インフィニット・ストラトス~オーバーリミット~   作:龍竜甲

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こんばっぱー。
鼻水だらだらでこれ書いてます。死にます。ヤバイです。

前回ぶんと今回ぶんに登場する例の二人はフィクションであり、現実の人物、二次元の人物または組織には一切関係ありません


蒼い海、そして瞳 2

「あんたたちが、俺たちのサポートチーム・・・?」

 

例の二人に連れられて、俺とミナトは宿舎裏の木陰に移動していた。

海風が吹くそこは普段から密談に使われているようで、話が立ち聞きしにくいように木々や岩が配置されていた。

 

「そうだ。俺は日本国安全保障局の指示を受けた市ヶ谷にある事務所から指示を受けてここにいる。ただ、チームっていっても俺はマキナの監督係だがな」

 

教官(そう呼べと命令された)はその辺の石に腰かけて言う。

因みに荒事に対処する係のマキナ副教官殿は「飽きた」の一言と共にアイス屋へと駆けていってしまった。

 

「市ヶ谷、って言ったな教官。ってことは赤坂や霞が関ともパイプがあるはずだ。自衛隊関係者か」

「察しが良いな柊訓練兵。だがハズレだ。俺とマキナの所属はもっと機密性の高い組織なんでな、洗いざらい説明してやるわけにもいかないんだ。だけど、お前のことは知ってるぞIS学園二年、柊クレハ。同じく二年、渚湊」

「・・・・・・・」

 

フルネームで呼ばれたミナトが教官を警戒する。

その反応、同意するぜミナト。

俺のことすら知っているってことは国連のIS委員会との繋がりがない訳じゃなさそうだ。

委員会は双龍のことをリークしてるだろうし、安全保障局もワザワザ軍人っぽいのを送り込んでくるってことは何時後ろから撃たれてもおかしくない。気をつけて話を進める必要があるな。

 

「ってことでな、俺たちの受けた指令は2つ」

 

教官は俺たちの反応をひとしきり楽しむような表情を見せると、指を二本立てた。

 

「一つ、監視任務にあたる作戦要員を基地内で動き回れるように取り計らうこと。これについてはもう手を打ってある。こことはちょっとしたコネがあってな。お前たち二人は士官のメシをかっぱらったってことにして他の訓練兵とは別行動を取らせることにしてある。好きに探ってもいいが、あまり目立ったことはするなよ。そして二つ目、件の軍用ISの破壊だ」

 

教官は本題に入ったように語気を強めた。

 

「日本のお偉いさんは今回の実験をかなり重視しているようだ。アメリカには存在の明かされない特殊部隊ネームレスの噂も有るしな。不安ごとは潰しておきたいらしい。お前たちがISのスペックを測り終えたら事故を装って破壊するように俺は指令を受けた」

「壊す? どうやってだ?」

「もちろん手段はある。こいつだ」

 

そう言って取り出したのは小さな世代遅れの大容量記憶媒体(USB)だった。

 

「なんだそれ? なんのデータだ?」

 

気になって聞くと、サイレンチェイサーの解析用アプリを走らせたのかミナトが答えた。

 

「・・・ISを自己崩壊に追い込む特殊プログラムです。かなり完成度が高いですね、どこの製作ですか」

「それは俺にも分からないんだ。上は禁則事項だといって教えはしなかった。JBも―――って元上司も知らないと言いやがった。上層部のくせに使えんもっさりだ」

「どうでもいいことは良いので、要するにそれをISに打ち込むと勝手に壊れるって認識で良いようですね」

 

ミナトが強引に話を締めると、ミナトは俺を見上げて言った。

 

「それではクレハさん。例のISを見に行ってみますか」

 

 

例のIS、正式名称「銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)」があるのはこの基地の第一格納庫らしく、俺たちは教官と共にそこに向かっていた。

格納庫内に入ると、慌ただしく白衣を着た研究者とおぼしき一団が回りを走り回っている。

勝手に入ってきた俺たちを咎めようとした軍人は、教官の姿を見ると急に態度を変え、敬礼し去っていってしまった。なにもんなんだよアンタ。

 

「・・・・あれが福音ですか」

 

ミナトの声に釣られて前を見ると、固定器具に支えられて、純白のISが一機だけ佇んでいた。

遠目だからまだ詳細には分からんが、どうやら全身装甲っぽいな。頭部の両側から足元にまで固定ユニットが設置されており、パッと見は第二世代相当だが、データ上は歴とした第三世代型。

超界の瞳によれば広域殲滅戦に特化した特殊射撃型で、機動力も予想スペックでは白式や、通常状態の瞬龍を余裕で上回っている。Bシステムの最大出力は知らんが、もし戦闘になんかになったら骨がおれそうなモンスター級兵器だぞこれ。

 

福音のそばまでいくと、どうやらGPSからマキナの反応が消えたらしく教官は大慌てで格納庫を出ていってしまった。

え、どうすんのこれから・・・?

 

「―――あなたたち、何? 見学の子達、って訳じゃないわよね?」

 

やべっ、目ェ付けられた!?

そう焦って声のした方にバッと振り向くと、そこには一人の女性。

ネームプレートから確認すると、彼女の名前はナターシャ・ファイルス。金髪碧眼とまさに外人女性といった風体の人だ。

まぁ、今の日本では黒髪黒眼の方が珍しいって言えますけどね。時代が進んで外国の血が混ざった日本人が増えて様々な色を持つ人が増えてきたのだ。

まぁ、それはどうでもいいとして、問題はこれからのこと。教官のいない今、どうやってごまかせばいいんだ・・・?

 

「訓練兵さん? アジア人とは珍しいわね。この子が気になった?」

 

彼女は福音のそばにいくと、その装甲をペタッと撫でる。

 

「えっと、もしかして操縦者か?」

「そうよ。名前はナターシャ。友人はナーシャって呼ぶコもいるけど、どうする?」

「じゃ、ナターシャさん。さっきISをこの子、って呼んだけど、なにか思い入れがあるのか?」

「ええ、その通りよ。この子は私の大切な友人なの。命だって助けて貰ったんだから」

 

そう言うナターシャさんの表情は過去を懐かしむような表情だ。

するとその時、格納庫内がにわかに慌ただしく成ってきた。

どうやら米軍の輸送機がこの格納庫に一時的に格納されるようだ。

 

「騒がしくなってきたわね・・・」

 

ナターシャさんは唇を尖らせると、改めて俺たちを見てニヤッと笑った。

 

「と・こ・ろ・で、あなたたち二人から微弱なIS反応が有るんだけど、どういう理由?」

 

腰に手を当てて聞いてきたナターシャさんの顔には、可視設定されたホログラムウィンドウが表示されていた。

 

 

ところ変わって基地内部のカフェテリア。

昼時と言うことがあっても、俺は半ば連行される形で席につかされた。

ミナトはというと、

 

「はぁ~っカワイイーっ! 何この子!? 何しても無表情なくせに確りと顔赤くなってるわよ。美少女って得よね~!」

 

いや、貴女も美人だから。なんて言えるはずもなく、目の前で頬擦りされるミナトを眺めながらコーヒーを飲む。

スリスリスリーっと頬が擦りきれるんじゃないかってスピードで柔肌を堪能するナターシャさんは凄く楽しそうだ。

なんかもう、俺たちのことなんかどうでもよくなったんじゃね?

 

「それにしても男性操縦者がもう一人居たとはねー。お姉さんビックリ。あ、ミナトちゃん、あーん」

「私は子供ですか(モグモグ)」

「食ってるくせに何いってんだお前」

 

見事に餌付けされたミナトをしれーっと見る。

ミナトって食事回数は少ないけど、結構食うよな。前にもかなり奢らされた記憶がある。

 

「で、あの子の調査だっけ? 日本政府もそんなまどろっこしいことするんじゃなくてちゃんと申請してくれれば公表したのに。こーんなカワイイコに潜入調査だなんて許せないわね!」

 

俺は目的を聞かれた際に、全てをナターシャさんに話している。だってIS持ってること知られたらもう隠せないだろ。

だが、なぜか教官の二つ目の指令は知らせることは出来なかった。

 

「それじゃあ教えてくれるんですか? 福音について」

「流石に無許可で教えるってのは私でもできない相談ね。あ、だからって盗み出すなんて止めてよ? バレたら国際問題発展になっちゃう」

 

それじゃあどうしろって言うんだよ。

こちとらバレないように潜入したのに、初日で操縦者本人にバレるとかあり得んだろ。福音に探知能力が有ることぐらい調べとけや。

 

「だから、直接教えることは出来ないけど、間接的には教えてあげる」

「間接的に? どういうことだよ」

「察しが悪いわねクレハくん。ISの能力を測るには実戦で戦ってみるのが一番よ。だから―――」

「―――実際に戦って稼働データを持っていけってことですか?」

correct!(正解)

 

ナターシャさんの提案はこうだ。

稼働実験本番は明後日ということになってるが、ナターシャさんは個人的に明日の夜に福音に乗り込むつもりらしく、そこで訓練ということで俺たちの相手をしてくれるらしい。

もちろん相手はミナトじゃなく俺。女の子を殴るのは趣味じゃないらしい。

って、なにが女の子を殴るのは趣味じゃないだよ。

ナターシャ・ファイルスっていったら第二回モンドグロッソ、キャノンボールファスト部門の優勝者じゃねーか。ヴァルキュリアだぞ。

 

「それじゃあ、明日の夜に。バイバイ」

 

ナターシャさんは手を降りながら、真上から陽が差す外に出ていった。

 

 

その後、訓練場に戻ってみると、サムが暑苦しく筋トレをしていて、誘われたが「休めって言われたんだ。日本人は働き者だが俺は違う」といって断り、興味のあったホノルルの街へと繰り出してみた。

 

当然だが、俺にはホノルルの知識なんか無く、人間ナビゲーションのミナトは宿舎に戻ってしまったので必然的に瞳に頼る事となる。

空港を出て、北西に進むと観光客の溢れる街が見えてきて、俺は舗装された道を歩く足を早めた。

カンカン照りの中町に入ると、観光客向けの土産物店がたくさんある町並みだなと思った。

何となく観察するように歩いていると迷彩服で彷徨く人間が珍しいのかチラチラこちらを見てくる人がいる。

しまった。着替えてくるべきだったかな?

だが、考えても既に後の祭り。ここからワザワザ着替えに戻るとかあり得ん。暑いし。

取り敢えず近くにあった屋台でタピオカの入ったマンゴージュースを購入し、粒々した食感を味わっているとバカみたいにデカイアイスを食ってるヤツを見つけてしまった。

 

「マキナ副教官殿、服に垂れていますよ」

「う?うぉぉっ! 私の一張羅がァ! 貴様っなぜ早く言わない!」

「いや、いう前に気づけよ自分で」

「上官に向かってその態度はなんだァ!」

 

やば、ノリで絡んでみたけど暑くてキツいなこの会話。

 

「あー、やっぱり絡むべきじゃ無かったな。悪い忘れてくれ」

「うきぃぃぃ! そのしゃべり方昔のお兄ちゃんを彷彿とさせてスゴいうざいのよさ!」

 

なんか知らんがキレられた。アイスを持ったままブンブンするマキナにどう対応しようか迷って、ストローをガジガジやっていると不意にカップを持つ手の手首を掴まれる。

一体なんだとイラつきながらそっちを見やると、目に飛び込んできたのは赤茶色の長いストレートに白い肌。

 

 

「ちょっと貴方。女性にたいしてその言葉遣いは省みる必要が有るんじゃないかしら?」

 

 

この高圧的な口調に声。それにこの手首を掴んでいる手にも見覚えがある。

間違いないな。

どうやら迷彩服を着ている人間がIS学園関係者な訳がないと思っていたらしいが、その先入観は捨てるべきだぜ―――――――――サラ。

 

「よう、久しぶりだな。サラ・ウェルキン」

「―――え」

 

そこにいたのは5月に学園で俺を殺そうとした、同級生サラ・ウェルキン本人だった。

 

 




やったねサラちゃん!再登場!
実はサラちゃん気に入ってるキャラなんです。

読んでくださりありがとうございました!

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