死神と閻魔と悪と   作:(゚Д゚≡゚Д゚)?

4 / 5
過去最大級に長く、過去最大級にグダグダ
適当な設定目白押し
今まで以上の超展開に、作者が置いてけぼりだよ!!


不溶夏雪 破

夏の暑い日差しが緩やかに差し込む一つの部屋

そこにたたずむ二つの人影

片や部屋の奥の柱に寄りかかり、片や縁側に出て足を投げ出している

縁側に座っている少女が、もう一人ー奥に座っている男に向かって視線を向ける

目を瞑ったまま何かを考えている様子の彼は微動だにしない

それは一種の彫像のように美しく確固たるもののようにも見えるし、また反対に、ひどく虚ろな幻想のようにも感じられる

いや、その両方なのであろう

英霊という儚い存在が受肉という定着を受けたが故の奇妙さ

それが彼に内在していた

外には入道雲が彼方に見え、未だに雪がちらついている

この異変が始まって早三日

博麗の巫女は未だ動き出さず、他の面々は何をしているのかはわからない

目の前の青年は、朝早くに此処に来ては夜には何処かへと行くという毎日を繰り返している

これで、食事でも同伴すれば何かしらを聞くことは出来るのだが、彼は毎日同じ位置に座り一日中そうしている

こちらから話しかければ返答はするものの、自発的に話すことはない

食事に誘っても断られてしまう

阿求の最近の悩みは彼の事に占められていた

なにせ幻想郷縁起に関しての取材でわかったことだが、彼は生前は英雄であったという

今の幻想郷において英雄とは博麗の巫女等の異変を解決する者たちであるが、それこそ過去においては偉業を成し遂げたもの達であるはずだ

そんな偉大な存在であるはずの彼だが、その態度は一般人と言っても差支えない

武術の達人や深層な知識を蓄えた魔術師のような一線を引いたような空気は感じられなく、少し、そう少々自虐が行き過ぎていること以外に特に普通の男性のように感じられた

しかし、そんななりもここに通うようになってからは潜めている

何を考えているのか、何を見つめているのか

あるいは、何も考えていないのか

それすらも分からないこと胸の奥が少し痛む

???

痛む?

何故だろう?

その意味を測りながらも彼の方を見続ける

まぁ、今の状態は随分見られたら恥ずかしいものだが

縁側に座っておきながら状態を倒して彼の方を見ているのだから

今日もずっとこのままなのかな?

そう思った時の事だった

彼の横の空間が軋む歪む悲鳴を上げる

さらには、私の正面ー中庭が神気に包まれる

そんな!?

そんな中にあって、彼は冷淡に、彼らしくない程の平坦な声で一言呟いた

「来たか」

 

~少女登場中~

 

「あらあらあら、待たせたかしら?」

妙に艶のある声がすぐそばから聞こえる

気配をずっと探していた相手の突然の来訪

しかし、それすらも予測していたことなので特段に驚いたわけでもない

(あぁ、アイツは違うか)

と、久方ぶりに目を開けてみれば、そこには此処数日世話になっている家の家主が驚いた表情をしている

まぁ、そんな表情も案外そそるものだな、と下衆な考えをしておきながら、先ほどの声に返答する

「遅ぇよ十分、確信なんてずっと前からもってやがったんだろ?」

悪態交じりの歓迎を言う

遂に空間が捩じ切れ、千切れ、そこに”スキマ”と呼ばれる空間が生まれる

その中から二人の人物が出てきた

一人は先ほどの声の主、幻想郷の賢者なんて言われている妖怪、八雲紫

もう一人は彼女の従者である、八雲藍

幻想郷の妖怪の頂点に立つパワーバランスの一角だ

「やっぱこんな回りくどいことせずに、素直に呼び出せばよかったかぁ」

その一言に反応したのは呼び出された張本人である八雲紫ーーーではなく、その従者の八雲藍であった

「その方法は止めてください

前回だって結界の修復に、被害にあった妖怪への説明なんかで多大な被害になったんですから」

言っていることは割と強めなことだが、その表情がかなり懇願している色をしている

これにはさすがのアンリも旗色が悪いと感じる

以前の・・・どこを指して以前というのも難題ではあるが、本来のアンリ・マユーいやアーリマンにとってはそんな事は何ら意味を持たないものであるが、今現在の彼はとある人物を基盤に構成された人物であるがゆえに女性のひどく弱くなってしまっている

なので、女性にこのように懇願されたら中々にその方法をとれないのである

「いやぁ、まぁ、あんときは悪かったって

その代わりに俺の制約も増えてんだからさ」

そういいながら、彼は自身を顧みる

言動の端々から、自身の行動の些細から、彼は予測する

その時期がまた訪れているのだと

「貴方はまだ早いわ

彼女たちはまだ幼すぎる」

突如として紫からの叱責が入る

声色は戒めるかのごとく、視線はあんずるかの如く

思考を読まれている事自体は珍しくないが、さすがにこれだけは読まれたくはなかった

「空気を読んでほしいもんだね、妖怪

結構、俺ってナイーブなんだぜ?気をつかってくれなきゃ潰れちまうよ」

自虐的に、だがしかし、強引な話題の終わらせ方

しかし、それでも二人は追及をやめ、話題を変えた

「いつまでものぞき見は関心しないわね、いくら神といえどもさすがに礼儀を欠きすぎではなくて?」

「神への礼儀が足りてない者が何を言うんだか、そう思うなら少しは信仰するか、お布施をくれるかしてからにしてくれないか?」

中庭に降り立った神は呆れ顔で言う

最近(と、言ってみるもののアンリよりも前である)妖怪の山に引っ越してきた山の神である八坂神奈子は、さすがに濃ゆいメンツを見て、呼ばれた理由を理解する

「あぁ、なるほどねぇ

しかし、こうなっちまったら仕方ないのかもね」

中庭から縁側に上がる

その途中で阿求と目があい

「悪いね、邪魔するよ」

と一言言った

どうやらこの騒ぎに家の使用人も気が付いたようで、お供え物は何がいいか、や、どうおもてなしすればいいのかしら、といったような声が聞こえる

「悪いね、稗田とやら、あの子たちを止めてきてくれないか?」

やさしげな声色を使い、慌てふためている使用人たちを諌めに行かせる

その態度は先ほどの紫たちへの態度とは違い、明らかに優しさを感じさせるような物だった

パタパタと駆け出す背中を見つめながら一同は対峙する

「私たちにも、あれくらいは優しさを分け与えてほしいものですね」

皮肉を露骨に前面に出しながら話しかける紫

しかし、その言葉に対して不満というよりも困ったような顔をしながら神奈子は対応する

「生憎と神様も懐がそんなに広いわけじゃなくてね

さすがに信者とそうではないものに同じ対応ができるわけはないよ」

あんた等はそもそも求めてないだろうけどね、と一言付け加えて座り込む

紫も移動して床の間の方へ腰を下ろす

三すくみのように移動した形となる

まぁ、そもそもそれぞれの立場が違うのでこれが本来の正しい形であるのかもしれないが

「あと一組来るけれどもよろしいかしら?」

そもそも許可を求めてこの場所に来たものなどいないのに、わざとらしく聞く

その態度すらも特段気にした様子もなく二人とも、構わない、別に気にすることでもねぇな、と快く応じる

「さて、何から話そうかしらね」

持ち前の人(?)柄のせいか、その役割を担うことの多い紫が取り仕切る

だが、そもそもこの場に集った時点で彼らの目的は終了している

そんな白々しい状態において、最初に口を開いたのは、意外にもアンリだった

「神奈子、今日は他の二人は一緒じゃねぇんだな」

「ん?あぁ、諏方子と早苗か

あの二人には少々使いを頼んでいてな

里を回ってから来るから遅れてくる」

使いというのは誰でもわかる、酒や料理の材料の買い出しだ

幻想郷において強大な者が集まる場合に最も多い状況が宴だ

そも、宴があるから集まるのではなく、集まったから宴をする、というのが正しい理由だが

「まぁた宴会かよ、本当にアンタ等は好きだな」

ククク、と笑うアンリに向かって、ほかの三人は、怪訝な目を向ける

神々や妖怪の趣向というのは実に多彩である

そのため共通することが少ないのだ

数少ない共通項を貶められて面白くないはずがない

ましてや彼ならそれは倍増する

「貴方がいうのはお門違いではなくて?」

「奇遇だな、私もそう思うが、一体なんのつもりだ?」

二者の殺気にも近い雰囲気を纏わせた言葉を受けてもなお、アンリは苦笑を漏らす

それは向けていた方も分かっていたようで、すぐにその空気も薄れる

只の人間ならいざ知らず、目の前にいるのは神や妖怪を殺す事すらも可能にする、英雄という特殊な人種である

まぁ、彼にこの二人を打倒できるかどうかと聞けば、それはあまりに無謀と答えるしかないが

「ふふふ、そんな微妙な雰囲気では、何も進んでいないようね」

涼しげな声色とともに、部屋に新たなる人物が入ってくる

その人物を見て三者三様の言葉を漏らす

「ふぅ、遅いわよ」

「ふむ、ずいぶんとまた、奇抜な会合になったな」

「ちっ、今日の宴会じゃ飯は食えそうにねぇな」

現れた人物、西行寺幽々子はそれすらも気にした様子もなく一番手前ーつまり最後の一角に座る

ちょうど四角形の形を作る

強大な神々の一柱ー独立不撓の神様、八坂神奈子

幽霊の主ー華胥の亡霊、西行寺幽々子

妖怪の賢者ー神隠しの主犯、八雲紫

最悪の英雄ーこの世すべての悪、アンリ・マユ

幻想郷において、筆頭とも言ってよい程の力の化身が一室に集うという稀有な状況が出来上がっていた

 

 

 

~少女探索中~

 

あれから三日

神社の境内を掃除しながら、隅にたまった雪に目をやる

そこには高く積まれ、一向に減る様子のない雪が場所を占領していた

この異変の厄介なところは、少々ありがたい部分があることだろうか?

実際例年以上に暑さが厳しくなると予想されていたが、現に異変のおかげによって過ごしやすい陽気になっている

さすがに日差しは厳しいものの、気温は春先程度に収められ、うだるような暑さは微塵も感じることはない

しかし、それが今の霊夢にとっては何より不安をあおることになっている

きっかけは昨日の事だ

偶々掃除をしようとしていたところに酔っぱらった鬼がやってきたのだ

これ幸いに、霊夢は彼女にその辺の雪とかしておいてくれない、と頼んだのだ

しかし、その言葉に対して彼女は妙な返答をしたのだ

出来ない、と

やりたくない、や、面倒だ、ではなくできない

つまり、彼女の能力では雪を溶かすという些細な事すらできないのだという

以前、彼女の能力を食らったことのある霊夢にはそれが信じられなかった

なんせ、彼女は強大な力をもった鬼だ

人間どころか妖怪すらも、その能力に操られることもある

しかし、それでもできない

これは少々自身の思っていた状況を修正する必要があると、霊夢は考える

一日に降る量はたいしたことは無く、今日明日で何か問題が起こるようには思えない

だが、それも異変の主の気分しだい

そう、思うと日頃の日課である境内の掃除も力が入らない

幸いなことに、昨日の内に陰陽玉とお札の準備は済ませてある

適度に掃除が終わると、霊夢は一目散に飛び出した

 

 

偶々あった妖怪たちから話を聞いた

最近の幻想郷がおかしいってな

理由を聞いてみると、成程、確かに異常だ

なんせ、異変だっていうのに一切妖精たちが狂暴化していない

そういえば、と、最近の事を思い出しても、いつも通りに悪戯をする程度だった

さらには、神奈子の奴も紫の奴も何一つ動いていない

この溶けない雪の危険性は、誰の目にも明らかだ

多少なら問題ない

利用価値などはいくらでもある

しかし、これが昼夜問わず降り続けているのだ

溶けることの無い雪はとても危険だ

例えるなら、砂が降っているようなものだろう

降り積もれば邪魔になるし、屋根の上からも落とさなくてはいけない

しかも、それをいつまでも繰り返さなくてはいけない

幸いにして未だに雪の量は多くなく、木の表面をうっすらと覆う程度しか降っていない

それでも、これは大きな異変だ

「霊夢には負けられないな」

そう、私はつぶやき、いつもの如く家を飛び出した

 

 

お嬢様から命を受けて、私は異変の主を探していた

いや、その人物はわからなかったものの、いる場所だけは最初から分かっていた

紅魔館のある島のすぐそばにある湖

そのほとりに銀色に輝く城がたっていたのだから

近づいて何度か調べてみたところいくつかの事が分かった

一つは、あの城に近づいた程度では何のアクションも起こされない

そもそも何度も調査に出向いたのに、襲われなかったのだからそれは正しいだろう

二つ目には、あの城はどうやら氷でできているらしい

試しに触ってみたところとても冷たかった

しかし、ナイフで削ろうにも一切欠けなかったところを見るに、今降っている雪と同じ程度のものであると推測できる

そして、三つめ

信じがたいが、おそらく、この異変は協力者などがいないというものだ

紅魔霧の時は、館の者が協力していた

そも、異変を起こせるほどの実力者の周りにはその配下がいる

しかし、今回の異変の主にはそのような者がいないようだ

理由はいくつかあるが、その一つは襲われなかったことであろう

私も前回異変を起こした際にあったが、割と普段通りの生活をしていても、襲撃者はいるものだ

そのため、配下は必ずと言っていい程戦闘に巻き込まれる

だが、都合八度ほど城に近寄ったにも関わらず、誰一人としてみることが無かった

つまり異変の主は一人だけだ

それなら、と、お嬢様に報告して、今日短期決戦で終わらすと告げる

お嬢様はいつもの調子で、いってらっしゃい、と言った

とりあえず、午後のお茶の時間には間に合うといい

そうすれば、また、お嬢様はご機嫌になるだろうから

 

~少女??中~

 

「そう、博麗の巫女が動いたの

魔理沙と咲夜も向かってるってことは、そろそろ戦わなきゃいけないわね」

青い髪の少女は玉座に座りながら、何もない空間を眺める

傍らに侍る氷の烏からの情報を整理し、その手に自身のスペルカードを出す

その数、およそ六枚

彼女自身の持っている数はそれ以上であるが、今までの異変の主の慣習にならい六枚の制限を設けている

そも、彼女の異変の理由は、すでに果たされている

博麗の巫女、白黒の魔法使い、吸血鬼のメイド

この三人が動いたのならば、大規模異変として認識されたのだろう

それで、十分

後は、彼女自身の過去との決別

少女と呼ぶにはあまりに美しく、またその背中にある氷の天使の羽が幻想的な雰囲気のせいで、成熟した体も合わさり、すでに過去との類似した点は数少ない

それでも、未だに、あの過去が彼女を縛っている

「彼がくれた、最初で最後の・・・機会・・・必ず成功させて見せる・・・」

その顔には決意が浮かんでいた

 

 

~雀卓包囲中~

 

「う~ん、アンタ等と卓なんか囲むんじゃなかったよ」

「あら?嫌ならさっさと抜けてもらっても構わないのよ?」

「そうそう、私たちの本来の目的が達成されるし」

「むしろ、私は抜けてもらいたいわね~、久々に食べたいし~」

「幽々子、それはみんなの目的だから、言ってるのよ」

「さすがにそこの食い意地の張った亡霊と一緒にされるのは嫌だが、まぁ、正しいから否定できないな」

「え~、食べたいなら文句言わないでハコにしようよ~」

「くっそ、グルになってやがるとか卑怯だ

っていうか、てめぇらの連れに作ってもらえよ」

家の者に指示を出した後に阿求が部屋の帰ってみれば、そこに広がっていたのは緊迫した会合などではなく・・・ただの麻雀会場だった

「あ、悪いね、ちょっと部屋借りてるよ

ついでにいうなら、この後厨房も貸してほしいんだが」

全くの話についていけてない阿求だが、一つだけ悟ったことがある

それは

(あぁ、この人たち

今日此処で宴会するんだ)

と、いう諦めから来る達観だった

つまみをどうしようか、考えていると、そもなぜ厨房を借りるのか疑問に思った

「あの、神奈子様」

「ん?なんだい阿礼乙女?」

「何故厨房をお借りしたいのですか?」

その言葉に、あれ?と首をかしげる神奈子

そこで神奈子の代わりに紫がその問いに返答する

「まぁ、ありていに言えば、場所を借りるの上に、さすがに料理までご馳走になるわけにはいかないっていう建前よ」

「材料は私と神奈子が、お酒は紫とこの人が用意したからね~」

成程

確かに、彼女たちはある程度の礼節のある者ようだ

しかも、その目の輝き様を見るに、用意した酒も材料も一級品なのだろう

その暇つぶしに麻雀でもやっていたのだろうか?

「いや、そうではないぞ?

さすがに暇を持て余している我々でもそこまで、おかしなことはせぬ」

どうやらほかに理由があるようだ

しかし、その理由など心あたりがあるわけもなく、先ほどまでの会話を思い出す

そういえば、どうやらお三方は彼を負かすのに熱心な様子

だとすれば、彼に理由があるようだ

「あん?なんだ稗田、アンタもアイツらと一緒なのか?」

知らず知らず彼の事をじっと見つめていたようだ

そのことに恥ずかしさを覚えながら、ふと、今のセリフが引っかかる

「あの、一体彼に何を期待しているのですか?」

そう、まるで、彼が負けて罰ゲームを受けるのを楽しみにしているかのような展開だ

平時はさほど勝負事に熱心ではないお三方だが、今回に限ってはなんとしても勝たなければいけない雰囲気を出している

例えるならば、熱気?のようなものが目に宿っているかのようだ

どうやら、その予想は当たったようで、お三方はこちらを向いて一言、しかし、綺麗に声を重ねていった

「「「料理!!」」」

 

 

そう、その料理を食べたものはすべからず、虜になる

それほどの魔力をアンリ・マユの料理は持つといわれる

一部では彼の能力は『料理を作る程度の能力』とまで言われているほどである

料理を喜んで貰えるのは嬉しいが、彼には他にきちんとした能力があるうえ、そもそも毎回毎回宴会を開くたびに料理を任せられるのは面倒だ

だからこそのこの拒否反応だ

しかし、先ほどそれを初めて知った稗田阿求は瞳を輝かせてこちらを見ている

さすがにその期待を彼は裏切ることはできず、適度に負けようと考える

それをほかのメンツも察したのか、先ほどまでの様に数で押してくる作戦はしないようだ

さてさて、どうしたものかと、思い神奈子が賽子を手に取るのを眺める

その光景にふと、一つの皮肉が思い浮かんだ

「罪深いものだな、この状況も」

行き成りの事に他の三人もかれの方を見る

「いや、何ちょっとした小ネタだよ」

と言い、アンタには分からないだろうけど、と幽々子を見て苦笑した

「Der Alte wurfelt nicht.」

その言葉に、阿求と幽々子は何も反応することはできなかったが、神奈子と紫は何かに気が付いたようで苦笑を滲ませる

「ちょっと、なんなのよ、その意味の分からない言葉は!!」

仲間外れにされたことが悔しかったのか、幽々子がふくれっ面でほかの三人を問い詰める

「何、ただの皮肉

それもまるで子供だましのね」

「そうだな、神ほど娯楽が好きな存在はいないっていうのにな」

「使いどころが全く違う言葉だがな」

三人の言葉は具体的な内容について全く触れてない

そのことを感じ取ったのかさらに幽々子の機嫌は悪くなる

しかし、それを直そうとする常識人もこの場には阿求しかおらず、その阿求も言葉の意味を測り兼ねているので、どうすることもできない

神奈子が賽を投げる

「神は賽子を振らない、か」

額面通りの意味ではない言葉を、額面通りの皮肉で使う

それが、何よりの皮肉だった

 

 

麻雀も終盤に差し掛かり大分怠惰なムードが漂い始めた

現在の順位はきっちりとアンリが最下位であり、珍しく幽々子が一位であった

「ねぇ、そろそろ話し出さないの?」

既に阿求は仕事があるとのことで退室してしまっている

夕方には戻ってくるといったので、まだ帰っては来ないだろう

それを好都合と思い、遂に話を切り出した

だが、それを

「少なくとも諏方子が来てからにしてほしいものだな」

と、神奈子が止める

「まぁ、そうだよな

少なくとも、人が足りないのは確かだよ

特に下らない話をするためにはな」

と、アンリが付け足すが、それを紫が見逃すはずがなかった

パチンッ、と紫が扇子を閉じる

その音が引き金となったかのように、スキマが開き、そこから三人の人物が落ちてきた

折り重なるように落ちてきた三人はその場のメンツを見て慌てるもの、混乱してて周りの人物を把握できない者、すでに状況を理解しておりどうしようか悩んでいるもの、というようにばらばらだった

「とりあえず、早苗、妖夢

お前らは、買ってきた食べもん置いて来いよ」

さすがにこれは想像もしていなかったアンリではあるものの、まぁ、紫だしで事をかたずけ彼女たちに話しかける

その言葉でようやく我に返った、妖夢ー幽々子のお付きであるはずの魂魄妖夢と、早苗ー神奈子と諏方子の神社の巫女である東風屋早苗は二人そろって、厨房に足を運ぶ

「へぇ、なんだ、もう話すことになったんだ」

面白そうな話題だと感じた諏方子ー土着神の頂点、洩矢諏方子は、いつものように神奈子のそばに座る

卓の上の点棒に目を向けるもののそちらは予想通りだったのか、すぐに興味なさげに視線を外す

「っていうか、それが今回の目的だろ?

まぁ、どうやら確信を持っていやがるようだから、最早答え合わせ程度の意味合いしかねぇけどな」

「答え合わせが時には、何よりも大事な時もあるのよ」

「そもそも、誰も今回の事の確信以外に意味があることをわかっているしね~」

さすが、とアンリは心の中で一人漏らす

この場の四人は、明らかに見抜いている

きっと異変の意味も主も見抜いているんだろう

しかし、何よりも大事なのは言質をとることだ

おそらく彼女たちがこの場所に集まったのは、彼が語ったという事実を作ること

それだけだろう

「降参だ、洗いざらい話してやるよ」

それは彼女の物語

彼女が紡いだ過去にして、彼の導いた過去

そこからすべては始まった

 

 

~少女会話中~

 

ところ変わって、稗田家の厨房

先ほどアンリに提案されたことをこなすためにそこには二人の少女がいた

早苗と妖夢である

「それにしても、今回の異変はおかしなものですよね」

その言葉に早苗は内心同意する

そもそも雪を降らせるだけという極めて効力のないもの

しかも、それが冬ならまだしも真夏である

困ることはおろか、日々過ごしやすくなって助かっているくらいである

「しかも、神奈子様も諏方子様も今回の異変は解決に行かなくても変わりないっておっしゃりますし」

「そうなんですよね、幽々子様もそう言うんですよ

私としてはやはり異変は解決に出たほうがいいと思うんですけどね」

彼女たちの主は今回の異変について消極的だった

しかし、その割には最初の頃は焦っていたのである

一時期は、守矢神社では厳戒態勢であったし、白玉楼では幽々子が能力の使用すらも辞さない覚悟でいたという

更に、さらにである

彼女たちの主は結局ある日突然にその態度を180度変え、まったりとしたものになった

挙句の果てには

「此処に来れば、異変の張本人が分かるって言ってましたけど、本当ですかね?」

思わず妖夢の口から出た言葉

それは、確かに早苗も思っていたことだ

なんせ、あの部屋にもしも、異変の張本人がいるのならばあの男しかいないのだから

「あの人が、異変の首謀者・・・なわけありませんよね」

早苗は口から出しかけた考えを即座に否定する

「まぁ、可能性としては一番ありますけど、それはないでしょう」

妖夢も身に覚えのあるのか苦笑で返す

なんせ、あのアンリ・マユという人物の実力をお互い知っているのだ

そのうえで判断するなら彼ではこの規模の異変を起こすことは不可能だ、という結論に至る

そもそも彼は、氷系統能力を持っていない

「だけど、一度だけど、神奈子様が仰っていたことがあります」

「どんな?」

やっと買ってきたものをしまいきり、さぁ、帰ろうというときに早苗の一言

さすがに気になるのが普通だろう

記憶の片隅に妙に残っている神奈子の忠告

それは

「アンリ・マユに心を許すな、気持ちを重ねるな、距離を縮めるな

それは、全ての行為に対しての悪だ、とかね」

そんな馬鹿なことがあるか、と妖夢も答える

確かに、それ程否定してしまうなんてらしくない、と当時は思ったものだ

しかし、何故だか今はそれを、理解できるような気がした

 

 

~少女祈祷中~

 

今、白銀に輝く氷の白の前に三人の少女が鉢合わせしていた

「また、貴方達なの?

まぁ、露払い程度にはちょうどいいのかしら?」

と、呆れる十六夜咲夜

「私は純粋に異変を解決に来ただけだぜ

まぁ、邪魔するっていうなら、お前から倒したっていいんだがな」

と、挑発する霧雨魔理沙

「私は、面倒なのはいいから行きましょう

さっさと解決したいの」

と、纏める博麗霊夢

幻想郷の英雄と呼ばれる三人のそろい踏みである

しかし、このとき場かりは三人の心がささくれているのにも理由があった

まず、妖精が邪魔をしてこない

今までの異変の様に道中に襲ってくる者が一人もいないのだ

あまりにもあっさり行き過ぎると人は、楽だと思うよりも怖いと思うものらしい

不自然なほど静まった城内

精巧な細工で掘られた氷細工などが置いてあるもの、そこに生活感は感じることはできない

一体、ここに住んでいる者は何者か

その思いが一向の中に芽生え始める

しかし、城はまだまだ広く、その疑問に答える者も出てくる気配は無かった

 

~三十分後~

 

少女達は壮大な扉の前に立っていた

此処までのエンカウント率零

他人との接触2(正し、本人たちのみ)

「さぁ、ここにすべての元凶がいるのね」

言っていることはもっともであるが、実際には霊夢の声は震えており、普段の頼もしさなど全くない

「そうね、まぁ、ここまで、来たことですし、後は、簡単ですよ」

口調こそいつも通りだが、わずかに手が震えているせいで、最早形無しな咲夜

だが、二人はまだよかったかもしれない

本当に一番重症なものは最後にいた

「・・・・」

いつもの強気な口調はどこへやら、今はただ黙って霊夢と咲夜についていくだけになっていた魔理沙

さすがにこれはまずいと判断したのか、咲夜と霊夢はお互いの恐怖をなんとか隠し、魔理沙に話しかける

「もうすこしで終わりだから、頑張りましょうよ」

「そうよ、なんなら、この後、紅魔館にお茶を飲みに来てもいいですよ」

いつもの二人からは考えられないようなセリフ

しかし、ここまで来るためにかかった時間、起きた状況、そのすべてを統合すると仕方のないことかもしれない

何の気配も感じられない檻のような城

全てにおいて生活することを前提に作られ、調達されている設備が、一度も使われていない

異常だった

真夏に降る雪が異変なら、この城の内部は異常

目的と現実があべこべすぎて、正常な思考はどんどんできなくなっていった

だが、それもここまで

此処からは、たった一人の少女が待ち受ける箱庭

音もなく静かに扉が開く

後ろを向いている霊夢や咲夜には見えず、ただ一人、魔理沙だけは見た

異変の首謀者を

その時の表情はなんといったらよいのだろう

安堵と疑問だろうか

目の前の人物が誰かわかり、目の前の人物に疑問が集い、そもそもその目の前の人物が誰かわからなくなる

何故?何故なら、その少女は本来の姿ではなかったから

あの愛くるしい姿はなりを潜め、そう、まるで八雲紫のような不気味な妖艶さをのぞかせている

服もいつも来ていたワンピースではなく、水色に白く雪の刺繍の入った着物を着ている

何よりその背にあった六つの氷の小さな羽は、重なりあい、数をまし、まるで天使の羽かのようになっている

「霊夢、咲夜、ダメだ」

震え擦れる声でつぶやく

久方ぶりに感じる気配

震えていた体も、怯えていた心も今はすでに過去の物

あれを侮った瞬間に負ける

本能が警鐘を鳴らす

「構えろ、二人ともッ!!」

せめてその一瞬でも稼ぐと思い、二人のおいて、先にその部屋に入る

まるで玉座

全ての静止した氷の世界の女王

その少女は、じっと入ってきた三人、特に魔理沙に視線を向けた

相手の出方を観察する魔理沙

しかし、じーっっと見つめたあと、少女は手を出すでもなく、ただ口を開いただけであった

「ごめんなさいね、少々急場だったから誰かに手伝ってもらえなかったの

そのせいで、ご覧のように静かなお城になってしまったけど」

耳触りのいい、しかし、幼さは残っていない声色

そして、何よりその口調

かつての少女はそんな口調をしなかった

無邪気だった、幼かった、弱者だった

それが変わってしまったと気が付くのに幾秒かけたことだろうか

一度目を伏せて、もう一度上げるときには魔理沙の目はすでに彼女を見据えていた

過去の少女ではなく、今の少女を

「久しぶりだな、元気にしてたのかい?」

いつもの強気な口調が戻ってくるのを感じる

背後の二人も覚悟を決めたのを感じる

そう、目の前の少女はすでに通過点では無くなった

「あら、心配してくれるの?

ふふ、ありがとう、おかげさまで今まで体調を崩したことは無いわね」

優雅に微笑む

そのことが未だに違和感があったが先ほどまでほどではなくなった

かつて、幻想郷で初めて行われたスペルカードを使った異変解決

その時の彼女はただの通過点だった

その後も成長もなくそのままだった

しかし、最早違う

彼女はこの異変の主にして、強大な力を持つ一角に踏み入れている

「そうか、じゃあ、やるか」

「そうね、それが目的だもの

貴方達との戦いで私は過去との決別をする」

それは果たして少女だけの物だろうか

知能も能力も数段階あがり、肉体が精神年齢に付属する形で成長した目の前の少女

「霊夢、咲夜

悪いけど、最初は私から行かせてくれ」

「私は別にいいわよ」

「まぁ、そもそも、協力して戦うなんて出来る事ではありませんし」

二人の許可をもらい相対する

「まぁ、慣習的なものでね、私の方はスペルカードは六枚よ」

緩やかな動作で玉座から立ち上がり、空をとび始める

魔理沙も箒にまたがり、空に浮かぶ

「さぁ、|チルノ<・・・>勝負を始めようか」

「えぇ、異変の主として受けて立ちましょう」

かつて氷の一妖精でしかなかった少女ーチルノと、かつて彼女を圧倒的に負かした魔法使いー魔理沙の対決がここに切って落とされた

 

 

「さっそくだけど、一枚目行くわね」

チルノは自身の手にしたスペルカードを宣言する

『速符』 アクセラレイティブ・フリーズ

緩やかな速度で打ち出される大きな氷弾

だが、それは、見かけどおりではない事が魔理沙にはわかっているだろう

ある程度まで進んだ時点で、チルノは一度指を鳴らす

パチンッという音が響いた途端、氷弾は破裂しいくつかに分裂する

しかもその速度は相変わらずあがっているというおまけつきだ

それでも、未だにちょっと早い程度でしかないがそれすらも、指を鳴らすたびに破裂し、加速する

都合6回

それが、チルノの指を鳴らした回数だ

今や、通常の氷弾の半分ほどとなったそれは、魔理沙に、霊夢に、咲夜に向かって猛威を振るっていた

その様子を見て、チルノは考える

本来ならば、このまま幾度か繰り返して一枚目のスペルカードが切れるのを待つのが定石であるが、あちらは三人、こちらは一人

六枚すべてを魔理沙一人に使っては、補充は出来るものの不利になることは間違いない

ならば、せめて一人くらい減らしておくか

何度も指を鳴らしながら、氷弾の発射のスピードを徐々に高める

そして、自身への攻撃を一瞬意識を逸らす瞬間、二枚目のスペルカードの発動を宣言した

しかも、それは一枚ではなく二枚

チルノが持つ、彼から教えられた秘策の内の一つ

『剣符』 コキュートスの氷剣

『歩符』 一足一翔

それぞれは、とてもシンプルなスペルカード

ただ剣を作り出すスペルカードと、一歩に限って、飛翔可能範囲に移動できるスペルカード

しかし、この状況、この組み合わせで使うと、比類なき強大な一撃とかす

一足一翔の効果の為、目の前の俯瞰して現状をみていた視点から、咲夜の後ろへと視界が変わる

その場所がどこか認識する前に手に持つ剣で振り切る

鈍い音と共に鈍い感覚が手を伝わる

その感触を無視しながら力の限り、相手を吹き飛ばす

さすがの咲夜でもこの攻撃は予想できなかったものらしく、成す術もなく吹き飛ばされ壁に激突する

「咲夜!!」

近くにいた霊夢が、あんずるが目の前の弾幕の物量に押されて、思ったように動けない

しかし、さすがにこのまま悪者扱いも嫌なので、一応は説明しておこうか、という思考が頭の中をよぎる

そもそも異変の主で悪役扱いが嫌だっておかしいだろうという自身の意見を押しのけて、霊夢と魔理沙に言う

「安心しなよ、刃は潰してある

骨の三本や四本は折れてるかもしれないけど、さすがに今すぐ命に係わることはないだろうよ」

一足一翔の効力が切れ、若干のけだるさが体をつつむが、魔理沙と霊夢の反撃がいつ来るかはわからないので、次のてを打つ

予想通りに霊夢も参戦するようで、魔理沙とゴチャゴチャ話しているようだが、まぁ、関係ない

実はコキュートスは非常に持続時間の長いスペルカードだ

効果が単純であり、また、その能力に特殊性もないための恩恵だと言える

一足一翔は便利だが発動が宣言をしてからおよそ三秒いないでなければいけないというハンデをおっている

そのため、この二枚を一緒につかうと使い捨て感が出るのだが、これは大きな間違いだ

そもそもチルノ自身初めからこういう用途に使うために作ったのではなく、それぞれに用途があって作ったのだ

実際、コキュートスの氷剣の正しい使い方は違う

手短な壁まで後退して、そこで一枚目のスぺカが終わるのを確認する

その後の対応はやはり予測通りで、こちらに対して二人で攻撃を仕掛けるつもりなのだろう

かつて、チルノ自身の意識を開拓しているときに彼は言った

「やっぱり、お前も俺も、妖力って面ではほかの大妖怪に比べたら低い」

彼に教えられた知識を吸収している間にそれは、彼女自身も感じたことだ

知識の備わった今なら、どんな奴が強くてどんな奴が弱いのかわかる

今までの意の中の蛙状態が恥ずかしくなる程度には

「だからさ、もう、何枚かかけ合わせちゃえばいいんだよ」

その声はあっけらかんとしていた

かつて実践経験の為だ、といって彼は彼自身の奥の手を見せてくれた

そのスペルカードは確かに強力だった

しかし、なによりも、重ねかけられたスペルカードのせいで、チルノは一度死ぬことになった

「まぁ、俺のあれは特殊な例外だけど、基本的には枚数が制限される今の勝負において、複数回重ね合わせることが可能なスペルカードは強力だ

効果は単純な方がいい、その方が妖力の消費が少ない」

その時思いついたのがさっきの二枚

彼は確かにほめてくれた

特にコキュートスの氷剣の効果は、着眼点がいいと言ってくれた

そのうえで彼は、さらに言った

「お前にこのスぺルカードをやるよ」

その一枚はなんの変哲も無いただの身体強化のスペルカード

しかし、その内包された妖力は半端なものではなく、下手するとラストスペルレベルの妖力があった

「これ・・は・・?」

意味が分からなく聞き返してしまう

それでも彼は私に向かって笑いかけてくれた

「これは、お守り

お前はこれから何人も同時に相手にしなきゃいけないこともあるだろう?

そういう時にさっきのコンボの後に使えよ

ささやかな師匠面出来る部分だから」

そう言っておきながら照れたのか、彼はそっぽをむいて話し出した

でも、私の意識はもらったカードにしか向いておらず彼の言葉は耳に入ってこなかった

その力、今こそ解放しよう

『従符』 悪に連なる系譜

コキュートスの氷剣を壁に突き立てる

こちらが本来の使い方なのだが、結局は副産物的な役割になっていることには苦笑を隠せない

打ち込んだ氷剣を軸にして周囲の壁や床から、同じような氷剣が生成される

その光景にどうやら彼女たちも気が付いたようで、急いで空中に逃げる

「撃ち落としなさい、コキュートス」

一斉に氷剣を発射させる

第一射は布石

先ほどの行為を恣意的におこすための物

予想通りに彼女達はきちんと避けてくれた

そのおかげで、先ほどの放った剣が、床に、壁に、天井に突き刺さる

突き刺さった剣が取り込まれて、周囲から無数の氷剣が形成される

それを繰り返して徐々に数が増えていく

増える弾幕の基本形

しかし、その量たるや膨大で、ここを決戦に選んだ理由の一つともいえる

「くっ、このままじゃ埒があかないぜ!!

霊夢、私が道を切り開く!!

その内に一発かましてこい!!」

「わかったわ」

防戦一方の上に、すでに一人やられたせいで、危機感を感じたらしい

どうやら見る限り、スペルカードを使うようだ

「これでも、喰らえ!!

『恋符』マスタースパーク!!」

魔理沙の代名詞ともいえる強力無比なビームが発射される

その光はチルノの弾幕すらも消し飛ばしながら、破壊の猛威を振るっていく

まぁ、それでもまだ、この城の材料となった不溶氷を溶かすことはできないようだが

それはさておき、先ほどの会話通りなら、この先に霊夢がいるはずだが、どうくるのか

「『夢境』二重大結界」

どうやら、お得意の夢想封印などではなく、こちらの動きを封じることを狙いに来たようだ

実際、とどめは魔理沙の高火力な弾幕が待っているわけだし悪くはない選択肢なのかもしれない

まぁ、それも悪くはない程度だが

「『壁符』永久不溶」

チルノの周囲四方を取り囲むように氷の壁が覆う

四枚の壁は上方から自身の身を崩すかの様に、削って弾幕を出している

魔理沙のマスタースパークが直撃する

圧倒的な威力を持つ彼女の砲撃

しかし、それも氷の沸点に到達することが出来なければ、穴の一つすらもあかない

「どうしましょうかねぇ」

残るスペルカードは二枚

その内一枚は彼にもらったもの、もう一枚は自身のラストスペル

ちょうどマスタースパークが好い目くらましになっている間に仕掛けてもよいのかもしれない

そう思い、先ほど発動しかけてキャンセルしていたスペルカードを開放する

「『従符』悪に連なる系譜」

自身の四肢に黒い煙のようなものが巻き付く

その煙に導かれるように、体を動かすと驚くほど軽い

身体能力を上げるとは分かっていたが、これほどまで上がるとは思わなかった

まるで獣人かのように体を自在に扱える

無数に散っている剣の一本を拾い、未だにチルノが壁の向こうに隠れていると思っている霊夢を下から奇襲する

「貰ったぁ!!」

「チッ、なんで!?」

突如現れたチルノに、動揺を隠せない霊夢

互いの距離は約三メートル

後少しで間合いの範囲内という所まで踏み込む

しかし、相手は幻想郷の英雄

一枚も二枚も上なのをこのときのチルノは忘れていた

「『夢想天生』!!」

氷剣の当たる瞬間

まさにコンマ一秒のところで霊夢が自信のラストスペルを宣言する

薄い靄に包まれたかのように霊夢の姿が見えなくなり、代わりに大量の弾幕が指向性をもって襲ってくる

「メンドイねぇ」

氷剣の耐久力とスぺルカードによって強化された身体能力を使い、迫るお札を切り裂く

一枚、二枚、三枚、四枚・・・

積み重なるお札も増えるころには、氷剣を握る手も凍傷で痛み始める

(ここら辺が潮時かな?)

目の前から繰り広げられる霊夢のラストスペルと魔理沙の弾幕をかわしながらチルノは考える

残すところ自身の奥の手とも言えるスペルカード一枚

さすがにそろそろコキュートスや身体強化も終わってしまう

打ち取りたいのはやまやまであるが、さすがに終わらせなければ押し切られてしまうだろう

指を一回鳴らす

その音が玉座に響き、全ての氷剣が砕け散る

一瞬だけの目くらまし

突如として起こった現象に霊夢と魔理沙が気を取られてるすきに、最後の一枚の発動を宣言する

「『ーーーーーー』」

そのスペルカードの発動と同時に、城が震えた

 

 

 

白銀の城が崩壊する様をレミリアはじっと眺めていた

そもそも今回の異変は目的が不明瞭なものだから気にかけていただけであって、特に動く気はなかった

しかし、それでも美しいものが失われる瞬間というのは、見ていて楽しいものではない

(咲夜は大丈夫かしら?)

多少の心配はしつつもいつも通りに、過ごしている吸血鬼だった

 

 

 

「ぷはぁ!!」

氷塗れになりながら、魔理沙は残骸から這い上がる

まさか、城すべてを崩して弾幕にしてくるとは想像もしておらず、今回は被弾してしまった

「お~い、霊夢~」

同じように巻き込まれた友人を探す

きょろきょろと周囲を見回すと、残骸の一部がガタガタと動いている

そこまで、痛むからだを頑張って動かして行くと、案の定そこに先ほどまで共闘していた友人が埋まっていた

「むーーー!!」

「はいはい、何いってるかわからないけど、ちゃんと助けるよ」

上に載っている氷を一つずつ避けていく

おかしなことに先ほどまでは一向に溶ける気配もなかった氷が、少しずつ溶けだしている

「???」

おかしな状況だが、今はそれどころではない

目の前の友人の他に、もう一人助けなくてはいけない人物がいる

「はぁ、先は長そうだぜ」

昼間の太陽は高く、雪が未だにちらついていた

 




幻想郷縁起風キャラ紹介がO★MA★KE★でついてくるよ
次回は一応本編最終話
・・・シナリオ全然思いつかないなぁ


太古の英雄
アンリマユ

能力       自身の傷を映す程度の能力
危険度      低
人間有効度   高
主な活動場所 人里


ある時ふらっと幻想郷に現れた英霊が彼、アンリマユである
昨今の幻想郷では妖怪を打ち取る者や偉業を成し遂げるものが少なく(※1)、英雄は減少の一途どころか絶滅してしまったと言ってもいい
しかし、ある日偶々この幻想郷に迷い込んだらしい彼は正真正銘の英雄であり、それに見合った偉業をこなしているという(※2)
八雲紫曰く、とても偉大な行いで常人にはまねをするどころか、その一端ですらすることはできない(※3)、と言わせしめている
当の本人は、ふらふらっと幻想郷を旅しているようである

彼の能力である『自身の傷を映す程度の能力』は、はっきり言って使いどころが狭すぎる
言葉だけを聞けばとても素晴らしく聞こえるが、その制約の多さが足を引っ張っているようである
制約は全部で三つらしく、なんと今回はそのすべてを教えてもらえた
1.自身の傷を映すだけであって、自身の傷はそのままである
2.どんな些細な傷でも、傷である
3.一度使った相手には使えない
だ、そうだ
正直言ってこのような能力では、私は妖怪に立ち向かえない気がする
しかし、現実には彼は幻想郷のいたるところに足を延ばしていることから考えるに何か、体術などを収めているのであろう


目撃情報

う~ん、なんか退治したくなるのよね、アイツ
               (博麗神社の巫女)

出来る事ならやめてあげてほしい、未だに彼は何か異変を起こしているわけではないのだから

昨日飴くれた
       (八百屋の息子)

彼は気まぐれで何かをしている、どうやら気分がいい時に出会ったようだ

是非とも歴史について対話したい
            (寺子屋の教師)

彼は何かを真面目にすることが少ない、多分難しいであろう


対策
基本的に人間妖怪どちらとも仲良く付き合っているようだ
しかし、根本的に皮肉屋であり、うそつきなため全面的に信用するのはよくないであろう
また、彼が持っているパズルを壊してはならない
大事なものらしく、その時は彼の本気が見れるだろう
しかし、それだけは決してしてはならない
彼は英雄、神や妖怪と対等に渡り合える存在であるので、注意したい
基本的には友達感覚で問題はないだろう


※1 スペルカードなしでらしい、今の幻想郷では考えられない事だ
※2 私は聞いちゃダメって言われた
※3 博麗の巫女ですら難しいらしい・・・一体どんな内容なのだろう?

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