インフィニット・ストラトス~オーバーリミット~   作:龍竜甲

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こんばんは。よろしくお願いします。キャラ紹介します!
メインは今回の章で登場するキャラでいこうと思います。

柊 暮刃 二年生
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IS瞬龍の操縦者。機体に秘められた特殊システムBシステムを駆使して戦う。
Bシステムとは発動すると判断力、精神力その他諸々のステータスが上昇し、一時的に自信満々と言ったトリップ状態になる。言葉遣いは更に荒くなる。
暴走事故で鈴の父親を殺害した記憶を持つ。
フッツーの日本人。

凰 鈴音 一年生
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IS甲龍の操縦者。中国人で中国代表候補生。
父親の消息に関わった双龍という秘密結社を追って日本にやって来る。
好きなものは中華とパンダ。
イマイチ自分の気持ちに整理がついていない節がある。

サラ・ウェルキン 二年生
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ISサニー・ラバーの操縦者。五月に兄を殺したクレハを討とうと戦闘を挑むが鈴とクレハのタッグにより撃破され、学園を一時離れることに。
鈴の追う双龍と少なからず関係がある。

ウェルク・ウェルキン 研究者
イギリスの中でも指折りのIS技術者兼、研究者。
二年前の双龍のBシステム稼働実験により死亡とされている。サラウェルキンとは兄妹の関係にある。壊れかけていたクレハに心を教えた人物。

大倭 ヒミコ 学園教師
【挿絵表示】

IS学園の体育兼、数学教師。性格は大雑把だが、彼女の出す数学問題は難解で有名。
クレハや雨、フォルテの所属するクラスの担当。
教師になる以前は軍事関連にいた。名前で呼ばれることを嫌う。

渚 湊 二年生
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ISサイレン・チェイサーの操縦者。一応日本の代表候補生だが、第三アリーナの地下から出てこない引きこもり。たまに食事のために出てくる。食事回数が少ない。

その他の人物。
ファース党
オルコッ党
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シャルロッ党
【挿絵表示】

・・・ラウラ党?
【挿絵表示】

は、原作とあまり違いがないため、割愛。

織斑一夏 一年生
【挿絵表示】

ハーレムする気配がないので空気気味の原作主人公。

以上。また展開によっては追加するかもです。

では本編どうぞ。




三巻
目指すは南の島!


前回に引き続き今回。

俺は三年のお姉さま方に追われていた。

 

「待ちなさい柊!」

「だったらその手の棍棒を捨ててから言えッ」

 

現在位置、IS学園学生寮三階東棟。

俺、柊クレハは覗きの冤罪から逃れるために全力で逃げていた。

追跡者は全部で15人ほど。決して少ないとは言えない。

だが、こちらにも逃げ切る手が無ければ無謀な逃亡劇に身を投げたりはしない。

俺は利き目である右目で、意識して周囲を把握する。

後方から五人。得物はそれぞれ木製バット(棍棒)柄長モップ(槍、兼、薙刀)だ。

残りの十人は方々に散って俺の事を待ち伏せしてるんだろうが、その潜伏場所はバレバレだ。

まず、どうやら五人一組で行動しているらしく、背後にいる組の他に、玄関先に一組。屋上に一組と言った配置だ。

どうやらあらゆる意味で経験豊富な三年生は俺が寮から脱出すると踏んでいるらしい。

しかし、だ。

現在俺のIS瞬龍はコアから装甲を剥ぎ取って修理中なので展開は愚か、起動すらもできない状態にある。

つまりハイパーセンサーは使用不可の状態にあるわけだが、なぜ俺に相手の配置場所がわかるかというと。

あったのだ。俺にも。

 

―――――推奨 左折――――

 

視界の右端に瞬龍の表示するものと同じような文章が矢印と共に表示され、その矢印は次の曲がり角を左に曲がれと言っている。

 

超界の瞳(ヴォーダンオージェ)

 

人間の体に疑似ハイパーセンサーを埋め込んだ瞳の事を指して使う用語である。

昼間の件で晴れて俺の妹というポジについたラウラ・ボーデヴィッヒが同じ瞳を持っていて、高速戦闘下での判断や状況の分析力に大きなアドバンテージを生み出すちょっと危険だが便利な技術、だと俺は教えられた。

ラウラは拒絶反応からかオンオフが効かなくなってるらしいが、俺はそんなことはなく、覚醒した瞬間からその機能を十全に使いこなせているカンジだ。

今まで発動しなかった理由は分からんが、ラウラが不完全ながらもVTシステムを発動させたことが関係あるのかもな。共鳴とか。

俺は脱衣所の鏡で、自分の右目が銀色に輝いていることに気づき、直ぐ様逃亡に踏み切ったというワケだ。あのまま捕まってたら何されるか分かったもんじゃないしな。

 

左に曲がると開け放たれたままの開放窓があり、そこから飛び出せと眼は言っている。

ハイパーセンサーと違ってイチイチ命令してくるのがちょっと腹立つ。

窓のサッシに足をかけ、三階下のアスファルトを確認するとそのまま飛び降りる。

上から女子の叫び声が聞こえるぜ。

 

(――――無衝ッ!)

 

俺は着地する瞬間に全身の関節を使い、衝撃を和らげ、打ち消す。小学生とかが、高いとこから飛び降りるときに痛みを和らげるアレの高難易度版ってとこだな。前々から瞬龍にもお勧めはされていたが、今回初めて使ったぜ。マジで痛くないのな。

痛みが無いのなら直ぐに動き出せる。と言うわけで俺は年上の女性たちの怒りのこもった文句を聞き流しながら、自室に戻る算段を立てるのであった。

 

 

三階の自室を外から眺めて、どうしたもんかと頭を悩ませていると、部屋の窓が開けられているのに気がついた。

そして・・・・なんだか、甘酸っぱいような中華風の・・・とにかく旨そうな匂いが漂ってきている。

俺はまさかと思いつつ、寮のデザイン上の窪みに手をかけ足をかけ、よじ登っていく。なんで部屋に戻るのにこんな苦労しなくちゃいけないんだよ・・・。

やっとの思いでステンレスで出来た窓枠に手が届き、顔をエイヤッと出すと。

 

「お帰り。やっぱり覗き魔ってあんたのことだったワケねクレハ」

 

鈴が、ベッドに寝そべって俺を待っていた。

 

「違う。誰が悪いかで言えば、間違いなく一夏だ」

「なんでアイツが関係あるのよ?」

 

ここでちょろっとデュノアと混浴してたことをバラしてやろうかと思ったが、鈴はデュノアが女であるとは知らない。信憑性が無いので一蹴されるだろう。

 

「まぁいいや。それよりクレハ。まだ食べてないでしょ。あんたのぶんにはパイナップル入れたあげたから早く食べましょ」

 

見ると、鈴が指し示すテーブルの上には少し冷めたのか微かに湯気を立ち上らせる酢豚と白いご飯が盛り付けてあった。

 

「お前って、見た目に似合わず家庭的なとこあるよな」

「っ、かっ、家庭的!? そう!?」

「ああ、マジもマジ。大マジだ」

 

意外な言葉に驚いたのか、珍しく激しい動揺を鈴が見せたので、俺も少し大袈裟に褒めておく。

鈴は最近、積極的に料理をする。

しかも楽しそうなのだ。

前に一度どうしてそんなに楽しそうなのか聞いてみたが、

『あ、あんたは黙って食べてりゃ良いの! これは・・・・そう! 試食! あんたは試食役よ!』

・・・・・とのこと。

やっぱり一夏に作ってんのかな。

意を決してキスをした身としては中々複雑な気分だぜ。鈴は覚えてないだろうけど。

 

「ふ、ふーん・・・。家庭的、家庭的ねぇ・・・・」

 

鈴がそう呟きながらニヘラニヘラ笑うので俺は見ていられなくなって、手早く制服を脱いで部屋着に着替えると酢豚に箸をつける。

うーん、やっぱりうまい。パイナップルが入って肉の柔らかみが増してると思っていたのだが、以前と変わらない程よい柔らかさだ。鈴の酢豚にパインは関係ないらしい。

って。

 

「鈴。そんなに凝視されたんじゃ食いにくくて仕方ない。お前も食えよ」

「感想は?」

「?」

「感想は?」

 

ん? なんだ? 鈴が少し上機嫌だぞ。

家庭的発言がそんなに嬉しかったのか。

 

「ああ、上手いぞ。やっぱり中華は鈴に限るな」

 

俺がそう言うと鈴はまたニヘラ~っとニヤニヤし始める。

なんだこれ。いつもと違いすぎて調子狂うぞ。ツンはどこいった。

 

飯を食い終わると、風呂に入っていなかった鈴は風呂へいくと言い出したが、残念ながら大浴場は俺の件があってか、三年生が自主的に閉鎖。消毒が行われているという。酷い。

 

そう言うわけで今日は鈴が部屋のシャワーを使うことになったんだが、如何せん。部屋が狭くて音がよく聞こえてしまう。

テレビをつけてシャワーの音を掻き消そうとしてみたがバラエティー番組が思いの外面白くなく、直ぐに消してしまう。って、消したらダメだろ。

あー、なんだこれ。どうした俺。

鈴は既にBシステムのトリガーとしてコアを登録されている。突発的な発動は起こるはずが無いのに、なんでこんな緊張してるんだ。ただ珍しく鈴が部屋のシャワーを使ってるだけじゃないか。

そうだ。きっと疲れているんだ。思い起こせば俺は今日の夕方まで、戦闘のショックで四肢に力が入らない状態だったんだ。そこから復帰して直ぐに激しい逃亡劇だ。疲れがあるのは仕方ない。

学年別タッグマッチトーナメントは一回戦はすべてやるらしいが、どのみち俺は瞬龍が動かせる状態に無いので、出ることは出来ない。

休もう。泥のように。

 

俺は鈴に一言掛けてから布団に潜り込む。返事は聞こえなかったが、返ってくるまで声をかけ続けるのもめんどいので一度だけにする。

明日から二日で全ての試合を消化する予定だ。丸々二日、回復に当ててやろう。

そんなことを考えながら俺は眠りにつくのを待つ。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・お、シャワーの音が止まった。

にしても全然眠れないな俺。

シャワー室から出た鈴は、モゾモゾと、ぱ、パジャマを来ている・・・!?

衣擦れの音がやんだかと思うと、続いて、パチン。

スイッチを切る音がして部屋の灯りが消される。

スイッチを消したら鈴はそのまま、とこ、とこ、と危なっかしい足取りでベッドに向かっている。

どうやらこのまま眠るみたいだ。夜更かしする鈴にしては珍しい就寝時間だな。

俺もやっと眠気が来たところだ。このまま寝てしまおう。

おやすみ。鈴。

 

パチチッ!

 

うっ、なんだ!? 

顔面がなにか硬い糸の束のようなもので叩かれたと思ったら、続いて・・・・どっしーんと何か少し軽いくらいの質量を持った物体が俺の上に多い被さった。

なんだこの糸。えらい良い匂いがするんだが・・・。

まさかとは思うが、フォルテ・・・はないな。昼間ベッドの上から転げ落としたし。

じゃあ一体何なんだ。

俺はその束を何本か纏めて掴み、くいくいと引っ張ってやる。

半分寝てたから視界が戻るまで少しかかるかもしれんが、耳が。

 

「・・・・んにゅ・・・くふ・・・」

 

という声を腹の上の物体が身動ぎすると共に拾い上げた。

・・・・いや、実はもう大体予測ついてるんですがね。認めるのがちょっと怖かった訳ですよ。

さっき俺の顔を叩いたのは彼女の黒髪。腹の上に有るのは身体を丸めた彼女自身。

その彼女とは・・・。

 

「寝ぼけてんのかよ。鈴・・・・・」

 

上半身をおこし、闇になれた眼で顔を確認した俺は静かに嘆息した。

まぁ、それも仕方ないか。

ダメージレベルCの状態であそこまでの戦いを繰り広げたんだ。

表には出さなくとも鈴自身はかなりの疲労を感じていたのだろう。

シャワーが長くて、返事がなかったのも既にシャワーを浴びながら意識が朦朧としていたからに違いない。

丸で猫みたいに丸くなって眠る鈴の前髪を払ってやると、くすぐったそうに声を漏らす。

・・・・髪の毛引っ張って悪かったな。

俺は鈴を抱き抱えると隣のベッドに運ぶ。

あどけない表情で眠っている鈴は拍子抜けするほど軽く、そして可愛らしかった。

だからだろうか。いつもはドキドキするようなことが多い鈴相手でも、平然と触れることができる。抱えることができる。

まるで二年前のあの時に戻ったような感覚がして、俺は安心したのだ。

 

もうじき七月だ。暑いと思うので布団はかけず、タオルケットを掛けておいてやる。

共に双龍を追うパートナー。凰 鈴音。

俺は彼女と共にどこまで行けるのか。

考えがまとまらないまま、俺の思考は眠りの底へ沈んでいった。

 

 

七月初旬と言えば、どこの学校でも忌み嫌われるアレがある。

そう、期末試験だ。

一年生は試験が終わると臨海学校が控えており、全体的にウキウキとした雰囲気で試験が行われた。

しかし、IS学園の臨海学校とはただの外泊訓練じゃない。

ISの訓練をアリーナでなく海上という非限定空間で行うことを目的とした、レッキとした課外授業なのだ。

しかし、やはり去年まで女子高だったせいか、一日目は完全フリーとして自由時間が設けられている。

海に面した旅館に止まるので、泳ぐなり遊ぶなり好きにして良いのだ。

去年の俺は出発直前に女装がバレ、千冬さんの気遣いにより欠席が認められていたが、今思うと行けば良かったな。臨海学校。

ていうか、体育の着替えとかちゃんと別室でやって、あられもない姿は微塵も見ていないのにあそこまで滅多うちにしなくても良いだろ。水着姿のひとつや二つ、見ておかないと割りに合わない気がしてきたぞ。

 

そして、そんな後悔と共に期末試験が終わった三日後。

俺は久しぶり轡木用務員に呼び出しを受けていた。

 

「こうやって話すのは久しぶりですね柊くん」

「そう、なりますね・・・・」

 

放課後、西日が差し込む用務員室で俺たちは向かい合って座っていた。

だが、今回は二人だけじゃない。

 

「・・・・」

 

轡木用務員の背後には何もしゃべらないが、大倭先生が控えているのだ。

珍しい組み合わせもあったもんだと思ったが、呼び出された理由が分からないので先を促す。

 

「君を呼び出したのは他でも有りません。君がこの学園に居るためにこなしてもらう任務の話を持ってきたのです」

 

きた。来たぞ任務が。

四月の始めに警備の仕事をさせられて以来の仕事だ。

俺の存在は外部から秘匿されていて、それ故に学園で俺にさける予算もかなり少ない。不自然な金の動きはめざといやつにはすぐわかるからな。

だから俺は、自分の学費、そして生活費は自分で稼いでいる。学費だっていくら国立でもそれなりにかかるし、食堂だって定期的に食費を出して食っている。意外と苦学生なのだ俺は。

 

「今回の仕事はISを出来るだけ使わないで進めてほしい仕事です。出来れば、ただの一般人、まぁ場合にあわせて身分は偽装ということでお願いします」

 

ってことはどこかの組織に潜入でもするのか?

 

「それでは、これは極秘任務という訳ではないので簡単な内容をここで説明しておきます。受けるのであれば資料を送るので改めて確認しておいてくださいね」

 

と前置きした轡木用務員は、割りと気安い雰囲気で喋り出した。

しかし、やっぱりこの有無を言わせない一方的なしゃべり方。そこが見えなくてそら恐ろしいぞ。

 

「今回の仕事はあるIS実験の監視任務です。イスラエルとアメリカが共同開発している第三世代の噂は聞いたことがありますか?」

「はい、一応あります」

「よろしい。そう言うわけである組織から秘密裏にその実験を監視してほしいと依頼が来たのです。もちろん学園が出せる腕利きでという条件は有りましたが」

「待ってください。監視ってことは良いんですが、俺が出ても大丈夫なんですか?」

「はい、先方は経過報告だけ回してくれれば良いという事なので、調査する人物の顔は出さなくても良いといってくれました。学生の身分に潜入なんてやらせるんですから当然だと私は思いますがね。・・・・それで、どうですか? やるか、やらないか」

 

内容はIS実験の監視および報告といった簡単なもの。一年生でも出来そうだ。

だが、監視するのはISの実験。

過去に俺が経験した惨劇も実験中の事だったため、俺は少し奴等の情報が掴めるのではないかと考えた。

 

「はい、やります。二年柊クレハ。任務を受注します」

「よくいってくれました」

 

轡木用務員は朗らかに微笑んだが、その糸目には俺がうつっているのかすら定かではない。

 

「それでは大倭先生。後は頼みます」

「分かりました。轡木用務員。お任せください」

 

上司っぽく大倭先生に後を一任した轡木用務員は話は終わりだとばかりに新聞を広げる。

 

「ほら、柊くん出るよ」

「えっ、ちょっ大倭先生?」

 

足早に近づいてきた大倭先生は俺の腕をひっつかみ、用務員室からつれて出す。

 

「ふぅ、やっぱりあの人の前だと肩凝るなぁ・・・・柊くんもんでー」

「イヤですよそんなの。・・・・・で、仕事の場所は?」

 

話の流れから見て、目の前で肩をグルグル回す大倭先生が俺のサポーターに付くんだろうが、場所を伝えられなかったので聞いてみると。

 

「ん? ハワイ」

 

やったぞ俺。臨海学校よりグレード高いじゃないか。

 

なーんて喜べる展開があるはずがないことは、今の俺でも薄々予想は付いていたのだった・・・。

 

 




読んでいただき、ありがとうございました!

不明な点が有りましたら言ってください。

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