問題児好きな方はご存知だと思いますが問題児の新刊がそろそろ出ますね、僕の心はウキウキです笑
今回から数話は東京大戦までのオリジナル展開です、問題児様方や蓮太郎達の休日話を楽しんでもらえれば幸いです!
それでは〜
休日①
雲ひとつない晴天であった。
十六夜と蓮太郎は2人とも私用も仕事も無かった為、学校が終わると2人で偶には落ち着いて話すかという事で黒ウサギが勤務しているカフェ"orgel"に来ていた。
"orgel"は黒ウサギが勤めているから来ているというのもあるが店内はこれぞ喫茶店とばかりの落ち着いた雰囲気があり、なんとも居心地のいい休憩処となっている。
またここのマスターが作るブレンドは豆の香りが立っていてとても美味しい、コーヒーについては十六夜も蓮太郎もさほど詳しくないがこの味は中々出せるものではないと考えている。
コーヒーを一口飲むと蓮太郎は欠伸をしながら十六夜に言う。
「偶にはこんな日もいいな、毎日延珠の相手してたら心身共に参っちまうよ」
冗談まじりでそう言われた十六夜もヤハハと笑って答える。
「俺のとこの茜はそんな気にならねえけどな、どちらかと言ったら黒の元魔王様の方が厄介だな」
笑いながらそう告げる十六夜に対して蓮太郎は!?とテンプレートな噎せ方でコーヒーをゲホゲホと詰まらせていた。
「あの子元魔王なのか!?」
「あぁ、そういや言ってなかったっけか」
"あいつには結構手焼かされたな、結構な大人数で立ち向かったけどギリギリだったぜ"
と付け加えると蓮太郎は怒らせないようにしよう…と一言だけ呟く。
「そういえば、十六夜の他にも箱庭に一緒に来たやつって2人いたんだよな?どんな奴らだったんだ?」
やはり蓮太郎からしたら十六夜達の事は気になるのであろう、異世界人のことが気にならないほどロマンを求めてない高校生は居ないのである。
「ん?あぁ、1人は純粋無垢な動物愛好家のスレンダーな女でもう1人は発育のいい自信満々なお嬢様だったぜ」
「なんだそりゃ、2人とも強かったのか?」
「動物愛好家の方は俺ほどではねえがそれなりに強かったぜ、お嬢様の方は強いと言うよりは異質の一言に尽きるな」
そう言うと蓮太郎は異質?と首を傾げるが飛鳥の能力については細かく説明するのはやや難しく不明瞭なとこがある。
まあ大雑把に説明しようとした時店のドアが開かれベルの音がカランと鳴った。
「いらっしゃいま!?」
黒ウサギが途中で声を上げて硬直した為十六夜と蓮太郎も入り口に目を向ける。
するとそこには「あら…」と言ったスカーレットのドレスに身を包んだ美少女がいるではないか。
この美少女こそ三大問題児の1人、久遠飛鳥である。
「お嬢様じゃねえか、ご機嫌如何でございますか?」
十六夜がからかい半分、いやからかい100%で飛鳥に問うと飛鳥は余程機嫌が悪いのか十六夜の席に向かって走り出す。
十六夜はこの後の事が予想出来たので蓮太郎の胸ぐらを掴み自分の顔の前に持ってくる、直後蓮太郎の顔の前には飛鳥の膝が飛んできていた。
「おいおいお嬢様、久しぶりの再会にいきなり"シャイニングウィザード"は永遠の別れになる可能性があるだろうが!」
と強めに言いつつも被害者は蓮太郎である。
"シャイニングウィザード"を喰らった蓮太郎は自分の席でフラついている。
「それもそうね、そこの貴方大丈夫かしら?」
確かにと頷くと飛鳥は蓮太郎に安否確認をする、ここで謝らないあたりが飛鳥らしさをうかがわせる。
蓮太郎は首と頭を交互に抑えながらも大丈夫だと告げる。
「てかなんでお嬢様もこっちに来てんだよ、他の奴らは…聞くまでもないな」
「貴方達が行方知らずになったから私は春日部さんと森の方を探していたの、そしたらこの世界に来てたわ」
自分でも何を言っているのかよく分からない為、頭を抑えながら溜息をついている飛鳥。
シチュエーションこそ違うものの十六夜と似たような状況である。
「なるほどな、ここがどういうとこかは知ってるか?」
「あらかたは外区で会ったひ弱な悪人に聞いたわ」
ひ弱な悪人???と3人は首をかしげるがそれが超上位序列者の冥である事は知る由もなかった。
「なぁ、俺達が居なくなってから"何日"経った?」
十六夜がそう聞くと蓮太郎はえっ…黒ウサギはえっ…あっ!と声を上げた。
飛鳥は黒ウサギが声を上げたことを疑問に思いながらも十六夜の問いに答える。
「そうね、今日で丁度1週間じゃないかしら」
その回答に蓮太郎も事態を把握したのか驚いている。
十六夜もやっぱりなと考え込む。
「ちょっと、納得してないでどういうわけか説明しなさいよ」
「この世界と箱庭では圧倒的にこっちの世界の方が時間の進みが早いんだ、黒ウサギがこっちに飛ばされて来たときに飛ばされた期間について触れてこなかった辺りから気にはなって居たんだがこれで辻褄があったぜ」
此方の世界の時間が早いというのは好都合である、自分達の居ない間の不自由が仲間に押し寄せる時間がより短いという訳だ。
とは言っても問題児3人の功績は大きくノーネームのコミュニティを養うにはいくらか時間を開けても十分賄えるだろう。
「ところでお嬢様はどうすんだ?ここで黒ウサギと働くのか?」
「冗談じゃないわ!もうメイドはこりごりよ!」
飛鳥の目は本気である、以前箱庭でメイド服を着たのがそれほど嫌な思い出だったとは思ってなかった十六夜はヤハハと笑う。
その2人を見ながら蓮太郎が口を挟む。
「いやいや、ここはメイド喫茶じゃ…」
"黙りなさい"
その一言、蓮太郎には何が起こったか全く理解不能であったが確かに蓮太郎の口はその一言に服従するかのように硬く閉じたのだ。
「ちょっ、飛鳥さん!?」
「お嬢様!」
と黒ウサギが驚き十六夜は強めに言うと飛鳥もはっとした後に指パッチンをする。
蓮太郎の拘束は解かれ、蓮太郎は頭にはてなを浮かべまくっている状態である。
「やり過ぎたわ、ごめんなさい」
「やり過ぎたってやっぱり今のアンタの仕打ちなのか…」
蓮太郎の反応は当然なのかもしれない。
突然黙りなさいの一言で自分の口が開かなくなるのだ、人の所業と思う方が無理がある。
「昨日から飲まず食わずで挙句寝床は廃墟で気が立ってたわ、十六夜君悪いんだけどツケで何かいただけないかしら」
そう言うと飛鳥は頭を抑えながら手をパタパタさせて顔をあおっている、体力的に限界なのが見受けられる。
「はいよお嬢様、黒ウサギコーヒーとサンドイッチくれ」
「わ、分かりました急いで持ってきます!」
そう言うと黒ウサギは急ぎ足で厨房へ向かった。
「んじゃまあ里見には紹介しとくか、ここで突っ伏してる美少女が我らのお嬢様の久遠飛鳥だぜ」
「よろしくね、里見君…」
十六夜から紹介された飛鳥は手だけ振りながら挨拶する。
「里見 蓮太郎です、よろしくお願いします」
蓮太郎が敬語なのは先ほどの恐怖体験だろうか、十六夜はタメ語で大丈夫だと思うぜと笑っている。
紹介ついでに十六夜は飛鳥の能力について大雑把に説明する、蓮太郎は今まで自分の出会った女性の中で群を抜いて怖い人に出会ってしまったなと苦笑いである。
しばらくすると黒ウサギがブレンドとサンドイッチをテーブルに置く、よほど空腹だったのか飛鳥は見た目の品位の高い感じとは異なり結構な勢いで食べ進めている。
2.3分というハイスピードで食べ終わると飛鳥は気恥ずかしさからコホンと一つ咳払いをして蓮太郎に謝罪と自己紹介を始めた。
「さっきは本当にごめんなさいね、十六夜君にご紹介預かった久遠飛鳥です」
好きに呼んでね、以後よろしくと付け加えると蓮太郎はまだペコペコしている。
余程の恐怖体験だったのか、蓮太郎の本能が彼女には逆らっていけないと告げているのだろう。
「それでお嬢様、これからどうすんだ?」
「そうね、まずは民警にでもなろうかしら」
「そんなら今俺が働いてるとこに来いよ、ペアはペストでも頼んだらどうだ?」
飛鳥が承諾すると十六夜は善は急げとは言わんばかりに事務所の木更の元へ行こうとする、蓮太郎は天童民間警備会社での自分の存在意義がなくなってるなと実感していた。
「まぁ、異世界の問題児様2人じゃ仕方ねえか」
そう笑うとご馳走様ですと黒ウサギに告げて店を出た。
その夜、飛鳥は天童民間警備会社の一員となりしばらくは十六夜の家に住むこととなった為十六夜の家に来ていた。
「久しぶりねペスト、突然だけど今日から貴女は私のイニシエーターよ」
よろしくねと付け加えるがペストは嫌よの一点張りである、拮抗状態であったが飛鳥がハンガーに掛けてある天誅ガールズのコスプレを見つけ"何アレは"と言うとペストが瞬時分かったわと掌を返して拮抗状態は終結した。
因みに茜は飛鳥の好みのドストライクだった為その夜は抱き枕代わりにされたとか…
はい、問題児様2人目登場です。
飛鳥金ないのになんで喫茶店入って来たの?って疑問が浮かぶと思うので先に書いておきます!
民間警備会社を目指して歩いていた為事務所の場所を店員に聞く為でございます。
飛鳥さん、お腹減ると怖いね……
次回は蓮太郎回です!