摩耶様改二だよ、摩耶様だよね!?
信じていいんだよね!?
期待しちゃっていいんだよね!?
惚れちゃって(ry
今回は予告通り(いつもより)みじかめです。
よろしくお願いします。
「アマノイワト」調査報告
本資料は、特別な許可ある者以外の閲覧を堅く禁ずる。
特定秘密として、原則十年は公開を禁ずる。
第一次調査報告
使用機:一号機(キャッツアイ)、三号機(プカプカ丸)
調査内容:アマノイワト内部、及びその向こう側(暫定名称鯖世界)の大気組成
結果:アマノイワト内部・・・大気組成は地球上と同じ。ただし、気圧が低い。放射能なし。電磁波等の影響なし。
鯖世界・・・大気組成は、ほぼ地球と同じ。わずかに酸素が高く、二酸化炭素が低い。自然界レベルの放射能あり。アマノイワト出口付近の電磁波が非常に強力。妨害電波のようなものあり。状況は地球側とあまり変わらない模様。以後の調査では、一号機と連動する三号機はあまり有用でないと思われる。
第二次調査報告
使用機:一号機(キャッツアイ)、二号機(レディーE)
調査内容:鯖世界における、生命体の有無
結果:リス・ネズミらしき生物を確認。また、採集した土壌から、微生物を数種発見。DNA鑑定の結果、地球上にも同様の遺伝子を持つ種を確認。鯖世界は、地球と似たような条件で進化を続けてきたものと思われる。
第三次調査報告
使用機:二号機(レディーE)
調査内容:アマノイワトの生命体の通過の可否
結果:モルモットの通過に際し、特に生命活動の異常を認めず。人間の通過は、十分に可能であると考える。
◇
「報告は以上になります」
医務室のベッドに腰掛けた霧島は、見舞いがてらにやってきたと言う司令に、自らの確認した情報を伝えた。目の前の彼は、丁寧にメモを取りながら、彼女の話を聞いている。
「ありがとう。ゆっくり休んでくれ」
メモを閉じた彼は、労うように霧島へ声を掛けた。
「とは言っても、私本人は大した怪我をしたわけではないのですけれどね」
霧島はそう返して、苦笑した。つられたように、彼も眉をハの字にして、苦笑いしていた。
「状態は安定しているそうですから、明日には出ますよ」
「折角だから、少しゆっくりすればいいのに」
そっと首を振る。
「確かに、艤装は修復中で使用不可ですが、だからと言って、いつまでもここにいるわけにはいきません。今の私にとっては、あそこが唯一の居場所ですから」
「そうか・・・」
彼は、複雑そうに、それ以上何も言わなかった。こういうところが、彼が甘いと言われる所以だ。もっとも、そういう人間だからこそ、一介の少女でしかない艦娘たちから慕われ、頼りにされているのかもしれない。
「それに、手の掛かる姉たちもいることですし」
ちらっと入口を見やると、ぴこぴこと動く電探カチューシャが三つ、びくんと跳ね上がるのが見えた。小さく息をつく。同じく気づいたらしい彼もまた、微かに口元を歪めていた。
「どうやら、邪魔をしたようだから、早急に退散するよ。お疲れ様」
元の提督としての顔つきに戻った彼は、腰掛けていた椅子から立ち上がり、軽く手を上げて部屋を出て行った。残された霧島の下に、三人の姉たちが入ってきて、「さっきのはどーゆーことネー!?」と詰め寄ってきたが、気にしない。やがて、頬を膨らませて、こちらのほっぺをつまみだしたその表情が、霧島にとってはかけがえのない居場所だった。
◇
「夜襲を仕掛ける」
作戦室の海図を囲む面々に、提督は第一声でそう告げた。
「知っての通り、現在の鎮守府の戦力では、展開中の敵艦隊を正面から撃破することは出来ない」
沖ノ島周辺を写した地図の南側を回る航路に、赤線で×が入れられる。同航路は、先日の強行偵察において、霧島たちが辿ったものだ。
「この、南側を通る航路では、戦艦や軽空母を伴った強力な前衛部隊が展開しており、突破に当たっては非常に強い抵抗が予想されます。最低でも、高速戦艦二隻を含む艦隊でなければ、主力撃破は困難でしょう」
提督から引き継いだ大淀が、手元の資料を見ながら説明する。海図上には、確認された敵の編成が示されていく。それと同時に、現在の鎮守府で稼動可能な、各戦力が表示された。その中に、高速戦艦は含まれていない。
「伊勢、日向ではダメなのか?」
腕組みをして海図を眺める長門が、大淀に尋ねた。彼女は首を振る。
「敵の編成に高速艦が多く、低速の伊勢、日向では対応が後手に周る恐れがあります。それに、海域の性質上、航路が大回りにならざるを得ないので、低速であるとより多くの敵性艦隊と戦闘を行うことになり、主力艦隊撃破後も、速やかな戦闘海域離脱はかなわないでしょう」
なるほどな、と長門が頷く。
「これまで述べたとおり、残念ながら現状では、正面からの通商破壊部隊撃破は難しいでしょう。そこで、」
大淀はちらと、横に控える艦娘に目を向けた。前回までの会議ではいなかった彼女は、心得たように、その豊満な胸に手を当てた。
「わたしたちの出番、ということですね」
青で統一された制服を、はち切れんばかりに満たすそれを張り、重巡洋艦娘“高雄”は、一歩前に進み出た。大淀は首肯して、再び海図に向かう。
「南航路は断念せざるを得ません。それは先程話した通りです。ですが、」
言いつつ大淀が、沖ノ島の北側に赤いラインを入れる。
「このように北回りならば、敵の警戒部隊を迂回しつつ、主力部隊に直接接近できます。ただご存知の通り、こちら回りは海流や機雷網の影響で大型艦の接近を許しません。そこで、重巡洋艦を主体とした高速打撃部隊での突破を図ります」
大淀の説明を、高雄が引き継ぐ。
「夜襲であれば、重巡洋艦には艤装の補正が入ります。戦艦級でも、接近すれば十分に撃破可能です」
「趣旨はわかりました。しかし、敵艦隊の索敵はどうしますか?いくら高速を生かして突破できると言っても、敵艦隊を発見できなければ意味がありません。重巡洋艦の索敵装備では、いささか不安が残ると思いますが」
鋭く突っ込んだのは、もちろん加賀だ。今は赤城が秘書艦であるため、空母側からは彼女だけの参加である。普段は扶桑や金剛に任せて参加しているが、生憎両者共に艤装の調整で出払っていた。
高雄が淀みなく答える。
「航空巡洋艦で補います。最上、三隈の両名は、すでに調整を完了していますので」
重巡洋艦娘“最上”、“三隈”は、少し特殊な艦娘だ。能力は重巡洋艦と変わらないが、より索敵を重視しており、専用の航空作業甲板を使用することで、多数の水上偵察機を運用できるようになっていた。これに新開発の水上爆撃機“瑞雲”が合わさり、索敵と先制攻撃を同時に行う『強行偵察型航空機運用巡洋艦』とでも言うべき艦種になっていた。鎮守府では、暫定的に『航空巡洋艦』と呼んでいる。
それならば、と加賀は納得したようで、それ以上の質問を重ねることはなかった。
「以上が本作戦の概容だ。編成については、旗艦高雄、愛宕、摩耶、鳥海、最上、三隈の六名、出撃は明後日○九○○とする」
提督が最後に締めくくる。高雄は了解とだけ答えて、編成を伝えるために作戦室を後にした。
長門だけが、最後まで海図を睨んでいた。
「どうかした?」
「・・・いや、大したことではないのだが」
提督の問いに対して、わずかに顔をしかめて答える。
「やはり気になる。どうも、敵の動きにムラのようなものが多すぎる」
やがて彼女はかぶりを振り、苦笑してみせた。
「いかんな、目の前の戦いに集中しなくてはならないのに」
失礼するぞ。長門はそう言って、自らの職務へと戻って行った。今日は、午後から演習の監督をいくつかの駆逐隊に頼まれているらしい。やはり人気者であるなと、提督は内心で微笑んだ。
一人取り残された作戦室は、さっきまでとは打って変わった静けさに包まれている。無機質な海図が、きらめくパネルに映されている以外、これといって特筆するものもない。
中央に沖ノ島が置かれた海図に、ゆっくりと歩み寄る。おもむろにパネルを操作して、海図を動かした。縮尺を小さくしていくと、必然的に写される範囲は広くなり、やがてこの島国をほぼ中央に置いたある程度広域の地図になる。
今確保している、南西諸島海域。その周囲には、北方海域、西方海域、南方海域、中部海域が広がっている。いずれの海域にも、今までより強力な深海棲艦が展開しており、突破や制海空権の奪取には更なる困難が予想された。
―――それだけじゃない。南西諸島を取ったことで、今度はその守りを固めながら、戦わなければならない。海域を制圧すると言うことは、そのたびに延ばすべき補給線と守らなければならない弱点を増やすと言うこと、か。
何が待っているのか。終わりなきこの戦いの先に。自らの命令で、年端もいかぬ少女たちが駆り出される、この海に。
提督は海図台を睨むと、電源を落として作戦室を出た。
◇
「おい、鳥海!早く行こうぜ!」
艦娘たちの寮、その一室のドアが勢いよく開かれ、中からショートヘアの少女が飛び出してきた。セーラー服をモチーフとした制服に、短いスカートをはためかせて廊下を駆けていく。わずかに遅れて、もう一人の少女が、対称的に優しくドアを出てくる。
「も、もう、摩耶ったら。またカチューシャ忘れてるわよ」
鳥海と呼ばれた、眼鏡に長髪の少女は、自分の頭についているそれとほとんど同じデザインのカチューシャを左手で掲げながら、同様に走っていった。
「げ、忘れてた」
摩耶は廊下の角で急ブレーキをかけ、追いついてきた鳥海からカチューシャを受け取った。
「これで何度目?」
「へへ、わりい。サンキューな」
手馴れた様子で所定の位置に取り付けた、マスト型のカチューシャを確認して、摩耶は再び駆け出す。それをまた、鳥海が追いかけた。
「いくらカチューシャって言っても、装備品の一つなんだから、大切にしてよ」
「いやあ、んなこと言ってもよお。いっそ金剛や扶桑たちみたいに、制服指定してくれりゃあ忘れねえかもしれねえけどさあ」
艦娘の中には、頭部にも艤装があるものがいるが、それらは基本的に装備品として、普段は着用しない。が、なぜか金剛型と扶桑型のものだけは、制服指定されているので、普段から装着が義務付けられていた。理由は溶鉱炉の中だ。
「言い訳はいいから」
「ちぇえ~」
彼女たちが、その装備品を着ける、つまりは非日常がこれから始まるということ。走っていく二人の足音が、静かな寮内に反響して、ドアの前を通過して行った。
第一艦隊出撃ドックに召集された六人の艦娘―――南西諸島邀撃艦隊の面々は、ブリーフィングルームで提督と大淀から作戦の確認を受けると、満を持して、各出撃レーンへ入った。
出撃ドック内には、六つの出撃レーン―――艦娘の艤装を装着するための設備が用意されている。編成された出撃部隊は、この出撃レーン内で、格納庫と呼ばれるドックの別棟から送られて来た艤装の装着を行うことになる。艦種によっては非常に大きな装備を扱うことになるので、迅速な出撃にはなくてはならない設備だ。
「旗艦高雄以下、南西諸島邀撃艦隊全艦、配置完了しました」
凛と澄んだ声が、摩耶の右てから聞こえてきた。一番艦の位置にいる高雄が、出撃、正確には艤装装着の準備が整ったことを知らせる声だ。
『了解しました。これより、艤装の装着に入ります』
大淀のアナウンスで、摩耶の頭上、レールのような機材が動き始める。これにぶら下げられる形で、艤装は格納庫から引き出されるのだ。
「摩耶、艤装の装着に入る」
左右の台上に置かれた砲塔基部を、グローブをはめた手で両腕に装着する。摩耶と鳥海の艤装は、この二つの砲塔基部と腰周りの装備類で構成されていた。
止め具の辺りを念入りに確認する。しっかり装着しなければ、戦闘中に脱落することもあるからだ。特に摩耶は、どちらかと言えば強引にぶん回す方なので、一層注意を払っていた。
一番艦の高雄、二番艦の愛宕の艤装が先に用意され、数名の整備員によって装着に入っている。摩耶、鳥海とは同型艦に当たる彼女たちだが、その艤装は大きく異なり、腰を基点として左右から体を包む、戦艦に近い形状をしていた。大きい分、装備するのに時間が掛かる。
そうこうしているうちに、摩耶の艤装もまた、格納庫から引き出されてきた。姉二人に比べて随分と軽装備のそれは、摩耶の背中側から肩に接続される。二の腕の辺りにも補強材が装着された。そして、最後に残ったのが、摩耶の主兵装となる二基の主砲。二○・三サンチ砲を二門収めた重巡用の砲塔は、先程両腕に着けた砲塔基部に近づけられ、所定の位置にはめ込まれる。それを確認するブザー音と共にボルトが回転し、砲本体と基部を強固に結びつけた。すぐに支えがはずされ、砲塔は摩耶の腕に接続された状態で浮く。既に火が入れられた機関の出力によって、重厚なそれの重さは感じられなかった。
「砲塔、接続確認」
基部を軸にして主砲を軽く回し、状態を確認した。動きは至って滑らかだ。よく整備が行き届いている。
「大丈夫そうですね」
横に控えた馴染みの女性整備員が、額をぬぐった。彼女が摩耶の艤装を整備してくれている。
「今回は魚雷でしたね」
そう言って彼女は、丁度煙草のケースぐらいの大きさの箱を二つ、摩耶に差し出した。表面には、『九三式魚雷』と書かれている。
「サンキュー。ま、夜襲だからな。高角砲よりこっちだよな」
受け取ったそれを、腰周りのホルスターに入れる。機関に接続され、ランプが青く明滅した。それを確認して、一言指示を出す。
「艤装展開」
次の瞬間、まばゆい光を放ってホルスターが拡張する。光は拡散するかに見えたが、次第に収束をはじめ形状を持ちだした。やがて光が収まると、摩耶の腰には二基の四連装魚雷発射管が具現化していた。
空母の艦載機展開法を応用した、格納式艤装だ。
「こっちも問題なしだな」
満足げに頷いて、もう一度魚雷発射管を格納する。これで、各種の艤装点検は終了だ。
『各艦の艤装装着を確認しました。ドック注水準備。作業員は退避願います』
「・・・ご武運を」
大淀の放送を聞いた彼女は、摩耶に敬礼を送る。艤装を着けているのでまともに答礼が出来ない摩耶は、代わりににやりと笑う事にした。
「おう、摩耶様に任せときな」
彼女が足早にドックを離れると、ドック内への注水が始まった。しばらくして、摩耶の正面、海に面したドックのハッチが開き始める。モーターが駆動して、重いシャッターをゆっくりと巻き上げる。朝も終わろうとしている太陽が、浜辺近くのさざ波に反射してまぶしく顔を照らす。
『俺だ。何度も言うようだが、今回の作戦は過去にない展開が予想される。基本的に無線封鎖の下で行動してもらうから、その場その場で柔軟に対応してもらいたい』
顔は見えないが、マイクの前に立っているのは彼女たちの提督だ。彼は、こうして出撃を見送りに必ず現れるのだ。話では、出撃艦隊が見えなくなるまで、ここから見守っているらしい。
―――ったく、心配性なんだからよ。
もっとどっしり構えていてもいいと摩耶は思うのだが、考えてみれば出撃するのは彼女のような、ある程度年齢のある艦娘だけではないのだ。きっと駆逐艦たちからすれば、ちょっとしたお父さん、いや年齢的にはお兄さんのようなものなのかもしれない。
『各員の奮闘を祈る』
ハッチは完全に開かれた。目の前では海と空、二つの蒼が水平線で交わっている。
「南西諸島邀撃艦隊、出撃します!」
「おう、行くぜ!抜錨だ!!」
主機を動かし、摩耶はドックから滑り出す。足元でスクリューが回転するたびに水を押しのけ、反作用で前進する。
微速前進。
ドックを完全に脱した摩耶は、僚艦と合流する。外洋へと進みながら、各艦は間隔を調整して、陣形を整える。目指す先は、南西諸島沖ノ島海域。展開する敵の通商破壊艦隊を撃破し、補給路を確固たるものにするのだ。
風は駆けていく。巡航速度まで速力を上げた艦隊は、肌に流れる潮風を感じながら、白波を蹴立てて海上を進んで行った。
あれえ・・・吹雪ちゃんの出番が・・・
うん、仕方ない、今回は摩耶様回っぽいから・・・
そして多分、次回も吹雪ちゃんの出番は・・・
その分、気合い入れて戦闘書きます、はい。
読んでいただいた方、ありがとうございました。
感想お待ちしています。