テストとかバイトが重なって執筆出来ませんでした。待ってもらった皆様には申し訳ありません。
――さて、今日のこの時間を持ちましてこの作品。『緋弾のアリア~Sランクの頂き~』並びに自分自身の執筆活動が、ちょうど二年となりました!
この作品を読んでくださった方々。感想を下さった方々。お気に入りしてくださったり、評価をしていただいた方々には、頭が上がりません。本当にありがとうございます!そしてこれからも頑張りますので、よろしくお願いいたします!
というわけで、第0話、始まります!
――1983年10月10日。新たな生命がこの地に産み出された。初めて見る我が子に、苦痛を乗り越えて出産した母親は泣いて喜んだ。
小さな手に、短いあんよ。ヘソの緒が繋がったままのお腹等の全てが
その子の名前は、
そんな思いを受け取った小さな命は、その存在を知らすかのように大きな産声を――あげなかった。
その様子に助産師の間に緊張が走り、母親の頭に不安がよぎる。何故なら、赤ちゃんは泣くということは、自発呼吸ができているということだからだ。
産まれてから一瞬泣かない赤ちゃんはいるが、その場合は足を少しつねることで泣かせる。
だが、助産師がそれをしているのにも関わらず、産声をあげない。つまり、呼吸ができていないハズなのだ。――通常は。
「……What?」
その声をあげたのは、はたして誰だったのか。いや、誰が最初であっただろうか。
皆の視線が交わっている場所、そこにいる子供は――胸を上下させて、呼吸をしていたのだ。
更にはもう既に目を開けていて、辺りをキョロキョロと見渡している。誰だ、お前ら――そう言いたげに。
前代未聞の状況に、助産師達は不気味に思ったが――母親は違った。長い時間苦しい思いをしながらもようやく授かった我が子を、慈しむように胸の中へと納めた。
またそれは、後に出産したことを聴いてドアを破らんばかりに入ってきた父親の方も母親同様に純粋に喜んだという。
これが後に世界に名を
零が誕生してから数日間。両親や周りの者が、零の異変に気付く。
まず、泣かない。異様な誕生光景から一度もである。赤子というのは自分では何も出来ないため、泣くことで周りの者に意思表示をするものである。
メイドや執事はいるが、我が子ではない子供のことを完璧に分かるという者はいない。そのため、零が泣かないというのは異常であるのだ。
なので、メイドや執事達は零が何をどのタイミングでして欲しいかが分からないハズだが……ここでまた、『普通』ではないことが起こる。
「零様、お食事の方は
「……」
ふるふる。
「では、お昼寝になられますか?」
「……」
ふるふる。
「それでは、積み木などをご用意致しましょうか?」
「……」
こくり。
「では、ご用意致しますね」
「……」
こくり。
床に座り込んで頷く零にメイドが反応して動き、遊び道具である積み木等を取りに行く。
……さて。改めて確認するが、零はまだ産まれて数日が経ったばかり。まだ録に言葉も喋ることが出来ず、自分の手足が動かせるということに気付いていないような時期である。
それが、
発達が早いというような次元ではない。産まれた時から既に言葉を理解しているかのように、零は大人達の言葉に反応していた。
そんな積み木を規則正しく積み上げていく零を見ながら、仕事が終わり時間が取れた零の父親――
息子の異常な行動に不安を覚えていない訳ではない。やはり周りの子供と比べてしまう部分はある。
だが、それがどうした。医者にも病気ではないと言われた以上、その程度で愛する我が子を不気味がることなど、どうして出来るだろうか。
積み木で遊ぶのに飽きたのだろう。土台としている一番下から一つずつポイポイと抜いていく零を見て、一緒に遊んであげようと思い、椅子から立ち上がる守。
そのまま零の側まで歩いていき、しゃがみこんだ所で――積み木が倒れていないことに気付く。
「……?」
たくさんの積み木を土台にしていれば、1個や2個取り除いたとしても倒れないことはある。
だが今零の目の前に置いてある積み木は、土台全てが取り除かれているのだ。なのに、倒れない。それどころか、
スゥ――。
目の前に起きている光景に呆気に取られている守の横で、零が積み木に対して指差す。そしてそのまま、指を頭上へと上げる。
すると、どうだろうか。積み木が零の指に釣られて、フワフワと浮上しだしたではないか。
自分の頭上へと積み木が来たことを確認した零は、今度は積み木を入れるおもちゃ箱へと指差す。それと同時に積み木も動きだし、ストンストンとおもちゃ箱の中へと入っていく。
完全に固まってしまった守を横に、零は興味を失ったかのようにあふぅ、と一つアクビをした――。
それからというもの。守は異常すぎる息子に対して、様々な情報を集めていた。
自分や愛する妻は、零のことを決して見放さない。が、周りの子供達は違う。周りとは違う零は、もしかしたら仲間外れにされてしまうかもしれない。
他にも零のような子供がいるか、また零がしっかりとした生活ができるのか。時にはネットで調べた怪しげな場所にも出向いてでも零のことを思って行動して……一年が経過した。未だに有益な情報は無く、その間にも更に零の異常は続いた。
言葉を喋ることが出来るようになってもあまり喋らず、立てるようになってから父親の執務部屋から辞書を引っ張り出してきて読み込む。
父親を驚かせた超能力は、今や日常的に使用。それもサイコキネシスだけではなく、風・水・炎……等を、自由に使っている。
あまりに人とかけ離れている現象に不気味がり、辞めていくメイドや執事達も出だした。残っている者も、どのように応対すれば良いのか分からずに困っている。
「ダメだ……何一つ分からないまま。このままじゃ零は……」
自分の執務室である椅子に座りながら、頭を抱える守。
そこに、コンコン。
「守様。お客様がお見栄になっています」
「……
扉をノックして入ってきたのは、
その柊から客が来たことを伝えてもらったが、零のことを考えているためにそれどころではない守。誰かは知らないが、来てくれたのに申し訳無いと思いつつ、対応できないと柊に伝える。
「守様。それが――『特殊な子供のことについて』とのことです」
「――何っ!?」
ガタッ。
柊から聞いた内容に、条件反射で立ち上がる守。柊の顔を見ても真剣そのもの。嘘をついているような表情ではない。
「――通してくれ」
「はい」
柊にお客を呼ぶように伝えて、応接室に向かう守。その足は今の守の心境を表すかのごとく、どんどんと進んでいく。
この一年間。どれだけ頑張ってきても、まったく零のことについて分からなかった。息子の将来に不安を覚え、焦り、困惑した毎日。
それが、今日ついに……。
ガチャリ。
応接室につくと、そこには、一人の男性がスーツに身を包んだ状態でソファーに座っていた。
黒髪であるから、恐らく自分と同じ日本人。体つきはスーツの上からでも分かるくらいに良く、ただの一般人ではないことはすぐに分かった。
その者は守が入ってきたことに気付くとソファーから立ち上がり、片手を差し出した。
「初めまして。
「あ、ああ。こちらこそ」
握手を解いて座ってもらうように促し、自分も座る。
「それで、話というのはうちの子……零のことか」
「はい。守殿が特殊な子供を持ち、今後どうなるのかが分からないから情報を集め回っている……というのを、風の噂で聞きつけまして」
「そこら辺はどうでもいい。うちの子は、零はこれからどうなるんだ?」
この際どのような流れで話が伝わったのかはどうでもいい。大事なのは、これからの息子の将来についてだ。
そのことが伝わったのか、須郷と名のる男性はそれ以上余計なことは言わず、スッ――と懐から名刺を取り出し、守へと手渡す。
「――『特殊児童捜査研究家』……?」
「はい。私はそこの者になります。ただ、研究家と言っても実験等を行うのではなく、発達の早い子供達を他の子供達より早く社会に慣れされる、というモノです。言ってしまえば、特殊な子供の幼稚園というところです」
「ま、待ってくれ。特殊な子供達ということは……零以外にもいるのか?」
「ええ。僅かばかりですが存在します。今回は守殿の息子さん以外にも約二名いますし、既に私達のところにいますよ」
「……その、うちの子は発達だけじゃなく、その、不可思議な現象を起こすんだ。積み木を手も使わずに空に飛ばしたり、炎や水を手から出したり……」
「守殿。それは
今まで分からなかった疑問を、アッサリと解答してくれる須藤。
自分の子供のような子が、他にもいる。そのことを知ることができたことで、守はこれ以上ないほど安堵した。
「ただ、
「なるほど……」
「早く帰りたい日には連れて帰ってもらえれば良いし、お子さんが風邪などで動けない場合は欠席してもらっても構いません。毎日17時ぐらいには終わります。是非一度私達の施設にお越しください。他の子の両親も集まる予定ですよ」
その提案は、守の心を鷲掴みにした。心配していた息子の将来が無事過ごせるようになり、更に毎日キチンと帰られるのは有難い。
零も自分と同じ境遇の子と一緒に過ごした方が良いだろうし、友達になれるかもしれない。それに、同じ子供を持った親達と交流できるというのも嬉しいことだ。断る理由など、ない。
「はい、是非参加させて下さい――」
「――お父さん。今日はどこに向かってるの?」
『特殊児童捜査研究家』の施設に行くと約束してから数週間後。守は零をつれて、須郷に教えられた場所へと向かっていた。
柊が運転するリムジンで、決して子供用ではない哲学の本を読みながら、珍しく自分から話しかけてきた零。
「ああ、今はね。零のようなスゴいことができるお友達の所に行くんだよ」
「ふぅん……」
本人の手前、少し話をボカしながら伝えるが、零はあまり興味なさげだった。
黒髪を邪魔にならない程度に伸ばし、焦げ茶色の瞳で本を読み続ける零。まだ一歳数ヵ月というのに、その瞳は真剣というものを帯びている。
「零は何で、辞書とか小説ばかり読むんだ?絵本とか読んだ方が面白くないか?」
「絵本……」
「そう。楽しいお話や、綺麗な色の絵とかがある奴」
「絵本は……つまんない」
「えっ、どうして?」
「全部、同じだから」
「同じ……?それはどういう――」
「守様、到着しました」
詳しく聞いてみようと思ったが、運転席にいた柊が声をかける。どうやら着いたようだ。
窓から見てみると、そこには至って普通の幼稚園のような施設が建っていた。
「守殿、ようこそおいでくださいました。どうぞ中へ」
「ああ、ありがとう。須郷さん」
零の手を引きながら車から降りると、先日応接室であった格好のままの須郷が、入り口付近に立っていた。
須郷は守と、その守に手を引かれている零を確認し、施設の中へと案内する。
施設の中も至ってシンプルで、しっかりとした教育施設なのだということが分かる。
しばらく施設内をぐるっと案内されると、一つの部屋の前で須郷の足が止まる。
「この中に、零君と同じような子供が二人います。守殿はこのまま私と一緒に子供達の親と会合しますが、零君は先に子供達と一緒にいた方が良いと思われます。如何なされますか?」
「そうですね……なら、零は先に子供達に会わせます。零、しっかりしているんだぞ?」
「大丈夫」
何も気にしていないような表情を浮かべている零の頭を、ぐしゃぐしゃと撫で回す守。こうすると、零の頬が少しだけ膨らむのだ。
ぷくぅ、といつも通り頬を膨らませ、表情らしい表情を浮かべたことを確認した守は、須藤と共に他の子供達の両親の所に向かった。
その親の背中が曲がり角で消えるのを確認した零は、その部屋の扉に体を向ける。
そして、引き戸式の扉をガラリラと開けた。
――そこにいたのは、二人の子供。
一人は男子。青い髪をツンツン頭にしていて、青い瞳は綺麗な色をしている。
もう一人は女子で、銀に近い白色の髪を肩まで伸ばしている。瞳はトパーズ色。
――そう。その二人の名は、サイア・クロニクル。ネリー・リチャード。
零の元・チームメートであり、それぞれ『守護神』・『技神』として『リバースランカー』を勤めていた者達。
『裏の武偵』として、僅かな者だけが知る圧倒的集団、『GOW』のメンバーである者達の初会合は――
「――だからクヨクヨしてねぇで言いたいことあるなら言えって言ってんだろうがぁっ!」
「うわぁ~ん!ママァー!パパァー!」
「……なんだこれ」
――サイアが切れ、ネリーがウサギのぬいぐるみを抱きながら大泣き。それを無表情で零が見つめるという、なんともシュールな光景であった――
さて、どうでしたでしょうか。
私のための私さんから評価1。
水色空模様さんから評価1。
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kozuzuさんから評価3。
零の精霊さんから評価10!
を頂きました!ありがとうございます!
では、ごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ。