ノーネームが黒の銃弾と交わるそうですよ?   作:海ぶどう

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第1章
異世界へ


日は沈んでいた。

 

周辺から普段とは違った雰囲気を感じながら、逆廻十六夜(さかまき いざよい)は空高く輝く星を見上げながら呟いた。

 

「流石に理解が追いつかねえ……」

 

それもそのはず、彼はつい先程までは太陽が一番高く昇る正午の時間帯の箱庭の世界に居た。

 

それが今ではどうだ、夜の森になっただけならまだ理解は出来る。

だがしかしここは箱庭の世界ですらないのだ。

 

頭を掻きながら思考を回転させていると後ろからまだら模様の服を纏った少女が声をかけてきた。

この場所に一緒に飛ばされてきたコミュニティ「ノーネーム」の仲間のペストだ。

 

「残念だけどやっぱり箱庭じゃないわねここは、どうするのかしらマスター?」

ペストは顎をクイっと十六夜の方に向けて尋ねる、十六夜は反応せずにペストに質問を返す。

 

「なあ、飛ばされた原因、戻る方法みたいなのは分からないよな?」

ペストは質問を無視されたことに対してムッとしたがすぐに答えた。

「分からないけど、あの帽子男…クロアと同じ理由なら時間が経てばいずれ戻るはずよ」

「あ〜まあ考えてても仕方ねえか、とりあえずこの世界について調べてみるか」

 

箱庭から外界に飛ばされる、もしくは戻る事はいくら考えても理解が追いつかない事を痛感しつつも十六夜はとりあえずはしばらくこの世界で生きていこうと思い行動しようとした。

そんな時に後ろの木々がメキメキと音を立て倒れていく音が聞こえたので其方を向いて見ると、巨大なクモが居た。

長い8本の足、頭部に光る4対の真っ赤に光る眼、口からは光った2本の牙、そして人ならば嫌悪感を覚えてしまう黄色と黒のまだら模様はクモと言われれば納得出来る。

だがそれは通常サイズの場合のみでの事だ。こんなサイズは十六夜は生まれてこの方どの世界でも見たことがない。

 

「こいつクモなのか!?いやでもあり得ねえだろこれ…」

十六夜は驚きを隠せずに様子を伺っている、それに対してペストは呑気そうに感想を述べている。

 

「あら、綺麗なまだら模様ね…手駒にしてあげようかしら」

 

それに対して十六夜はヤハハと笑いながらクモを観察する、やはりどう見てもクモだろう、この世界ではこのサイズが普通なのか?

そう考えているとクモがキィキィと鳴き出して此方に凄い勢いで近付いてきた、穏やかな雰囲気ではない事を察知しペストは臨戦態勢に入るが十六夜が待てとハンドサインを送る、ペストはそれに従い宙に浮いて待機する。

 

十六夜は落ちていた野球ボールサイズの石を拾いそれを第三宇宙速度に匹敵する馬鹿げた速度でクモに投げつける、それは見事にクモの胴体を撃ち抜いた、しかしクモの風穴が空いた胴体は次の瞬間に再生し始め数秒もしない内に完治していた。

「再生の恩恵(ギフト)か?」

十六夜は箱庭で経験した闘いから相手の能力を推測するがどれとも当てはまらない、箱庭での再生の恩恵は薬物による超速治癒、もしくは損傷などを元の形に戻す能力の2パターンしかないからだ。

それに対しこの巨大グモは細胞自体が超速再生しているように見える。

一体どんな能力なんだ?と考えているとクモは更に近付いていて十六夜との距離は5メートルを切っていた。

 

「ま、考えるのは後でいいよ…なっ!」

 

刹那十六夜は立っていた所が凹む程の超跳躍をし、一瞬でクモの頭上に現れる、あまりにも一瞬の事態であったためクモも十六夜を見失ってる。

十六夜は愉快そうに笑いながら回し蹴りをクモに叩き込もうとしてる。

 

「俺を楽しませろぉ!」

 

ドンッ!!!と鈍い音がし、クモの身体はバラバラに砕けてしまい再生する兆しはない、十六夜は笑みから一転箱庭に来る前の詰まらなそうな顔をしてスタスタと歩いてく。

 

「つまんね、行くぞペスト」

 

「はーいマスター」

 

ペストも地上に降りてきて十六夜の後を1.2歩空けて付いていく。

 

 

 

そんな2人を遠くで見てる2人組が居た。

 

「見たかね小比奈?」

 

「うん見たよパパァ、あいつ今までに見たことないくらい凄く強いよ」

蛭子 影胤(ひるこ かげたね)と蛭子 小比奈(ひるこ こひな)の親子だ。

影胤は気分が良いのかキヒヒと不気味な笑い声を漏らしながら小比奈に声をかける。

 

「どうだい小比奈?私達で彼等に勝てるかね?」

 

すると小比奈はビクッと身体を震わせながら即答する。

 

「無理だよ絶対!私達2人でやっても勝ち目ないよ!」

 

「ほう、そこまでとはね…いつかは手合わせをしてみたいモノだね…」

 

「そんなヤりたいならオレは今からでも構わないぜ」

 

瞬時影胤・小比奈は後ろに大幅に跳躍して後退するとそこには先程クモを瞬殺した少年と宙に浮いていた少女が居るではないか。

影胤は誰よりも早く口を開く。

 

「我々の事はいつから気付いて居たのかね?」

 

「ハッ、最初から気付いてたぜシルクハットさんよ」

 

十六夜は楽しそうにヤハハと余裕まじりに笑いながら応える。それに対し影胤も緊張が解けたのか笑いながら十六夜に話しかける。

 

「失礼、自己紹介が遅れたね。私は蛭子 影胤、こっちは娘の小比奈だ。小比奈、挨拶を」

 

「蛭子 小比奈、10歳」

 

小比奈はスカートの両端を掴み持ち上げ礼をするような挨拶をする。それに続き十六夜達も返すように自己紹介をする。

 

「ヤハハッ、よく出来た娘だな。俺は逆廻 十六夜、んでこっちがペストだ。ホラ、お前も挨拶してみろよ?」

 

十六夜が煽るようにペストに促すとペストは機嫌が悪そうに自己紹介をする。

 

「ペストよ」

それに対して影胤は首を傾げ十六夜達に疑問を投げる。

 

「黒死病(ペスト)?変わった名前だね…君達はどこか違う国の人間なのかい?」

 

「まあ違う国と言えば違うトコだな、んで俺からも聞きたいことあるんだがさっきのクモが最初再生したんだけどあれはどんな恩恵(ギフト)なんだ?」

 

「ギフト?何を言っているのかさっぱり分からないのだがさっきのはガストレアなのだから再生して当然だろう?」

 

「ガストレア?なんだそりゃ?」

そこまで言ってお互いの会話が成り立たない事を見て呆れ果てたペストが口を挟む。

 

「このままだとキリがないからまずは私達の世界の説明からしてこの世界の情報を提供してもらいましょうマスター」

 

「確かにな、それじゃ頼んだぜペスト!」

 

十六夜はそう言うと軽く跳躍し、近くの太い木の枝に飛び乗り座って説明が終わるのを待機する。

ペストは更に機嫌が悪そうになりながらも説明を始めた。

 

 

 

 

影胤とペストがお互いの世界の情報について話し合い終わったところで十六夜が甲高く笑い声を上げて木から飛び降りる。

「なんだなんだ良いじゃねえか!詰まらねえと思ってたけどまだステージ5やらなんやら面白そうな敵居るじゃねえかよオイ!」

 

影胤も同じように笑いながら両手を空に向かって高く広げ上げて叫ぶ。

「面白いじゃないか!君達と此処で私と出会ったのもきっと何かの縁であろう!私と共に来ないか十六夜君、ペスト君!」

 

十六夜とペストは顔を見合わせお互い頷くと影胤の方を向きなおし応える。

 

「面白そうだけど断る、なんせロマンを感じねえからな」

 

「そう言うと思ったよ、残念だが諦めるとしよう…」

 

そう言い残し立ち去ろうとした影胤はそうだ忘れていた、と十六夜の方を向き尋ねる。

 

「この世界に来たばかりで金銭的にも住処的にも困っているのではないか?」

「そりゃな、まあでもなんとかなるだろ」

 

十六夜は笑いながら空を見上げる。

 

「それならついてきたまえ、それと少しばかりだが受け取ってくれたまえ」

影胤は十六夜に小切手とまだ使われてない口座のカードを渡して付いてくるように促す。

 

「いいのか?こんなに貰っても?」

 

「私が久しく味わってなかった快感をくれた君には足りないくらいだよ、安いものだ」

 

「そうか、悪いな」

 

礼を言い十六夜とペストは数メートル先に歩く蛭子親子に付いていく。

小一時間ほど歩いて市街地に入り、中々見事な一軒家の前にたどり着く。外装も綺麗で日当たりも良さそうだ、しいて言うなら後ろにボロアパートがあるくらいが欠点なのだろうか、とりあえずは申し分ない家だと言える。

 

「ここで暮らしたまえ、金も足りなければ此処に連絡してくれたまえ」

影胤はそう言うと家の鍵と電話番号が書かれた紙を十六夜に放る。

 

「色々と世話んなったな、感謝するぜ影胤」

 

「礼はいらんと言っただろう?また君と会える日を楽しみにしているよ、くれぐれも私の邪魔はしないでくれたまえよ?」

 

「そいつぁ無理な相談だぜ、俺がやりたい事をやる時に立ち塞がってるなら壊すだけだ」

 

十六夜は真っ直ぐ影胤を見つめて言い放つ、それに対し影胤も笑いながら十六夜をしっかりと見て応える。

 

「それも実に君らしい、道が交差しないことを願うよ」

 

影胤はそう言い残すと小比奈を連れて立ち去っていった。

それを見送ると黙っていたペストが口を開く。

 

「案外どうとにでもなりそうねマスター、これからどうするの?」

 

「とりあえず当面の目標はステージ5を倒すって事だな、まあ影胤みたいに自分で呼び出すみたいな事はしねえけどよ」

 

十六夜は楽しそうに笑いながらも疲れたのかベッドに寝そべり寝るモーションに入る、ペストもそれに賛成なのかもう一つのベッドに腰を置く。

寝る前に十六夜は手を高く伸ばし口元には微かな笑みを浮かべながらこの世界をもっと知りたいと思いながら拳を握りしめた。

 

 

数時間後十六夜とペストは同じ理由でかなり苛立ちを覚えていた。

後ろのボロアパートの住民が深夜真っ只中なのにうるさくて眠りに就けないのだ。

 

「レンタロー!!!」

 

「寝ろって言ってんだろ延珠!おい聞いてんのかっ!」

ペストは布団を頭から被りなんとか寝ようとしているが十六夜は……

 

「影胤、この家思わぬ点で欠点あるぞ……」

 

と少しだけ家を譲り受けたことを後悔していた。

 

 

「レンタロー!」

 

「頼むから寝てくれええええ!」




如何でしたでしょうか?
原作ちょい前スタートですね、次からは原作入りたいと思います。

補足ですが十六夜の恩恵(ギフト)の「正体不明(コードアンノウン)」ですがガストレアの再生能力をも止めます、この世界では機械化兵士くらいに捉えてもいてもらえればなと思います。

ではではまた!

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