すみません2ヶ月の間、まったくと言っていいほど書いてませんでした。その代わりといえるかは分かりませんが、今回は普段の二話分の文字数になってます。ご了承ください。
では、第4章、始まります。
67話~絶世の美女
なるほどな、そういうことだったのか。
物陰に隠れながら、一人でそう納得する。
――キンジ達に俺の過去を話した、その次の日である今日の放課後。ベランダから何気なく外の景色を見ていると、キンジが出かけるところを目撃した。
それだけなら、ただ買い物に向かったのかと思って気にもしなかったのだが……キンジの顔が真剣そのものだったのが気になった。
部屋でストレッチをしていたシェイに一言言って男子寮から飛び出し、キンジの後を尾行する。いくら
しっかりと間隔を開けてキンジを追うと――武偵高とレインボーブリッジを挟んだ向かいにある人工浮島に着いた。
キンジはそこを上がり――4月のハイジャックで飛行機をぶつけたせいで折れ曲がり、回ることを忘れた風力発電機に近づく。その近くに隠れられるモノが無かったため、ある程度離れたコンテナに俺は隠れる。そして、そこから見えたモノに、一人納得した。
風力発電機のプロペラの一枚に、黄昏時の東京を背に腰掛けていたのは――
カナ、だったのだ。
キンジは自分の目を疑っているのだろう、カナに近付こうと未だ解体されていないANA600便の残骸をよじ登っていく。この間みたいに、理子が変装したカナかもしれないとでも、思っているのだろう。
だが、それはありえない。距離の離れているここからでも分かる、カナのオーラ。時が止まるほどの美しさ。
それは――どんなに巧みな変装でも、作り出せるものじゃない。
キンジも近づくにつれて感じているのか、その顔から疑いの表情が消えていく。
ロングスカートのワンピースを着たカナは、編んだ長い後ろ髪を海風に揺らし――
祈るように閉じていたその眼を、そっと開いた。
間違いない、本物のカナだ。
(……しっかし、いつ見ても凄いよな、あの人。ホントに性別合ってるのか?いや、過去にさんざん見てきたけど)
遠山家に代々伝わるヒステリアモードは、性的興奮をトリガーにしている。
そしてキンジ達のご先祖様、名奉行・遠山の金さんは――もろ肌を脱ぐことで、性的に興奮できる嗜好を持つ人だったらしい。
つまり、彼は自分の意思でいつでもヒステリアモードになれたのだ。
そして、21正紀。遠山金一、つまりキンジの兄さんも――その金さんのように、いつでもヒステリアモードになれる方法を見つけ出した。
金一さんに備わっていた嗜好は、ご先祖と同じものではなかった。しかし、異性を必要とせず、自らの意思で自分を性的に興奮させられるものだった。
つまり、それは――絶世の美人に、
「キンジ。ごめんね」
予め
「イ・ウーは遠かったわ」
キンジも俺も、驚きは少なかった。金一さんのことを知っている俺達からすれば、理子に金一さんが負けるとは思えない。
「どういうことなんだ。教えてくれ、カナ――いや……」
ただ静かに長い髪を揺らしているカナに、キンジは怒りに肩を震わして、叫ぶ。
「……
キンジの言葉に、カナ――金一さんは、応えない。
そしてその代わり、唐突な質問を返してきた。
「キンジは、神崎・H・アリアと――なかよしなの?」
急な質問に、キンジは眉を寄せる。
「――好きなの?」
「そんなこと……今、関係ないだろ!」
意図の掴めぬカナの質問に、キンジは怒鳴る。
カナは、おっとりとした瞬きを返し。
「キンジが肯定したら、一人でやろうと思っていたんだけどな。しなかったね」
そして――その薔薇色の唇で、言った。
「これから一緒に、
――プツンッ――
強風で流されたキンジの動きに、あっけなくプロペラにつけていたワイヤーが切れて。
キンジが、暗闇に呑まれていく――。
(――出るとしたら、ここかな?)
ダンッ――!
隠れていたコンテナから勢いよく飛び出し、風力発電機へ一瞬で近付く。プロペラ下に着くと同時に落ちてくるキンジを空中で掴む。
キンジに巻き付けてあったワイヤーへの抵抗が無くなったことに疑問を抱いたカナが、プロペラ下を覗きこむと動作に合わせて、カナの乗っているプロペラに着地する。キンジはプロペラの端に寝かせておいたが、落ちることはないだろう。
「どーもです、金一さん。いや、カナさん」
「……貴方は――?」
不意に後ろから聞こえた声に反応したカナが振り向き、俺と相対する。
ゆったりとしたその動作に、焦りはない。振り向く前に敵意がないことを確認したのだろう。だが、一応は警戒しているのか、
その目が、俺に問いかけてくる。何故、ここにいるのか。お前は誰だ、と。
「お久しぶりですね、カナさん。俺……いや、
分かりやすく一人称を変えて、カナに自分が誰なのかを伝える。
すると、パチクリ。
その瞳を二、三度瞬きさせて、そして近付いてくる。
グイッと、鼻と鼻が当たるくらい覗きこんできたカナは、穴が開くほど俺のことを見つめ……。
「零、なの?」
一言、そう呟いた。
「はい、零です」
「……私の知っている零は、黒髪焦げ茶色の、おとなしそうな子だったハズだけど?」
「あー……それはまあ、色々あったんで」
昔の俺しか知らないカナは当然の質問をしてきて、それにどう答えようか迷う。自分でもよく分からないことを、人に説明するのは難しい。
頭を悩ませていると、ふわり。
俺の頭の上に、何かが置かれる。カナの手だ。
カナはそのままゆっくりと、俺の頭を撫でる。幼少期の頃から、あまり頭を撫でられることは好きではない。思わず頭を引いた。
「……ふふっ。頭を撫でると、頬を膨らます癖。本当に、零のようね」
柔らかい笑みを浮かべてながら、慈しむように俺を見るカナ。どうやら顔に出ていたらしい。
「そ、それより……さっきの話、一体どういうことですか?アリアを、殺すって」
頬の熱さを感じつつ、聞きたいことに話を変える。それは先程まで、キンジとカナが話していたこと。
『アリア。神崎・H・アリア。あの少女は――巨凶の因由。巨悪を討つのは、義に生きる
義とは、すなわち『正義』。
その言葉を口にした時、カナが目的を成し遂げなかったことは今まで一度もない。
カナは、何故かは知らないが――本気で『アリアを殺す』つもりらしい。
それを止めようとしたキンジが、カナに対して拳銃を突き付け――返り討ちにあった。あの、カナに対して盲目的なまでに信頼している、あのキンジが。
「教えてくれませんか、カナさん。イ・ウーで何があったのか。何でカナさんが――そうなってしまったのか」
「……ごめんなさい。どちらも、答えられないわ」
「……そうですか。けど、アリアは
答えるカナが俯き、前髪で表情が見えなくなる中、そう宣言する。
――パァン!
それと同時に、銃声。だが、カナの手元には銃は握られてない。
『
そのまま銃弾が俺を捉える……。
「――カナさん。俺には、効きませんよ」
――ことはなく、少し身体をズラして銃弾を避ける。
俺には、音速程度のものなど、通用しない。
通り過ぎていく銃弾を見届けたカナは、その目を少し大きく開き……そう、と呟いた。
「あなたも、実力を隠していたのね」
「一応、『
「同姓同名の別人だと、思っていたわ。昔の零とは全然違ったもの」
あまりいないと思うけどな、俺の名前。
そう思ったが、口にはしない。カナになった金一さんは、どこか抜けているところがある。それを一々指摘するほど、俺も神経質ではない。
力を抜いたカナは、気絶しているキンジを見て、聖母のような笑みを浮かべて、ストン。
プロペラの
「……カナ?」
「零がいるなら、『第一の可能性』は保留にしておくわ。『第二の可能性』、信じてみることにする」
「……よく分からないけど、アリアを殺さないって解釈でいいんですか?」
俺の言葉に、カナは反応を示さない。だが、雰囲気は変わった。俺の知っている、カナの雰囲気。
もう話すことはないのか、遠くを見つめるカナを余所にキンジを担いで……。
人工浮島を、後にした。
「アリア、学校行くぞー」
「んー」
バイクの鍵を机から取りつつ、アリアに呼び掛ける。今日から夏服になる制服に着替えたアリアは、トテトテと玄関まで小走りでやってきた。
「シェイ。先行ってるからなー」
「うん、行ってらっしゃい」
午前中に仕事が入っているシェイに声をかけて寮を出て、駐輪場に置いてあるバイクにキーを差し込み、アリアにヘルメットを渡す。
そしてバイクにまたがり、武偵高へと向かい走り出す。後ろで掴まっているアリアは、機嫌良さそうにしている。
――今日の朝早くに、キンジからメールが届いた。『アリアは、無事か?』と。
『アリアなら寝てるが、どうかしたのか?』と返すと、『いや、何でもない。おやすみ』と返信がきた。恐らく、昨日人工浮島にいたのに目を覚ましたら自室にいたので、夢か何かだったと思ったのだろう。
訂正してもいいんだが、キンジも混乱しているだろうし、後回しにすることにした。落ち着いた頃に、話してやろうと思う。
『あー、そういえば、アリア』
『何ー?』
『今月の7日7時に、緋川神社で七夕祭りがあるんだ。皆誘って一緒に行くか?』
『――行くわ!日本のお祭り、行ってみたいと思っていたの!』
うおっ、うるさっ!
ヘルメットについているインカムから、大音量のアニメ声が聞こえてきた。その声は弾んでおり、はしゃいでいる子供のようだ。
しかし、まぁ……常日頃からかなえさんのことについて、色々と奔走しているんだ。これくらいの楽しみがあってもいいだろう。
その後もアリアが楽しそうに話し、それを俺が聞いている内に、武偵高に到着。
バイクを駐輪場に停めると、教務科からの連絡掲示板の前に生徒が集まっているのが見えた。
その中に――見覚えのある後ろ姿があったので、アリア共々足を止める。
ジャンヌ。ジャンヌ・ダルク30世だ。見ると、ちょっと幅広の松葉杖をついている。
「ジャンヌ」
俺の視線を追ったらしいアリアが、その名を呼ぶ。
ジャンヌはクルッと髪をなびかせて振り返り、俺を見て『
アリアが先にジャンヌの方にズカズカ歩いていってしまったため、俺もついていく。
「――アンタが武偵高の
アリアはいきなり身長差を感じさせないでかい態度で、ジャンヌにイヤミを垂れる。
ジャンヌは「フン」と鼻を鳴らし、そっぽを向いた。
「私は錐椰を呼んだのだ。神崎・H・アリア。お前に用はない」
「こっちにはあるの。――ママの裁判、アンタもちゃんと出るのよ?」
「……分かっている。それも
イ・ウーと呼ばれる組織によって冤罪を被せられたアリアの母親、神崎かなえさんは今――東京拘置所で、最高裁での裁判を待っている状態だ。
かなえさんは二審までに事実上の終身刑を言い渡されているのだが、その無実を一つ一つ照明することができれば、無罪判決を勝ち取るチャンスも増える。
母親の無実をジャンヌに証言させる約束を取れたアリアはニンマリと笑い、
「ま、ケガしてるみたいだから、イジメるのはまた今度にしてあげる」
と。勝ち誇るように胸を張って見せた。
「……私は、今すぐでも一向にかまわないぞ?」
そんなアリアにイラッと来たらしいジャンヌが、ちょっとケンカ腰になる。
「『構わない』って、アンタ杖ついてるじゃない」
「足一本ぐらい、ちょうどいいハンデだ。それにこの杖には聖剣デュランダルが仕込んである。星伽白雪に斬られたあと、寸を詰めて幅広の
おい、聖なる武器を仕込み杖にするな。先代達にボコられても知らねぇぞ。
「朝からケンカするなよ。それよりジャンヌ、足、どうしたんだよ」
「……虫が、な」
「虫?」
「道を歩いていたら、コガネムシのような虫が膝に張り付いたのだ」
「……うん、それで?」
「私は驚いてな。そのせいで、道の側溝に足がはまった」
「……」
「そこをちょうど通りかかったバスにひかれたのだ」
「…おい……」
「全治2週間だ」
ジャンヌ……お前、ドジだな。見かけによらず。
まぁ、バスにひかれて全治2週間で済んでるあたりは、さすがジャンヌというかなんというかだけど。
「――それでも、ドジなことには変わりないけどね」
「いやぁ、
「……アタシは今、
「え、いや待って流石にそこまでするほどケバブッ!?」
挨拶がわりに人の心読んできたのと、寒いこと言って
その埋めた本人であるネリーはチラリとこちらを見た後、ジャンヌに向き直り。
「久し振りね、あたしの2Pキャラさん?」
いい笑顔で、とんでもないことを言い切りやがった。
「また貴様か、ネリー・リチャード!会う度に私をそのように呼ぶなと言っているだろう!大体なんだ、その『つーぴーきゃら』と言うのは!」
「2Pキャラくらい知っておきなさいな。あたしとほぼ同じ身長、似ている髪の色……キャラ被ってんのよっ!」
「それこそ知ったことではないわっ!?それに、む、胸の大きさは私の方が大きいぞ!他にも髪型とか、違いはいくらでもあるだろうっ!」
「ハッ。戦闘時に邪魔でしかない脂肪の塊を自慢するなんて、流石は2Pキャラね」
「いや、胸の大きさは大いに関係あるぞ。俺は大きい方が大好――」
「あんたはもっぺん埋まってなさいっ!」
「カロンゴッ!?」
逆立ちの要領で頭を抜いたサイア。その胴体を掴んだネリーは
なんというか……カオスだな。どうしようか、これ。
「零、零」
「ん?どうした、アリア」
「アレ」
ネリーとジャンヌの言い争いを見ていると、アリアが俺の袖を引っ張ってきた。
アリアを見ると、その視線が掲示板の方を向いていたので、その先を目で追ってみる。
生徒が集まっている掲示板。その近くに、この世の終わりとでも言いたげな表情のキンジがいた。いや、何やってんだよ。
気になったのでアリアと一緒にキンジの所に向かい(ジャンヌとネリーは放置することにした)、キンジの後ろから掲示板を見る。
そこには『1学期・単位不足者一覧表』と書かれた張り紙が画鋲のかわりにサバイバルナイフで留めてあり(誰か直せよ)、そのリストには……キンジの名前があった。
『2年A組 遠山金次 専門科目(
不足単位――1.9単位!
不足単位の数字に、思わずキンジを二度見する。
武偵高も一応の一応は日本の高校なので……文科省の学習指導要領通り、単位を取った生徒でないと進級はできない。
で、二年生は一学期――正確には二学期の始業日までに二単位取らないと、留年なのだ。
この単位、自分の所属する専門科が、民間から受けてきた
「おいキンジ……お前、どうすんだよ」
「うっせぇ!ちょっと黙ってろ!」
おおう、目がいつにも増してキレてやがる。今なら視線だけで人を殺せそうだな、コイツ。
キンジが血眼で隣の掲示板を見ているので、そちらを覗いてみると……『夏期休業期・
武偵高では単位不足はよくある事なので、休み中に解決すべき任務を学校が割引価格でたくさん請けてきてくれる。一般の高校でいう、補習授業みたいなものである。
この緊急任務、そのぶん報酬は安くなるが――単位の帳尻合わせはできる。
「これだ……!」
そこからキンジが見つけたのは、『港区 カジノ「ビラミディオン台場」私服警備(
要・大剣もしくは帯銃。必要生徒数5名。女子を推奨。被服の支給有り――
なんか、今のキンジを狙ったかのような
カジノとは日本でも近年合法化された公営ギャンブルの一つで、会場には用心棒として武偵が雇われることが多い。とはいえ実際のところはほとんどトラブルが起こらないので、武偵業界じゃ『腕が鈍る仕事』としてバカにされている。
「零、頼む。一緒に請けてくれないか?」
「うーん……まあすることないし、いいか」
「うっし!後は――」
大急ぎで日程を確認し、携帯から登録希望のメールを送ろうとしたキンジの手が、止まる。
その視線が、俺の隣からキョトンと見上げている――アリアに向けられる。
「――アリア。お前も、この
「……なんで?アタシは単位、不足してない」
ほっぺを膨らまして言うアリア。まあ俺とアリアは卒業までの単位を揃えているからな。請ける意味がない。
「――仲間だろ」
と、キンジが返してきた。
言われたアリアは
そしてもったいぶるように腕組みして横を向き、検討しているような仕草を見せた。
「ふーん、キンジがアタシを仕事に誘うなんてね。ま、いい傾向といえるわね」
だがその横顔は、にやぁー。キンジに仕事に誘われた嬉しさを隠しきれていない。
ここにくるまでのアリアは、基本一人で
「最低5人必要って書いてあるし……そうね。チーム同士、困った時はお互い様――やってあげてもいいわよ?」
頷くアリアに少し安堵の表情を浮かべるキンジ。それは、人数を確保できたことに対してなのか。
――それとも、『夢』のことに関してだろうか。
今は、5時間目。各学科専門の授業が始まる中、俺は一人、屋上にいた。
ほとんどの科目においてSランクの上位にいる俺は、どの科目をどの日に受けても良いという特例を与えられている。どれも受けなくてもいい、ということもできる。
今日は天気が良いし、最近ゆっくりしていなかったので、のんびりしようということだ。
(……ああ、気持ちいい)
季節が夏に移り変わり、太陽がジリジリと照す中、日陰に寝転がり、目を閉じる。風が強すぎない程度に吹いており、このまま何時間でも寝れそうだ。
「――眠いのですか、零さん?」
「それなら、『良い夢』を見せましょうか?」
耳元で囁くように言われた、鈴が鳴るような声。
一瞬、そのまま頷きそうになり……直ぐに、上体を起こして目を開ける。
「――Bと、Gか」
「はい、BとGです」
「二日ぶりですね、零さん」
橙色の髪のボブカットに、澄んだ空色の瞳。瓜二つの容姿の――双子。
『リバースランカー・双神』、『GOW』最後の二人組であるBとGが、
「お前らも、武偵高に来たのか」
「はい。零さんに負けた僕達は、リバースランカーではなくなり、『GOW』から脱退しました」
「それなら零さんのところに行こうという結論に至り、高校一年生の転校生として編入しました」
そこでなぜ、俺の所に来るという結論に至ったのか。というか、『GOW』のメンツ全員同じ場所に集まったけど、そこのところは大丈夫なのだろうか。
まあ、いいか。どうせ
「ところで、零さん。一つ聞きたいことがあります」
「なんだ、B」
ズイッと顔を近付けてきて、真剣な表情をしているB。大方、裏でずっと生きていたから、表での生き方が分からない、とかだろう。同じような境遇になったことがあるから、分かる。戸惑うこともあるだろう。
俺は、コイツらの先輩だ。教えることが、俺の責任だろう。
そう思った俺は、Bに体を向け、しっかりと目を見て……。
「――男としてみられるために、どのようなことをすれば良いんでしょうかっ!?」
予想の斜め上をいく質問に、思わず固まってしまった。
「言われたんですよ、転校初日である今日の自己紹介の時!『美少女双子キター!』って!面識のある間宮さん達からも、『何で男子の制服着ているの?』って!僕は男ダァーッ!」
はぁはぁと、叫び疲れて息を切らすB。あ、相変わらず戦闘時と違って表情豊かだな、お前。
「どう思いますか、零さん!どうして皆僕を男として認識してくれないんですかっ!」
「いや、どうしてって言われても……」
言葉を一旦区切って、改めてBの容姿を見る。
151センチという、女子にしても高一では小さすぎる身長。ボブカットにしている髪型。少し高めな声。
うん……。
「仕方無いだろ」
「なっ!?」
裏切られた、という表情になるB。だって容姿に加えて趣味がお菓子作りだろ、お前。今黙ってGがモフモフ食べているクッキーもBの手作りだし。てかBを止めろよG、お前の兄貴だろう。
「零さんまでそんな……あったまきた!G、サイアさん見つけてサンドバッグにするぞ!」
「……ん、分かった」
「では、零さん!」
すくっと立ち上がったBは、Gの手を取ったかと思うと、突風を起こしながら屋上から消えていった。とりあえず、サイアにも合唱。
「……結局、何がしたかったんだろな、アイツら」
まあでも、武偵高に馴染めそうで良かった。このまま、二人には頑張ってもらいたいな。
そう思っていると――携帯から着信音がなり、震える。電話のようだ。相手は――理子だ。
今、
通話ボタンを押し、耳に当てる。
「もしもし、理子か?どうしたんだ?」
『――零っ!今、どこにいる!?』
その声は、いつもの理子の声ではない。ハイジャックの時の――『武偵殺し』の時の方の理子だ。
その状態ということは、非常事態ということか。
「屋上にいる。何が起きているんだ?」
屋上の出口に向かいながら、理子に問い合わせると……。
『
――理子の口から、考えもしなかったことが飛び出てきた――。
はい、どうでしたでしょうか。
次回は第0章第6話です。なるべく早くあげるように頑張ります!
それでは、ごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ。