倒れたりしないかしら
さて、今回も飛ばして参りましょう、じゃないといつまでたってもリ号作戦始まらないしね
どうぞ、よろしくお願いします
「それじゃあ、鎮守府を案内しますね!」
司令官への挨拶を済ませた私は、早速彼の前に立って、鎮守府へと先導していきます。とはいっても、ここまでの道のりは散々迷子になった末に、さっきようやく覚えたものなので、何回か危ない時がありましたけど。
「鎮守府の設備は、どの程度整っていますか?」
物珍しそうに辺りを見回していた司令官が尋ねます。
「半分って言ってました。やっぱり、資材が足りていないらしくて・・・」
「そうですか・・・」
「で、でも!必ず!わたしが頑張って、資材をたくさん、輸送できるようにしますから!」
意気込んで言ったわたしを、司令官は優しげに微笑んで見つめていました。
「吹雪さん」
「あの、吹雪、でいいです」
「では、吹雪。君のその意気、俺も一緒に持たせてほしい。この海を、一緒に取り戻そう」
大真面目に訊いた司令官に、わたしは大きく頷きました。
「もちろんです!」
◇
正午を過ぎた執務室には、ペンを走らせる音と、持ち出した資料類を整理する音、二つが重なっていた。資材の搬入状況を書き記した書類に確認のサインを走らせた提督は、ふと横でせっせと資料を整理する秘書艦に目を向けて、微笑んだ。
すらっとした長身を引き立たせる、高いヒールの靴。足元まで届きそうな、小豆色の髪。それをまとめた根本は、桜の花びらがあしらわれている。
「大和も、随分と慣れてきたね」
「えっ?」
突然声を掛けられた本日の秘書艦、大和は、提督の声に驚いたような声を上げた。
鎮守府の秘書艦は、扶桑、金剛、長門、赤城、加賀辺りが、持ち回りでやっている。時折、吹雪や大淀が臨時に務めることもあるが、大抵はこの五人で回していた。言わばこの五人が、提督の腹心であり鎮守府の頭脳だ。
その秘書艦の持ち回りに、大和を加えようと提案したのは、長門であった。
「今後の作戦において、大和は重大な局面での出撃が多くなるだろう。指揮官となることも必ず出てくるはずだ。その際のことを考えれば、秘書艦の経験は重要になるだろう」
というのが、推薦の趣旨だった。特に反対する理由もなく、提督もその件については了承し、以来大和も秘書艦を務めるようになっていた。
最初は長門や扶桑に色々と面倒を見てもらいながら執務補佐をこなしていたが、生来の飲み込みの良さか、今ではすっかり慣れて、テキパキと仕事をできるまでとなった。その脇で戦術についての勉強もしているらしく、最近は航空戦や海上護衛に関する書籍を片手にしている姿をよく見る。
勉強熱心、という意味では、鎮守府がまだまだ手探り状態だった時の吹雪や扶桑に通じるものを感じた。そんな彼女に、負けていられないと密かな対抗心を抱いていることは、情報将校としての能力で抑えている。
「と、突然どうされたのですか?」
わたわたと資料整理の手を忙しくする彼女が、控えめに尋ねた。
「大和は、本当に飲み込みが早いと思ってね」
「そう、でしょうか?」
「長門も感心してたよ。大和は勉強熱心だ、って」
数日前の、居酒屋“鳳翔”での会話である。
照れているのだろうか、大和は書類で口元を隠して、明後日の方を向いてしまった。
「ほ、褒めても、何も出ませんよ?」
「ははは、本当のことを言っただけだよ。仕事の腰を折ってしまってすまなかったね」
顔を朱にして、若干の抗議の目線を送ってきた大和も、すぐに頷いて、仕事に戻っていった。今確認しているのは、最近食堂が新しく始めた、食べたいメニューのリクエストだ。秘書艦の方でいくらか絞って間宮に提案し、週一回、お楽しみ献立として夕食のメニューに加えられる。
同じく仕事に戻ろうとした提督であったが、ふと、廊下を明らかに執務室に向かって駆けてくる足音に気付いて、そのペンを走らせるのを止めた。
予感だ。何か、ただならぬことが起こるような、予感。
足音が、執務室の前で急制動を掛ける。呼吸を整える間もなく、扉がノックされた。
「どうぞ」
自然と提督の声は堅くなった。臨戦態勢、すでにその目は、戦闘に赴く指揮官のそれだ。
「失礼します!」
勢い込んで入ってきた駆逐艦娘の声を聞き違えることはなかった。白雪。鎮守府最古参の第十一駆逐隊に所属する彼女とは、提督も長い付き合いだ。その彼女が、ここまでうろたえた様子は珍しかった。
「何があった?」
「と、とにかく埠頭まで来てください!詳しい事情はそれからです!」
まくし立てる白雪に尋常ならざる気配を感じて、提督も腰を浮かす。隣の大和も慌ただしく書類をまとめていて、どうやら着いてくるつもりのようだった。
「い、行きましょう!」
大和が、開いた扉から出たのを待って、提督は白雪の先導で走り出す。廊下に反響する三人分の足音が、鎮守府に風雲急を告げていた。
白雪の誘導で向かった埠頭には、彼女の僚艦である十一駆の三人がいた。いや、正確にはもう一人。十一駆を構成する吹雪型駆逐艦とは全く異なる制服の、線の細い少女が一人いた。
灰色がかった―――表現するならば、昔見た潜水艦映画に登場するUボートの艦体のような色合いの潜水服だ。頭にはシュノーケルと思しき細長い筒。水で濡れているのだろうか、白く長い髪はしっとりと服にへばりついている。腰回りの艤装から、彼女が艦娘であることが分かった。
吹雪と初雪に支えられて、やっとの思いで埠頭に上がってきた彼女に、提督と大和は駆け寄った。
「司令官!大和さん!」
謎の艦娘を左から支える吹雪が、二人に気付いて声を上げた。その表情は困惑を抑えて、何とか状況を整理しようとしている。彼女に説明を求めるのが早いということは、提督にはすぐにわかった。
「医務室には、深雪ちゃんに向かってもらいました。そろそろ戻るはずです」
提督が何かを言う前に、吹雪が口を開く。今まで培ってきた間合いで、お互いの今欲している答えは、大体わかっていた。
「ありがとう。詳しい話は、後で聞く」
もちろん、十一駆全員で。そしてもう一人。
「大和、ユキを呼んできてくれ。作戦室に集合する」
「り、了解です」
事態を消化しきれていなかった大和も頷き、ユキを探しに庁舎へと戻る。確か今頃は、十八駆と基礎訓練をしているはずだ。
「意識は?」
息があるのは、潜水服の上下する胸元でわかる。提督の問いかけに、吹雪は静かに首を横に振った。
「救助した際は、まだ意識がありました。でも、すぐに途切れてしまって」
「そうか・・・」
「あ、その前に、こんなものを」
吹雪が差し出したのは、小さな封筒だった。とはいっても、しっかりと防水加工がされており、中身は問題ないはずだ。
「意識がなくなる直前に、手渡されたものです。リランカをお願い、って」
提督の中で全てが繋がった。
「もらおう」
吹雪から封筒を受け取る。防水加工に、不備はない。中身は気になるが、開けるのは後だ。
吹雪が言った通り、深雪に連れられた医務員はすぐに駆け付けた。担架を引いている二人と、軍医長。その横には、深雪が途中で捕まえたのであろう、工廠部員も一人、付き従っていた。
埠頭の上に敷かれた担架に、ゆっくりと艦娘が降ろされる。軍医長が容体を見る間、工廠部員は艤装を隈なく調べている。損傷はなさそうだが、相当な負荷が掛かっているかもしれなかった。
「・・・あった」
工廠部員は、探していたものを見つけたらしかった。目だけで軍医長に尋ね、彼女も頷く。工廠部員は、艤装背部辺りを何か弄っていた。
パシュッ。
乾いた音と共に、がちゃりと艤装が脱落する。それをどかすと、医務員が立ち上がり、担架で医務室へと向かっていった。
「この艤装は、工廠部で預かります」
「お願いします」
頷いた彼もまた、工廠のある方へと駆けていった。
「四人とも、お疲れ様。吹雪と初雪は、艤装を外してきてくれ。作戦室で待ってる」
「「はい」」
先ほどまで艦娘を支えていた二人は、埠頭から海面に飛び降りる。工廠部へと、自らの艤装を預けに行くのだ。
残された白雪と深雪に、提督は促す。
「先に行っていよう。全員が揃ったら、話を聞く」
ものの五分で、二人は作戦室に飛び込んできた。これで全員が揃った十一駆と、大和、ユキ。提督も合わせて七人が、作戦室に詰めていた。
「まず、始めに。四人には、当事者として、知る権利がある」
海図台の上にそっと置いた封筒―――手紙を前に差し出して、提督は言う。五分の間に内容は読み切り、中身はすでに封筒の中へと戻してあった。
十一駆の四人は顔を見合わせる。数秒の間視線を交差させた後、全員を代表して吹雪が頷いた。手紙の内容を、教えてください、と。
「・・・まず、皆が救助した彼女だが、艦娘だ。ただし、この鎮守府の所属じゃない」
四人の瞳が揺れた。だが、それ以上の動揺はない。それが、自分への信頼のように思えて、提督は気恥ずかしかった。
「リランカ島には、俺たちが『協力勢力』と呼んでいる、もう一つの艦隊がある」
「・・・噂は、本当だったんですね」
噂。リ号作戦発令を前にして、一ヶ月ほど前から、まことしやかに鎮守府に流れている話のことだ。西方海域には、船団を援護してくれる、もう一つの鎮守府がある、と。潜水艦娘が忙しくしているのは、彼女たちとの事前打ち合わせを行っているからだ、と。
実はこの噂は、提督とユキが意図的に流させた噂だった。いきなり『協力勢力』の存在を明かすよりも、噂によって徐々にその存在を広げ、ある程度のところで発表する。この方が、艦娘たちの思考も回るはずだとの、計算だ。噂が多くの憶測を生むことで、現実に対する免疫を作る。それが狙いだ。
「本当は、もう少ししてから話すつもりだったけど。この際、隠しても仕方ないしね」
その存在を作戦発動まで秘密にしてくれというのは、向こうからのオーダーだった。
「話を戻そう。その手紙によると、『協力勢力』の鎮守府が襲撃を受けたらしい。彼女は、それを知らせに来た」
その場の全員が、息を呑んだ。
提督は、手紙の内容を話し始める。リランカ島の基地が急襲を受け、機能を完全に喪失したこと。現在は、秘密ドックに避難し、支援艦内で生活していること。食料の残量が二週間分で、このままでは今の場所から動けないこと。
リ号作戦に合わせて、救助を要請したいこと。
提督の話を、六人は押し黙って聞いていた。やがて、最初に口を開いたのは、ユキだ。
「リ号作戦は、中止ですか」
「いや。中止はしない」
提督はきっぱりと言い切った。
「元々、彼女たちの存在を当てにした作戦は立てていない。あくまで彼女たちの協力は、側面の援護だ」
「それは、そうですが・・・」
「まあ、それに」
そこまで言って、提督は黙った。この先の言葉は、自分の個人的な気持ちでしかないと思ったから。
しかし、そんなものは必要なかったと、すぐに思い知らされた。彼の口から続くはずだった言葉を、彼が最も信任を置く駆逐艦娘が引き継いだのだから。
「それに、彼女たちを見捨てるわけにはいかない、ですよね」
断言に近い言葉だ。確かな決意を滲ませる、吹雪の言葉だ。
―――本当に、この娘は・・・。
内心で苦笑をするしかない。彼女は、いつでも俺の言いたいことを、まるで頭の中を覗き見たように言ってしまう。俺よりも強い意志と、決意のもとに。
十一駆の四人の表情は、すでに全てを決していた。
「救助作戦を実施しよう」
背中を押されているのは、どちらの方か。提督は力強く頷いた。ユキも大和も、それに呼応する。
困難なのは承知の上だ。だがそれでも、リランカ島の彼女たちを見捨てるという選択肢はなかった。
「詳細は、後で詰めるとして。まず、最初に克服しなければいけない問題は、これだ」
海図台を起動した提督は、液晶パネルにリランカ島を大写しにする。島のうち南側―――彼女たちが拠点とする地域だ。
「秘密ドックは、南東海岸のどこかにある。場所は彼女が知っているだろうから、大した問題じゃない。しかし、ドックは海側から侵入できない構造になっているらしい。よって、救出作戦を実施するには、陸側から向かうしかない」
赤い矢印が書き込まれ、リランカ島に上陸した。図面上では簡単なことだが、実際にやるとなると大変どころの話ではない。艦娘は、洋上になければただの少女と変わりないのだから。
「さらに問題なのは、陸上型が陣取っている可能性があることだ」
その場全員の顔色が変わった。
「夜間に上陸作戦をするにしても、最悪の場合、この陸上型の包囲を破らなければならない」
全員が押し黙る。だがその中、吹雪一人は何かに気づいたように、はっとその顔を上げた。
「司令官、あの方なら・・・」
「そうだ。できるのは、彼女たちしかいない」
察しのいい吹雪に、提督も微笑して頷く。上陸戦を主任務とする彼女たちなら、陸上でも艤装の力を使うことができる。夜間の強襲上陸戦には、彼女たちの協力が不可欠だ。
身のこなしが軽いのは、駆逐艦娘に共通だ。言うや否や、吹雪は身を翻して、一気に加速した。ぎょっとしたのは提督の方だった。
「吹雪!?」
「わたし、お願いしに行ってきます!」
唖然とする六人を残して、吹雪は扉の向こうへと消えた。一瞬の出来事に、全員が呆気にとられるしかなかった。
―――本当に、敵わないなあ。
提督が苦笑したことで、場の空気が弛緩したのだった。
*
火薬の炸裂音と迸る砲炎の後、数瞬もしないうちに弾丸は狙い通り的の中央を射貫いた。白煙を上げる砲口に息を吹きかけると、あきつ丸は満足げに頷いて、射撃姿勢を崩した。
「いやはや、すごいでありますな、これは」
鎮守府内の射撃場に立つあきつ丸が試し撃ちしていたのは、鎮守府工廠部が陸軍艦娘用に開発中の、試製洋上携行狙撃砲であった。
お互いに仲が良いとはお世辞にも言えない統合陸海軍であるが、先日のキス島襲撃の件もあり、より緊密な協力を必要とされていた。幸いなことに、統合陸軍の現場―――あきつ丸たち陸軍艦娘は、キス島から救助されたこともあり、鎮守府の艦娘たちにただならぬ恩を感じていた。そうした経緯もあり、少なくとも現場レベルでは、陸海軍の不和は全くなく、むしろ親密と言える。上の思惑はともかく、陸海軍は手を取り合うことができたのだ。
あきつ丸たちの鎮守府駐屯もその一環だ。それまでキス島を守護していた特務師団はさらなる増員と共に二つに分けられ、一月前後の交代でキス島に駐屯することになっていた。キス島守備隊には新しく鎮守府の警備隊も加わり、それならば日頃から鎮守府に駐屯していた方が何かと都合がいいだろうと具申したところ、念願叶って一週間前から正式な駐屯が決まったのであった。
キス島襲撃という悲劇は、結果的に陸海軍の融和をもたらしたのだった。
「ね?いいでしょいいでしょ」
上機嫌に頷くのは、横で耳当てをしていた夕張だ。陸軍からの発注を受けて、試製洋上携行狙撃砲の開発主任を務めたのは、紛れもなく彼女だった。
「射程は短いし、威力も一四サンチ砲相当だけど。取り回しの良さと携行弾数は格段に上がってるわよ」
自信満々にウィンクを決めるだけはある。
試製洋上携行狙撃砲は、F4や支援砲に連なる狙撃砲シリーズの中でも、特に洋上での使用を重視したものだ。原型となったのは長良型の前期三人が持つマシンガン型の主砲で、これを基にして狙撃砲のシステムを組み込んでいる。
「ありがたい限りであります」
砲身が冷却されたことを確認して、あきつ丸は弾倉を外し、夕張に預ける。陸軍艦娘は、艦娘とは名ばかりで、深海棲艦と渡り合う術を持っていない。自衛用の兵器を持てるのは、本当に心強いのだ。
「正式な生産は、いつ頃なのでありますか?」
各部を点検しつつ狙撃砲を仕舞い込む夕張に尋ねる。ケースの蓋を閉めた夕張は、グローブをはめた手で考え込む仕種をした。
「うーん、もう最終設計段階だから、先行試作型は早ければ二週間以内ってところね」
「意外と早いのでありますな」
「元々、早急な正式化を狙ったものだから」
ケースを抱えて、夕張が立ち上がる。今日の試射は終わりだ。
バタンッ。
大きな音と共に射撃場の扉が開かれたのは、そんな時だった。あまりの音に、二人が同時にそちらを振り向く。開かれた扉に手を着く彼女は、乱れたセーラー服の肩で大きく息をしていた。前に垂れた髪が、それに合わせて揺れている。
「吹雪殿・・・?」
突然の来客に戸惑いながらも、あきつ丸は走りこんできた吹雪に声を掛ける。息を整えた吹雪は、うっすらと汗が浮かぶ顔を上げて、その真っ直ぐな瞳をあきつ丸へと向けた。
「あきつ丸さん!」
「は、はい」
あきつ丸―――のみならず、陸軍艦娘全員にとっては、吹雪は命の恩人だった。キス島へ救助に来てくれただけでなく、襲撃してきた敵艦隊へ単艦で立ち向かい、身を挺して彼女たちを守ってくれたのだ。
その吹雪が、真剣な目であきつ丸に迫っている。ごくり。余程の出来事であることを感じ取り、あきつ丸は唾を飲み込んだ。
「あきつ丸さんたちに、お願いしたいことがあるんです」
「お願い、でありますか?」
吹雪は話し出す。今度の作戦のことを。そしてリランカで待つ、仲間のことを。
話を聞くうち、あきつ丸には他人事とは思えなくなった。二ヶ月前、絶海の孤島で孤立していたのは、彼女たちの方だった。
「―――お願いします!わたしたちに力を貸してください!彼女たちを助けるのを、手伝ってください!」
吹雪は勢いよく頭を下げた。あきつ丸の横で話を聞いていた夕張も、同じように頭を下げる。彼女もまた、次の作戦に参加するらしい。
「あ、頭を上げてほしいであります」
あきつ丸は慌てて頭を上げるように言った。ゆっくり、二人の頭が上がる。
鎮守府に駐屯しているとはいえ、あきつ丸は統合陸軍の所属。作戦に参加するか否かを決めるのは、吹雪とあきつ丸ではなく、提督あるいはそれよりも上の人物と、陸軍の人間だ。
だが、この際そんなものはどうでもよかった。
二ヶ月前。キス島に閉じ込められたあきつ丸を、吹雪たちは助けた。
今、リランカで待つ彼女たちを助けることができるのは、あきつ丸たちしかいない。
何をするべきか。そんなものは、今更問うまでもなかった。
あの時の、海征く守護者たちのように。差し伸べられる手を持ちながら、それを差し伸べないのは、神ならぬあきつ丸には許されていない。
「吹雪殿」
「はい」
緊張の面持ちで待つ彼女に、あきつ丸はできるだけ柔らかく、笑顔を見せた。
「もちろん。協力させていただくであります」
―――あの時の、彼女たちのように。
今度は自分が助けよう。
幸い、上にはいくらかつてがあるし、話の分かるお偉方も知っている。共同作戦をねじ込むのは可能なはずだ。まして、あの提督がいるなら、尚更。
「リ号救出作戦への参加、上に具申してみるであります!」
あきつ丸の敬礼に、二人の艦娘が応える。やがてどちらからともなく、その眉尻を下げるのだった。
キス島では撤退するだけだったあきつ丸たちですが、いよいよ本領発揮であります
ちなみに本編では、あきつ丸改を想定しているであります
そういえば、まるゆはどこで何をしているのでありますか?
実は作者も把握していないのであります(おい)