死神と閻魔と悪と   作:(゚Д゚≡゚Д゚)?

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お久しぶりの方、初めまして
初めましての方、初めまして
キャラクターも、初めまして(発狂)


不溶夏雪 急

さて

そういって彼は仕切り直した

その言葉にさして意味があったのかは知らない

いや、彼の事だから意味など無いに等しいのだろう

仕切り直したというか、場を区切るというか、恐らく儀式や仕来り・・・そこまでは意味あいの強くない、彼なりの癖のようなものだと思う

「まぁ、なんだ

こんな風に集まってもらっちゃわりぃんだが、生憎とオレが引き起こしたとは厳密には言えねぇんだな、これが」

・・・

部屋の中に静寂が走る

恐らくこの場の誰もが予測していない結末だったのだろう

誰も何も切り出せないまま、しかし、彼は一人で厨房に立ち料理を作り続ける

一角には妖夢や早苗が買ってきた食材を使い、絢爛豪華とまではいかない物の立派なツマミが所狭しと並んでいる

確かに見た目は普通であろう

しかし、それはただのフェイクにしかすぎない事をこの場の全員が知っている

その香りを嗅いだだけですぐさまその料理のうまさが伝わってくるほどの品質

(まさか彼にそこまでの才能があろうとは・・・いた間にご飯作ってもらったらよかった)

と一人別の事で沈黙している阿求

さすがにその沈黙も長くは続かず疑問は膨れ上がったまま解き放たれる

「い、一体どういうことなのかしら?

発言の意図がわからないわね」

「一体この規模の、そうそれこそ一介の妖精をあの規模にまで膨れ上がらせるなんて所業、誰でもできるわけあるまいて」

「存在を変革させずに成長させる、それが出来る人は・・・残ってるのはあなただけなんだけどねぇ」

さすがにこの格にもなると自身の予想が外れてもそこまで、取り乱すことは無いようだ

実の所何もわかっていなかった阿求が一番現状では平静なだけあって、三人の中には疑問の嵐が吹き荒れていた

チルノの変化はまさに神が掛かったような変貌だ

かつて神奈子自身も地獄鴉を八咫烏と融合させることにより、霊格を飛躍的に向上させた前例もある

「この結果はオレが加担した、ってことは別に間違っちゃねぇよ

だけどな、この事態に関しては発端と過程と結果、それぞれ三人いるってことだ」

発端、つまりこの異変を考えた人物

過程、つまりこの異変を計画した人物

結果、つまりこの異変を決行した人物

このうち、アンリ自身は最後の決行した人物という事になるのだろう

「生憎、この先まで教える気はねぇしアンタ等がそこまでたどり着く事もねぇだろ

ま、真実この結果は仕組んだ奴の望む通りに行ったわけだって事だ」

「発端と過程の人物・・・その二人の目標は既に達成されたという事ですか?

つまり、この異変自体が裏で行う工作の為の囮であったと」

囮-つまりはこの大妖怪すらもおいそれと行うことの出来ない規模の異変ですら、フェイクであったということ

下手をすれば幻想郷という楽園すらも壊しかねない危険な計画だ

出汁の味を確認し、少し考えた後「もう少し鰹節入れたほうがよかったか・・・でもまぁ、高級品だしなぁ、こんなもんか」とつぶやいて次の作業に入る

佇まいは先ほどから変わりなく、つまり、この話は彼にとっては取るに足らない出来事でしかないということらしい

「貴方は・・・貴方達の望みは一体?」

八雲紫もこのことは想定外であったのか何時もの胡散臭い微笑みを消して、思考がそのまま口から出てしまっている

博麗の巫女をからかっているときとは大違いである

その質問に彼は要った

例えば恋人がベットの上で事後に愛を囁くように

まるで戦友が仲間を鼓舞するように

あるいは上司が部下に仕事を託すように

さも当然の理由だという風に

答えた

「助けを求める声が聞こえた、それ以外に理由なんていらねぇだろ?」

 

 

~悪人料理中~

 

 

倒壊した氷の城

その一角からボロボロになりながらも少女達が脱出する様を見て、チルノは一人胸中に飛来する感情に判断を付けかねていた

今まで恋い焦がれ追い求めてきた最強という名の王座

幻想郷に置いて数々の異変を解決してきた人物達、特に博麗の巫女を打ち負かしたという事実は、正に最強と名乗っても不遜は無いものであろう

しかし、あの頃はあれ程までに思い描き欲していた物は、今、自身の手の中で中身の無い箱のような空虚な物に成り下がっていた

「一体、どうしたいんだろうな、私は」

呟くものの、その答えは誰も返してはくれない

昔の自分は確かに弱かった

妖精の中でこそ上位の存在であったが、妖怪という大枠の中では所詮吹けば飛んでしまう様な些細な存在

なまじ力があった分、そのことが許せず、かと言って現状をきちんと理解するほどの知能も持たず、大口を叩いて強者に喧嘩を売る日々

確かに負けたしボロボロにされた

強者の機嫌一つで、粉みじんにされたこともあった

でも、それでも、仲間がいた

同じ妖精の大ちゃんがいた

切磋琢磨しながらふざけ合ったサニー、ルナ、スターの三月精がいた

行き成り驚かせてくるルーミアがいた

野原を一緒に駆け回ったリグルがいた

お姉さんぶるけど何処か抜けていたミスティアがいた

沢山の妖精たちがいた

友達がいた、仲間がいた

それらを全て捨て、彼に着いて行って、強さを手に入れて

その行き着いた先がコレだったのか

「あぁ、そうか、そういう事だったのか」

彼は最初に言っていた

私に取って一番望むものは何か?それを得るためにすべてを捨てられるのか?と

頷いた、あの時は欲しいものなど強さしかなかった

何のための強さなのか、誰のための強さなのか

それすらもシラナイまま強さだけを手に入れてしまった

「私は守りたかったんだ

妖精の誇りを、価値を、意思を

何より・・・穏やかな日々を」

妖精は自我が幼いせいで異変が起きると、気質が変化し狂暴化してしまう

その為、異変の最中に多くの妖精は巫女や魔法使い、メイドや庭師に倒され再生を余儀なくされてしまう

自我は確かに同じかもしれない

しかし一旦消滅し、再構成された肉体を果たして同じ人物として扱ってもいいのか

それが、私はたまらなく嫌だった

命を軽んじられている気がした

どうせ復活するんだからと、投げやりになられている気がした

だから私が守るんだって、そう思って、その結果

「私一人になってどうするっていうのよ」

頬を何かがつたっていく

生ぬるく、でも、どうしようもなく不快なもの

景色も滲み、心も窮屈になっていく

心の痛みはメビウスの輪のように永遠と続き、思考はアリスの穴のようにドンドンと底へ沈んで行ってしまう

それに連れて周囲の森は少しづつ霜を帯びていき、やがて氷り、その内部のみ砕け、純粋なる氷の樹林が広がっていく

【冷気を支配する程度の能力】

今の彼女は、そう呼ばれる能力を身に着けている

性質としては以前の【冷気を操る程度の能力】と異なる部分等無いのだが、その威力に関しては比べものにならない程まで上昇している

名付け親にして、その最初の一撃を喰らったアンリ曰く「生半可な神ですら一瞬で氷像にする」程度の能力だそうだ

その強大無比な力の奔流が彼女の理性の範囲から漏れ出し当たりに拡散しているゆえの影響である

見た目こそ幼女から少女へと、具体的には一桁代の年齢から十も行かぬ少女から十代後半程度に変化したチルノであるが、その内面、こと知能という部分に至っては凄まじい成長を遂げている

一族の長老ですら御しきることのできぬ知識と溢れ出るカリスマから、一国の王にすらなることすら可能であろう

その様はまさしく

「”氷帝”、そう呼ぶに相応しい姿だね、チルノちゃん」

と、彼女は何時ものようにチルノに話しかけた

 

 

~少女遭遇中~

 

 

チルノが佇む空中と人間の里にいるアンリの中間付近にある一つの工房

そこには最近住み始めた褐色の肌に白髪の男が一振りの包丁を打っていた

カーンカーンカーンと甲高い音が響き、その後に焼き入れによる水の蒸発の音が響く

何度も何度もそれを繰り返し、まるで一振りの刀の様に包丁を作っていく

「ふぁぁ、全く何度目だよ

ショートソード作るのに刀の工程なんか使いやがって」

欠伸をこらえきれずこぼしながら金髪に赤い瞳の少女が青年に向かって愚痴をこぼす

その様はだらしの無いようなものではあるが少女の容姿と相まってそれすらも絵になりそうだ

しかし、それは主に二つの理由によって台無しにされることだろう

一つは此処が高温多湿になりやすい工房の中ですら汗一つかかないという異常性

それに加え少女のの背中には黒く染まった翼があった

「叩いて引き延ばして冷やして、そんでまた叩いて引き延ばして冷やして

そんな単調な作業をしなきゃいけないなんてご苦労なことで」

どうやらこの作業をそれなりに長い時間見ていたようで、その言葉には退屈という表現は含まれていなかった

代わりに含まれていたのが純粋に理解できないという拒絶的なものであったが

「生憎、私はこれ一つしか出来なくてね

長いとは言えない生涯を過ごしたが、これの他には誇れる物が無いのさ」

振り向きもせずにそう自虐を交え答える

その返答に気を悪くした様子もなく少女は再び意識を青年の行う工程へと集中させる

二人の間に会話は無い

さほど広くもない工房に響く鉄を鍛える音だけが時間の流れを教える

どのくらい時間が経っただろう

青年が打っていた鉄は刃渡り五十五センチほどの綺麗な剣としてその形の大筋を見せた

本来ならばここから更に研磨をしなくてはいけないのだが、今回はそこまで至らなかったようだ

そのまま隅に置かれた箱の中に無造作に放り込む

「今回もだめなのかー」

打った本人ではなくそれを眺めていた少女が残念そうに言う

それもそのはずだろう

他の誰でもない彼女がこの依頼をした張本人なのだから

「全く、君は何故私に自身を討つ為の剣なんぞ依頼してくるんだ?

意外にこれは難しい類の概念武装だぞ」

青年が打っていたのは概念武装、特に闇を払うエクソシズムに特化した性能を有している

対して彼女は闇ーつまり相性は最悪と言っていい武具の製作を依頼しているのだ

更にその武器を自分で使うのではなく、相手ーつまり彼女を討伐に来たものへと使わせようというのである

「大妖怪の考えることは分からんな、勝てるように最善を尽くす、それ以外に勝利への拘り等なかろうに」

「慢心し、油断し、それでも尚蹂躙する、それこそが強さよ

そうやってあんたが語る正義の味方は存在しないけれども、残念ながら私の言う悪はどの世界にも存在するの」

青年の意見を即座に反論し、持論を展開する少女

しかし、その意見は彼には受け入れられるものではなかったようだ

「確かに私は歪んですり切れて無様な者になったさ

でもな、私には君のように戦いたいとういう欲求は無かった

いつでもどの場所でも、武力の必要のない解決法があるなら、それを選び取りたかったさ」

その言葉には彼という人間が歩んだ苛烈極まりない道の重みが伸し掛かっていた

「ふーん、あんたが相手をしてくれるならこんな面倒な事を頼まなくてもいいんだけれど・・・その気にならない?」

どうやらこの話では分が悪いと判断したのか強引に話題を切り替える

対してその反応に気分を害したわけでも無いようで、青年もいつも通りの答えを返す

「悪いが、君とやりあるほどの余力は無くてね

それに君は考えも気にもしないだろうが、私達が戦えば周囲に被害が出る

白熱したら君は抑えられないタイプだろう?」

実際に二人が戦うとなれば、工房は愚か里の周囲まで被害が及び、妖怪と人間の両方から追手が放たれることになる

それはさすがに少女とて起こしたいわけではなかった

ただそれでも満ち足りないのか少女は少々頬を膨らませ、露骨に視線を外す

その様に外見相応の幼さを感じ、青年も思わず口角をあげる

今までの作業でかいた汗を手ぬぐいで拭いながら、ようやく重い腰を上げる

何か飲み物でもいるか? いつもの紅茶が飲みたい

軽い口調の提案に、むくれた少女の返答

今度こそクックックッと声に出して笑いながら、青年は台所へ向かった

少女の機嫌を直す為に、紅茶と戸棚に入れてあるケーキを取りに

「畏まりました、お嬢さん」

と、一言皮肉を付けるのを忘れずに

 

 

~英雄調理中~

 

 

背後からの突然の声掛けにチルノは驚愕した

現在彼女の周囲は他の場所に比べ体感できるほど気温が低い

またそれと同時に彼女自身の妖力も感じ取ることができるため、結果的に誰も寄り付かない・・・はずだったのだ

その現状、話しかけられるという事はそれらの条件を理解した上でなお話しているという事だ

しかもその相手が

「リグル・・・貴方・・・なんで・・・」

弱き時代に同じ仲間として活動していた弱小妖怪なのだから

「なんで、とはひどいね、チルノちゃん

見かけや妖力の大きさが変わっただけで、もう私の事なんて知らないとか言い出すようになっちゃったの?」

「そんなことは無い!!・・・そんなことは無いよ、でも・・・そう・・・信じられない・・・」

余りの唐突さと、辛辣な友人からの言葉

思わず声を荒げて反論をしたものの、実際彼女は自身の内にある感情に対応しきれなかった

リグル・ナイトバグ

彼女の事は彼女自身よく知っている

過去のチルノと共に日々を過ごした仲間

そして・・・強大な力を得て失くしてしまったキズナの一つ

蛍の妖怪である彼女は寒さに弱い

そんな彼女と、今のこの冷気をまき散らすチルノでは同じ場所に立てない事は自明の理だった

が、それもチルノが知っているリグルであったらではあるが

「いやはやこれほどの冷気、私の予想の範疇を超えてるよ

まぁ、許容範囲内ではあることが不幸中の幸いかな?」

「なんで、貴方がこの冷気の中で動けるの・・・リグル!!」

今までの様に幼い雰囲気を消し、飄々とした態度で話しかけてくるリグルに対してチルノは混乱したまま問いかける

過去と現在の齟齬が、チルノ自身の精神をかき乱して状況を正しく理解できなくしていく

「なんで、ねぇ

理由なんていくつでもつけられるさ」

ふわりと浮いたまま足を踏み出し、チルノの周りを円を書くように歩き出す

「そもそも【なんで】なんて聞きかたが卑怯だと思うよ」

「友人だから?」「面白そうだから?」「恐いもの見たさ?」「寒さはどうするのかって?」

「一体君はなんと言ったら納得してくれるのかな?」

言葉の一つ一つがチルノに鈍い胸の痛みと理解の出来ない鋭い頭痛として突き刺さってくる

まるで目の前の友人が、見知らぬ他人へと外見だけを残して変えてしまったようで・・・

「まさか!?」

そして思考は行き着く

肉体を変化させた自分、精神のみが変わった友人

「さすが・・・彼に頼み込んでまでしたことは間違ってなかったようだね」

態度を豹変させ、今まで通りの、それでいて何処か大人びた雰囲気を纏う少女

それは間違いなく彼女の友人の姿であった

「ごめんね、君には変わって欲しかったんだ

多少強引でも、きっかけさえあれば何とかなる、そう確信してたから」

恋する乙女の告白の様に、少しづつ思いを言葉に変えつたえようとする

その内容はリグルがチルノに対して一定以上の好意を含んでいるという事を表している

過去のチルノならその内容に照れて恥ずかしがり、空気を変えようとしただろう

しかし、今となっては彼女は変わった

発言の内容の裏を予測し、咀嚼し、導き出す

一連の流れの中にあった曖昧な単語を、理解可能な具体的なものに変換する

「彼・・・まさかリグル、貴方アンリと共謀して私を嵌めたってわけ?」

自身に起こったこと、それらを加味して導き出せる答えは、目の前のリグルと恩人であるアンリ・マユが彼女を誑かしたという事だ

「さてどうかな?

聞きたいことがあるなら力づくでねじ伏せる、それがこの幻想郷の流儀だよ」

袖の中から一枚のスペルカードを取り出し、それを見せる

その瞬間マントが風にたなびき、その内部が一瞬のみ視界に入る

ギチ・・・ギチギチ・・・

そんな効果音が聞こえてきそうなほどの大量の蟲

マントの裏側には天球儀の模様が入っており、その中から大量の蟲が溢れ出てくる

這い出た蟲はリグルの周囲を飛び回り、やがて視界を遮るほどの濁流となる

「蟲使いの癖に私に勝負を挑むなんて・・・面白い、貴方を打ち負かして真相を聞いてあげるわ」

漠然と周囲を覆っていた冷気が、指向性を以て強くなる

夏だというのに周囲の気温はすでに息が白くなるレベルまで低下している

両者共に手にもつスペルカードは一枚

その力を解き放つ為妖力を注ぎ込み、徐々に光を帯びていく

「【フヴェルゲルミルの悪竜】」

「蟲符【捕食者たちの晩餐】」

氷で作られた竜と蟲の大群が衝突する

 

 

~少女遊戯中~

 

異変解決の後は宴会

それはどのような異変であっても、例え異変の犯人が出てこなくても変わりはしない

だがしかし、犯人が出てこないうえに解決した者まで出てこないというのは今までは無かったことである

「何か納得いかないのよねぇ」

宴の中心で飲んでいたグループの一人、博麗霊夢が思い出しながら話始める

「何がだ?霊夢」

その隣で同じく飲んでいた霧雨魔理沙が反応する

同じような反応を主人の世話をしながら十六夜咲夜も見せる

この三人は今回の主犯あるチルノに実際に接触した人物だ

「私達ははっきりとアイツと対決して、負けたのよ

あの圧倒的なまでの力を持った奴を、さっさと倒して行ける奴なんて、一体誰よ?」

その言葉に反応する三人

そして、その話をきいていた数名の実力者たち

「何?貴方達、今回の異変の主は一体誰だったの?

まぁ、暑苦しい夏に雪とは優雅なものだったけれどね」

咲夜の隣に座り、一人ワインを飲んでいた少女が話しかける

彼女の名前は、レミリア・スカーレット

今回の異変の起きた場所近くの湖の畔、紅魔館と呼ばれる西洋建築の屋敷の主人である

種族は吸血鬼であり、その能力は【運命を操る程度の能力】である幻想郷のパワーバランスの一角を担う偉人だ

その彼女が今回の異変の主・チルノと戦ったら一体どうなるのだろうか

「あれで適度に溶けてくれるなら大歓迎なんだけど、ね

溶けない氷なんて只の邪魔な障害物よ」

「そもそも溶けないのに冷気を出すなんて意味の分からない物を置いておきたくなんかないな

まぁ、お前のとこは優秀なメイドが何とかするだろうが」

軽口の応酬をしつつも、暗にお前が行くなと伝える霊夢と魔理沙

現状、二人が戦った場合の被害が大きい事はほぼ確実である

幸いにしてレミリアのその言葉は興味故のものだ

その火種を消してやればいつものように関心を失くすだろう

と、二人は思っていた

「安心してほしいわね、私は今回の異変に手を出すつもりはないわ

うーん、そうじゃないわね

私達は手を出してはいけないわ」

内心を容易く看破し、その回答まで述べて見せる

その姿は正しくカリスマと言ってもいいものなのだが・・・

「アンタ、また服汚してるわよ」

手に持っている酒が服についていたら、その威厳も半減するという物

ませた少女の戯言の様に感じれてしまう

「気にすることはないわ、変えの服はあるもの

それで・・・あの男は誰かしら?」

服のことなど気にしないかのように言いながらこめかみをひくつかせている

話題を変えようとして無理をしているのがありありと見て取れる

しかし此処で話を蒸し返しても面倒なので二人もその考えに乗ることにした

三人して視線を向けるとさすがに目立つのか当の本人も気が付いたようで、こちらに向かって歩いてきた

「一体何の用かな?お嬢さん方」

四季映姫と小町と共に呑んでいたアンリ・マユが霊夢たちの所に合流する

幻想郷の中に置いて男性とは農業等の力仕事を多く分担しているために、この様な妖怪たちが集う場所へあまり参加しない

いや、あまりというのには頻度が少ない

殆どの場合女性のみでの宴会になるので、今回は数少ない男性の参加という事になる

なので関心を向けられるという事がほぼ当たり前の状態なので、彼自身もまたかという表情で対応している

「この間はどうも、博麗の巫女をしている博麗霊夢よ

何かあったら、賽銭箱に入れるお金を渡せば力になれるかもしれないわ」

「同じく霧雨魔理沙だぜ

まぁ、私は妖怪退治に困ったときとかに話してくれればそこの貧乏巫女よりは役に立つぜ?

報酬もきっちり頂くがな」

以前阿礼乙女の家で面識があった二人は軽く自己紹介をする

まぁ二人の自己紹介がコレなのはお察しの通りだが

「これはこれは、私の名前はアンリ・マユ

見ての通りか弱い英雄です」

丁寧ながらも何処か皮肉めいた言葉で己を解釈するアンリ

その佇まいにおいても何処かダルそうな雰囲気を纏っている

「私の名前はレミリア・スカーレット

湖の真ん中にある屋敷の主人をしているわ

もし近くによることがあったら来なさい、お茶ぐらいならご馳走してあげるわ」

その赤い瞳をアンリマユにむけ、微笑むレミリア

それに対してにやりと口角を上げるアンリ

二つの視線が交わりそして

「!?」

微笑みに微妙な緊張が交わる

それに対ししたり顔でにやにやするもう一方

(私の能力が、きかない・・・!?)

彼女固有の能力である【運命を操る程度の能力】は他者の運命に介入し、強制的に稀な可能性を引き起こす強力な力である

が、しかし、それは手が割れていれば防ぐことが可能な人種もいるということもまた一つである

(ったく、ノーブルカラーの魔眼、それも運命介入タイプの物か

ダンゴ現象を強制的に起こし、他者の運命に変更を加える・・・タイプ的には固有結界や空想具現化に近い超常的な能力だな

まぁ、ネタが割れさえすれば、俺の敵じゃねぇしほっといてもいいか)

アンリ自身そこまでの対魔技能はないが、ネタが割れば対処の使用があるというのが魔術というもの

自身内部に限定的な障壁を展開することで干渉をはじき解析する

これが石化などの直接肉体に作用するものであれば、はじくこともできずにその身に被害をこうむっていただろう

しかし、成り立ち故に精神および他者の運命に介入する魔術に対してはめっぽう強く、その被害をうけずらいのがアンリの特徴でもある

「お嬢さん、あまりに過激な火遊びは自身の身を亡ぼすぜ?

強者ゆえの驕りを狩るのが弱者の仕事なわけでな」

皮肉げに忠告をするものの、その顔にはいつものニヤニヤ顔が張り付いており明らかにその場の状況を楽しんでいる

それを知っている者はめんどくさそうに、あるいはかかわりを持たないようにそっぽを向いたりと巻き込まれるのを逃げに言った

知らぬものはこれからいったい何が起きるのかを楽しみにその場の付近へと近づいていく

宴は続く

誰もかれもを巻き込んで

興味本位に近づいたものも、挑発したものも、巻き込まれないように逃げたものも

誰一人やけどを負わないものもはいないという事実を決めつけて

 

 

~少女火傷中~

 

 

湖畔に佇む青年

その手には何も握られていないが、まるで見えない武器があるかのように、鋭い気配を身にまとっていた

「そんな風に殺気を出すもんじゃないよ

君といい彼女といいそんなに人に喧嘩を売るのが好きな性格だったっけ?」

青年の目の前ですわり背を向けているリグルは、膝の上に寝ているチルノの頭をなでるのをやめ語り掛ける

「目の前に涙の跡をがある女の子を見捨てることができなくてね

実力もないのに一丁前に正義感だけはあるってもんだ」

頭を掻きつつ、その手の握りだけは解かないアンリ

その恰好に苦笑いを浮かべつつ、視線を手元から湖畔へと向けるリグル

意識はないがゆえにリグルの膝の上で甘えるように寝ているチルノ

三者三様の形ではあるものの、ある種安らぎのような、あるいは緊張というような不思議な雰囲気が場を支配していた

「宴は終わったの?」

「いんや、どいつもこいつもベロンベロンに酔っ払っちまってな

面倒な事は御免なもんで逃げてきたってわけさ」

「あはは、そりゃぁ大変だったね

こっちもこっちで大変だったけど、決して変わりたいとは思えないなぁ」

そう呟いて軽くマントを払い右手を掲げてみるリグル

パッと見は何もないようだが、じっくり見てみるとかすかに震えている

「全く、さすがチルノちゃんだね

変わっても変わらなくても私じゃやっぱりきっついよ」

うれしいようなかなしいような複雑な表情を浮かべるリグルに対し、アンリは困ったような風体を醸し出す

「そんな風にお前に慕われる奴が居るっていうなら、あいつ等も浮かばれねぇだろうなぁ

ま、アンタはソイツみたいな奴よりも、俺やアイツのようなきっぱりと外れてるやつ相手のほうが戦いやすいそうだからな」

そういってどこぞの学生服を着たシリアルキラーや、真赤な服を着て白髪の男を思い浮かべる

あぁいや、自分もその一員か、と自虐気味にいつもの笑みを浮かべる

「相変わらずだね、君も

ほら、そんな処に突っ立ってないで一緒に飲まないか?

それとももう飲めないとか、私とは飲めないとか言うのかい?」

最初は狡猾な熟女のように、その後は快活な幼馴染のように、最後は不貞腐れる幼女のように

コロコロと雰囲気を変える少女はその頭頂部から生える触角を抜きにしても人間ではないように感じる

「クックックッ、お互い入れ物と中身がグズグズになっちまってるとつらいな

まぁいいさ、一杯もらおうじゃねぇか」

リグルの隣に座り、どこからともなく出した器を差し出す

「過程も理由もまるで違うのに、結果だけ似たようなものになるのも不思議なものだね

それが私たちらしいといえば私たちらしいんだけどね、っと」

器用にマントの中に手を入れ徳利を出す

「それもそうさ

例えるならオレが水にぶち込まれた絵具で、お前は色を重ねたキャンパスだもんな

だったらそっくりにはなるさ

ならばこそお互い嫌になるほど理解しあえ、お互い嫌になるほどー」

そこで一旦言葉を切り、リグルのほうを向き

「殺したくなる」

と口は笑っているのに、仄暗い光を携えた視線を向ける

そんな視線を向けられた当の本人は、というと

「そうかな?

そう思ってもらえたら歓迎って感じかな?」

少女らしい見た目に合った照れ笑いを浮かべる

しかし、それ故にその見た目にそぐわない言動が出たときの違和感は計り知れないものがあった

「意識することすらせず、本来なら目を向けることすら許されない地べたを生きる蟲ごときが、君のような神に認めてもらえるなんてさ

少なくとも・・・そう最低限殺したいって感情を向けてくれるのなら恋心は満たされるかな?

そんな風に言ってもらえると勘違いしちゃいそうだよ」

頬を染めながら物騒なことをいう少女に、青年はやれやれと肩をすくめる

「相も変わらずお前は変わらないな

この世界において一位タイで大好きで、大っ嫌いだよ」

元となった少年の面影を出す笑みを浮かべ彼も笑う

彼と彼女ーこの異変の主犯格ー神が歪んだ英雄と能力を理解したがゆえに壊れてしまった少女ーは今日も仲良しである

でもまぁ、これは微ハーレム要素を含む小説

だれか一人が仲良くしていたら他の女の子が乱入してくるのが定石

それ故に彼女、膝の上に寝ていたチルノが乱入して場をかき乱すのはある意味レミリアですら変えることのできない運命だったのだろう

これにて此度の異変は終了

この後に何が起きたか・・・それはきっと予想の範疇に収まる程度に他愛もない陳腐なお話

 

 




麻雀小噺

「というわけだ
まぁ、細々としたものを省いて語るとこういった感じかな?」
一転して雰囲気を変えたアンリは気楽に言う
麻雀は既に半荘も終盤ーアンリのオーラスを迎えていた
「へぇ、そんな事がーあ、それポン」
幽々子の切った中を神奈子が鳴く
そしてそのまま切ったローピンを紫が憎々しげに見る
幽々子と紫の点数差はおよそ1200点
簡単にひっくり返せるがゆえに流石に歴戦の猛者である紫も攻め急いでいた
故に気が付けなかった
神とはー神奈子や諏訪子のような神とは根本的に違う最高神とはーある種いかれた奇跡を導き出すのだと
アンリが持ってきた牌は北
「カン」
「へぇ、北カンか」
嶺上牌は南
「カン」
次の嶺上牌は東
「カン」
更なる嶺上牌は白
手配に残っている四枚の西で更に
「カン・・・そしてー」
自模った牌は
「自摸、字一色、四暗刻単騎、四槓子、大四喜和
まぁ、こんなもんだよな」


ということがあったらしかったりなかったらしかったり




次回(いつになるかは分からない)
あの伝説の女性とその夫が登場!!
い、一体なに狐なんだ!?(((((( ;゚Д゚))))ガクガクブルブル

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