インフィニット・ストラトス~オーバーリミット~   作:龍竜甲

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こんにちは! 暑くなって参りましたね!
私はこれ書くとき、適当なプロット立てて書いてますが、途中で「ツマンネ」となって変えちゃうことがまれにあります。ですから、ちょっとメチャクチャなことが多いのです。


多頭の龍

 

次の日の朝。

キャンプの訓練開始時刻とは程遠い午前4時。

俺とミナトは島の南端。人気の無い海辺にやって来ていた。

眠い。すっごく。

ナターシャからの呼び出しじゃなかったらシカトしてるぞ。ヒトの都合も考慮してほしいね。

 

「・・・で、来てみたはいいが、どこにもいないってなんだよ」

 

澄んだ蒼色をしている海を眺めながら二人でその辺を歩く。

 

「彼女、奔放な性格に感じましたからね・・・」

「お前が言うってことは相当だな・・・」

 

しれっと言ったミナトに突っ込むと、ミナトはつーん。知らんぷりしやがった。」

て言うか、キャンプの早朝訓練。確か5時からだぞ。ゆっくりしてる暇少ないんだけどなぁ・・。

と、思っていると、どこからともなくキーンと言う耳鳴りのような音がし始める。

 

「・・・この音・・・」

 

ミナトも気付いたようで、姿勢を低く身構える。

俺も無意識のうちに胸に手をあて、迫り来る物体に備える。

――――接近。500メートル。超界の瞳、準戦闘モードで起動。

右目が銀色に輝き、周辺の警戒を強める。

――――と。

 

「!? クレハさん後ろッ!」

「―――――!」

 

瞬時にISを右腕に部分展開すると、背後を狙ってきた相手の拳を弾くように回転ぎみに振るう。

 

ガンッ!

 

火花が散り、俺は右腕にかかる遠心力でそのまま反転させられ、敵と相対させられる。

直ぐ様第二撃に備えるべく相手を見ると、目に入ったのは純白の装甲。

 

「えー。今のを止めるかぁ・・。ゴスペルの拳速には自信があったんだけどなぁ」

 

そう言いながら第二撃を放ってくるのはナターシャ・ファイルス。俺たちを呼び出した張本人だ。

ナターシャは未だ展開の終了していない俺の胴体を攻撃しようとノーモーションからの蹴りを放つが、俺は右腕に時穿を召喚し、脚を弾くついでに距離をとる。

その間に展開を終了させると、ナターシャに飛び掛かろうと顔をあげるも、その必要がないことに気が付く。

 

「動かないでください。動けば頭部を破壊します」

 

スチャッとゴスペルの頭部装甲にサイレント・スコールを当てるミナト。その身体は薄く、青い「サイレン・チェイサー」の装甲で覆われている。

 

「・・・いやー。君たち意外とやるものね。接近戦とはいえ、三十秒も掛からず動きを封じられたのは初めてよ」

 

ナターシャは両腕を頭の上に挙げながらそんなことを言う。

 

「ナターシャさん、一体何の用で呼び出したんだ。こんなお遊びをするために呼んだ訳じゃないんだろ?」

「ん。まぁそうね。彼の頼みじゃなきゃこんな朝早くに出歩かないわよ私」

「そんなズボラ宣言は良いから、早くしてくれよ。教官にどやされる」

 

チラチラと視界端の時刻を気にする。

ただでさえ、サムとアツい筋力トレーニングをする事を条件に昨日のスパーリングから解放されてるんだ。

これ以上怒らせたら何が出るか分からんからな。あの教官は。

 

「男なんだからそう焦らないの。うるさいとミナトちゃんにも嫌われるわよ?」

「それについても物凄いどうでも良いから早く進めてくれ」

 

ジロッ。

ミナトが俺を睨み付けた。なんでだよ。

 

「はぁー。鈍いって罪ねぇ・・。まぁいいわ。ミスター。来ていいわよ」

 

ナターシャが岩影にむかって手招きすると、待ちくたびれたようにゆらりと姿を表す人影。

背丈は俺より大きい。頭ひとつぶん位だ。

高身長を白衣で覆っていて、技術者か、医者だと人目でわかった。

だが、驚いたのはその人物の顔。

俺は顔を見て、動けなくなってしまった。

 

「―――――久しぶりだね。柊君」

 

癖っ毛の茶髪に、妹にも遺伝したらしい整った顔。

まさしく二年前に、俺が撃ってしまった彼女の兄。

 

「う、ウェルクさん・・・・?」

 

死んだはずの人間が、そこにはいた。

 

 

そいつの姿を確認した瞬間、俺は流桜を召喚し目の前の男に照準を合わせる。

 

「ちょっ、クレハくん!? 何を―――」

「黙っていてくれナターシャ!」

 

過去のトラウマに縛られている俺は、予想外の人物の登場に激しく動揺する。

 

―――急激な心拍の上昇を確認。Bシステム発動に支障をきたす状態です。深呼吸を推奨します。

 

瞬龍も俺が普通ではないと判断し、Bシステムは発動せずに処置の仕方を表示してくる。

 

「一体、何者だアンタ・・・!? なんでそんな姿をしているっ!」

「なんでって・・・僕の顔を忘れちゃったのかい? ウェルクだよ。僕たち仲良しだったじゃないか」

 

銃を向けられてると言うのに飄々とした態度を崩さない。

ああそうさ。その剛胆なところもウェルクさんの特徴だったさ。

だが!

 

「アンタは二年前に死んだはずだ。千冬さんも死体を確認している! なのにどうして生きている!?」

 

俺の発言に、警戒心を持ったのか、ナターシャやミナトはそれぞれの武器を構えた。

ナターシャは俺を少し信用していないのか、男を護るように。

ミナトは男に警戒心を持ったのか、銃を構えた。

 

「ちょっとクレハくん。どう言うことなのか説明出来る? あなた、とても失礼なこと言ってる自覚ある?」

 

はじめて聞く、ナターシャの怒気を孕んだ声。震え上がりそうになるが、ウェルクさんの姿をした男に対しての警戒を解くことは出来ない。

 

「自覚はある。でも俺の記憶と違ったことが起きてるんだ。納得出来ないのは当然だ!」

 

そうだ。生きているハズがないのだ。

二年前、俺は確かにウェルクさんの胸を穿った。

瞬龍の暴走とはいえ、その時の感覚はまだ残っている。

あの傷では生きていられる訳がないし、現に千冬さんが全ての研究員の死亡を確認している。

なのに、何故だ!

 

「―――生き返ったんだよ。僕は」

「「「!?」」」

 

突然の告白に、その場の全員が目を丸くした。

 

「あの事故のあと、僕の身体はある組織に引き渡されたらしくてね。身体に処置を施された後、また息を吹き返した。心肺停止から蘇生までの最長記録が五時間なら、僕の場合の27日は驚異に値すると自分でも思ってるよ」

 

に、27日後の蘇生!? 聞いたことないぞそんなの!

 

「でも、僕がこうして生きているのは事実だ。事実は事実として捉えるべきだよクレハくん」

 

俺はこうして諭されて、やっと現実を受け入れる準備が整ってきた。

よくよく考えれば、死んでいたと思っていた人間が生きていたんだ。喜ぶべきじゃないか。

だが、なんだ? この胸に引っ掛かるざわめきは?

何かに気付けそうな気がする。そんな気がしてならない。

 

「そうして生き返った僕だけどね。やっぱり公的には死んでる扱いになってたから仕事がなくてね。困ってたところを彼女に技術者として雇われた訳さ」

「そう言うことよ。クレハくん。ウェルキンは腕のいい技術者なんだから重宝してるの。身体もあんまり強くないし、優しくしてあげてね」

 

その雇った本人が確認の意味も込めてか、ホログラフディスプレイに契約書を表示させ、俺に見せてくる。

 

「・・・わかった。取りあえず生きてて良かったよ。ウェルクさん」

 

その契約書を一瞥し、ISを解く。

両手をプラプラさせ、これ以上戦闘をする気にはなれない―――――

 

「そう言えば、瞬龍。使いこなせているのかい? 甲龍はどこにある? 凰 鈴音は―――――」

 

―――――と、思わせておいて、ウェルクさんの発言中に思いっきり部分展開した時穿で切りかかる。

これは賭けだ。当たれば過去を清算でき、外れれば俺は彼を二度手にかけることになる。

だけど、確かめないわけにはいかなかった。

ウェルクさんの身体に入っているもの、その正体を見極める為に!

 

バシィィィィッ!

 

ナターシャの反応も遅れた俺の一閃は、シールドの弾ける音によって失敗に終わったとわかった。

失敗に終わった。つまり・・。

 

「・・・・あーあ。やっぱり昔みたいには行かないね。人を警戒することを思えたのかい? クレハくん」

 

砂塵が舞う中、透明なシールドに護られたウェルクが俺を睨む。

 

「やっぱりか。テメェらのやる処置だからマトモなモノじゃないと思ってたが、人体にエネルギーバリア埋め込むとはな・・・・。双龍!」

「おおっ。その単語を今言うってことは、結構知ってるみたいだね。どこで知ったのかな?」

 

ウェルクはバリアーに阻まれた時穿を片手で払うと、膝についた砂を払う。

 

「生憎だな。その身体の妹さんが色々呟いてくれたぜ」

 

曰く、神。

曰く、ISメーカーの暗部。

 

なるほど。中国の調査局もあてにできるもんだな。

死んだ身体を生き返らせる神に叛く行為に、人体にIS技術を適応させる高次技術。

どちらも、調査結果のまんまだったって訳だ。

 

「ちょっと! どうしたのよ二人とも!?」

 

ここまでのやり取りを傍観していたナターシャが食って掛かってくるが今は相手をしている場合じゃない。

いつの間にか発動していたBシステム。

その警告が、ナターシャの福音に向かっているからだ!

 

「ナターシャ! 今すぐISをコア共々捨てろッ!」

「え? どういう――」

 

その瞬間、外していた装甲が閉じ、頭部のバイザーが怪しく輝く。

福音を調整したのはこの男だ。

双龍が関わっている以上、何かしら埋め込んでいるとは思ったが遅すぎた!

 

「な、なによこれっ!? 勝手に動いて・・・!」

 

福音はフワリと宙に浮くと、そのままホバリングを続ける。

 

「どうですか? ナターシャさん。新時代の幕開けを告げる福音の乗り心地は? バッチリでしょう?」

「ふざけないでッ! コントロールを戻しなさい!」

 

ナターシャさんの激しく抵抗する音が聞こえてくる。

こ、この男ッ!

 

「止めろッ!」

 

瞬龍を展開し、学年別タッグマッチトーナメントで見せた「斬空」で攻撃する。

だが――――

 

「次元の裂け目を利用した斬撃ですか・・・・。こんな所ですかね?」

 

ウェルクは右手に銀色の剣を召喚すると、その場で一振り。

俺の斬空を相殺した!

 

(い、今のは・・・斬空!?)

 

ウェルクの放った技に驚愕する。

先の発言から察するに、元々同じ技を持っていたようには思えない。それどころかおそらく武器も違うはずだ。

だが、ウェルクはコピーして見せた。俺の特殊武装の能力を。

 

「――――男はISを扱えない。いままでそう言われてきましたね。確かに事実です。僕たち男はISを扱えません。これは元より、彼女達の力ですから」

 

そう言うウェルクさんの身体が、どんどん変化していく。

肌を突き破るように、深紅の装甲が生み出され、彼の身体を覆っていく。

まるで身体自体が装甲へと変化しているようだ・・・!

 

「だが、今はもう違う。技術は進歩し、篠ノ之束にも劣らない技術者が生まれつつある。

このISは彼女が作った試作品・・・。行きなさい福音。甲龍を奪い。彼女の心を奪いなさい。彼の心臓は私が取りましょう。――――牙龍」

 

ウェルクの命を受け、福音は西の方角へと飛翔する。その先にあるのは恐らく日本。

IS学園の一年生が臨海学校の場所としている方向だ。

 

「ミナト! ナターシャを追え! 俺はこいつを相手する!」

「分かりました。ですが、その男は・・・・!」

 

わかってる、ミナト。目の前のウェルクから放たれる殺気は普通じゃない。

だから普通の俺には倒せるはずがない相手だ。

だが、こいつの狙いは俺と鈴だ。

ここでこいつを足止めするってことは、間接的に鈴を助けることになるだろ?

パートナーとしては、やっぱり相方には安全な所にいてほしいのさ。

 

(それに、こいつはサラのことも騙してるみたいだしな)

 

サラは昨日、「あの人が戻ってきた」と言っていた。

あの人、と言うのは間違いなくウェルクさんの事だったのだろう。

だが、今ウェルクさんの身体に入っているのはウェルクさんであってウェルクさんじゃない。

俺の攻撃で確かにあの時ウェルクさんは死んだのだ。

そうでなければ、サラの言っていた強制されて研究させられていた、という昔の優しい性格と今の力に狂った性格とは、全く合わない。

――――ウェルクさんではない何者かが、ウェルクさんの記憶を読み取り、演じている。

俺はそう思った。

だから、サラの為にも、こいつはここで倒す必要がある。

例え、そのせいで再び兄殺しと呼ばれようとも・・・な。

 

「クレハくん。私たちは二年待ちました。双龍にはあなた達の二対の龍が必要です。置いて死になさいッ!」

 

ウェルクさん。あんたの今の顔、鏡で見せてやりたいぜ。

強大な力に抗えずにいる・・・・・・。

 

―――――昔の俺にそっくりな顔だよ。

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございました!

ウェルクのISは・・・まぁ、今度考えます。

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