今年もいよいよ大晦日!皆さんはどのような一年をお過ごしでしたか?最後のしめは紅白ですか?ガキ使ですか?
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烏瑠さんに評価6。
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課したさんに評価9。
めぐめぐさんに評価9。
遊びの鬼さんに評価9。
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setuzetuna@0さんに評価10!
を頂きました!ありがとうございます!
では、今年最後の話、始まります。
「……何だ、これ」
扉を開けてから一拍おいて、零は再び疑問を口にした。
父親によく分からないまま連れてこられ、いざ扉を開けると、中には二人の子供。
恐らく同い年であろうツンツン頭の少年が、これも同い年であろう銀に近い白色の髪の少女に怒鳴っている。少女の方は涙目になりながら、自身が抱えているウサギのぬいぐるみを潰すぐらいの勢いで抱き締めている。心なしかウサギのぬいぐるみの瞳が揺れているように見えるのは気のせいであろう。
しばらくそのまま眺めていると、ピクッ。
白色の少女が、部屋に入ってきた零に気付いた。
そして、トテテッ。
まだ小さい足で懸命に走り、零の後ろへと回る。零の身体に自身の身体を隠れるように縮こまり、視線だけをツンツン頭の少年に向けている。
それでようやくツンツン頭の少年も零の存在に気付いたのか、ズンズンと近寄ってくる。
「おう、てめぇは誰だ。さっさと答えろ」
初見のハズなのに何故かキレながら、アメリカンイングリッシュでツンツン頭の少年は零に突っ掛かって来た。それを見た後ろの少女はひゃうっ……と可愛らしい悲鳴をあげて、零の服を引っ張っている。
自分に言われた訳でもないのに、どうしてそこまで恐がるのかと思いながらも、質問されたからには答えようと思い、目の前の少年と目を合わせる。
その服装はTシャツにジーパンとシンプルな物だが、所々が汚れている。
「……僕は、錐揶 零」
「ケッ。つまんねぇ名前しやがって。お前自身もつまんねぇ野郎だし、お似合いだな」
名前を聞かれたから答えたのに、どうして目の前の少年は悪態をつけてくるのか。それが零には不思議で仕方無かった。
理に敵っていないことや者は相手しない方が良いと本で学習していたので無視して立ち去ろうと思ったが、後ろの少女が目一杯服を引っ張っているので動けない。
服が伸びるのでそろそろ止めてほしいと思っていると、ツンツン頭の少年がチッ……と舌打ちしながら、部屋の隅に置いてあった長椅子にドカッと座り込んだ。どうやら興味を失ったらしい。
「
と、後ろから小さい声で言いながら、先程の少女が頭を下げていた。言語からするに、フランス人らしい。ワンピース姿の少女は大事そうにウサギのヌイグルミを抱えている。
フランス語は本を読んでいる内の翻訳で自然と覚えため、会話に支障は無い。そう判断した零は、その少女と向き合う。
「……ん」
「わ、私、ネリー・リチャードっていうの。あなたは?」
「……錐揶 零」
先程ツンツン頭に名前を言ったのを聞こえていないハズがないのに、何故もう一度聞いたのか。
そこを聞こうと思ったが、よろしくね、と花が咲いたような笑顔で手を差し出してくる少女――ネリーを見て、聞くのをやめた。
なし崩し的に握手することになり、それを見ていたツンツン頭がチッ……と舌打ちをしたところで、ガラリラ。
引き戸式の扉が不意に開き、それに驚いたネリーがビクッとしてサッと零の後ろに隠れた。
「ようお前ら。仲良く……やってるような雰囲気じゃないな」
「……
「おっ、良く覚えてるな。感心感心」
入ってきたのは、先程まで零と零の父親である守を案内していた、須郷という男だ。
須郷は零が自分の名前を覚えていたことに気を良くし……部屋の長椅子に一人で座っているツンツン頭の少年を見て、溜め息をついた。
「サイア君……周囲の人間との関係は大事だって言っているじゃないか」
「ハッ。俺は仲良しこよしをやりに来たわけじゃねぇんだ。それにそんなもん、
「あのなぁ……」
須郷が呆れているが、ツンツン頭の少年――サイアは悪態をつけるだけで取りつく島もない。
まぁいい、と言って再び零の方に向き直り、そこで須郷は零の後ろにネリーが隠れていることに気付いた。
「あー、ネリーちゃん?いい加減私のことを怖がらないで欲しいのだが……」
「お、おじさん怖いもん……」
「お、おじさん……」
ズーンという擬音がつきそうな感じで、須郷は落ち込んでいた。
一歳の子供三人の中で膝を地につけている大柄の男。先程からシュール過ぎる光景が続いているが、もしかしてここでは日常茶飯事なのかと零は他人事のように考えていた。その考えに至る一歳児というのが、一番シュールであるというのに。
「と、とにかく!三人には今すぐ能力検査を行ってもらう」
「……『能力検査』?身体検査じゃなくて?」
「君達の能力のスペックを計っておきたいんだ。どのような能力が使えて、どれくらいの力を発揮できるのか。それを知らないと、こちらとしても対処できないからね」
――成る程、と零は思う。確かに何も知らないまま接していて、いきなり超能力や思わぬ力で自分の身に危険がっ!となる可能性はある。
そしてそれは、須郷だけではない。特殊な子供である零、サイア、ネリー。この三人も、互いの能力で互いを巻き込むなんてこともある。特にサイアに至っては、ネリーに対してキレて使う可能性が非常に高い。
なら最初から相手のことを知っておけば、対処法も思い付く。今からやる検査には、そういった意味があるだろう。
「分かりました。僕は大丈夫です」
「わ……私も、です」
「零君とネリーちゃんはOKだね。サイア君は?」
「やらねぇと任務出来ないんだろ?さっさとやろうぜ」
「……『任務』?何のこと?」
「それは後ほど話すよ。それじゃ、三人ともついてきてくれ」
零の質問を後回しにして、須郷は引き戸の扉を開き、さっさと進んでいく。
それに黙ったままサイアがついていき、それに零がついていこうとして――ネリーが服を掴んだままなのを思い出し、仕方無く手を繋いで向かった。
教室のような部屋から出てきてやって来たのは、外の大きく広い運動場のような場所だ。10メートル毎にラインが引かれていたり、大きな囲いのような場所があったりする。測定用だろう機材も豊富に備えられており、準備万端といった感じだ。
まだ身長が100㎝にも満たない子供3人に対してこの設備はどうなのだろうかとなるのだが、それに関しては誰も触れない。
「……それで、このカッコは一体何なの?」
「何って、動きやすい格好だろう?」
「それはそうですけど……」
質問を質問で返されてため息をつく零の格好は俗にいう、体操服だ。それも日本の。
白い半袖のシャツに、黒い短パン。サイズこそ特注しなければならない程の小ささだが、動きやすさで言うなら抜群の性能を持つ。隣にいるサイアも文句はないのか、一足先に準備運動を始めている。
ちなみにネリーは恥ずかしいのか、モジモジしながらまた零の後ろに隠れた。どうやら避難場所と認識されてしまったらしい。
「まぁいいや……最初は何を測定するんですか?」
「最初は100メートル走からだ。誰からやる?」
「――もうスタンバイしてるから、早くやってくれねぇか」
測定する順番を決めようとすると、既にサイアがスタートラインに立っていた。どうやら本当にさっさとやってしまいたいようだ。
零とネリーから非難が出なかったので、須郷はそのまま片手に持っていたバックの中からタブレットを取り出す。どうやらゴールした時のタイムがタブレットの画面に表示される仕組みになってるらしい。
そして――カチャリ。
もう片方の手で、競技に使われる、音だけの拳銃を取り出した。
――パァンッ。
運動場に乾いた音が鳴り響き、それと同時に駆け出すサイア。
スピードがのり、一気にゴールへと向かい――
「――ラァッ!」
ダンッ。
力強くゴールラインを越え、声を上げるサイア。
タブレットに表示されたタイムを見る須郷と、それを覗き見する零とネリー。
――8秒02。それが、サイアの100メートル走のタイムだった。
「チッ。8秒切ってると思ったんだが……まぁいいや。どうせ俺が1位だろ」
世界記録を優に越えていると言うのに、少し不満げな表情で帰ってきたサイア。彼にとってはまだまだなのだろう。
「次、どちらからやる?」
「……僕は、最後で良い」
「じゃあ、ネリーちゃんからだな。スタートラインに立って」
「えっ……あっ、うん……」
サイアのタイムに眉ひとつ動かさない須郷と、そもそも表情の起伏が乏しい零に驚きつつ、ネリーがスタートラインに立つ。
そういえば、何故彼女だけ紺のブルマなのだろう。
さっきまで自分の後ろにネリーがいたために分からなかった事情が明らかとなる。
(……まあ、須郷さんの趣味だろうな)
少し考えた後、零はそのように判断した。
実際は須郷ではない者の趣味で準備した物であり、須郷はそれを持ってきただけなのだが、そんなことなど知るよしもない零はさりげなく須郷から距離をとった。
自分の株が下がっていることに気付いていない哀れな須郷は、ネリーがスタートラインに立ったことを確認すると、拳銃を空に向かって突きだし――パァンッ。
音に対して少し驚きながらも、ネリーはゴールに向かって走る。
走る。走っている。のだが…… 。
「おっそ」
「こらサイア君、そんなこと言わない」
そう、遅い。遅いのだ。懸命に走っているのは分かるのだが……遅い。サイアがゴールしたタイムで、ようやく5分の2を過ぎた所である。
「ハァッハァッ……ケホ、コホッ」
息も絶え絶え、足はフラフラと覚束ない。
結局、ネリーは27秒61というタイムでゴールした。結局といっても、1歳の幼女が100メートル走を完走したということ自体が凄いことで、先にサイアがとんでもない記録を叩き出してしまったために起こったことだが。
疲れてしまいおんぶしてもらっているネリーを須郷達の所に運んだ後、零がスタートラインに向かう。
「へっ。どうせてめーも遅い記録出すんだから、さっさと走れよ」
「サイア君、だからそのような言葉は……」
「良いですよ須郷さん。気にしてないので」
「ああん?」
零の台詞が頭に来たのか、苛ついた表情を隠そうともしないサイア。そのままガンを飛ばしているが、知らぬ存ぜぬといった感じでやり過ごす。ネリーは疲れて気付いていないのか、怖がらずに先程配られたペットボトルでコキュコキュと水分補給を行っている。
(……やれやれだな、これをチームにしないといけないのか。骨が折れそうだ)
その中で一人、須郷は小さくため息をついた。
まだ零には話してないが、先程サイアが口にした『任務』のことを考えていると、頭が痛くなる。
「――須郷さん、まだですか?」
その言葉に顔を上げると、零がスタートラインに立って首を傾げていた。どうやら考えごとに
すまない、と零に謝りつつ、拳銃を空に突きだす須郷。
「いくら俺に負けるからって、最後までちゃんと走れよ?」
「
その右横でサイアはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべ、少し離れた所でネリーが小さく応援している。
それには目もくれず、ゴールラインを見つめている零を見て、引き金を引く。
パァンッ――。
――ダァンッ!
「……は?」
サイアのマヌケな声が、静寂に響く。他の音が、ない。
ネリーが今日一番の驚いた表情をして、須郷も驚きを隠せない様子だった。
それは何故か――
「――須郷さん、タイムどれだけだった?」
――
涼しい顔をして戻ってきた零に対して、須郷は我に返り、タブレットを見る。
この設備はコンマ00秒までを正確に計れる物であり、先程までの二つもしっかりと測れていた。
そのタブレットに表示されている数字は……。
――『0秒00』。つまり、コンマ00以内に走りきったということ。
「は…ハハハ……」
あまりのできごとに、須郷は笑うしかなく……零は、無表情のままだった――。
はい、どうでしたでしょうか。
自分はこの一年間、色々なことがありました。
執筆活動二年目。お気に入り数1000件突破。ランキング入り……ハーメルン様の活動の中でも、これだけのことがありました。
これも全て、読んでくださっている皆様のおかけです。本当にありがとうございます。
では、よいお年を!(´・ω・`)/~~バイバイ。