インフィニット・ストラトス~オーバーリミット~   作:龍竜甲

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こんばんは。
ペースアップで更新していきます!



革命者

 

「よし、それじゃあ皆用意は良いな。千冬さんに黙って出てきてるんだ。見つからないように出発するぞ」

 

夕陽が落ち、砂浜にも夜が訪れた。

俺たち、福音迎撃即席部隊は音も立てずに砂浜への集合を果たし、出発の最終確認をしていた。

 

「先生に見つかった場合は迷わず撃て。ただし麻痺弾な・・・あ、千冬さんには実弾で良いから」

「何言ってのよアンタ。千冬さん殺す気?」

 

・・・・まぁそれは冗談として、いよいよ俺たちがそれぞれのISをまとい、出発しようとした瞬間。

 

「・・・・ま、待ってくれ」

 

旅館へと通じる小道から、人影が現れた。

俺は教員を警戒し、直ぐ様流桜を抜き照準を会わせたが、他のメンバーはその人影にただただ視線を送るだけだ。

 

「・・・・何よ箒。アンタ部屋でグズッてるんじゃてるんじゃなかったの?」

 

鈴が一歩前へ出て、その人影――いつものリボンがなく、ポニーテールではないが―――箒に声をかける。

だが、その声は険を含み、どこか非難するような声だった。

鈴の物言いに、デュノアが声を出しそうになったが、それをラウラが押さえた。

ここは鈴に任せる。そんな意思が込められていた。

 

「・・・・さっきお見舞いに行ったときはまだ寝込んでたけど、大丈夫なの」

「・・問題ない。一夏が守ってくれたからな」

 

箒はそういうが、頭には包帯。脚や腕にはガーゼや血染みと、あまり大丈夫そうには見えない。

ここに現れたと言うことは・・・・まさか、行くつもりかあいつ。

 

「そう、で? ここになんの用かしら臆病者さん。折角の専用機をもてあまし、挙げ句もう乗らないなんて言ってる人がここに用があるなんて思えないんだけど」

「・・・・・さっき、お前たちが出ていってから考えた・・・・」

 

どうやら鈴の口ぶりから察するに、ここに集合する前に動けるIS乗りに声をかけて回ったみたいだが、一応一夏や箒にも声をかけたらしい。

だが、一夏は箒やミナトと比べても傷がひどく、望むべくもない。箒も何らかの理由で断ったか、喧嘩別れしたみたいだが、どうやらまた新たな覚悟を決めてここにいるらしい。

 

「確かに、一夏は私を庇って傷を負った。それはいつもそうだった。あいつはいつも誰かの為に傷を負う。心の傷も、体の傷も等しくあの身体で受け止めている」

 

鈴が腰をちょいちょいと小突いて来るのでよく聞いてみれば、あれ。あの箒の話。思いっきり身に覚えがあるんだけど。

どういう反応を示していいかわからなくなった俺は、とにかく聞く。箒の覚悟を聞く。

 

「どんなにひどい傷を負ったとしても、一夏は誰も責めずに、笑って過ごす。―――――だが、それではイヤなのだっ! どんどん傷だらけになっていく一夏を見守るだけではもう嫌だ! 全部の恩を返せなくたって、たった一回、一回だけでも一夏の助けになりたい! そう思って私は紅椿を手に取った! そしてその意思は未だ変わっていない! 私も、闘う! 戦って、勝つ! 今度こそ負けはしない! 自分自身にもだ!」

 

箒が叫ぶ。

一夏への想いを言葉に乗せて、戦いへの覚悟を決める。

その言葉を全身で受け取った皆が一様に頷き・・・。

 

「――――決まりね」

 

鈴が胸を張って言う。

それを皮切りに――――

 

「ラウラ、セシリア。どうだ? 福音の反応は消失したらしいが、追えるか?」

「勿論です兄さん。たった今追跡終わりました。最後に確認された場所から動いていません。恐らくステルスモードかと」

「クレハさん。戦場となりそうな海域には不審な船舶の反応はありませんわ。箒さんも、心配なさらないで結構ですわよ」

「よし、各自、兵装は問題ないか!?」

 

ブックレットや広域レーダーで海上の様子を探っていた二人に確認する。

最終確認としてそれぞれの装備を確認させる。

 

「リヴァイヴ、いつでも行けるよ。クレハのリヴァイヴも即席だけど機能向上に異常ナシ!」

「ティアーズ、ストライクパッケージのインストールは完了していますわ。最適化には少し掛かりますが二、三分で終了ですわよ」

「甲龍のパッケージも問題なく適化したわ。攻撃力の上がった双天牙月。受けてみる?」

「なぜ私のは打鉄なのかしら・・・? ・・・・・サラ・ウェルキン。チェック終了よ」

「―――『パンツァー・カノニーア』インストール完了です。砲撃なら私を頼りにしてください兄さん」

 

五人ぶんの声を聞き、俺は箒の方を向く。

いきなりの剣呑な装備確認に驚いたのか、箒は目を丸くしているだけだ。

 

「あー。箒、一夏だったらこう言うと思うから言っとくわ―――まぁ、気楽に行こうぜ」

「! ・・・・はいっ」

 

箒は一際大きい返事をすると右手に巻かれたブレスレットを胸の前で握り、その名を呼ぶ。

 

「もう一度、私に力を貸してくれ―――『紅椿』!」

 

その瞬間、箒の身体を金色の粒子が包み込み、紅椿なるISが姿を現す。

―――美しいISだった。

牙龍と同じ赤いカラーリングだが、あれとは比べ物にならないほど煌びやかで、紅い。

鳳凰を思わせる装甲に、腰にさした二振りの刀。

箒の武士のようなイメージにぴたりと当てはまる、箒用に誂えたかのようなISだった。

 

「紅椿、雨月(あまづき)空裂(からわれ)準備完了です」

 

箒がそう宣言すると、いよいよ全ての準備が整った。

 

「――――よし、行くぞッ!」

 

「「「「「「了解ッ!」」」」」」

 

 

太平洋、日本近海。

海上から約二百メートルほどのところで福音は胎児のように身体を丸めて停止していた。

 

「セシリア。周りにISの反応は?」

「―――ありませんわ。かかるなら今が好機かと」

「よし。―――――ラウラ。三十秒後に砲撃を開始。頼んだぞ」

 

セシリアと共に待機していた俺は、ラウラの「了解!」の声を聞き届けると一旦通信を切った。

続けて福音のチャンネル――ナターシャに向けて発信してみるが、反応はナシ。 どうやら意図的に通信が遮断されているらしい。

 

――――熱源! シュヴァルツェア・レーゲンのレールカノン飛来! 

 

瞳が情報を表示し、その瞬間、ウィンドウの中の福音の頭部で爆発が起こる。

当たったのだ。五キロ離れた地点からラウラが撃った砲撃が。

 

福音はその衝撃を切っ掛けに起動。

周りを確認するかのように首を巡らせると福音は真っ直ぐラウラの方向を見つめ、飛翔した。

 

「ラウラッ! 砲撃!」

「了解! 次弾装填―――発射ッ!」

 

ラウラが新たにインストールしたパッケージ、パンツァー・カノニーアによって増設された防御用実体シールド四枚が、砲撃の衝撃によって軋みをあげる。

地上で射撃する際にアンカーとして利用されるらしいから簡単には壊れないだろうが、更に増設されたレールカノン、計二砲門を同時に放てばどうなるかはわからない――とラウラは言っていた。

 

福音はラウラの砲撃をシールドで受けると、爆炎を切り裂くようにして突き進む。

ダメージは入っているようだが、止まらない!

 

「くっ!」

 

強大な火力を得る代わりに機動力を捧げたラウラは、その場から離脱するも直ぐ様福音に追撃され、福音はラウラに右手を伸ばす。

だが、ラウラは口元をふっと緩ませる。

 

「セシリアっ!」

 

ラウラが叫ぶと隣のセシリアが射撃体勢に入る。

 

「お任せっ! ですわ!」

 

セシリアは射撃の衝撃緩和のため、六基のティアーズを全て腰に据えスラスターを吹かせる。

二発。

全長二メートルを超える大出力ライフル『スターダスト・シューター』から放たれたビームは正確に福音の右手と胴を撃ち抜く。

ビットを機動力として使うぶん火力が落ちているかと思いきや、それを補って有り余るほどの威力を誇るライフル―――化け物級だ。

セシリアは続けてハイパーセンサーで福音を捕捉し射撃するも、福音はそれを持ち前の機動力でひらりひらりと避ける。

 

「ああんもう! 速すぎるんですの!」

「落ち着いてよセシリア。僕と箒でやってみるから」

 

箒の―――紅椿の背にのって現れたデュノアは、前方に六角形の実体フィールドを展開し、両手に二丁のショットガンを構える。

 

「頼んだよ箒」

「任せておけ。―――ただ、翼には注意してくれシャルロット」

 

箒は紅椿のスペックを遺憾無く発揮し、高速移動中の福音に肉薄すると、その背のデュノアのショットガンが火を吹いた。

弾丸の雨を浴びた福音は腕のプラズマブレードでデュノアを攻撃するも、リヴァイヴカスタムに追加装備された『ガーデン・カーテン』に阻まれる。

一撃で物理攻撃は効かないと判断したのか、福音は急速に距離をとると、背中の多方向推進装置を解放。

細かく分解された装甲がまるで翼のように夜の空へと広げられていく。

 

「なん・・・だよあれ・・・!?」

 

その光景を見ていた俺は、装甲の合間合間に、エネルギーの連結部があることに気づく。

 

(エネルギーの塊を、装甲で覆っているのか・・・?)

 

まさかあれは――――。

 

「シャルロット! 一旦引くぞ! あれが来る!」

 

箒が叫ぶ。

デュノアは急速旋回する紅椿に捕まってその場を離脱し、嫌な予感に苛まれたラウラも、四枚の装甲を福音に向けて展開。いかなる事態にも備えた。

 

―――キュルオォォォォォォォォォォォォォッ!!

 

福音が甲高い機械音を上げると、身動ぎするようにその場で回転する。

 

銀の鐘(シルバーベル)――――』

 

その動きに合わせて背中のエネルギー体が振られ、飛び散ったエネルギー片が砲弾となって辺りへと降り注ぐ。

 

(―――やっぱり砲撃か・・・・っ!)

 

俺自身もリヴァイヴのシールドを全て前面に押し出し、エネルギーの雨がやむまで耐える。

やはり強い。

あの三人が負けたと言う話も納得できる。

 

砲撃がやむと、福音が一瞬止まったのでそこに隙を見出だした俺は一息で突進。

大倭先生が調整したブレードで切りかかる。

 

ガキンッ!

 

腕の装甲でそれを防いだ福音はバイザー越しに俺の顔を確認するとなにやら計算を始める。

その隙を突いて――――。

 

「セヤァァァアアアッ!」

 

鈴が双天牙月を振りかざし、背後から福音を攻撃する。

 

―――キュオッ?

 

不意を突けたのか、鈴の刃は福音の絶対防御を削り、明確なダメージを与える。

怯んだ隙に、セシリア、ラウラ、デュノアによる攻撃が叩き込まれ、福音は苦悶の声をあげる。

 

――――ー敵IS、攻撃機能停止。離脱します。

 

超界の瞳がそう告げると、福音が先程の全方位砲撃―――『銀の鐘』を使い、セシリアたちの攻撃に切れ目を入れるとその場から離脱する。

だが!

 

「「舐めんじゃねーぞッ!(ないわよ!)」」

 

俺と鈴は福音の行く手を阻むと、同時攻撃で海へと叩き落とす。

それを追撃するように箒が刀を振ると、刃から発せられたエネルギー刃が海上の水を蒸発させ、爆発させる。

 

「・・・・やったの!?」

「いや、センサーに反応がある・・。まだだろうな」

 

その場の全員が浮上してくるであろう福音に対して警戒したとき――――

 

―――――海中のエネルギー反応増大! 二つ目の敵性IS感知!

 

二つの警告を瞳が知らせてくるのと同時に、海上の水がズズッと盛り上がると、その中から二機のISが姿を見せる。

方や光輝く銀色の翼を拡げ、まるで天使の様な輝きを見せるIS。

方や鈍く輝く赤色のISで、右手には凶悪な杭を持ったまさに怪物。

 

「――――おやおや。死んだと思っていたんですが、生き延びて居たとは驚きですねぇ・・・」

 

怪物が、ニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。

 

 

「――――先程の戦った蒼髪のお嬢さんに一撃貰ってしまったので、その回復のために海中に潜っていたら・・・。なんと傷ついた福音が沈んでくるじゃあありませんか。これには私も驚きましたよクレハくん」

 

姿を表したウェルクは、隣で浮遊する福音を示しながら言う。

 

「状況が一変しました兄さん、福音が第二形態に(セカンドシフト)。」

 

ラウラの報告を絶望的な気分で聞く。

―――最悪だ。

福音ですら手をこまねいてるって言うのにアイツまで相手してる暇ねーぞ?

サラも一人でどこかに行っちまったし、どうするべきか―――――。

 

「――――――安心しなさい柊くん。もう討ったわ」

 

サラの声。

驚いて前を見ると、打鉄のブレードをウェルクの首もとに添えるサラの姿が見てとれた。

サラのやつ・・・・。福音俺たちに丸投げしてこれを狙ってやがったな!?

 

「・・・一体何をしているのですかサラ。兄に対する行動とは思えませんね」

「誰があなたの妹なものですか。生憎夢からは覚めているのよ」

「ほぅ・・・・ではその胸のことも思い出しているようですね?」

「ハッキリと覚えているわよ。この刀で首を取られたくなければ直ぐ様「明日を奪う者(サニー・ラバー)」を返しなさい」

 

サラがウェルクに刃を突きつけながら言う。

ウェルクも死にたくはないのか、福音を動かそうとも、自身が動こうともしない。

 

「――――ああ、あのゴミにならもう用はありませんよ。特殊能力のIS剥離も既に模倣(コピー)ししまいましたし。ただ――――いつまで人間ごときが私に刃を向けているつもりですか?」

「なっ――――――!?」

 

瞬間、ウェルクのパイルバンカ―『尖刄』がサラの腹部を穿ち、そのまま吹き飛ばす。

 

 

「―――さぁて! 始めましょうか皆さん! 「超界者(イクシード)」と人間による戦争の前哨戦を!!」

 

 

ウェルクはそう言って大仰に両手を振る。

 

「いきなり現れて一体なんですのッ!?  福音共々撃ち落としてあげましてよ!」

 

しびれを切らしたセシリアが牙龍のボディーに向けて狙撃を行う。

 

「! 待て―――セシリア――――!」

 

嫌な予感がした俺はいそいで制止するも間に合わず、スターダストシューターの銃口からビームが迸る。

大気減衰を無効化しつつ飛翔するビームは牙龍のシールドに阻まれず、本体に当たる。

その瞬間、

 

「牙龍、単一仕様能力発動。―――――『革命者(リベレーター)』」

 

ウェルクがワンオフアビリティーを使用した瞬間。

奴を中心に激しい爆風と熱が生まれ、超規模の大爆発が怒った。

その中心に程近い場所にいた俺たちは、その衝撃をもろに受けた。

瞳とリヴァイヴが各所の異常を伝えるメッセージが視界いっぱいに広がり、その視界すらも爆風で目を開けていられなくなり見えなくなる。

だが、シールドを身体の前面に何重にも張り、なんとかこのエネルギーの奔流をやり過ごす。

こ、これはただの爆発じゃない、エネルギーが吸いとられていく・・・・!

爆風はまだ収まらない。エネルギー残量が残り半分を切り、ようやく減少にストップがかかった。

 

「・・・やはりこのISはゲームで使うには強すぎますね。後で廃棄しておきましょう」

 

ゲーム? 戦争? やつの言うことはイチイチ腑に落ちないが、ハッキリとわかる。

このままでは全滅だ・・・!

先の爆発でエネルギーの大部分を失ったのは俺だけじゃないようで、全員が絶対防御によるフィードバックで荒い息をついていた。

 

「さて、クレハくん。貴方は福音に見張らせます。私は彼女から心を頂くとしましょう」

 

福音が音もなく俺の元にやって来て、その翼状の砲口を俺に向けた。

ウェルクはその様子を確認すると、自身を睨み付ける鈴に向かって一歩づつ空中を歩んでいく。

 

「い、一体あたしに何の用よ・・? 生憎イギリス人の知り合いなんて・・・・・くっ。・・・数えるほどしか居ないのだけれど?」

「それは当然ですよ凰 鈴音。貴女の記憶には彼同様に修正が加えられています。・・・まぁ、知る必要の無いことですがね」

 

そう言って右手を天高く掲げるウェルク。

その手に握られたのは俺の斬空を真似した例の銀色の剣だ。

まずい、鈴がやられる。ダメだダメだダメだダメだダメだダメだ!

来い!! 来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い!

答えろ瞬龍!

力だ、力が必要なんだ。誰をも貫き通す刃と、誰をも貫き通せない楯が!

懇願する! 哀願する! たった一度だけの力を!

居るなら答えてくれ瞬龍! 俺は鈴を・・・・鈴を死なせるワケにはいかないんだよ!

 

「・・・・・ん? さっきから妙なことをしようとしてますね・・・・。福音。彼にもう用はありません。なにかせされても面倒ですから、首を落としなさい」

 

がっ!? ふ、福音が首を掴む・・・っ!?

ジリジリと力が込められていき、頭が真っ白になっていく。

け、頸動脈が締め付けられ、頭に血が回らない・・・・・ッ!!

薄れゆく視界の中では、福音が俺に向かって無機質な視線と腕のプラズマブレードを受けているのが分かる。

 

「グ・・・・・・・・・ゥガァッ・・・・!!」

 

いよいよ絞め殺される―――――。

そう思った瞬間、福音の腕の力が抜け、解放される。

・・・・・違う。抜けたんじゃない。腕が切り落とされたんだ・・・!

解放された瞬間、流れ出した血の勢いに一瞬気を失った俺はISを消失。海へと転落する。

 

「・・・・・・・・全く、久しぶりに姿を見せたと思ったら、またもや我々の邪魔ですか・・・・」

 

海から顔を出すと、ウェルクが腕を切り落とした何者かに語りかけていた。

 

 

「―――――それはこっちの台詞だよウェルキン博士。私の可愛い可愛い妹と息子に何してくれちゃってるのかなぁ?」

 

こ、この声。この間延びしたしゃべり方・・・!

 

「・・・・・た、束さん・・・・?」

「ん? そだよくーちゃん! そんでひさしぶり―! 私の愛しき息子よー! きゃぴっ」

 

久しぶりに会った恩人は、いつもと変わらない調子で、いつもと変わらないウサ耳で、いつもと変わらないドレスで、以前と違う呼び方で俺を呼んだ。

 

「さぁて、久しぶりに束さんの本気見せちゃうよー?」

 

そう言って笑う彼女は、愛用の移動式コンソールに手を掛けた―――――。

 

 




読んでくださりありがとうございました!

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