こんな執筆スピードは早く一巻終わらせたいと言う俺の渇望が流出した結果なのでしょうかね?
鈴が出て行ってから翌日の朝、俺は使いなれない寝具で寝た。
そのせいか、腰が猛烈に痛い。
隣を見ても、喧嘩した鈴の姿はない。
いく宛もないだろうし、戻ってくるかもと思ったが、アイツの意思は固そうだ。
モソモソと着替えていると、雨からメールが入っていることに気が付く。
曰く、「部活の先輩が負けた腹いせのツイスターゲーム大会から解放してくれないの~。ゴメンねクッちゃん。朝御飯は食堂でちゃんと食べてね」と。
雨はたしか・・・・茶道部だっけか。
茶道部部長っていったら雨にも負けないくらい大和撫子~な黒髪美人だったと思うが、徹夜でツイスターとははっちゃけてんな。三年のどのクラスかは忘れたが、それでいいのかクラス代表。
俺はISスーツを制服のしたに着込み、食堂に向かう。
朝の挨拶が交わされる食堂の券売機に並んでいると、隣の券売機に並んできたのは織斑一夏だ。
「おはようございます、柊先輩」
「ん、おはよう」
一夏は丁寧に頭を下げ、挨拶をする。礼儀正しいな。
一方の俺は、昨日の夜なぜか寝付けなかったので、あくび混じりの挨拶だ。
そんな俺を見て、一夏が不思議そうな顔をした。
「どうしたんですか先輩? 眠そうですね」
「ん、まぁな。・・・そうだ、昨日の夜鈴がそっちに行ってないか?」
「鈴がですか?・・・いや、見てないですね・・。同じ部屋なんでしたっけ? やっぱり苦労します?」
同じ女子と相部屋と言う苦労を分かち合う俺たち。
「苦労なんてもんじゃねーよ。何だよあいつ。勝手に腹立てて出ていきやがって・・・」
「あー、やっぱり怒らせましたか・・・・。鈴は怒りっぽいですからね。俺も中学の時は苦労しましたよ」
列が前進する。
俺は軽めの洋食セットを選択。一夏は結構カロリーが多そうな料理を小皿で幾つか選んで注文した。
「それじゃあさ一夏、これまでに鈴にこんな話されたことあったか?」
俺は鈴とあの夜に出会ってから、起きたこと、鈴から言われたこと言ったこと、全てを話した。
双龍とか、重要な単語は上手く言葉をすり替えた。
「―――――それで、すこし昨日は言い過ぎたのかって思い始めてるんだよ」
「・・・・・」
一夏は俺の話を聞きながら、難しい顔をしている。何故だ。
「・・・・・それで、先輩はどうしたいんですか?」
一夏の予想外な一言に、俺は食べているマカロニをフォークからずるりと落とした。
「い、いや、別に俺はアイツが何であそこまでパートナーに拘るのか気になってだな・・・・。別に出ていったら出ていったでスッキリしてるんだけどな」
「それじゃあ、気にすること無いじゃないですか?」
・・・・・確かに、無いな。俺の日々を脅かす邪魔物は居なくなったわけだし、良いことしかない。
・・・・なのに、なんで俺はこんなに気にしてるんだ?
「長年アイツの幼なじみやってる俺から言わせてもらうとですね、アイツは猫と一緒ですよ。気を許した相手としかメシは食べませんし、喧嘩もあまりしません。でも、先輩は出会ってから二週間やそこらですよね? そんな短期間の付き合いである先輩にそんなことまで話すなんて、信じられないことですよ。ていうか、鈴の親父さんが無くなってるかもしれないなんて、初めて聞きましたし」
そこは、一夏も知っているものと思って話したが、どうやら知らなかったようだ。鈴には話さないよう念を押す。
「よっぽど、そのびびっと来たのが強かったんでしょうね。アイツの勘も野生並みですから」
「・・・・・お前は、鈴の話、信じるか?」
俺はおさななじみとして、付き合いの長い一夏にそう問いかけた。
一夏は迷うことなく言い切った。
一夏は試合がありますからと言って、出ていってしまった。
鈴、お前は勘で選んだ相手をパートナーに据えようとしていたのか?
そう問いたい気持ちに駆られるが、問いかける相手がいない。
残された俺は、一人でコーンスープに目を落とす。
プカプカ浮いているコーンは、引っ付きあったり離れたりしていた。
@
そして、始まる第二アリーナ第一試合。
今日はここで鈴と一夏が試合をする。
俺はそれを見るためにここに足を運んでいた。
試合が始まると、両者は瞬時に動き出した。
一夏が振るった雪片弐型を鈴の双天牙月が的確に弾く。
弾かれた一夏は空中で一回転し、鈴を正面に構えた。
・・・・なんだか、竜虎って感じの二人だ。
「ふぅん、初撃を防ぐなんてやるじゃない。けど―――」
鈴が手に持った双天牙月をくるくるとバトンのように回す。
すると次の瞬間、鈴は攻撃に転じた。
鈴の持つ双天牙月は、青竜刀のような刃が両側についている特徴的な武装だ。ゆえに、攻撃が変則的でかわしにくい。
一夏を見れば、刃を当ててさばくのにも苦労しているようだ。
その状況を打開しようと思ったのか、一夏は一旦離脱を試みた。しかし。
「甘いっ!」
そう言うと鈴の肩のアーマーが開き、衝撃砲の本体が見えた。
鈴が砲撃する。
一夏の体勢がぐらりと揺れ、当たっていることが分かる。
一夏の体勢が整うと、鈴はそれから更に、6、7発の砲弾を一夏に撃ち込んだのだった。
「何なのだ・・・あれは・・!!」
聞き覚えのある声にしたを見ると、箒とセシリアがいた。
どうやら二人で一夏の応援に来ているらしい。
「衝撃砲だ」
箒の疑問に答えてやる。
隣でセシリアがムゥーっと頬を膨らませたので、タイミングが悪かったかと後悔する。
「ひ、柊先輩ではないですか・・・」
箒が俺の顔を見て驚く。しかし、その表情は一瞬のことで、次の瞬間にはドヤァという腹立たしい顔になった。
なんだ、一夏が勝ったことを自慢してんのかこのやろ。
「空間自体に圧力をかけて、砲身を形成。そのエネルギーで起こった衝撃を砲弾として打ち出す中国の第三世代型兵器だ。鈴が乗ってる甲龍はそれの試作機なんだよ」
箒の疑問に答えてやったつもりだったのに、気がつけば、箒は俺の話をスルーしてモニターを見ていた。一夏が心配なんだな。
代わりにセシリアは聞いていてくれたが、お前知ってるだろと聞くと頷くので無意味なことだった。
「詳しいのですわね」
「まあ、自分のISに搭載されてる兵器だしな」
着席しながら言うと、セシリアは更に問いかけてくる。
「・・・・あら? でも、クレハさんのISは日本製だったと記憶しているのですが・・・・記憶違いでしょうか?」
「いや、合ってるぞ日本製だ。別に元々
俺は捲し立てるように言葉を並べる。
その勢い押されたのか、セシリアは静かに自分の席へと戻った。
アリーナにいる鈴を見ると、試合の最中だというのに笑っている。まるで親友と遊んでいる子供のような笑顔で。
鈴の刃と一夏の刃が交錯し、火花を散らす。
ああ、クソッ。俺はまた失敗した。変わるチャンスだった。
せっかく鈴が再び現れたんだ。あの日溜まりのような日々を取り戻そうとは思わなかったのか。
いや、分かってる。そんなのは無理だ。時は戻らないし、失った命も戻らない。
だったら俺が鈴にできることはなんだ?
――――アイツの言葉を信じてやることだけだろうがっ!
そのとき、アリーナ全体に衝撃が走った。
混乱する生徒を余所に、アリーナの防御システムが次々と作動する。
しかし、生徒が観客席に残っている状態で閉鎖されたため、俺たちは逃げることが出来なくなってしまっていた。
なんだ? なにがおきてるんだ?
「セシリア!」
「はい!」
「状況は分かるか? お前なら広範囲高次レーダーくらい積んでるだろ?」
近くにいたセシリアにそう言うと、セシリアはブルーティアーズを頭の部分だけ部分展開して、周囲のスキャンを開始した。
「敵性ISの存在を確認しましたわ。現在一夏さんと凰さんが交戦中ですわ!」
「よし、お前たちはこのまま生徒の誘導をしろ。教員部隊が直ぐに入ってこないとなると、遮断レベルは恐らく4以上だ。教員部隊のクラッキングでも数十分掛かるぞ」
俺は生徒が押し寄せる出口とは反対にアリーナ側の壁に駆け寄り、地面を探す。
確か・・・ここら辺に・・・・あった!
俺は地下への降下階段の入り口を見つけると、所持している拳銃で鍵を無理矢理壊す。
「な、何をしているのですか!?」
箒が俺に追い付いてきて、俺を見て叫んだ。
「加勢する」
「無茶だ! 敵は一夏達ですら苦戦している相手なのだぞ!? 分かっているのか!?」
「分かってる!」
俺は梯子に足をかけて箒を制す。
「敵が強いのも分かってる!俺より一夏のほうが強いのも分かってる! でも止めたんだよ!こんなとこで何もせずに立ち止まるのは!」
それに、このタイミングでのアリーナのシールドを突き破るレベルでの攻撃を行えるISは俺の知っているなか、一種類しかいない。
あの日の夜、取り逃がした残りの四機のうちの一機だ。
あいつらはしきりに俺を撃ち落とすことに拘っていた。
憶測だが、あれが鈴のいっていた双龍の所持するISの機体なのだろう。
というか、轡木用務員も言っていたじゃないか、龍を狙っていると!
俺は自分の思慮のたりなさを清算しにいくんだ。
俺がとりのがしたなら俺が収集を付ける。
IS学園の二年生なら当たり前のことだ。
「それにな箒、俺は一夏に加勢するんじゃない。鈴の味方になりにいくんだよ」
そう言って俺は暗い闇の中に身を投じる。
箒とセシリアが何かいっていたが、既に聞こえない。
暗い穴を抜けると見慣れたホールに出た。
湊の自室兼、練習場の、射撃訓練室だ。
「湊、状況は?」
「把握しています。戦うんですね」
青い髪の湊が確認するように言う。
一夏、俺はお前とは違う。だから簡単には味方になってやるなんて言える立場じゃない。
だから、この言葉を言わせてもらおう。俺の決意の表れとして。
「ああ、護りに行くんだ」
俺の言葉に納得したのか、湊は一つ頷いた。
「・・・・やっぱり、クレハさんにはそう言う優しい言葉が似合いますね」
「あ? 何いってるんだよ?」
「いえ、何でもありません。電子ロックのない出口はこっちです」
俺は湊の先導のもと、地上を目指して走り出した。
@
地上に出ると、他のアリーナにいた生徒や教員が第二アリーナを見守っていた。
出口から出てこない湊とはここでお別れだ。
「ファイトです、クレハさん」
「・・・・お前、それ似合わないな」
赤くなる湊に思わず笑みがこぼれる。
いい感じにリラックスできたぜ。
息を吸い込み、吐く。
いつもは嫌っていたが、今回ばかりは頼りにさせてもらうぜ。
調子のいい操縦者で悪いな。
「
体の中に、金属が砕ける音が響き渡る。
足元から銀色に輝く装甲が展開され、段々と上昇してくる。
肩の装甲は丸みを帯びた流線型で、粋なことに、IS学園の校章が施されている。
なんだよ、どこでこんなこと覚えたんだ?
展開を完了した俺は、右手に近接特化ブレード『時穿』を展開。左手には瞬龍が新しく産み出した射撃武器、『
お、ハンドガンタイプか。分かってるな。
その時、オープンチャンネルに通信が入る。
『――――応答しろ柊!柊!』
「こちら柊、現在アリーナ外部に脱出成功。これよりアリーナ内部へと上空から侵入する」
『って、おい!待て柊!』
「・・・なんですか?」
千冬さんがあまりにしつこいので、聞き返す。
『凰も一緒だぞ。良いのか』
既に決心が固まった俺は、千冬さんにキッパリと返した。
「良くないに決まってるだろ?」
『――――――』
「何が悲しくて過去のトラウマ引っ掻き回すようなことする必要があるんだよ。バカみたいだろ。でも、千冬さん。今は
『・・・・そうか。お前は進み出したか』
「ああ」
『では、無事に帰ってきたら器物破損、及び教員に対する非礼な態度の反省文を提出しろ。代わりにお前だけ自由行動の許可をやる』
急に饒舌になりやがったこの先生!
「ええ、ありがとうございます、千冬センセイ・・・・!!」
こめかみをぴくつかせながら礼を述べる。
そして通信が切られる瞬間、トンでもない言葉を残していった。
『ああ、そうだ。ついさっき通信システムが復活した。お前の最後の部分、オープンで流れてるぞ』
!?
『頑張れよ、若人よ』
俺は現実から逃れるように地面を蹴り、空へと飛び上がった。
クレハ、決心するってよ。
クレハくんは鈴ちゃんと関わって良いのかと言う葛藤の末、彼女を護ると言う結論に出たわけですね。
父親を殺した相手に信用されるのもな・・・・というクレハくんの考えが、この終着点に行き着かせたのです。