で、でもやっと刑期を終えられたんですよ? 報告しても良いですよね・・・・?
っていうか、もうゴールして(寝て)良いよね・・・?
全国の咎人または二級市民の方々! 対人で会った際はよろしくお願いします!
多分これを読んでくださっている方にはすぐわかると思うので!
そんな事より本編どうぞ。
ラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツ軍に所属する最年少女性士官だ。階級は少佐。
俺はIS学園に入学する前、ドイツ軍で術後のリハビリをこなしていて、当時組まされていたパートナーがラウラだった。
出会ってから俺たちは幾度となく任務を共に経験し、信頼が出来上がるまでにはなっていたと思う。
だが、そんな俺たちにも一つだけ合わない点があった。
それは・・・・。
「ところで、なぜそのような懐かしい装いをしておられるのですか柊『お兄ちゃん』」
そう、何故かは分からんがラウラはいつの間にか俺のことを兄と呼び始めたのだ。
本人にワケを聞いても、自分でも理解していない。ガイヤがそう囁いたのです・・・、という曖昧な返答をされたので、放っておいたが、やっぱりおかしいだろ。
「・・・ラウラ、いい加減兄と呼ぶのはやめないか? 俺はお前の兄貴じゃない」
「はっ・・・? では一体どうお呼びすれば・・・・?」
俺の質問が意外だったのか、オロオロしはじめるラウラ。幾度となく目にした珍しくもない光景だ。
そして、こう言うときは決まって・・・・・。
「・・・・では、兄様・・・とお呼びするのはどうでしょうか?」
――――本質はそのままに、呼び方だけ変えられるのだ。
「はぁ、とりあえずそれも却下な。どうしてもって言うなら『兄さん』が妥協点だ。それより・・・・」
ため息を吐きつつ、かつらをとる。
今俺達は寮の裏手にある噴水広場に移動しており、人に聞かせられないような話でも出来る状況にある。
改めて、「柊兄さん・・・兄さん・・・」とぶつぶつ呟くラウラと向き合う。
「一体何しに来たんだラウラ?」
「・・・・・織斑一夏を倒すためです」
尋ねると、一瞬の間のあと、ラウラが答えた。
目の前の眼帯少女は、なぜか昔から一夏のことを毛嫌いしている節があった。
千冬さんが楽しそうに一夏の話を向こうでしてたときも、一人不機嫌そうな顔していた。
理由を聞こうと、夜の宿所を訪ねた際には、一心不乱に『一夏』とドイツ語で書かれた藁人形相手にスパーリングをするラウラを目撃してしまったのでその場でUターンして自分の宿所に戻ったこともある。
「またそれか・・・。一体なんでそんなに嫌ってるんだよ? だいたい顔知ってるのかよ?」
「・・・あの男と同じクラスになったので・・・」
と、不機嫌そうに頬を膨らませるラウラ。
同じ部隊だった隊員達には見せられんな。ラウラの威厳を損なう。
「倒すためだかなんだか知らんがな、あんまり派手にやり過ぎるなよ? 校舎なんか壊したりしたら千冬三宮拳骨部屋行きだぞ」
取り敢えず忠告だけはしておいてやろうと思い、最低限覚えておく必要がある事柄を簡潔に伝えると、ラウラは・・・。
「きょ、教官の・・・・拳骨部屋・・・!」
と、一瞬のうちに背後が花で彩られるほどの幸せな表情になった。
なに? お前ちょっと見ない内にへんな属性身に付けたんじゃ無いだろうな?
その後、ラウラの部屋だとか、起床時間だとか、食事の時間だとか、ラウラは俺に合わせて行動するとか言い出したが、そこまで来ると鬱陶しいを越えて、俺が拳骨を繰り出しそうなので自由にしろと言うと、ラウラは一礼して去っていった。
・・・・・あの赤い右手の甲・・・・。
既に一発食らったのかもな、一夏。
時刻は既に9時を回った。食堂がオーダーを締め切る時間だ。
今行っても夕食は食べられないだろう。
だが、腹は空いている。このまま一夜を過ごすなんてムリだ。夜中に鈴に蹴り転がされかねない。
(つっても、今空いてるのは校門外のコンビニしか・・・・)
俺はあることを思いつき、件のコンビニへと足を向けた。
@
寮からコンビニの往復は意外に時間が掛かった。もう九時半だ。
二年生の寮官である大倭先生に見つからないように一階廊下の窓から侵入後、自室へと向かう。
やっとの思いでたどり着き、コンビニから持ち帰った白いビニール袋の中身を確認する。
(玉ねぎに、人参。ビーマンに豚ロース。そしてパイナップル、と・・・・)
にしても最近のコンビニってスゲーな。野菜でも売ってんのかよ。流石はプラスなだけはあるぜ・・・。
意気揚々とドアノブに手をかけ、一気に開く!
「どぉぉぉぉぉぉこぉぉぉぉぉ行ってたのよ!! バカ!」
般若の鈴がお出迎えしてくれた。
おっと、帰ってきて早々にバカ呼ばわりかよ。
まあ、仕方ないか。門限思いっきり過ぎてるし・・・。
「あんたが帰ってこないからご飯食べそびれちゃったじゃない! せめて門限には帰ってきなさいよ・・・ん? なによその袋? はっ、まさか弁当!?」
袋の存在に気づいた鈴は、内容物を確認しようと袋に手を伸ばしてくる。
俺はそんな鈴をかわして、キッチンに内容物を並べた。
「・・・・・・酢豚、作ってくれよ」
「・・・はぁ?」
鈴が意外そうな、とても不服そうな声を出した。
「・・・・・ったく、なんでアタシがこんなことを・・・」
「いいだろ別に。酢豚食わせてくれるって言っただろ」
「あっ、あれはあの時のノリっていうか・・・・その・・・」
帰宅直後の一幕が終わり、俺達の部屋には甘酸っぱい中華の王道、酢豚の香りが充満していた。
今夜のシェフ・・・いや、中国的には
・・・とにかく、作り手である鈴は現在部屋にある簡易型キッチンで思いっきりフライパンを振るっていた。
因みにパイナップルは「アタシの好みじゃない」ということで一蹴されてしまった。旨いのに・・・パイン。
調理開始からジャスト20分。
部屋の小さいテーブルの上に、こんもりと盛られた酢豚が置かれた。
「・・・・なんか多くないか?」
「どっかのバカがちゃんと量を計って買ってくればこんなことにはならなかったかもねっ!」
投げつけられた箸を右手でキャッチする。
まぁ、せっかく作ってくれたのだ。感謝を捧げて頂こうではないか。・・・・食材と生産者に対してのみ。
「ちょっと、あたしにも感謝をしなさいよ。まったく、誰のために磨いた腕なんだか・・・・」
「だったら今度一夏に振る舞ってやれよ。アイツ喜ぶだろ」
言いながら、早速箸をつける。
出来立ての酢豚はマジで旨そうだ。
とろみのついた赤いあんにくるまれた豚肉がなんとも言えない芳醇な香りを放つ。
「それじゃあ、頂きます・・・」
「ん、どぞー」
鈴の適当な返事を聞きながら俺はその豚肉を頬張った。
・・・・旨い。
トマトケチャップのうらに隠されたショウガ汁の風味が程よい所で後味を打ち切らせ、次の一口へと食べる者を誘う・・・・・。ちょっとしたマジックだな。
「・・・・ど、どうなのよ?」
俺の食べる様子に鈴は興味津々だ。
俺はその期待に答えるべく、食事中なので口ではなく、サムズアップで答えた。
途端に鈴の緊張した面持ちも消え去り、ようやく鈴も箸を浸けた。
「それでさ、何してたのよ。こんな時間まで?」
「まぁ、昔の知り合いに会ってたんだよ」
流石に妹と紹介するのは変だったので適当に濁す。
「ふーん・・・・。まぁ良いけど」
あ、これは隠し事してるのバレてるな。
野生児並みだからなこいつの直感。調味料も適当な感じで入れてたし。
鈴は自分の分を食べ終わると、改まって会話の口火を切った。
「クレハ。この間見せた中国の調査書は覚えてる?」
「んぁ? ああ、あれだろ。国家機密とかで閲覧許可出るまで数日掛かったヤツ」
よく覚えてるぞ。役人仕事しろー! とかって三日間ほど鈴が荒れ狂ったアレだ。
「そのなかで気になる情報が有ったわよね? 『双龍が関わったIS事件』の項目よ。アタシのお父さんもその項目に被害者として記されているし、関わった人間全てがわかっている範囲で記されているわ。その中のここ」
鈴は結晶型端末を取り出して、甲龍にセット。ホロウィンドウが開き、実際の書類が表示された。
「・・・『双龍の設計思想』・・・。いや、これはあれだろ? 双龍が二年前から活動を始めたとかっていう調査結果を元にして、双龍が
「その通りよ。二年前といったら各国が第三世代機の開発に着手し始めた時よ。ISのデータを集めるために暗躍してるっていう話もあるけれど、今はこれ。目の前にあるものが先決よ」
「なんだよ目の前にあるものって・・・・・・・ん?」
資料を改めて見直していると、一番下に気になる情報が記載されていた。
『中国国内からIS技術が不正にドイツに受け渡されたという情報もあり、現在は国内の調査とドイツへの調査許可を申請中。なお、それらの技術が組み込まれたと見られる、研究及び製作が禁じられているシステム、『VTシステム』を積んだとみられるISは以下の機体である。』
そこに記されていたIS、それは・・・・・。
「ドイツ軍所属、シュヴァルツェ・ハーゼ保持機体。『シュヴァルツェ・レーゲン』。通称『黒ノ雨』・・・・・。搭乗者、ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・。」
これって・・・・
驚愕する俺に、鈴は重々しく口を開く。
「クレハ。例の転校生から・・・・・・ISを盗むわよ」
学年別タッグマッチトーナメント、二週間前の出来事であった。
ドロボーいくない!
双龍が作ったシステムとして、VTシステムはIS委員会に明かされていますが、生体再生機能、そしてBシステムは明かされていません。
生体再生機能は元々『白騎士』が積んでたアビリティですし・・・・いまは白式が発現してますし・・・・。別に能力としては珍しいモノじゃないのです。
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