緋弾のアリア~Sランクの頂き~   作:鹿田葉月

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はいどうも、お久しぶりです。鹿田葉月(*`・ω・)ゞデス。

少し他の事に興味を持っていかれて、執筆意欲が無くなっていました……遅れてしまい、申し訳ありません!こんな作者ですが、どうかこれからもよろしくお願いいたします!

kamitohitoさんに評価1。
結城さんに評価5(コメ付)。
レミレイさんに評価9。
rikuoさんに評価10→9。

を頂きました。ありがとうございます!

では、第03話、始まります。


第03話――違和感

「零、どうだった?(まがね)さんとキンジくんは?」

 

日本に来た本来の目的の為に再開もそこそこに別れ、守の実家に入った二人。

久し振りに出会った鐵と、その孫であるキンジとの出会い。それを零がどう感じたのか、(まもる)は非常に気になった。零は感情が豊かな方ではない。それ故に物事をどのように捉えているのかが分かりにくい。だから直接本人に問いただす。

 

「ん……二人とも()()()()

「『太かった』?」

「うん」

 

良い人そう、とか元気な子、とかと言った感想が来ると思っていたが、結果は予想の斜め上。まったく意味が分からない感想に、守は困惑する。

 

(『太い』というのは、どういう事だ?普通は人の事を『太い』というのは肥満体やゴツい人のことを指すけど、鐵さんやキンジくんはそれに該当するような体格じゃない。では一体……)

 

考える守を、ボーッとしたような表情で見つめている零。その視線に気付き、一度考えることをやめて広い縁側を歩き、(ふすま)のある部屋の前で止まる。スッと襖を開けると、10畳ほどある部屋の中に、ポツンと一つの布団が引いてある。

 

「親父、久し振り」

「……なんだ、守か。来なくていいと言っただろうに」

「そんな訳にも行かないよ。それにほら、今日は零も連れてきたよ」

 

守が声を掛けると、布団から白髪混じりの初老の男が顔を覗かせた。守は年齢がそこそこ経った後に生まれたので、守が30歳になったばかりにも関わらず、もう65歳になっている。

その守の父親、零の祖父に当たる初老の男性は零のことを見つめ、少し笑う。

 

「初めまして。君のお爺ちゃんだ。何も無いところだけどゆっくりしていってくれ」

「はい」

 

簡潔的に行われたやりとり。二人とも自発的に喋らない性格なので、後が続かず無言の間になる。初夏になり、セミが少ないながらも自己主張の激しい求愛行動(うるさい鳴き声)が余計に静かさを引き立て、守はどうすればいいかと頭を抱える。

すると、どうだろうか。玄関の方からガラガラと引き戸を開ける音が聞こえ、ドタドタと縁側を誰かが走ってくる。

 

「れいー!いっしょにあそぼー!」

 

バンッと(ふすま)を開ける時に鳴らしてはいけないくらい音を立てて開け放ったのは、先程出会った黒髪の少年――キンジが、元気良く姿を現した。そしてキョロキョロと辺りを見渡し、祖父の前で座り込む零の姿を認めると走ってかけより、腕を引っ張る。

対する零はいきなり腕を引っ張るキンジにされるがままに立ち上がりつつ、守の方を見る。このまま行っていいの? と言外に伝えてくる。

 

「いいよ、零。いってらっしゃい。キンジくん、零のことをよろしくね」

「分かったー!」

 

祖父との挨拶も済ませたし、須郷(すごう)さんの通信教育以外には零がする用事はない。それならこのままキンジと遊ばせるのが一番だろう。そう判断した守はキンジに零を任せた。

対するキンジはいきなり他人の家に上がってきたことを悪びれもせずに、最近テレビで知った敬礼のポーズを取ってどや顔を決めている。

そして敬礼を解いた後、再び零の手を引きドタドタと走り去っていく。元気一杯なキンジに対して表情に乏しい零。これが15年後には『ネクラのキンジ』と呼ばれていたり社交的で話の中心にいる人物になっていたりするから、世の中どう転ぶか分からないものである。

――さて。靴を履いて一気に玄関を飛び出したキンジに待っていたのは……怒りに肩を震わす、零達より一回り大きい一人の少年だった。

 

「……キンジ、人の家に勝手に上がるなと言っただろう」

「うっ……え、えっと」

「えっと、じゃない!お前はいつまで人様に迷惑をかけるんだ!」

 

言い訳を考えているキンジに向かって、その少年はキンジの頭を両手で掴んで上体を反らして……。

――ガツンッ。とキンジの頭が割れるのじゃないだろうかと心配になるほどの強烈な頭突きをかました。

あまりの痛みにキンジは涙目になりながら転がり回り、その少年はふうっ、と息を吐き、そこで初めて零の方を見る。茶髪だがどことなくキンジに似ているので、兄弟なのだろうか。

 

「初めまして、零くん。キンジからさっき名前を聞いたよ。――遠山金一、キンジの兄だ」

「初めまして、錐椰零です」

「見ろキンジ。零くんはこんなにしっかりしているじゃないか。それに比べてお前ときたら……」

「そ、そんなことより、れい!あっち行こーぜ!」

「あっ、こら待てキンジ!」

 

痛みから割と早く立ち直り、兄からのお説教は聴き飽きたと言わんばかりに首を振り、零の手を引いて走り出すキンジ。なされるがままの零は、鬼の形相で追いかけてくる金一を見て、一言こう呟いた。

 

「やっぱり……『太い』」

 

 

 

 

 

「――来たね、零君」

「おっせぇな!呼ばれたならさっさと来いよ!」

「……日本じゃ朝5時。お父さんを起こさないように分身置いて飛んでくるのは流石に時間かかる」

「れ、れいくん。やっほー……」

 

時刻はイギリスで20:00。『特殊児童捜査研究家』の施設にて、日本にいるはずの零の姿があった。その零を待ち受けていたのは、須郷とサイア、ネリーの三人。

――零がここに来た理由は、メールで通知が来たためだ。

キンジに引っ張られて色々と走り回り、金一に捕まってキンジが説教を受け、その後結局弟に甘い金一と三人で意味もなく遊び回った。

そして帰宅した後そのまま夕食を食べて就寝していたのだが……須郷から貰ったタブレットが振動し、それで零が起きて確認すると、受信表示が赤く点滅していた。

何かと思って見てみると、『守殿にバレないように、今すぐ一人でくること』と、まるで脅迫メールのような表現で無茶ブリをかましてくれていた。

すぐさま零は隣で寝ている守にバレないように着替えて、それでももう少し時間が経てば自然と起きるであろう守への対策として、超能力(ステルス)で分身を作り、そのまま瞬間移動してきたのだ。まるで漫画の最強キャラのような行動を平然と行って現れた1歳児だが、最早他の三人にとっては、『零だから』の一言で済ませるようになった。

 

「それで、呼ばれた理由は何ですか。須郷さん」

「ああ……実は『能力検査』の結果、三人とも規定値に達していると判断したため、今から君達に『任務』を与えることになった」

「『任務』……?」

 

何のことか分からない零は疑問を口にしたが、サイアとネリーは黙ったまま須郷の話を聞いていたので、先に『任務』のことについて理解していたのだろう。

そう言えばちょくちょく、サイアが『任務』とか『使えない』とか発言していたのを思い出す。今回の集まりでは、それが該当しているのだろうか。

 

「実は私達は、特別な子供達を一般社会に馴染ませるなどといったことはしていない。『特別な子供達の集団で裏の世界を平穏にする』といったことをしているんだ」

「……」

「『能力検査』を行ったのは、その裏の世界で生き残れるかどうかを確認したかったため。もし規定値に達していないなら表通りに教育するだけだが、君達は規定値に達していたために、()()()に来てもらうよ」

 

驚きもせず静かに話を聞いている零に、須郷は言葉を続ける。

・普通の警察や武偵が扱えるような規模のモノではないため、一般殉職率は全て9割越え。

・任務の依頼については、誰にも言わないこと。

・仕事の依頼は不定期に、かつメールで届けられる。

内容を纏めると以下の3つに纏められる。『任務』について内容が教えられなかったのは、秘密裏に行動する集団なので情報が漏れるのを防ぐためだったのだろう。

だがそのことについて、零に一つ、疑問が浮かんだ。

 

「須郷さん、質問が」

「何かな?」

「情報隠蔽するのは分かりました。だけど、何故最初からサイアとネリーが『任務』について知っているようだったのか、気になります」

「ああ、それはだね。この二人には事前に伝えていたからだよ」

「理由は?」

「――お金だよ。お金。俺は金でコイツラと契約したんだよ。どっかから俺の事を知ったコイツラが家に来てさ、最初は一般人のように育てるとかなんとか言ってたけどな」

 

零の疑問に答えたのは須郷ではなく、その隣で手を頭の後ろに回しながらニヤニヤと笑っているサイアだった。

 

「そんな嘘、すぐに分かった。連中人の良さそうな顔して、心の中では笑っているんだよ。頭に来たからちょっと痛めつけたら本当のことゲロってよ。依頼金が結構あるっていう話だから、乗っかっただけだよ」

「……とても一歳児の発想ではないな」

「おめぇが言えるセリフじゃねぇよ」

「それで、ネリーは?君はお金に釣られるような子じゃないだろ?」

 

サイアからの思わぬ反撃に何も言えず、すぐさま照準をネリーに切りかえる。この人見知りの激しい子が須郷さん達を返り討ちにする度胸はないはずだし、お金目的で来るような子じゃないことも分かる。

そう思いながらネリーの方を見ると……ネリーは、顔を伏せて何も話さない。

どこか調子が悪いのだろうか、と確認するためにネリーに近づこうとすると、ガシッ。

サイアの隣にいた須郷に肩を掴まれ、止められた。何かと思って横目で須郷を見る。須郷は零の視線に合わせるように膝を曲げ。

 

「――ネリーちゃんは、捨て子なんだ」

 

と、なるべく本人に聴こえないよう、小さく呟いた。

 

「生まれてから数ヵ月経ったある日、母親に抱かれていたネリーちゃんが泣き出したと思ったら、急に周囲に竜巻が発生して母親を襲ったんだ。重症を負って入院した母親に対して、ネリーちゃんはまったくの無傷。その後もネリーちゃんが泣き出す度に竜巻が起こり、ネリーちゃんが原因だと判明。それで恐ろしくなったんだろうね。たまたまフランスに用があって街を歩いていた僕が、ボロボロの状態で倒れているネリーちゃんを発見して今に至る、ってことさ」

 

話終えた須郷からネリーへと視線を(うつ)した零が見たのは――初めて会った時から持っていた、うさぎのヌイグルミを抱き抱えながら、涙を堪えているネリーの姿だった。

もっと早く超能力を自制できていれば、今彼女はここにいなかっただろう。

生まれながら人とは違う『モノ』を持つ者。周囲からは天才と呼ばれる者。だが当人にすれば、それは決して、喜ばしいものであるとは限らない。

今のネリーに、かける言葉は見つからない。須郷はそう判断し、任務の話を続けることを決める。

だが、資料を渡そうと持っていたファイルを開いたと同時に、気付く。零が、いつの間にかネリーの前に立っていたのだ。

ここで今情緒不安定なネリーの琴線に触れて、能力が暴走してしまう可能性がある。止めようと動く前に零はネリーに腕を伸ばし……。

――ポンッ。とネリーの頭の上に、その小さな手を置いた。下を向いていたネリーはその突然の感触に驚き、顔を上げて目の前の零を見る。

零は頭の上に手を置いたまま、何もしない。その表情の乏しい顔にネリーは戸惑い……それで顔から力が抜けたのか、ツゥ、と溜めていた涙を流した。

 

「……ん。良し」

「え、えっと……?」

「これから任務が始まる。一緒に頑張ろ、一緒に」

「一緒に……?」

「うん。少なくとも、ここにいる三人は」

 

そう言って手をネリーの頭から離し、須郷の元に戻る零。ネリーはそれをしばらく呆然と見つめ……やがておずおずとしながらも、しっかりと須郷の話を聞くように近付いた。

 

「……零くん、ありがとう。ネリーちゃんのこと励ましてくれて」

「別に……ただ、()()()()()だったから」

「『視える相手』……?」

「――おい、須郷さんよぉ!いつまで待たせるんださっさとしてくれ!」

「あ、ああ。スマンな。じゃあ、『任務』の資料を渡すから、皆受け取ってくれ」

 

零の言葉に引っ掛かりを覚えた須郷だが、サイアからの催促に思考を切り換え、三人に資料を渡す。

各自資料に目を通したことを確認した所で、須郷は『任務』についての話を始める。

――後に、『GOW』という6人のチームとして裏の世界で暗躍する初の『任務』は……。

 

「今回はこのメンバーの初めての『任務』なので、とりあえずは軽く――『裏の研究施設の破壊』から行こうか」

 

須郷の軽い調子の言い方から告げられた、とても軽くはないモノから行われた――。




どうでしたでしょうか?

季節の変わり目ですので、皆様も風邪を引かないように注意してください。

それでは、ごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ。

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