えーっ、約1年ぶりの投稿となります……『あー、そう言えばコイツいたな』ってなっているかと思います。
GWに入って時間が確保出来たので、少ないながらも執筆致しました。待ってくださった方達には申し訳ありません。
前書きを長くするのもあれなので、第06話、始めます。
※携帯を替えた結果、何故か現在の携帯が三点リーダーやダッシュが使えないため、今までとは違う書き方になっています。ご了承ください。
青森にある、
「よ、ようこそ来てくださいました!ど、どうぞこちらへ!」
ぎこちない動きながらも、4歳時とは思えないほどしっかりとした案内を進める白雪。その小さな背中に、少し逞しさすら感じる。
そう思いながら、白雪の後をついていく金一。その横からスルリと、イタズラ顔のキンジが抜け出ていく。
零が制止を呼び掛けるのも無視して、白雪の背後に立ったキンジは……。
「――ワッ!」
白雪の耳元で大きな声を出しながら、肩を軽く叩いた。
ビクゥッ。
突然のことに、その場で10cmほどジャンプして驚く白雪。その際に足を曲げずに跳んでいたのを、零は不思議がりながら見逃さなかった。これが後の白雪ジャンプである。
キンジに振り返った白雪は、金魚のように口をパクパクさせている。驚きすぎて声が出ないようだ。
してやったり、と言わんばかりに笑うキンジ。 その顔に影が差し込み……。
――キンジの頭上から、金一が勢いよく頭突きをかました。
ゴツッ!
骨と骨、と言うよりは、石と石。鈍い音が鳴り、キンジが頭を抑えて倒れこむ。
「何やっているんだ、キンジッ!折角道案内してくれていたのに、怖がらせるようなことしたらダメだろっ!」
「だ、だって……」
「『だって』じゃないだろ……ほら。キチンと謝れ、キンジ」
最初こそは怒鳴っていた金一だったが、最後は諭すようにキンジに促す。キンジも出来心でやったとはいえ反省はしているのか、しぶしぶと立ち上がり白雪の前に立つ。
「……ごめんなさい」
「……あっ、えっと。うん……」
頭を下げて謝るキンジ。それに対して白雪はオドオドとするばかり。何とも気まずい雰囲気が漂い、二人とも顔を会わせない。
その間に、スッ――。
今まで傍観していた零が入り込み、キンジの頭を掴む。それも、先程金一に頭突きをもらった場所を。
「痛い痛いっ!零っ、何するんだッ!」
「キンジ、初対面の子にさっきのは有り得ない。ちゃんと反省するべき」
「だから今謝ったじゃないか!」
「反省が足りてない。それにせっかく僕が呼び掛けたのに無視した。だいたいキンジは落ち着きが無さすぎ――」
「あーもう!知らないよ、そんなの!白雪、行くぞ!」
「えっ……えっ?」
クトクドとキンジに文句を言う零。その間にも頭を掴まれていたことに我慢できなくなったキンジが、零の手を振り払い。
零を挟んで反対側にいる白雪の手を掴み、建物へと向けて走り出した。
それを見届けた零は追いかけることもせずに、ふぅと息を吐いた。
「……零は、優しいんだな。キンジと白雪をくっつける為に、わざと説教したんだろ?」
「……何のことか分かりません」
「普段はあまり喋らない零が、いつになく饒舌だったからな」
金一の言葉に、零は逃げるように視線を反らす。自分の考えを当てられるということは、何となく気恥ずかしいモノである。
そこでふと、零の動きが止まる。
何か、いる。
視線を反らした先にある大きな木から、先程白雪が着ていた巫女服と同じ物がはみ出ていた。しかし、白雪はキンジと共に中に向かったし、そもそも白雪のより小さく見える。
(――それにまた、
時折こちらを覗こうとしているのか、ひょっこりと木の裏から顔を出す少女。最早隠れているのかどうかすら分からない。
その少女は、白雪をそのまま小さくしたような見た目。前髪パッツンのロング。だが、目元だけは白雪のようなおっとり目ではなく、少しキツめ。
興味が湧いた零は、その木に向かってゆっくりと歩く。背後に回り込むようにしても良かったのだが、それだと驚かれてしまい、その拍子で転んで怪我をするかもしれない。
それならバレていることに気付いてもらって、なおかつ敵対心がないことを伝えた方がいい。
零が近付いていることに気付いた少女は、だが動かない。好奇心が強いのだろうか。あるいはびっくりしすぎて動けなくなったのか。どちらにしても、零にとっては好都合。
そして木を回り込み、少女と対面する。
「……初めまして、
膝を曲げて、目線を同じ高さにする。なるべく怖がらせないように、ゆったりとした口調で話しかける。
「ほ……ほとぎこなゆき、です……」
その少女――
「どうして、木からこっちを見ていたの?」
「おねえさまが……」
隠れていた理由を聞くと、モジモジとして、最後まで答えない。だが、なんとなく零は理解した。
この子は白雪の妹で、お姉ちゃん子なのだろう、と。
今日外から男の人が来るということ、それに対して白雪が対応するということ。しかし、勿論白雪も男の人相手は初めてで、性格上上手くやれるか分からない。
それらが合わさって、心配でついてきたのであろう。恐らくは、白雪に黙って。
「……よろしくね、粉雪」
「あっ、えっと、その……よ、よろしくお願い、します」
粉雪に手を差し出し、粉雪はオドオドしながらもそれに応じる。
「じゃあ、お姉さんの所に行こうか」
「あっ……ハイッ!」
ようやく子供らしい、元気の良い返事を聞きながら、キンジ達が向かった方に行く。
無表情の零と、その零に手を引かれたままの笑顔の粉雪。
その背中を見ながら、金一も少し頬を弛めてついていった――
「――サイア。そっちの調子は?」
『特に何もねぇよ。テメェがいなくても任務は滞りなくこなしているよ』
「そう」
『ただなぁ……ネリーの奴がおかしいんだよ』
「おかしい?」
キンジ達と合流した後、予想外に多かった白雪の姉妹(義妹含め)達との会合をした夜。
一緒の場所で寝ることになった子供達が寝静まった後、零は一人外に出て、イギリスの『特殊児童捜査研究家』にいるサイアと連絡をとっていた。
『何つーか、相変わらず
「ふぅん……」
『それに俺に対しても、怯えることなく話しかけてくるし……調子狂うんだよな』
サイアからの情報に、零は少し考える。
最初に零が研究員を殺した時、明らかに動揺し、目を背けていた。元から死体が大丈夫だと言う訳ではないはずだ。
(うん?そういえば、その後……)
すると零の脳に何かが引っ掛かり、それは何かと考える。
それは、初めての任務の最深部の時のこと。潜入していることがバレ、130人以上の人数で待ち伏せされ、それを零が惨殺した。
その後ネリーが零に近寄ってきたが……その時は、普通に駆け寄ってきた。
死体が見えなかった、という訳ではないだろう。100人を越える死体が丸々見えないということは有り得ない。零みたいにそもそも『人間として視えなかった』というのなら話は別だが。
――つまり、あの時には既に死体が大丈夫になっていたというのか……?それまでに、2体しか見てないのに?
『――ぃ、おい、零!聞いてんのか!?』
「……ごめん、考え事をしてた。それで、何か不都合があるの?」
『いや、寧ろ俺も戦闘に集中できるから、悪くはねぇ。ただ、何となく引っ掛かってな』
「そう」
『そんじゃ、そろそろトレーニングがあるから切るわ。そっちは……夜か』
「そうだね。僕ももう寝るよ」
『ああ……そうだ。来週、コッチに来いって
「了解」
じゃあな、と言い残して、サイアとの通信は切れた。
(……サイアも、何か変わった?)
暗くなったタブレットの画面を、そのまましばらく見つめる。
サイアの攻撃的な発言はそのままだが、物腰が少し柔らかくなっていた気がする。ネリーの名前を呼んだ時も、怒ったような声では無かった。
零が最後に二人に会ったのは、約一週間前と、そこまで月日が流れた訳ではない。が、そのままの状態で関係が良くなるような雰囲気でも無かった。
(……まあ、いいや。来週になれば分かることだろうし)
今日ももう遅い。自分も早く寝よう。
そう結論付けた零は、寝床に向かう。月が辺りを照らす中、その動く小さな身体は……されど、足音を立てない。
スッ――と、キンジ達が眠る寝床の
そこで零の視界に広げられた光景は――凄いモノだった。
零が出ていく前に綺麗に敷かれていた布団は乱雑に散らばっていて、子供達は所定の位置から大移動。
更にキンジの寝相の悪さからなのか、全員あられもない姿。これが子供だったから良かったものの、成熟した大人達だったら間違いなくR指定が入るだろう。
(……さて、どこで寝ようか)
勿論、だからと言って零が反応することはないのだが。
全体的に踏み場が無く、皆が全体的に広がっているため、寝る場所の確保が出来そうにない。
いっそのこと、外で寝ようと思った時……ゴソッと、零の視界の端で誰かが動いた。
目の焦点をそこに合わせると、起きていたのか、同じく目線を合わせてくる者。
――というか、粉雪だった。
「あっ……あの、錐椰、様……」
イタズラがバレた子供のように、アタフタとし出す粉雪。だが、粉雪が何かしていた様子はない。
(となると、単純に起きていたことに対して罪悪感があるのかな?子供は早く寝なさいって良く言われるし)
実際零も父親である守に何度も言われている。が、任務の関係上夜に行動することが多いため、その言い付けはほとんど聞いていない。
「零でいいよ。それで、何かあったの?」
「あ、あの……えっと、その。が、外部の人と同じ寝床になるのが初めてなので……しかも、男の人……」
昼間の時と同じように、小さな声で話す粉雪。その言葉は足らない所もあるが、ああ、と零は納得した。
ようは、普段と違うから緊張して眠れないということだ。
別にそれはおかしいことではない。他の皆のように男女関係なく眠れる子供達も普通だが、引っ込み思案な子供もいるのだ。
むしろ、白雪が普通に眠れていることに対しての驚きが少々ある。同じように眠れないと思うが、この大人数の長女なだけあるのか、意外と肝っ玉が大きいのかもしれない。
「……そっか。大丈夫だよ、大人達には何も言わないから」
「あっ……あ、ありがとうございます」
その言葉に安心したのか、少し笑顔になる粉雪。神社ということもあり、他の所より厳しい制約とかがあるのだろうか。
「あ、あの……もしよろしければ、こ、こちらへどうぞ」
「……いいの?」
少し考えていると、粉雪がポンポンと、自分の布団――寝ていなかったためか、唯一綺麗に整っている――を叩き、零を招いている。
「はいっ」
「……じゃあ、遠慮無く」
零としても、やはり外で寝るよりは布団がある方が
「入ってから聞くのも何だけど、本当に良かったの?僕も男子だけど」
「はい。きり――零様は何か、その、不思議な雰囲気というか……暖かいと言えば良いのでしょうか?とにかく、嫌じゃないです」
「『雰囲気』とか、子供らしからぬ言葉を使うね、粉雪は」
「零様も同じではないですか?」
クスクスと、小さく笑う粉雪。本当に緊張していないのか、その笑顔はとても愛らしい。
「あの、零様。よろしければ、外のことについて色々と聞きたいのですが……」
「外のこと、か……。やっぱり粉雪達は、外に出るのには厳しかったりするの?」
「はい。『
「……なるほど、ね」
少し苦笑しながら放たれた言葉は、とても重い制約。先程一般よりは厳しい制約があるのではと考えていたが、思っていたよりもずっと厳しい。
そして……それに何故か、自分と重ねてしまう。『色』というものを生まれつき知らない、一般の人とは違う自分を。
「……分かった。実は僕こう見えて、外国出身なんだ。だから普通の人よりもっと色々と知っているよ」
「えっ……そうなのですか?全然気付かなかったです」
「お父さんが日本人で、お母さんが日本人とイギリス人のハーフ。僕はお父さんの血が強かったのか、日本人にしか見えないけど。だから今日一緒に来たキンジもまだ知らないんだ」
「遠山様も知らない……ですか?」
「うん。だからこのことはこの中では、粉雪しか知らないんだよ……これ、秘密にしといてね」
「あっ……はいっ」
子供というのは、自分だけが知っている秘密というモノに弱い。
現に粉雪も、秘密という言葉を聞いた途端、目を輝かさせていた。
それから零は起きている間、自分が体験してきたことを淡々と話した。勿論、任務についての話は除いてだが。
粉雪は、まるでおとぎ話を聞いているかのように、楽しそうに聞いていた。
しかし、やはり子供だからか。押し寄せる睡魔に勝てず、段々と
そしてそれほど時間が経たずに――スゥスゥと、小さな寝息を立てて、眠ってしまった。
それに気付いた零は、自分も一緒に布団を深く掛け直し、同じく寝ようとする。
チラリと、最後に寝床全体をもう一度見渡す。粉雪と喋っている間にまたキンジが大移動していて……。
――その右手には、『花火――』と途中で見えなくなっている、グシャグシャになったチラシが握られていた――
はい。どうでしたでしょうか。
こうして零は、粉雪と出会いました……本編での登場はまだ先ですが(笑)
久し振りということで、軽く五千文字程度になりました。もうちょい頑張って増やしたいですね(汗)
本編の方は明日投稿出来ればいいなと思っておりますので、是非閲覧の方をよろしくお願いいたします。
それでは、ごきげんよう。(*・ω・)ノバイバイ。