ブラック・ブレット 星の後継者(完結)   作:ファルメール

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幕間 元11位のイニシエーター

 

 秘密基地。

 

 子供っぽい響きではあるが、一言でこの場所を表現しようとするのならその言葉が最も適切であろうと思えた。

 

 岩をくり抜いたトンネルの天井には等間隔にライトが埋め込まれていて適度な光量を確保しており、自動ドアが開いたその先の空間はとてつもなく広大だった。壁面には無数のモニターが設置されていて、そこにはレントゲン映像や脈拍と体温の変化をリアルタイムで表示した画像が表示されている。

 

 部屋の中央には手術台のようなベッドと、それを囲むように一流の大学病院にも引けを取らないであろう医療器具が所狭しと並んでいた。

 

 モニターに映るのは全てがたった今ベッドに横たわっている患者、蛭子影胤の身体データであった。その証拠にX線画像が表示されているモニターには普通人であれば骨格が映っている筈なのだが、腹部に直線と滑らかな曲線で構成された明らかに人工物であると分かる物体が見えた。

 

 白衣の美女、ルイン・アルコルはタブレット端末片手にぶつぶつ呟きながら部屋の中を行ったり来たりしてモニターのデータを色々とチェックしていたが、ややあって「うん」と頷きを一つ。そうして患者を覗き込んだ。

 

「基幹部分に破損は無いわね」

 

「おお、それでは……」

 

「ええ、斥力フィールド発生装置の修復は十分に可能よ」

 

 指を動かしてタブレット上の画像を次々切り替えつつ、アルコルは苦笑いの表情を見せた。

 

「それにしてもあなたを執刀したグリューネワルトもそうだけど、四賢人はみんな凄いわねぇ……あなた以外にも何人か機械化兵士の体を診た事はあるけど、彼等に使われているどの技術も、私では一から作る事は不可能な代物だからね」

 

 元々影胤は内臓に重大な障害を負っていて、『新人類創造計画』の機械化手術を受けるか死を待つかの二択しかなかった。彼の内臓を詰め替えたバラニウム製斥力フィールド発生装置は機械化兵士の武装であると同時に、人工臓器・生命維持装置としての役割も兼ねている。人間の内臓は、例えば肝臓一つ取ってもその機能を機械で代替しようとするのなら2010年代の技術では高層ビル並みのスペースが必要だとされていた。いくら時代が進んで技術も進歩したとは言え、それでも他の臓器も含めて全て同程度のサイズの人工物に置き換え、更にそこに兵器としての機能まで持たせるなど、同じ科学者であるアルコルをしてグリューネワルトの技術力は異常としか言い様が無い。

 

「いや、ホント凄いわ。こればかりは悔しいけど脱帽よ。単純に機械工学や人体の構造だけじゃなく、ありとあらゆる分野で第一人者級かそれ以上に精通していなければこうは行かないでしょうね」

 

「アルコル様でも及ばぬと?」

 

「ええ。私に出来るのは精々がメンテと修復まで。新しい機械化兵士を作る事は出来ないし、既存の機械化兵士の機能を拡張する事も不可能。勿論完全に破壊されてしまったら直せない。流石としか言えないわ。まぁ……専門分野についてだけは、四賢人の誰にも負けない自信はあるけどね」

 

 言いつつ、アルコルはトレイに置かれていた消毒済みの外科用器具を手に取った。

 

「じゃ、話はこれぐらいにして手術を始めましょうか」

 

「……復帰までどれほど掛かるでしょうか?」

 

「まぁ、生身の部分も相当ダメージを受けてるし、二週間は安静が必要ね。終わったら小比奈ちゃんとゆっくり過ごしてあげなさいな。今は泣き疲れて寝ているようだけど、さっきまで三番(フェクダ)がなだめるのに相当苦労していたそうよ? あなた達の関係は私達から見ても歪だとは思うけど……それでもあの子はあなたを慕っているの。裏切らないであげてね」

 

「は……」

 

 影胤が頷いたのを見たアルコルは頷き返すと、患者の腕に注射を打つ。少し間を置いて麻酔が効いてきたのを確かめると、彼女はメスを走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 秘密基地の一角。そこは天然物と人工物が絶妙なバランスで組み合わされたアルコルの研究室とは違い、多分に自然が残されていた。小さいながらも水の流れがあり、樹木も茂っている。今はちょうど天井に開いた穴から陽光が注ぐ時間帯で、その光が照らす数メートル四方のエリアには、小さいながらも立派な造りの墓標が建てられていた。そこに葬られている者達は、大切に想われていたのだろう。数は、四つ。

 

 四つの墓の中で三つまでには花束が供えられていて、最後の一つにはルイン・フェクダがすぐ前に立っている。彼女はその手にジュラルミンケースを持っていた。先日の騒動でそれを持った綾耶が逃亡劇を演じ、最終的にはルイン・ベネトナーシュの手によって回収された「七星の遺産」だ。

 

「双葉ちゃん、六花ちゃん、七海ちゃん……八尋ちゃんがそっちに逝ったわ……暖かく迎えてあげてね」

 

 一つずつ墓標へ名前を呼び掛けると、フェクダは最も新しい墓標の前にしゃがみ込む。

 

「八尋ちゃん……あなたの宝物は取り戻したから……どうか、安らかに眠ってね」

 

 ケースを開くフェクダ。そこに入っていたのは、壊れた三輪車だった。車輪はネジが何本か外れてガタガタになっていて、塗装はあちこち禿げて錆も浮かんでいる。サドルも汚れていて、東京エリアの管理下に入るまではあまり良い保存環境には置かれていなかったのだろう。赤を基調とした色合いは、どちらかと言えば女の子が好みそうだった。

 

 ルイン・フェクダは注意深くケースから三輪車を取り出すと墓の前に供え、捧げた。そうして瞑目し、祈る。

 

 数分もそうしていただろうか。静寂は、不意の電子音によって破られた。

 

 相手にこちらの都合など分かる筈もないが、それでも清澄な祈りの時間を邪魔されたフェクダはむすっとした顔になると、スマートフォンを取り出す。通話相手を示す画面には「β」の一文字が表示されていた。

 

「もしもし、二番目(メラク)? ええ私、三番目(フェクダ)よ。何かあったの? 定期連絡には、まだ早い筈だけど」

 

 ルイン達はそれぞれが違った役割を持っている。

 

 一番目(ドゥベ)は民警として活動し、表の世界での発言力と立場を確立させる事。

 

 三番目(フェクダ)は影胤のようなアウトローを指揮しての非合法活動。

 

 七番目(ベネトナーシュ)は教師として呪われた子供たちを教え導く事。

 

 番外(アルコル)は科学者としての研究活動。

 

 そしてたった今フェクダに電話を掛けてきているのは北斗七星を構成するおおぐま座ベータ星「メラク」のコードネームを持つ二番目、ルイン・メラクだった。彼女の役目は五翔会という秘密結社に潜入し、その情報をリークする事。ルイン達は全員の共通能力としてガストレアウィルスの形象崩壊をコントロールし、声までそっくりにどんな姿にも化ける力を持っている。スパイ活動にはうってつけだった。

 

 メラクが化けているのは五翔会の中でも最高幹部である五枚羽の一人。正確には彼女は本物の五枚羽を殺してそのまま成り代わっている。そうして五翔会の機密情報は、そのままルイン達に筒抜けとなっているのだ。

 

 メラクは、情報は定期的に連絡するという方式を取っている。これはあまり頻繁に情報を流出させて五翔会に内通者の存在を感付かれない為と、彼女自身の安全の為でもあった。もし約束の日時に連絡が無かった場合は、メラクの身に何かがあったのだと判断できるという訳だ。

 

 しかし今回はその逆、いつもより早くコンタクトがあった。つまり……

 

「……何か、急な動きがあったのね?」

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、二番目(メラク)との通話を終えたルイン・フェクダは秘密基地の通路を歩いていた。小脇にはいくつかのファイルを抱えている。

 

 数十メートルほどのトンネルを抜けると不意に開けた場に出て、そこは地底湖になっていた。対岸へは簡素な造りの橋が架けられていて、フェクダはその上をずんずんと進んでいく。

 

 視線を上げると空間に数個の球形物(ビット)が浮遊していて、それらは大きく円を描く軌道で周回しつつ正面に搭載されたカメラアイを常に彼女へと向けながら、付かず離れずの距離を保って動いていた。フェクダがその中の一つに向かって手を振るとビットは全て空間に静止し、数秒後に一斉に動き出すと対岸の岩壁に開いた穴へと消えていった。

 

 橋を渡りきったフェクダはビットが入っていった穴の前に立つ。橋の上からでは暗さで見えなかったが、近くに立つと直径2メートルほどの円形をしたその穴にはぴったりと鉄格子が嵌っていた。格子の隙間は拳大の大きさをしたビットがぎりぎり通り抜けられるぐらいしかなく、とても成人女性のフェクダでは通れない。

 

 このままでは。

 

「私よ。ここを開けてくれるかしら?」

 

 鉄格子の向こう側へと声を掛けるが返事は無かった。代わりに頑強な金属製の格子は誰も触れてもいないのにまるでゴムのように軋み一つ立てずにたわんで曲がり、ちょうどフェクダ一人が通れるぐらいのスペースが開く。

 

 まるで魔法のように出来た入り口を驚いた様子も無くフェクダが通ると、再び鉄格子がひとりでに動いて元通りの形へと戻った。格子の一本にフェクダが触れてみると、やはりと言うべきか当然と言うべきか、手に伝わってくるのは金属の硬さだ。初見の者では今し方この鉄棒がぐにゃりと曲がった事など、幻覚か夢の中の出来事のようにさえ思えるかも知れない。

 

 無論、フェクダはどうしてこのような現象が起こるのかを知っているので驚いた様子も無く部屋の中に進んでいく。

 

 そこはこぢんまりとしたスペースになっていて、大小二つのテーブルや椅子、本棚やベッドなどの家具が置かれていた。

 

 大きなテーブルの上にはハムエッグにサラダ、トーストといった洋風の朝食が並べられており、この部屋の主はちょうど食事中のようだった。

 

 部屋にはカツン、カツンと気持ちの良い金属音が規則正しく響いている。

 

 その音を奏でているのは小さなテーブルの上のバランスボールだった。衝突球やニュートンのゆりかごとも呼ばれている。ビー玉ぐらいの大きさの複数個の鉄球で構成されていて、一番端っこの鉄球を持ち上げて並んでいる他の鉄球へとぶつけると、運動エネルギーが何個かの鉄球を伝わって反対側の鉄球が動き、動いたその鉄球が戻ってきて他の鉄球にぶつかると、再びエネルギーの伝達が為されて端の鉄球が持ち上げられ……と、変則的な振り子のような動きと音を出すインテリアだった。

 

 それだけなら別に驚く事もない。世界中、どこにでもあるインテリアでしかない。

 

 異様なのは、そのバランスボールには5個の鉄球を吊す糸も、その糸が付けられている台座も存在しないという事だった。ただ鉄球だけが先程のビットと同じように宙空に浮かんで、時計の針のように規則正しいリズムを刻んでいる。

 

 だが、それだけ見て驚くのは早かった。

 

 この部屋の住人は食事中であるのだが、その食べ方が異常だった。

 

 彼女はナイフもフォークも使っているのだが、右手も左手も使っていなかった。両手は、読んでいる新聞紙を持って塞がっている。

 

 誰か他の者に食べさせてもらっているのではない。部屋には今入ってきたフェクダを除けば、一人しか居ない。

 

 誰の手にも握られていないナイフがマジックのように空間に浮かびながら動いてハムエッグを切り分け、一口大になった所を同じように空中浮遊するフォークが突き刺して、新聞を読んでいる少女の口へと運んでいく。同じようにバターナイフもひとりでに動いて皿の上のバターを掬い上げると、トーストの上に塗っていく。少女は、バターを塗ったトーストだけは手を動かして取ると、ばくりと囓った。

 

 まるで何かの特撮番組のような光景だが、この超常を見てもルインは眉一つ動かさない。

 

「どうしたの、フェクダ? 私に何か用? 見ての通り私は今食事中なのだけど」

 

 少女は、広げている新聞紙から目を放さずに言った。

 

「行儀が悪いわよ?」

 

 ルイン・フェクダは窘めるような口調で言うと、少し顔を上げる。先程のビットは、今は少女の頭上でふわふわと浮きながら相変わらず全機がそのカメラを彼女へと向けていた。

 

「ん……まぁ、座ってよ」

 

 反省した様子も無いが、少女はそれでも新聞紙を畳むとテーブルの隅に置いて、軽く手を振る。すると彼女が座っている反対側に置かれていた趣味の良いデザインのスチール椅子が床を滑るように音も無く動いて、フェクダが座れるスペースが空く。三番目のルインがその椅子に座ろうとすると、彼女の背後に目に見えない熟練の執事が控えているかのように絶妙のタイミングで椅子が押される動きをしてぴったりの位置で止まり、快適に座れるようになった。

 

 それまでは宙を勝手に動いて料理を切り分け少女に食べさせていたナイフとフォークも、交差する形で皿の上に下りた。

 

「横着者ねぇ、相変わらず……」

 

 ルイン・フェクダは呆れたように苦笑して、少女を見る。広げられて体を隠していた新聞紙が置かれた事で、全体像が見えるようになっていた。

 

 年の頃は十歳ぐらい。濃い青色をした長い髪をボリュームのあるポニーテールに纏めていて、白と黒のツートンカラーをしたお嬢様風のドレスは、大きな宝石をあしらったブローチから受ける印象も手伝って、どこか大人びた風な彼女を年相応の少女に見せるのに一役買っていた。そして紅く輝く彼女の両目はガストレアウィルスの保菌者、呪われた子供たちである事を示している。

 

「まぁ、良いじゃないの。それでフェクダ、私に何か用なの?」

 

「……仕事を頼みたいのよ、あなたに」

 

「仕事ねぇ……要人暗殺? それともガストレア退治?」

 

「どちらでもないわ。あなたに頼みたいのは、護衛よ」

 

 フェクダは持っていた書類の一つをテーブルに置いた。一番上のページは、白い髪をした美少女の写真が載っていた。その書類を手に取った少女の眉が、ぴくりと動く。この写真の女は……

 

「東京エリア国家元首、聖天子。二番目(メラク)が掴んだ情報によると、大阪エリア代表である斉武宗玄が彼女を殺す為に暗殺者を雇ったらしいわ」

 

「……つまり、その暗殺者から聖天子を守れと?」

 

 少女の問いに、ルイン・フェクダは頷く。

 

「……あなた達は、ちょっと前には影胤達と一緒に大絶滅を起こして東京エリアを壊滅させようしたって聞いたけど? それが今度はエリアの国家元首を守ろうとするの? 随分と忙しいわね」

 

 皮肉っぽく少女が言うが、フェクダは気にした気配も見せなかった。

 

「立ち位置や関係なんて流動的なものよ。ガストレア大戦前は、一昔前までは戦争していた国同士が今は同盟国だなんて例は珍しくも何ともなかったわ」

 

 ぬけぬけと、そう言い放つ。

 

「知っているでしょうけど、東京エリアは八尋ちゃん……ゾディアックガストレア・スコーピオンの襲来に遭いながら大絶滅を免れたわ。それはあのエリアの人達がほんの少しでもより良い存在になったという証明。加えて、聖天子は進めているガストレア新法から分かるように呪われた子供たちとの共生派……彼女を殺す事で得られるメリットよりも、彼女が生きている事で得られるメリットの方が大きいと判断したのよ。もっと簡単に言えば利用価値があるから、今死んでもらっては困るのよ。ちなみにこれは、私達8人全員一致での結論よ」

 

「勝手な話ね?」

 

「自覚してるわ。それに……」

 

 フェクダは指で軽く自分のこめかみを叩く。

 

「あなたの”ここ”にチップを埋め込んだ誰かさんほどではないと思うけど?」

 

 不意に少女の目が座って、あからさまに不機嫌な顔になった。

 

「私の前で奴の話をしないで」

 

 頭上で浮いていたビットが、フェクダを囲むように集まってくる。

 

「そうだったわね。以後気を付ける事にするわ。ごめんなさい」

 

「……ん」

 

 ぺこりと頭を下げられて、少女の方も元々本気で怒ってはいなかったのだろう。あっさりと謝罪を受諾すると、フェクダの斜め前方左右と背後、それに頭上を固めて三角錐(テトラ)の陣形を描くように浮遊していたビットは再び彼女の頭上へと戻った。

 

「何にせよ気が進まないわね。大体してそーいうのはドゥベの役目じゃないの?」

 

 少女の意見も尤もではある。確かに要人の警護は警察かさもなくば民警の仕事であり、ならば東京エリアを拠点としていて一色枢・エックスの民警ペアとしての表の顔を持つルイン・ドゥベの方が適任だろう。IP序列も30位の超高位であり申し分無い。

 

 フェクダは「確かに」と頷くとテーブルに置かれていたティーポットを手に取った。カップに注いだ紅茶を口に運ぶが、一口含んだ所で顔を顰めた。

 

「冷めてるわね」

 

 少女は何も言わずに手を伸ばして、たおやかな指先がフェクダの手にしたカップに触れる。途端に室温でしかなかった琥珀色の液体から湯気が立ち上り始めた。

 

 ある程度まで温まったのを見計らって、少女はカップから指を離した。

 

「ありがとう」

 

「いつでもどうぞ」

 

 少女が顎をしゃくる動きをするとソーサーの上に乗っていたスプーンが浮き上がって、フェクダの手の中に収まった。

 

「上の方は熱いけど下の方はぬるいから、よく混ぜて飲んでね」

 

「いつ見ても便利ね、あなた」

 

 砂糖とミルクを入れた紅茶をスプーンでかき混ぜつつ、フェクダが笑う。もう一度口にやると、ちょうど飲み頃の温度だった。

 

「それで、気が進まないと言ったけど……これを読んだら気が変わると思うわ」

 

 フェクダはカップを置くと、紙を挟む部分が金属製のバインダーをそっと掲げる。少女が手を伸ばすとそのバインダーはフェクダの手を離れて空中を滑り、少女の手へと移る。

 

 最初は気怠そうにページを捲っていた少女だったが、目を通すページが3枚目に達した時だった。表情が、真剣なものに変わる。

 

 これまで、気持ちの良い金属音を奏でていた糸無しバランスボールの鉄球が、作用していた不可視の力の消失によってバラバラと落下し、そのままテーブル上を転がって床に落ちた。

 

「これは……!!」

 

 少女に合わせるように真剣な顔になったルイン・フェクダも頷く。今、少女が見ているページには派遣される暗殺者の顔写真が挟まれていた。プラチナブロンドの髪をした、少女と同じぐらいの年齢だろうどこかおっとりとした印象を受ける女の子が写っている。何故か服装はピンク色のパジャマだ。

 

「そう、聖天子暗殺に送られるのはIP序列98位……四賢人の一人であるエイン・ランドが創り出した……あなたと同じハイブリッドの一人。モデル・オウル『黒い風(サイレントキラー)』ティナ・スプラウト。確かに本来ならドゥベとエックスちゃんが就くべき任務だけど、その点を考慮してあなたに頼む事にしたのよ。勿論、断っても構わない。その時は、予定通りあの二人が行う事になるけど……」

 

 少女が、立ち上がる。フェクダはにやりと不敵な笑みを見せた。

 

 この任務を受けるか否か。返事は、聞くまでもなかった。

 

 床に落ちて転がっていた鉄球が再び浮き上がって、ビットと共に太陽を巡る惑星のように、少女の周囲を回る。

 

「やり方は全てあなたに任せるわ。ティナ・スプラウトから、聖天子を守りなさい」

 

 少女が、絶対の自信に満ちた笑みと共に頷く。

 

「頼んだわよ。IP序列元11位、モデル・エレクトリックイール『星を統べる雷帝(マスターオブライトニング)』ソニア・ライアン」

 


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