申し訳ありません。年明けから都合が重なり、時間が取れませんでした。しかもまだ都合が残っているという……辛い。
紫銀の召喚士さんに評価9→10!
オンリーさんに評価7→9。
を頂きました!ありがとうございます!
それでは、第02話、始まります。
衝撃のタイムを叩き出した零に衝撃を受けたのもつかの間、大人一人と幼児三人の能力検査が再開された。
次に行われたのは、握力測定。使用される測定器は子供用に小さく作られているが、値は300㎏まで計れるという優れものである。
今回は三人とも一斉に始めるということで、それぞれ測定器を片手に握る。
「アレ、零君は左で持つんだ?」
「左利きなので」
「日本人って、左利きが少ないって聞いたことある……」
「一応クォーターだけど……それより、始めようよ」
「ああ、そうだな。それじゃ――始め」
グッ――。
須郷の合図と共に、三人とも手に力をこめる。
――バキッ、ガシャッ。
直後。握力測定には似合わない、鈍い効果音が響く。
「スミマセン……壊れました」
そう報告してきたのは、やはりと言うべきだろうか。
手のひらに残った測定器の取手だった残骸を見つめながら、無表情の黒髪の幼児である、零であった。
その零の足元には、取手部分を失って重力に逆らうことなく落下した測定器。自らも測定中であるサイアは動きが止まり、ネリーは何度も零の手のひらと足元へと視線が行ったり来たりしている。
実際には壊れたのではなく、零が力業で壊したのだが。
「次は加減してやります」
「それだと握力測定器ではなくて、握力調整器となってしまうのだが」
「では、どうすればいいのですか?」
「ハァッ……零君の記録、『測定不能』で」
「分かりました」
淡々としたやりとりをし、それ以上やらなくてもよいと言外に伝える。実際、300kgまで計れる測定器を一瞬で壊したのだ。これ以上計ることはできないだろう。
ちなみに。隣で負けじと頑張っていたサイアは70kg。ネリーは2kgしかなかった。
――それからも、三人の能力検査は続いた。反復横飛や長座対前屈など、日本で言うところのスポーツテストや、モニターに一瞬だけ映る続いた数字を計算していくモノや、テニスコートで赤・青・黄色に分けられたボールをランダムに出され、それを反対側に設置された同じ色のカゴに正確に入れるという、特殊なモノも行った。
サイアは身体が固いのか、長座対前屈を苦手としていて、逆にネリーはそれだけは一番柔軟に行えた。
そして零に至っては、独壇場といっても良いレベルであった。特に計算においては、200以上出題された10桁以上の計算を、暗算で即答していた。
しかし、その零がまったくといっていいほどできなかったのは、最後のテニスコートでの検査。
ボールをカゴに打ち返すのは良いのだが……色がまったく別。赤色のカゴに黄色のボールを入れたり、青色のカゴに黄色を入れたり。
結局、正しく入ったのは20球中3球。サイアが18球でネリーが10球なので、一番下ということになる。
ここまで完璧だった故に気になる所ではあるが、単に動体視力が悪いだけだろうと須郷は思い、特に深く考えなかった。
「――さて、次の検査で最後だ」
「やっとかよ。いい加減飽きてきた」
「規定なんだから我慢してくれ。零君やネリーちゃんは文句一つ言ってないだろ?」
「チッ……まあいいや。で?次は何するんだ?」
「――
「なら、俺からいくぜ」
言うが早いか、順番を決める前にスタタタッと運動場の中央に向かうサイア。
ネリーと零が何もないので、特に異論はないのだろう。というか、二人が反論するようなタイプではないことはこの短い時間の中でも充分にわかることだ。
中央地点に着いたサイアはくるりと振り返り、須郷が検査の準備が完了したという合図を確認する。
「よっしゃ。なら……いくぜッ!」
子供特有の高いテンションで、サイアが右腕を前に出す。
すると、タプンッ――。
サイアの目の前に、大きな水の固まりが現れた。
「ほう……サイア君は『水』か」
「うりゃっ!」
ヴォンッ。
須郷が検査用紙に書き込む中、その水の固まりが形を変える。
フヨフヨと浮いていた水がサイアの手に収まり、細長くなり――剣のようなモノになった。しかもただ形を型どった訳ではなく、刃渡り部分にあたる所が振動している。
それを手にしたサイアはブンブンと振り回し、運動場の地面を斬りつける。斬られた部分はキレイな断面になっていた。
「――検査終了。サイア君、OKだ」
「へっ。まあこんなもんよ」
手にしていた水の剣を手放し、ドヤ顔で戻ってくるサイア。100メートル走の時とまったく変わらない仕草に、須郷は思わず苦笑した。
「次はネリーちゃんだ。準備してくれ」
「う、うん。分かった……」
少しは須郷に
「……つうかよぉ、アイツ本当に使えるのかよ、須郷さん?ここまでまったく良いとこないし、ダメなんじゃね?」
「……『使える』?一体何の話?さっきの『任務』のこと?」
サイアがネリーについてダメだしを口にするが、その言葉に引っ掛かりを感じた零が須郷に問いかける。
「零君が疑問に思うのは分かるが、それは後々説明しよう。それよりサイア君――気を付けた方が良い。じゃないと危ないぞ?」
「は?何言って――」
「ネリーちゃん、始めてくれ!」
サイアの疑問を遮って、ネリーに合図する。それをネリーが確認し……。
――突如、突風が吹き荒れた。それも徐々に吹き荒れるのではなく、いきなり台風が目の前に発生したような感じで。
言葉を発する余裕すらなく、踏ん張ることもできずに地面から足が離れる。
その状況にサイアは慌てて空中で水を張って吹き荒れる風によって飛んでくる測定器類から身を守り、事前にネリー本人から自身の能力を聞いていた須郷は、いつの間にか風の範囲外である安全な場所に避難していた。
なお、零は風に流されるがままに飛んでおり、飛んでくる測定器類を蹴りで次々と壊していた。
「ネリーちゃんの
「おい!そんなことよりさっさと止めろよ!危なくて仕方ねぇぞ!」
「おっとすまなかった。ネリーちゃん、検査終了だ!やめていいぞ!」
冷静に観察している須郷に、サイアの怒号が当てられる。
実際のネリーの
そう判断した須郷はネリーに声を掛けるが……風が消える気配が一切無い。
おかしいと思い、ネリーの方を見れば……風の中心で、アタフタとしている様子だった。
「――まさか、自分で止めることが出来ないのか!?」
自分で消せることが出来ると考えていたため、予想外の出来事に驚きを隠せない。このままではいつ消えるのかが分からないし、子供達にケガがでてしまう危険がある。
サイアは上手く身を守っているし、零はそもそもなんとも無いかのようにしているが、この状態になってしまっている本人であるネリー自体に風の影響が及ぶかもしれない。自分で制御できない以上、あり得ない話ではない。
「どうする……」
「――須郷さん、僕の番はいつ?」
止める方法を必死に考えていると、いつの間にか風から脱出していた零が、須郷の服を引っ張っていた。
「すまない。今はそれどころじゃないんだ。どうにかしてこの風を止めなければ……」
「ん。止めればいいんだね。分かった」
「なに?」
無表情であっさりと止める宣言をした零に、須郷は眉を寄せる。
零の父親である
しかし、その内容は精々が積み木を飛ばしたり、マジックショー程度の炎であったということも聞いている。それなのにこの台風並みの風をどうこうできるとは、とても思えない。
止めようと思い、零に近づこうとするが、その前に零が風の中に入り……。
次の瞬間――パシュッ、という音と共に、風が消滅した。
突然消えた風に、先程まで流されていたサイアが地面に落ちてきて、ネリーと須郷はポカンとした表情をしている。
「れ、零君……君は一体、何を……」
「同じ力の分の風を当てて、
さも当たり前のように述べる零に、須郷達は言葉を失った――。
「――零。突然だけど、日本に行くことになった」
『特殊児童捜査研究家』の施設で能力検査を終えてから数日後。検査を元に教育のスケジュールを組み立てるため、しばらくは自由にしていてくださいと言われて自宅にいると、守が医学の本を読んでいる零に向かってそう切り出した。
「日本?お父さんの生まれ故郷の?」
「ああそうだ。お父さんのお父さんが、急に体調が悪くなったらしくて、直ぐに行かなければならないんだ。お母さんはここに残るし、しばらくの間お父さんは日本にいることになるけど、零はどうしたい?」
「……行く」
「そうか。ああ、施設のことなら気にしなくて良いぞ。須郷さんに言ったら、『それなら通信教育にしましょう』と言ってくれたし。施設から帰ってくる前にタブレットもらっただろ?」
「うん。分かった」
「よし、なら行くか」
そう言って既に準備してあった零の着替え等が入ったカバンを持ち、零の手を引いて空港に向かう。
途中に何かあることもなく無事に空港に到着し、飛行機に乗り込む。
初めての飛行機に対して少しは興味があるのか、キョロキョロと辺りを見渡す零が可愛らしく、頭をぐしゃぐしゃと撫でては、零の頬がぷくぅと膨らんでいた。
――そして飛行機が離陸してから、数時間後。無事に着陸し、着いた先は、日本。
「ねぇ、お父さん。おじいちゃんの家は、どこにあるの?」
「ああ。おじいちゃんの家は、
「分かった」
タクシーに乗り換え、巣鴨にある守の実家に向かい、近くまできた途中から降りて、歩き始める。
商店街をかすめるようにして歩き、古い一戸建ての大い住宅街にでる。路地で遊んでいる子供達、チャリンコで
そして、次の角を曲がった所にある、少し大きい日本家屋が、守の実家である。
久々に訪れる自分が育った場所に懐かしさを覚えながら、その角を曲がる。
すると、我が家の目の前で、掃除をしている老人がいる。そしてその人を、守は覚えていた。
「――
「うん?……おお、守か!一瞬誰だか分からんかったぞ!」
「僕ももう大人ですし。鐵さんは相変わらず元気そうで良かったです」
「ハッハッハ!ワシはまだまだ死ぬ気はないからのう。お前こそ、イギリスの女のとこに行ったと聞いておったが、元気そうで良かったわい!」
この元気な老人の名前は、
鐵はひとしきり守を見て笑った後、守の手を引いている零の姿を見て、顔を緩ませた。
「ほう!守の息子か!」
「……錐椰 零、1歳です。初めまして」
「おお、しっかりした子じゃな!ワシの孫とは大違いじゃ!」
ガシガシと零の頭を撫でる鐵に、頬を膨らませる零。自分が小さい頃も、こんな感じで撫でてもらっていたな。
そう守が思っていると。
「――おじいちゃん!あそぼー!」
ドンッ。と鐵に飛びつく、一人の少年。髪と目は黒く、正に日本の子供。
「こら、キンジ。急に飛びつくでない。危ないじゃないか」
「へへっ、ごめんなさーい……ん?」
鐵の注意をさらりとかわした少年はこちらに気付いたのか、目の前までくる。
「おじさんだれ?」
「ああ。おじさんは錐椰 守っていうんだ。初めまして」
「ぼくはとおやまキンジ!はじめまして!」
子供らしく元気一杯に自己紹介するキンジに、やれやれと鐵が首を振る。ただその頬が緩んでいるため、なんだかんだで子供好きだということが一目で分かる。
そして少年は、零の存在にも気付き。
「ぼくはキンジ!よろしく!」
と手を出してきた。
「……錐椰零。よろしく」
零もそれに応えて手を出し、握手をした。
――これが、錐椰零と遠山キンジ。この二人の初めての出会いだった。
どうでしたでしょうか?
ようやく原作キャラを出せた……まだ他にもいますけど、これからキチンと出していきたいですね。
通算UA数200000突破!本当にありがとうございます!これからも頑張りますのでどうぞよろしくお願いいたします!
では、ごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ。