吐いているアンナマリーの背後から襲い掛かるが……

 

「違う、シズク!! それは……!!」

 

 ハミングバードが制止するが、遅かった。

 

 アンナマリーの背中から服を突き破って無数の触手が飛び出して、シズクの体をがんじがらめに絡め取ってしまった。ハチドリのイニシエーターは何とか脱出しようともがくが、頭足類のような触腕はびくともしなかった。

 

「油断したわね」

 

 すくっと、口元の吐瀉物を拭いながらアンナマリーが立ち上がる。

 

「どんな凄い攻撃でも、それを出させなければ問題は無いわね」

 

 イニシエーターに限らず、どんな達人であろうとも初めて見る攻撃の前では必ず一瞬、反応が遅れる。所謂“初見殺し”というものだが、そこへ行くとアンナマリーはどんなモデル生物の能力を持っているのか、相手には知る術が無いので、常に相手の不意を衝ける。それが彼女の強みの一つでもあるのだ。

 

 話している間にもシズクは体をばたつかせて脱出を試みているが、やはり触腕の拘束は緩まない。

 

「モデル・オクトパス+モデル・スクイード、タコとイカの触手。イニシエーターがどんなに凄い力を持っていても、体の作りは人間と同じだから……関節を取れば動かせないわ」

 

 アンナマリーはそう言うと、触手の一本をシズクの首に回して締め上げ、気絶させてしまった。これはエックスがウーパールーパーのイニシエーターに用いたのと同じ攻略法である。アンナマリーとエックスはどちらもルインのイニシエーターであり、ルイン達から様々な能力を持ったイニシエーターとの戦闘を想定し、訓練を受けているのだ。

 

「な……!!」

 

 絶対の自信を持っていた自分の道具をいとも容易く攻略され、ハミングバードの表情から余裕が消えて動揺が取って代わる。

 

 アンナマリーは触手を器用に使ってシズクの体を丁寧に床へと下ろした。そうして、触手は彼女の背中へと吸い込まれて引っ込む。

 

「呪われた子供たちは同胞、姉妹同然だから出来るだけ傷付けないようにしたけど……あなたはそうは行かないわよ。その姉妹を使い捨ての道具みたいに使ったのだから……覚悟は、出来てるわよね?」

 

「くっ……!! 死滅都市の徘徊者(ネクロポリス・ストライダー)!!」

 

 ハミングバードの背後から数個のタイヤが現れ、それらはひとりでに回転しながらアンナマリーへと向かっていく。これはティナのシェンフィールドと同じ、BMIによって操られる遠隔操作モジュールだ。タイヤはその側面から刃が飛び出し、回転ノコギリのようにアンナマリーへと殺到する。

 

 が、アンナマリーは事も無げに全てのタイヤを殴って砕いてしまった。

 

「さっきと同じモデル・スクイラァ、シャコのパンチよ。シャコのパンチは蟹の甲殻や貝殻を叩き割り、ダイバーの指を折り、水槽に穴を空け、22口径の拳銃にすら匹敵するほど強力と言われているわ。ほんの15センチほどのエビが、しかも水中でこの威力。ならば、人間大で水の抵抗も無く、その上ガストレアウィルスによる強化もあれば……こんな玩具を壊すなんて簡単な事よ」

 

「そ、そんな……」

 

「さぁ、覚悟は良いかしら?」

 

 一歩、アンナマリーが踏み出す。それが限界だった。

 

 イニシエーターも、機械化兵士としての装備も全てが通用しなかったハミングバードの心は、既に完全に折られていた。背中を見せて、まさに脱兎の如く逃げ出そうとする。

 

 が、アンナマリーに回り込まれてしまった。先程と同じ、ゴキブリとアシダカグモとフナムシの瞬発力を重合させた超高速移動である。そしてアンナマリーの背中から伸びた触腕によって、手足を拘束されてしまう。

 

 磔にされるように、両手足を伸ばされて拘束されたハミングバード。ガタガタと震えて歯が鳴り、顔は汗と涙と鼻水と涎でグシャグシャになり、股間からは盛大に水音が鳴る。

 

「た、助け……!!」

 

「ダメよ。私達を殺しに来たのに……自分が殺されそうになったら助けてくれなんて……それは、虫が良すぎるでしょう? それに……あなたは五翔会……マスター・ベネトナーシュだけではなくルイン様達全員の敵だから……ルイン様達と、私達の未来の障害となる者は……全て、この私が殺すのよ」

 

 アンナマリーのその言葉が死刑宣告だった。

 

 ズン、と丈夫な作りの床が陥没する。ハミングバードを拘束するのに使っている余りである数本の触腕と、両足で踏み込む。しかもアンナマリーの両脚はモデル・グラスホッパー、バッタの脚力で強化されていた。

 

 その踏み込みからモデル・スネイル、ウロコフネタマガイの鉄の鱗にモデル・ウィービルとモデル・クラブ、クロカタゾウムシの甲皮とカニの甲殻の硬さを掛け合わせた文字通りの鉄拳を!!

 

 ゴキブリとアシダカグモとフナムシの瞬発力を重ね合わせた速さに乗せて!!

 

 放たれる、シャコのパンチ!!

 

 有り得ないその威力の前に、ハミングバードの肉体は跡形も無く、数滴の血を残してこの世から消え失せた。

 

「ふう……結構手こずってしまったわね。さて、後は……?」

 

 アンナマリーは意識を失ったシズクの体をひょいとおんぶするとモデル・キャット、猫の聴覚とモデル・ウルフ、狼の嗅覚で状況を把握しようとする。ほんの数秒で、膨大な情報が彼女の脳に届いた。

 

「……外、か」

 

 

 

 

 

 

 

 教会の外では綾耶、ティナ、夏世、ソニアの4人がそれぞれ背中合わせに円陣を組みつつ、警戒の構えを取っていた。

 

「綾耶さん……誰も、居ないようですが……」

 

 腰溜めにショットガンを構えながら、夏世が言った。

 

 夜の闇があるとは言え、ここは見晴らし自体は良い。気付かれずに近付いてくるなどまず以て不可能な筈。他に可能性としては地面を掘って進んでくるぐらいだが……だとするなら振動がある筈。それを捉え損なうほど、夏世は未熟ではない。

 

 だが……

 

 自分で言っておいて何だが、誰も居ないという言葉は撤回すべきのようだ。

 

 この一帯には、言い様の無い殺気が充満している。姿は見えないが……

 

「確かに、居るわね」

 

 表情を厳しくしたソニアが、言った。綾耶も、頷く。

 

「ティナさん、油断しないで」

 

「ええ、分かっています」

 

 警戒態勢を全員が取った事を確認すると綾耶はもう一つ頷き、じっと前方を睨み据える。

 

「さぁ……いい加減出て来たらどうです? 相手になってあげますから」

 


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