題名であれ???ってなる方はあると思いますがちゃんと彼女のお話です。
遂に彼女が登場します、そう本家お嬢様が!
時刻は夕刻、神城 冥は東京エリアから少し離れた森を歩いていた。
十六夜と別れたあと、冥はこのエリアの現状を知る事に徹底しようとしていた。
組織の上に居たと言っても戦力的な意味であり、戦略的なポジションでは下の下もいいとこであり自分が持っている知識など取るに足らない程度のことばかりなのである。
じき夜に差しかかろうとしている時刻ではあるがガストレアなどの気配は一切ない、モノリスから幾分は離れたつもりであったがまだ磁場が影響しているのだろうか。
この辺りの知識は一切ないため考えても仕方のない事である。
しばらく歩いているとガストレアとは違う気配を察知した為、近くの木に身を隠す。
すると森の中からはスカーレットのドレスを着た美少女が出てきたではないか。
!?!?!?と声を上げたくなるような意味不明な展開に困惑する冥だがこんなところであんな姿をしている時点でどう考えてもマトモではない事を理解した冥はまだ身を隠したままだ。
(規格外な人は十六夜君だけでお腹いっぱいです……)
心の中でそう囁くと今度は森の中から異形の生物、蜘蛛ベースのガストレアが奇声をあげながら出てきた。
冥は謎の美少女が危なくなったら助けようと思いつつも美少女の反応を伺っていた、見たところ武器のようなものは持っていない。
"砕け散りなさい"
鈍い音と共に蜘蛛のガストレアがバラバラに吹き飛んだ。
冥からしてみたら何が起こったのか分からない、未知の極みと言ったところか彼の人生でこれほど困惑したことはない。
(ん!?!?!?今砕け散れって言ったら砕け散ったよね!?!?何あの子絶対関わったらダメなやつじゃん怖すぎるよタブーだよ!)
などと口を押さえつつ心の中で悲痛の叫びを上げている。
すると美少女が大きな声を上げる。
「ちょっとそこの貴方、いつまでそこに隠れるつもりかしら?」
心臓が飛び出るとはこういう時に使うのであろう、完全に意表を突かれた冥は諦めたように両手を上げアハハ〜と笑いながら美少女の前まで出頭する。
「男のくせに女性のピンチに陰でこそこそしてるなんて中々良い心構えなのね」
と初対面早々からの美少女の先制パンチに冥のメンタルライフは0となった。
(いや何をどう捉えたらピンチになるのか教えてくださいよ…)
「いやぁ申し訳ない、それよりさっきのガストレアを爆発させたのは一体…?」
そう質問すると美少女は髪を払い太々しく口を開けた、機嫌が悪いのは明白である。
「ちょっと貴方、名乗りもしないで人に質問なんてホントに良い教育を受けてきたのねここまで来ると感心すら覚えるわ」
(名乗らないのは悪いけど貴方も名乗ってないし貴方のその高圧的な態度の方が感心すら覚えます…)
などと心の中だけでは必死に抵抗するが口では決して言えないような威圧感が彼女にはあったので冥は諦めて彼女の機嫌を損ねないよう下手に出た。
「失礼しました、僕は神城 冥と申します呼び方はどうぞご自由に」
因みにIP序列は5位ですと付け加える。
冥の微かに残ったプライドが自分の存在価値を相手に分からせようと放った一言であったが当の彼女は首をかしげているだけだ。
「あいぴぃ序列?何かしらそれは?」
「IP序列をご存じないのですか?民警の事も?」
そう聞き返すと彼女はなるほど……と考え込んだ後に軽くニヤリと笑い得意げな顔で冥に告げる。
「私は久遠飛鳥、外界から来た異邦人の1人です」
(いや聞いてないしこっちの質問に答えてよもう嫌だ帰りたい…)
ここに箱庭問題児3人の内1人、久遠飛鳥の被害者となった人物がまた1人増えたのである。
数刻後、冥と飛鳥はお互いがどういう人物なのかをある程度把握するが両者とも反応は良いものとは思えず頭を抱えている状況である。
「異世界の人って……あ〜頭痛い…」
「はぁ…なんでよりによってそんな気持ち悪い生き物ばかりな世界に飛ばされるのかしら…」
私は虫が嫌いなのよ…と付け加え頭を抱えている飛鳥であるが…
「ところで貴方私に嘘をついているわよね?早めに答えたほうが賢明よ?」
冥からしてみたら嘘をついたつもりは毛頭ない、強いて言えば組織にいた事を隠しているだけなのだがそれのことだろうか?
それに早めに答えたほうが賢明っていうのはなんだろう、もしかして僕も砕け散るのだろうか、我が人生に悔いしかなしだなぁなどと考えていると空笑いが出てくる。
「そう、仕方ないわねなら…」
へっ?という前に飛鳥は一言、"貴方のことを全て包み隠さず正直に話しなさい"
そう彼女が口走ると冥は自分の意思とは別に語り始めた。
口の制御は出来ないものの意識ははっきりとしている。
冥はもう訳が分からなくなり好きにしてくれと投げやり状態である。
"もしかして僕は霊的何かにあっているのでは…"
そう考えたほうがいささか楽であるが目の前にいるのは完全に人間でありしかも美少女、人を見た目で判断してはいけないと言うのは今後の人生で生かしていこうと思うには十分すぎるシチュエーションである。
組織の事、ここ最近の事件のことまで全てを話すと飛鳥はもういいわと指パッチンをする。
すると先程のような支配感は消えて冥は心身、主に精神的な面で疲れ木に寄りかかる。
「貴方、優しそうな感じだけど結構な悪人?よく分からない人なのね」
(こっちからしたら貴方は何一つ分かりませんけどね…)
声に出して言いたかったが今度は疲れからもう話す気にかれない。
手の甲を額に当てはぁ〜と溜息をついていると飛鳥がよし!と自分に喝を入れる。
「貴方、もういいわ色々ありがとう」
そう言うと飛鳥は街の方へと歩き出す、これほど自分勝手な人間が冥のこれまでの人生でいただろうか…
冥が十六夜や飛鳥の関係を知っていれば既に同等クラスの人間に出会っていたと気付けていたが飛鳥の口からは十六夜というワードは出てこなかった為、冥のライフを0にして更に死体蹴りをするには十分な会話であった。
「まさかこんな異世界にまで飛ばされても十六夜君と会えるなんて思いもしなかったわ、少しは退屈しないで済みそうかしら?」
などと笑いながらスカーレットの美少女は森の小道へと消えていくのであった。
「僕もうすこしクールで如何にも超上位序列者の凄そうなオーラ出てるキャラにしようとしてたのに十六夜君と出会ってから色々めちゃくちゃだよ……」
などと嘆いている超上位序列者を残しながら…
冥さんが不憫…ええ不憫ですとも…
登場した意味ある?ってレベルで不憫ですが後々絡んできます、随分先だけど…
という事でお嬢様の登場です、強過ぎると思いますがバランス取ります笑
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