インフィニット・ストラトス~オーバーリミット~   作:龍竜甲

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お久しぶりです。
久々の投稿なので頑張っていきたいと思います。


千冬の本心

翌日の放課後、俺は千冬さんに呼び出されて地下のIS格納庫へと向かった。

今日はラウラ、鈴、セシリアによる模擬戦が行われるので急いでアリーナに向かいたいところだが、千冬さんの呼び出しをブッチすると出席簿が何処からともなく飛来する可能性があるので大人しく従うことにした。

・・・・いくらなんでも代表候補生二人にラウラが勝つとは思えんが、そうなるとラウラが心配なので早めに用事は切り上げてもらおう。

 

そんなことを考えながら、秘密基地然とした地下通路を薄暗い明かりの中歩く。ここら辺は湊の住んでる第三アリーナにちょっと似てるな。

数ある部屋の中に一つだけ使用中のランプが灯った部屋があるので、事前に渡された認証パスをかざしてロックを解除する。

プシュッという音と共に空気(エアー)が抜け、スライドドアが開く。

 

「来たか、柊」

「二分の遅刻ですよ柊君」

 

そこにいたのは千冬さんと・・・・山田先生?

室内は通路より更に暗く、少ない明かりと山田先生の操作するディスプレイの明かりが僅かな光源だ。

そしてその数少ない明かりは、台に寝かされたあるものに当てられていて、それらを千冬さんは険しい顔で見つめている。

 

「・・・無人機の残骸・・・ですか」

「ああそうだ。お前が四月に破壊した一機と、織斑が破壊した一機。どちらもコアが破壊されていてマトモな検査ができん。全くバカ者どもが・・・・・」

 

千冬さんの悪態を余所に、俺は山田先生のディスプレイを見る。

 

「え、えーと、コアは破壊されていましたが、僅かながらに得た情報もありました。一つは前々から提唱されていた特殊機構『独立起動(スタンドアローン)』と、『独立駆動(オートパイロット)』の存在の確認。そしてもう一つが・・・・これです」

 

先生は画面をそのしなやかな指でフリップし、独立起動装置、独立駆動装置の次の画像を目の前の大きなホログラフィーディスプレイに表示させた。

映っているのは幾重にも重ねられた幾何学的な模様。・・・・なんだっけコレ?

 

「これは・・・あれですか・・・。えっとあれですあれ。ふ、ふ、ふ、ふらフラグメントマップ!」

 

なんとか記憶を呼び覚まし答えると山田先生からは拍手を、千冬さんからは冷ややかな視線を頂いた。精進します。

 

「フラグメントマップというのはISにとっての遺伝子のようなモノです。ISは個々の能力によってバラバラに進化していくのでそれぞれ違う構造のフラグメントマップが構成されます。なので、同じものは二つと無いのが特徴なんです。ここまでいいですか柊君?」

「え、はい良いですが・・・コレがなにか? なんで俺は呼び出されたんですか山田先生?」

「え、いや分かりませんよ・・・織村先生は私にも教えてくれなかったので・・・・」

 

そういって指をツンツンさせる山田摩耶、年齢二十数歳。そんなのだから女子高生に囲まれても違和感ないんだよあんたは。

 

そろそろ呼び出された理由を聞こうと千冬さんの方を見る。

すると千冬さんは・・・

 

「山田先生、しばらく席を立って貰っても良いですか? 少々込み入った話があるので」

「え? は、はいわかりましたぁ・・・・」

 

山田先生退場。

プシュッという音を確認すると千冬さんは山田先生が座っていた席に腰を下ろした。

 

「・・・・この二機のフラグメントマップ、どこかで見たことがあると思うんだが、柊。気付くことは無いか」

「いや、俺は整備科の生徒では無いのでマップの読み方は分からないんですけど・・・なんとなく嫌な予感はしますね」

 

そう言うと千冬さんは三回手を叩いた。正解、と言うことだろう。

 

「私も胸騒ぎがしてな、過去に受け取ったマップデータから一致しているもの、または似ているものを探してみたんだ。・・・・・ああもちろん山田先生の協力を得てだぞ。私もマップはさっぱりわからないのでな」

 

千冬さんも読めないんだマップ・・・・。

と、流石にここまで経緯を説明されたら俺にも薄々言いたいことが分かってくるので、ここからが本題だ、という千冬さんの表情はすぐに読み取れた。

 

「柊、この二機のマップは多少の違いはあるが、瞬龍(お前)のフラグメントマップの根幹にあるものと同じ形をしているそうだ。そこから導き出される事は――――」

 

「――――やはり、双龍が絡んでいる、ということですね」

 

この予想は前から立っていたが、今回のことで確信に変わったな。

無人のISが攻めてきて、そのISの製造元は俺の使ってる双龍製のIS、瞬龍と同じところ。しかも最初の一機は間違いなく瞬龍か甲龍のどちらかを狙っていた。

決定的だ。

 

二年前に発足し、姿を消した秘密結社、双龍の活動が活発化している。

 

 

「最近お前は(ファン)と共に探っているようだがどうだ、何か出たか」

 

そう聞かれるが、最近あったサラ・ウェルキンについての一連の事件は既に報告しているので何も言うことがない。

強いて言えばラウラのVTシステムが気になるが、確証のとれていない報告をするのは部隊の混乱を招くのでまだしないでおこう。

 

「いいえ、ありません」

「そうか・・・・・」

 

そう返事をした千冬さんは、山田先生の飲んでいたコーヒー牛乳のパックを手にとってチューチュー吸い始めた。

甘いの・・・・飲むんですね。

ていうか飲んでる事実を山田先生に知らせたらあの人気絶するぞ。千冬さんLOVE勢だし。

 

「・・・・私はな、二年前に柊、お前の心臓を撃った」

「・・・・・また、懐かしい話をしますね」

 

今でも鮮明に思い出せる。

二年前、千冬さんは瞬龍の制御に失敗して暴走させた俺を殺す、という方法で事態の収束を図った。

言うことを聞かない瞬龍に振り回される俺に狙いを定めた千冬さん。

その顔は覚悟を決めた人のものだった。

 

今思えば、俺はあの時に死んでおくべきだったのかもな。

 

「私はISによって失いかけた一夏の命をISで救った・・・・・。ッだがあの時は何もできなかったッ! お前を殺す他に方法が見つけられなかったッ! ・・・だが私は覚悟を決めていたよ。ISで人を助け、ISによって命を奪うことにたいしてな。それを自覚した瞬間、私はISに乗ることを辞めた。都合のいい道具は時として都合の悪い道具に様変わりする」

 

その通りだ。千冬さん。だから俺はISのことを・・・・。

 

「柊、お前はこう言うのを何て言っていたか? 兵器って呼んでいたな。全くその通りだよ。降りたからこそ分かる。IS(アレ)は紛れもない兵器だ。今はまだいいが、いつアレの弾倉に核弾頭が搭載されるかもわからない。だから正直なところ、お前たちにこれ以上ISの深みに嵌まらないでほしいというのが私の願いだ。ISの闇は深い。学生レベルでスポーツとして楽しむ(・ ・ ・)のがこの平和主義の国に合っているだろう。束と仲が深いお前だ。闇に触れるということがどういうことかも分かるはずだ。だから・・・・これ以上進むのは止めてくれ・・・・・」

「・・・・・・・」

 

千冬さんの本心に、なんの言葉も出てこない。それほど衝撃的だったのだ。

ISによって数々の名声を得てきた織村千冬がISに関わるなと言うなんて・・・・。

確かに、今の状態を維持すれば安全は保たれる。ウチの教員チームの防衛はどこの国よりも堅い。

ISを遊戯として楽しむならこんなに適する場所は他にないだろう。

 

・・・・・だが、鈴の気持ちはどうなる? 何も知らずに生きているセシリアの人生はどうなる?

俺が奪ったものだ。俺が失わせたものだ。

だから、俺がけりを付けるのは当たり前のことなんだ。

死んでお詫びなんてできない。それは更に大きな穴を開けてしまう結果にもなりかねない。

 

―――だから、俺は・・・・

 

ガションッ!

「織村先生ッ! ボーデヴィッヒさんとオルコットさんたちが!」

 

突如入ってきた山田先生に思考を中断させられ、そちらをみると、大慌てで駆けてきたのか肩で息をする山田先生がいた。

だが・・・・、今何と言ったんだ先生は?

 

「第三アリーナで戦闘をしています!」

 

その瞬間、俺は山田先生をすり抜け、部屋を飛び出していた。

その俺に背後から声をかける人物が。

 

「待て柊。ここから地上に上がったのでは時間が掛かりすぎる。」

「じゃあ、どうするっていうんですか・・・・!?」

 

タイトスカートで俺に並走するという器用なことを成し遂げた千冬さんが俺に別の方法を提案する。

時計をみると・・・くそっ30分も遅れちまった!

 

「緊急用の地下通路を使う。ISはあるな!?」

「はい、ありますッ!」

「よし・・・こっちだ!」

 

地下に降りる時に使ったエレベーター脇を右折。立ち入り禁止表示を飛び越え、走ると更に通気孔のような広い空間に出た。

 

「ここはIS学園のある人工浮島のバランスをとる為の貯水場だ。あらゆる場所に繋がっている!」

 

ISの展開を促してきたので瞬龍を展開する。

一気に島の反対側にある第三アリーナに向かって飛ぶために姿勢を整える。

 

――と、その瞬龍の装甲に千冬さんが掴まる。

 

「って、危ないだろ! 降りろよ千冬さん!」

「問題はないッ! そんなことよりあのバカ共が心配だ」

「いやでも・・・・」

「心配はいらないさ。普段から生身でIS戦には備えている」

 

そう言って取り出したのはアンカーつきの小型ワイヤーリール。

千冬さんはそれを俺の首もとに取り付けた。

 

「それと、お前は焦ると歳上への敬意を忘れるな。ん? 私の心配より作文用紙が何枚になるかの心配をしたらどうだ」

「い、いきますッ!」

 

俺は後ろの搭乗者を振り落とすべく、瞬龍を急発進させた。

 

 




遅れた理由? 一身上の都合です。

今回の話は要するに、ISで一夏を助けておいて、ISによってクレハを失いかけた自分が許せなくなってISに乗るのを辞めたという千冬さんの後悔話(独自設定)となっています。
支離滅裂? 
自分でも思いましたが納得してもらえないとこの先へは進めませんよ?(ゲス顔)

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