インフィニット・ストラトス~オーバーリミット~   作:龍竜甲

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お帰り! 酢豚(パイナップル)


クラス代表就任パーティー

 

――Bシステム。

 

俺のIS「瞬龍」に搭載されている特殊な機能だ。

それを搭載したISは特定のISと、特殊なコアネットワークを構築し、瞬龍及びその使用者の身体能力を格段に向上させる機能だ。

・・・・と、二年前に俺は聞いた。

だが、束さん。

登録できるコアが複数ってことや、性格が変わるなんて、全く聞いてませんが・・・!?

 

セシリアとの一件から数日。

俺がセシリアに強引に迫ったという噂は新聞部発行の学内新聞で、学園じゅうに広がり、道行く女子が俺を虫を見るような目で見るようになった。

特に一年一組が酷く、セシリアがヘイトスピーチでもしているのか、俺がこの学園にいる理由が「女を喰うため」何てことになっていた。

一方で変化が少なかったのが俺のクラスなんだが、俺についての一定の理解がある分、今回の一件で俺に対してどういう対応をとればいいのか分からないらしく、俺に対する対応も何処かぎこちない。

雨については1日学園を休んだくらいだ。

 

勿論、噂を流した新聞部は千冬さんに「下らない」の一言で切り捨てられ、〆られたらしい。

俺も、情報のソースであるフォルテに、頭部が凹むほどのヘッドロックをかましてやった。

 

Bシステム、あれの起動にともない発現したあのキモい俺だが、この数日の検証でたった一つだけ分かったことがある。それは、

 

女子の前では不用意に動悸を乱してはいけない。

 

どうやらアイツは俺の心音が乱れたときに出てくるみたいだった。検証方法? ああ、女子の心証を犠牲にして行ったよ。

あの夜は、別に動悸を乱した覚えはないが、登録ISの追加、瞬龍の起動に驚いたのが原因のようだった。

 

(もともと嫌われてる部分の方が多い俺だ。今更汚名が増えたところで些細な問題だ)

 

そう割りきりながら、遅めの夕食を食堂で摂っていると、

 

「というわけで! 織斑くんクラス代表決定おめでとう~!」

「おめでと~!」

 

という女子の声に続き、ぱんぱんと、クラッカーの音が鳴り響いた。

どうやら、どっかのクラスがパーティーでも開いているらしい。

 

「いやー、これでクラス対抗戦が盛り上がるね―」

「ほんとほんと」

「ラッキーだったよね、同じクラスになれてー」

「ほんとほんと」

 

様子を見るに、セシリアと一夏の所属する一年一組の連中らしいが、主役の一夏には興味がないとばかりに用意された料理を食いまっているやつがいる。返事テキトー過ぎだろ。

一夏はというと、食堂の半円を描くテーブル席の最奥にすわり、その両側を女子が取り合って視線の応酬が起こっている。うわ、死にそう。

 

そんななか、一人の女子生徒が一夏に近づいた。

・・・・あ、ええと確かあの子は一夏と同じピットにいた・・・・篠ノ乃、箒? 揺れるポニーテールが特徴的だったから少しだけ記憶に残っている。

彼女は一夏と一言二言交わすと、手にした湯飲みからお茶を一口飲んだ。

祝いの言葉でも掛けてたのか?

 

その後、千冬さんに〆られた二年の新聞部副部長、黛薫子が現れた。

黛はここぞとばかりに取材という名目で一夏の写真をばかでかいカメラでバシバシ撮っていく。

・・・でも知ってるぞ俺は。お前ら新聞部、とった写真にアホみたいな高値付けて外で売り捌いてるだろ。チクるネタではあるが、弱味はつかいどころが肝心。今は言わないでいてやる。今回の一件で千冬さんに幾つか押収されたみたいだし。

 

男子生徒を取材できたことに満足がいったのか、次に黛はセシリアに「クラス代表を譲ったのは惚れたから?」などと宣う。

だがセシリアは、極めて平常通りの笑顔で上手いことかわした。あの黛のイジリを回避するとは、流石だ。

 

しかし、ここで想定外のことが起こった。

今の俺は食堂の片隅で狐うどん(420円)を啜るただの(・・・)男子生徒。

だから、連中に関わるのを避けるため、行動を急いだのが過ちだった。

食膳をカウンターに返そうと席をたった瞬間だ。しかし、ソコは不幸に定評のある俺だ。

ものの見事に脚を絡ませて、盛大にスッ転んだ。

俺の手から離れた丼や、いなり寿司の入っていた小皿が宙を舞う。

そして・・・・・。

 

パリンパリン、ガッシャーンっ

 

それぞれの食器はリノリウムの床に叩きつけられ、その形を失った。

この場でそんな大きな音を立てれば、食堂じゅうに響くのは当たり前で・・・・・・。

 

「おやおやぁ・・? そこにいるのは今巷で大不人気の柊 暮刃くんじゃありませんか~」

 

黛に目をつけられた――――(エンド・オブ・ライフ)

 

「あ・・・あーあ。やっちまったー。これは怒られるぞー。その前に箒で片付けないとー。それじゃっ!」

「簡単に逃がすと思ってる?」

 

あ、これだめだ。多分写真の件をちらつかせても、それよりヤバイネタをここで獲られる・・・・!!

 

「どーしたのー・・・って、げ」

「なんで野獣先輩がこんなところに・・・」

「・・・あれ~? 食べるのに夢中になってたらなんでこんな緊張感バリバリの空気に~?」

 

後ろに控える女子たちは今にも牙を剥いてガルルルとか言いそうな雰囲気だ。獣はどっちだよ。

む、まずい。ここで心拍を乱せばまた取り返しの聞かないことになってしまう。

しかも今度は新聞部副部長までいる。現行犯逮捕は免れない。

 

「・・・・ど、どうしたんだよお前ら。片付けないとおばちゃんに悪いだろ?」

 

努めて冷静に切り抜ける方法を実行する。

しかし、

 

「騙されちゃダメよ。今は普通に見えるけど、本性を表せば・・・・」

「ていうかこの場はどうすんの? 集合写真とるんでしょ?」

 

警戒心マックスですねお前ら。

 

「ちゃんと話した方が身のためよ柊くん。この前のオルコットさんの一件と、これまで起こしてきた淫行の数々・・・ここで白状しなさい! 記事にするから!」

「言うと思ってるのか、黛?」

 

なんだよ淫行の数々って。この間のが初犯・・・・・って、別にわざとじゃねーよ。

 

「いい加減うんざりしてたのよ。君のその不明瞭さに。なんで何処にも君に関するデータがないの?」

 

どうやら黛は、今回の事だけでなく、俺が入学してから今までのことについて言及しているらしい。

いつの間にかふざけた雰囲気は霧散し、ノリノリだった女子たちは戸惑っている。

セシリアや一夏、箒は・・・・・うん。普通に歓談を続けている。

 

「別に、隠してる覚えはない。新聞部(お前ら)の実力不足だろ」

「ぐぬ、そう言われると仕方ないのだけど・・・・。でも、一年生は君の存在に戸惑っているのよ。オルコットさんの件も併せて色々説明をくれると嬉しいのだけど?」

 

黛は歓談中のセシリアにねぇ、オルコットさん?と問いかける。

その際ようやく俺に気づいたらしいセシリアは俺の方を見るものの、視線はあわせようとしない。

・・・・まぁ、悪いことをした、申し訳ない気持ちならあるさ。

一夏は中々鋭い目でこちらを見ている。どうやら俺の行動を観察するつもりらしい。

 

・・・・ふむ、折角謝罪する機会を得ているんだ。ここいらで清算すべきだろう。

 

「わかった。二、三年生には去年のこと、一年生には今回の一件のことを謝罪する。だから、これ以上の詮索は―――「ここがパーティー会場ね!!」―――は?」

 

俺が謝罪の言葉をのべている最中、突然食堂のドアが開かれる。

レコーダーで録音していた黛も、どこから出てきたか分からないフォルテも、その他の女子も、その声のした一点に意識を向ける。

 

「・・・・・なによ。一組がここでパーティーやってるって聞いてきたんだけど」

 

そこに立っていたのは彼女―――。

 

「んー。キミ見慣れない顔だね。何年生?」

 

黛も知らないような新入生(ルーキー)

 

「お、お前、もしかして・・・・・!!」

 

座っている一夏が何故か反応を示した人物。それは・・・・。

 

「・・・・・・再登場、って訳かよ。鈴」

 

肩の露出したIS学園制服に身を包んだ、中国からの来訪者、凰 鈴音だった!

 

 




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