インフィニット・ストラトス~オーバーリミット~   作:龍竜甲

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セシリア戦。いきまーす。


銀対白(蒼編)2

セシリアの放ったレーザーをなんとか避けた俺は、あいつの狙いを悟った。

 

(あいつのさっきの狙いは俺の頭! 日本の謝罪・・・・土下座か!)

 

どうやらセシリアは俺に土下座を要求しているらしい。

再びリヴァイヴのアラートが鳴り響き、迫ってきた第二射目もなんとかかわす。

 

「ふん、なかなかやりますわね・・・。けれど、いつまでそれが続いて!?」

 

セシリアは俺の動きを見て、俺の力量を測ったらしく、射撃の頻度が一気に増した。

セシリアは俺より上から射撃を行っているため、俺の姿が見えやすいのだろう。その狙いは的確だ。

なんとかしなければ。

 

ーーーー無様な姿は晒すなよ?

ピットから出る前の千冬さんの言葉がリフレインする。

俺はそれに応えるように再びレーザーをギリギリの線でかわした。

 

「ああもう! ちょこまかと! 腹ただしいですわね!」

「おいおい、焦るなよ。試合はまだ始まったばかりだぜ?」

 

そうカッコつけて言うが、余裕がないのはこちらの方だ。

ただでさえ低い稼働率で戦っていて、あまつさえ向こうは第三世代型。

余程の技術差がなければ、勝つのは困難を極める。

俺はセシリアからの攻撃がやむタイミング――エネルギーのチャージ―――を狙って、近接ブレードで攻撃を仕掛ける。

 

「タイミングはなかなかのものですわ。やはり基本は出来ていらっしゃるのですね!」

 

瞬間加速を使って仕掛けた攻撃は、ブルーティアーズの近接武器『インターセプター』によって妨げられた。

・・・・基本だと?

彼女の言い方にカチンと来たが、そこは大人の対応。顔には出さない。

 

――――敵ISのエネルギー充填を確認! 射撃モードへ移行!

 

マズイ! 攻撃が来る!

俺はセシリアの左腕を押さえたままその場で飛び上がると、先程まで俺がいた場所を、青い閃光が駆けていった。

 

「ふふふ、ハイパーセンサーに頼りきりのようですね!」

 

セシリアは俺から距離をとると、再びライフルによる射撃を再開した。

銃弾の雨が酷くて、近づけない。

彼我の距離は約30メートル。遠距離用武器で牽制しつつの接近を狙っても、向こうは中長距離を得意とするISだ。

俺よりうまく距離をとる方法を知っているだろう。

ならばどうするか?

俺は不意の一撃を喰らい、姿勢を崩す。

衝撃をISが緩和しきれておらず、頭を揺さぶられる。

気持ちが悪い。吐きそうだ。

その隙が命取りとなり、俺はその瞬間だけでも、計五発の銃撃を受けてしまったのだ・・・・。

 

 

「あのバカ者が・・・・」

 

千冬はオペレーションルームで試合を観戦しながら呟いた。

クレハがリヴァイヴのままでオルコットに挑んでいる映像がディスプレイに映っている。

 

「? どうかしましたか織斑先生?」

 

デスクに座っている山田摩耶から不思議そうな視線を向けられる。

 

「いや、少しな」

 

千冬はそう短く返すと再びディスプレイに目をやった。

 

(柊のやつ・・・本気で二世代で三世代に勝つつもりか?)

 

ISバトルにおいて、機体性能というのは勝敗を大きく分ける。

もちろん操縦者の練度も重要な要因だが、まだ乗りはじめて五年と経っていない新人の戦いにおいては機体が勝敗を分ける場合が数多くある。

この勝負、クレハが装着しているのは第二世代のリヴァイヴ。オルコットは第三世代だ。

しかもクレハはもともと適合稼働率が低いと言うハンデを抱えている。

クレハに相当な策でもない限り、勝つのは難しいだろう。

 

(さて、あれの許可は出したが、アイツが使うかどうかだな・・・・・)

 

千冬はそう考えながら、塩コーヒーを作り始めた。

 

 

試合開始から30分が経過。

リヴァイヴのシールドエネルギーも大半が削られ、残り140。

装甲は所々が消失し、ISスーツが見えている。

武器も残っているのは、この近接ブレード二本だけだ。

 

(正に、危機的状況だな)

 

さらにセシリアは先程からブルーティアーズが、ブルーティアーズと呼ばれる由縁の第三世代型兵器、『ブルーティアーズ』を周囲に展開している。

四機からなるその兵器は、使用者の脳波を読み取り、射出したビットを自在に操るという兵器だ。

 

だが、ネタは割れたぞ。

 

俺はなけなしのシールドエネルギーで瞬間加速を使うと、再びセシリアとの接近を試みる。

 

「貴方も分からない人ですわね!!」

 

セシリアが俺に向けて二機のビットを使っての多角的直線攻撃を仕掛けてくる。

上下から迫ってくるビットの砲口は淡く光を湛えている。

ビットから繰り出されたレーザーをなんとか回避すると、スコープ越しにセシリアと目があった。

 

閉幕(ヘッドショット)と行きましょう!!」

 

セシリアがトリガーに指をかけるのが見える。

彼女との距離は約十メートル。

喰らえば一撃で終わる攻撃を回避する方法は、あるにはある。

俺は急加速を行い、セシリアとの距離を詰める。

突然のことに、セシリアはスコープから目をはなし、俺の姿を捜しているようだった。

今だッ!!

 

「ウオオオオオオッッ!!」

 

セシリアの隙をつき、ブレードでスターライトの銃口を上へはねあげる。

すると偶然セシリアの指がトリガーを引いたのか、真上へ向かってレーザーが放たれる。

 

「な・・!! ま、まだまだですわ!!」

 

セシリアは俺と距離を取ると、次は四機全てのビットを射出。

待ってたぜ、この時を!!

 

射出されたビットは他方向から俺に迫ってくる。

だが、もうネタは割れている。対応には苦労しない!

 

それぞれのビットが一斉にレーザーを放とうとした瞬間、俺は二本のブレードを円を描くように振るう。

刃の届く範囲にあったビット四機はそのすべてを切り裂かれ地に落ちる。

観戦席から歓声が沸き起こる。

 

「あ、貴方・・・・一体なんで方向が判りましたの!?」

「分かってねえよ。ただ――――」

 

セシリアの顔が驚愕に歪む。

 

「――――お前のクセとタイミングさえ掴めば、いつ撃ってくるか予想はつくだろ?」

 

俺はビットが爆発したのを確認すると、セシリアに向かって飛翔する。

これで彼女の武器はあのロングレンジライフルだけだ。

つまり、懐に潜り込むことができれば勝てる!

 

最後のエネルギーで瞬間加速を使い、セシリアの真上に翔ぶ。

しかし、そんな中でセシリアは再び口元に笑みを浮かべた。

 

「残念ですわね」

 

セシリアの言葉と共に、腰のアーマーが可動し、二門も砲口が現れる。

まさか・・・・あれは――――。

 

「おあいにく様! ブルーティアーズは六機あってよ!」

 

言葉通り、腰の砲口から攻撃が繰り出される。

しかし、今までのビットのようにレーザータイプではない。

俺は回避しようとするも、それが間に合わないと悟る。

腰のブルーティアーズから発射されたのも、それは。

――ミサイルだった。

 

 




ちょっと長くなるのでここでカット。
もうちょっとかっこよく書きたい。

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12/13 最後のシーンを展開の都合上、改編して次の話へ掲載します。

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