緋弾のアリア~Sランクの頂き~   作:鹿田葉月

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エキ、コワイ。

――はいどうも、鹿田葉月(*`・ω・)ゞデス。

今月、私用で横浜に行ったのですが……どの電車に乗ればいいのか分からず、ついても駅から出られない、といったことがありました。そしてまだ緋弾のアリア新刊買えてないです。ツライ。

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occhanさんに評価9。
を頂きました!ありがとうございます!


では、第05話、始まります。あとがきにお知らせがありますので、良かったら見てください。


第05話――任務完了

『こちら零、最深部に到達。そちらの状況は?』

『こちらサイア、退屈だ。オーバー』

『……聞いているのは状況で、心境は聞いてないけど』

『それぐらい優勢だってことだよ。やつら叫ぶだけしか脳がねぇんじゃないのか?』

『了解。これから最深部の調査、及び破壊工作に移る。アウト』

 

潜入捜査が始まってから、一時間が経過した。通信機を通して聞こえる声は疲れているような様子はなく、その後ろから聞こえる雑音(悲鳴や銃声)の方が耳に響く。それをいつも通り表情の乏しい顔で平然と聞き流した零は通信を切り、自らの横で同じく通信を聞いていたネリーに向き直った。

――地下三階で資料を破棄した零とネリーの二人は、そのまま更に地下に潜り……ついに、最深部へと到達した。その間に零は、人が数字に視えるということについて、詳しく話し続けた。

まず第一に、どのように視えるか。これは人の形に数字が羅列されるということで、棒人間を数字で書いたように視えるということ。そしてその数字は、『0』と『1』の数字で視える。

第二に、しっかりと人間として視える人物がいること。零の経験からすると、自分が興味を持った者や才能を持っている者に関しては人間として視えるということらしい。そしてその人間が大きな存在であるほど、線が黒鉛筆で筆圧を強くしたように濃く、太く視えるらしい。キンジや(まがね)を『太い』と表現した理由はこれである。

これを聞いたネリーは自分はどう視えるかを聞いたところ、『太い』と言われて複雑な表情を浮かべた。大きい存在であると言われたのは嬉しいが、女としては『線が太い』と言われるのは嬉しくはない。

第三に、数字は状況によって変化するということ。相手の心情や行動によって、『0』や『1』の個数が変化する。例えば左手を前に出す時には、左手の部分が動く前に『1』が増えたり、図星を疲れた時は心臓部分に『0』が増えたりする。つまり、相手が何を考えていて次に何をするのかが分かるということである。

これを零は有効に使い、階段付近で待機している敵の油断をついて強襲し、何もさせずに仕留めていた。零の手に塗りたくったようについている返り血が、ここにくるまでの行動を物語っている。

 

「ネリー、用意はいい?」

「う、うん……これで最後だよね?意外と早かったね」

「まあ、サイアが囮になってくれたから、動きやすかったからね」

 

初めての任務としてはサクサクと進んでいるので、割と落ち着いてきたネリーが話しかける。対する零も無表情ながら、しっかりとネリーに答え、最深部へと進んでいく。

だがそこで、ピタッ。

零が急に止まり、後ろをトコトコとついてきたネリーが背中に顔面を突っ込む。

あう、と後ろから聞こえてくる可愛らしい声とは裏腹に、零は前方をじっと見ている。

見つめている通路の先には大きな扉があり、先に行くにはその扉を開けていくようになっている。

 

「ど、どうしたの?」

「……いる。ざっと130といったところ」

「ひゃっ……ひゃくしゃんじゅふ……」

 

敵がいること自体は予想がつくが、言い放たれたあまりの人数に、驚きの声をあげようとする。その口を素早く手で塞いだ。

事実零が言った通り、扉の向こう側の広場には100人を越える武装した者達が待機し、扉の前にも4人張り付いている。

 

「恐らくサイアが通信機を使っているところを見られて、他の侵入者がいるという予想が確信に変わったんだろう。全員武装しているようだし、3階にあった資料とは段違いの情報がありそうだね」

「どう、するの?その人数じゃ、見つからないようにするのはできないよ」

「なら簡単な話。――強行突破だよ」

「……え?」

 

言うが早いか、スタスタと扉に近付いた零は、右足を高く振り上げた。

この時の零の考えとしては、蹴りで扉を強く開けることで、扉に張り付いているであろう数名を無力化。更に他の者にも多少なりとも動揺を与え、その隙に殲滅する、というものであった。

そう計算された結果を頭に浮かべながら、降り下ろされた右足は……。

――零に、産まれて初めての『誤算』を生み出した。

零の(かかと)の部分が扉に当たると、扉と壁の設置部分が見事に破壊され。

無力化程度と考えていた張り付いている敵を、壁に伝わった衝撃波のみで吹き飛ばし。

支えを失った扉は、衝撃によって音速を越える勢いで敵の大群を薙ぎ倒していく。何故扉自体が壊れないのか疑問に思うほど、その威力は凄まじかった。

結果、130程いた武装集団は、飛んできた扉だけで半壊。70人程が生命活動を停止した。

残った者達は何が起きたのかが脳で処理仕切れず、構えていた武器を解いた。これを狙っていたハズの零も、まさか蹴りだけで半数以上が消えるとは思っていなかったので、この隙に攻撃することができず、固まっていた。

後でネリーに聞いたところ、「(かかと)が肉食動物に見えた」とのことだ。

これが、後の零の処刑技になる、初めての『踵落とし』である。

 

「――れ、零くん。今のうちに……」

「……うん」

 

しばらく足を降り下ろした状態で固まっていた零だが、ネリーに話しかけられたことにより、脳が再び回転する。それと同時に武装集団もようやく事態を把握して、解いた武装を構え出した。

半数以上が死体となっても混乱する者がいないということは、それなりに修羅場をくぐり抜けてきたのだろう。恐らくは、ここの研究者達に雇われた傭兵達のようだ。

だが、いくら傭兵達が集まろうと、音速を越える零には関係ない。

指揮官らしき人物が発砲の合図を出す前にネリーの手を掴みつつ、その手に握られているナイフで目の前にいる10人程の首元を斬りつける。その内の一人から連射可能な銃――M4を奪い取り、20人(装填数分)の眉間を正確に撃ち抜く。

発砲した先に相手がいないことを認識するまでに、背後に周り、一閃。同じく首元を(えぐ)り、武器を奪い正確に撃ち込む。

指揮官が気付いた時には、もう遅い。周りは血の海になっており、先程まで武器を構えていた部下が、今はうつ伏せに倒れてピクリとも動かない。

代わりに立っているのは、年端もいかない幼児幼女。こんなこと、許されていいだろうか。

 

「あ、ああ……アアァーッ!」

 

一人だけになった指揮官が、部下の(かたき)と言わんばかりに銃を捨て、単身で殴りかかる。零はそれを避けず、豪腕の鉄拳を右手一つで受け止めた。

 

「何なんだ……何なんだよ、お前はっ!一体誰なんだよっ!」

 

部下を卑下にする指揮官なら命乞い等をしてくるが、この相手はどうやら部下思いの人物らしい。そこには少し、好感が持てる。

――まあ、少し『1』が多めの、有象無象だけど。

心の中でそう思い、さて、質問にどう答えようと零は考え……(わら)う。

 

「――ただの、化け物だよ」

 

そう答えた零は、相手の腕を掴んでいる右手を軸に、パルクールの要領で回転。そのまま相手の頭に目掛けて――

 

(『回転式踵落とし(サイクロン・ヘルヒール)』)

 

パッと頭に思い浮かんだ技名と共に、踵を振り落とした。

グシャリ。

踵に確かな手応えを感じながら、地面に着地。そのまま辺りを見渡すと……指揮官だったソレの全身が、壁に投げつけられたトマトのようになっており、辺り一面に血が飛び散っていた。それにより、零は確信する。

 

(何か僕、異常に踵落としが強い……)

 

自分の新たな才能を知ると同時に、『回転式踵落とし』の方は封印しようと考える。いくら敵であっても、このような(むご)たらしい最期は可哀想だ。掴んでいた指揮官の片腕をポイっと捨てながら、零はそう思った。

そこに、トテテ。

130を越える死体の山には目もくれず、ネリーが零の元へ走ってくる。

 

「終わったね……」

「うん。とりあえずこの先にある部屋に行こう」

 

広場の先にある扉を指差しながら、歩き出す零。それにトテトテとついていくネリー。ここだけ見れば可愛らしいものだが、背景が公園ではなく血染めの広場であることには違和感を禁じ得ない。

そのまま部屋の扉に到達した零はパスコードを電気を操って強引に開け、中に入る。そこには、三階には比べ物にならない程のファイルやメモリーディスクが置いてあった。

中身を引き出したり写真に収めたりする作業に入り、30分を過ぎた辺りで終了。サイアの方に連絡を入れると、そちらもあらかた片付いたようだ。

任務完了。零達の初任務は、危なげなく終了したのだ。後は、帰投するだけ。

 

「ネリー。帰るよ」

「うん!」

 

終了したことにホッとしたネリーが元気良く答えるのを他所に、零は時限爆弾を設置する。最後の爆弾を一つの机の下に潜り込んで設置したところで、気付く。

何かが、落ちている。

石のような物に、ヒモが付いている。ネックレスのようなモノだろうか。色が視えない零にとって、その石のようなモノが何かは分からないが……。

何故か、それに惹かれた。

 

「零くん……何やってるの?」

 

机に潜り込んでいるため、ネリーは零が何をやっているのかが分からない。零はその惹かれたネックレスを首にかけ、服の中に仕舞うと、なんでもないと言って部屋から出る。そしてサイアに通信を繋げ、その研究所を後にした。

――その石が、ルビーの宝石とは違う(あか)い色だとは、誰も知らずに。

 

 

 

 

 

それから二年と半年が過ぎ、零は4歳の誕生日を迎えた。他の4歳児が元気に外で遊んでいるのとは裏腹に、零達は数々の仕事をこなしてきた。基本的にはサイアが突撃し、零がカバー。ネリーは書類の破棄といった比較的安全なモノを担当していた。

初任務時に通信機を見破られたことから腹話術を覚えたり、本名を使うのは危ないとのことで偽名を使うことにしたり。

一回()に夜中に出ていく所を見つかり、即座に超能力(ステルス)で眠らせて記憶を消したこともあった。哀れなり、錐椰(きりや)(まもる)

 

「――ぃ。おい、零。聞いてるのか?」

 

トントンと肩を叩かれて零が顔を上げると、少し不機嫌な様子のキンジが、眼前まで顔を近付けていた。

周りは色々な遊具が置いてある公園。その砂場の所。どうやら零は少し考え事をしていたらしい。

 

「……ごめん、聞いてなかった。何?」

「まったく……今度の土曜日に、兄さんと青森に行く予定があるから、零も一緒にどうだ?って聞いたんだけど」

「青森……?」

「うん。何か神社に用があるんだって。えっと、ほ、ほと……ホトトギス神社?」

「……鳴かされたり待たれたり殺されそうな神社だね」

 

キンジの記憶力の低さを垣間見たのはさておき、零は少し悩む。

任務が入ったら途中で抜け出せば良いだけだし、そもそも事前に通知が来るため当日直ぐに、ということはあまりない。親の心配も、守なら多分キンジと行くと言えばOKを出してくれるだろう。

 

「……行くよ」

「よしっ。なら兄さんに伝えてくるっ!また土曜日になっ!」

 

言い切ったと同時に、キンジは走り去って行く。4歳になったというのに、落ち着きがない。砂場に一人ポツンと残された零が考えていることは、それこそ4歳児の思考ではないだろう。

――そして時は流れ、その土曜日。

朝早くに部屋に上がり込んだキンジと金一に叩き起こされ、新幹線に揺られながら朝御飯を食べて、青森へと到着した。

そして着いた場所は……。

 

「――星伽神社(ほとぎじんじゃ)……」

「そうだ、ここに用がある。入るぞ……ああ、ここは男子禁制だから、なるべく静かに入るんだぞ」

「えっ」

 

白黒の世界ながらも存在感のある神社に見とれていると、金一の口からサラリととんでもないことが告げられた。

男子禁制。つまり、男は入れない。じゃあ、零達は?勿論男である。それなのに入るということは、あれか。

 

(女装……?確かに、金一さんは()()()()()()得意だろうけど……)

 

その場でうんうんと、検討違いなことを考えながら歩く零。これを金一が知ったら顔を真っ赤にしてキンジに八つ当たりするだろうが、勿論金一は零がそんなことを考えているとは思ってないので、目の前にある石段を登りだす。知らぬが仏とは、このことである。

百三十五段ある石段を登り、鳥居を潜ると……そこに、一人の少女がいた。

前髪パッツンのおさげ。髪色は日本人なので黒と認定。

線が太く視える――重要な人物であると零が判断できるその少女は――巫女(みこ)

 

「は、初めまして。私、星伽(ほとぎ)白雪(しらゆき)という者です」

 

礼儀正しく、しっかりと挨拶してきた少女――白雪を視た零は何故か……。

白雪の周りに、鉄柵のようなモノが視えた気がした――




はい、どうでしたでしょうか?

前書きに書いていたお知らせと言うのは、この小説の展開についてです。
どうやら、自分が予定していたよりも遥かに長くオリジナル章が続きそうで、いつになったら原作に戻るか分からない状態です。そこでこれからは、オリジナル章と原作章を一話毎に更新していくようにしたいと思います。
4章一話→オリジナル一話→4章二話……といったように。なるべく矛盾点を作らないように頑張りますので、宜しくお願いいたします。

次回は4章一話です。お楽しみに!(´・ω・`)/~~バイバイ。

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