緋弾のアリア~Sランクの頂き~   作:鹿田葉月

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はいどうも、鹿田(ろくた)葉月(はづき)(*`・ω・)ゞデス。

まずはこの章を読む前の注意事項を。

1.初の試みである3人称視点です。
2.シリアス多めです。
3.完全なオリジナル章です。そのためいつもより更に駄文になります。

『それでもいいよ!』の方は是非閲覧下さい。お願いいたします。

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九重言葉さんに評価3。
poruさんに評価7。
sheroさんに評価9。
ロリ最高説&氷炎 龍矢さんに評価10!
rikuoさんに評価10!

を頂きました!ありがとうございます!

では、オリジナル章プロローグ、始まります。


第0章零の過去
プロローグ


「――零の過去、だって?」

 

東京武偵高、第三男子学生寮。(みな)がそれぞれ自分だけの時間を過ごしているであろう、午後7時15分。

その一部屋に、明らかに寮生だけの集まりでない集団がいる。

――ピンク色の長い髪をツインテールにしている少女、神崎(かんざき)・H・アリア。

――金色の長い髪をツーサイドアップに結った少女、(みね)理子(りこ)・リュパン四世。

――アリアの戦妹(アミカ)である少女、間宮(まみや)あかり。

――星伽(ほとぎ)白雪(しらゆき)戦妹(アミカ)である、佐々木(ささき)志乃(しの)

――金髪のポニーテールの長身少女、火野(ひの)ライカ。

――そのライカの戦妹(アミカ)である少女、(しま)麒麟(きりん)

――架橋生(アクロス)の格好をしている少女、(いぬい)(さくら)

――唯一男であり、今集団が集まっている部屋の住人、遠山(とおやま)キンジ。

――そして、この集団を集めた張本人である少女、シェイル・ストローム。合計9名、この部屋に集まっている。

男子学生寮の一部屋にこれだけの人数が集まるという異色な光景の中、キンジがシェイに言葉を投げかける。

内容は、ここにはいない、けれどここに集まっている者達とは深い関わりのある人物――錐椰(きりや)(れい)についてのモノ。

 

「そう、零君の過去。知りたくない?」

 

吸い込まれてしまいそうな程に綺麗で深い藍色(あいいろ)の瞳で、シェイは(みな)のことを見渡す。

対して、その瞳に射ぬかれた者達は一様に黙ったまま。

いや、この場合は唖然(あぜん)としている、と表現した方が正しいだろうか。

――いきなり集合させたと思ったらランドマークタワー屋上で重傷を負わされている零を見せられて、止めにいこうとするアリアを抑えていきなり『零君は本気じゃない』と言われ、その零が296メートルもある巨大ビルを瓦礫(がれき)一つ残さずに壊した後にあの発言。

ここまでの突然すぎる経緯(いきさつ)を考えると、成程、唖然(あぜん)とする理由も分かる。そもそも、話の繋がりがみえてこないのだ。

 

「何でいきなりそんなことを言うんだ。意味が分からないぞ」

「――零君の過去、知りたくないの?」

 

キンジの発言を無視して、三度(みたび)問い掛けるシェイ。真剣な表情から察するに、どうやら疑問に答えるつもりがないようだ。

――それは、知りたいに決まっている。

キンジだけではなく、この場にいる全員の考えだった。

今まで中途半端に聞かされた零の過去。『GOW』のことや、(のぞみ)という少女のこと。

幼馴染みのキンジや、パートナーであるアリアですら、まったくと言っていいほど知っていない。

それが、教えてくれるというのだ、シェイは。

 

――ガチャリ。

 

不意に、玄関に繋がっているリビングの扉が開かれた。

今日キンジの部屋に訪ねてくる予定の者はおらず、そもそも訪ねてくる可能性のある人物は既にここに集まっている。

全員の視線が集められる中、その扉を開いた者は――。

 

「――これは一体どういうことだ、シェイ」

 

赤、と形容するには少し深い、紅色の髪。中肉中背の身体。

髪と同じ紅色の相貌は、シェイを捉えている。

 

「やっと来たね、零君」

 

――錐椰(きりや)(れい)。この集まりの話の中心にいた男が、姿を現した。しかも、一人じゃない。

 

「ご、ごめんね、キンちゃん」

「……」

 

――超能力捜査研究科(SSR)の秘蔵っ子、星伽(ほとぎ)白雪(しらゆき)

――狙撃科(スナイプ)麒麟児(きりんじ)、レキ。

その二人が、一人は申し訳なさそうに、もう一人は無表情という対極の表情で、零の後に続いて入ってきた。

先程までランドマークタワーの屋上――最早(もはや)(ちり)すら残っていないが――にいたハズの零の出現と、白雪とレキの突然の訪問に、シェイ以外の一同が驚いた。

 

「あいつら追いかけている内に違和感を感じてな。周りに対盗撮結界を張ったら案の定反応ありだった。それで逆探知して来てみたら玄関にこの二人がいたんだよ」

 

シェイからまったく目線を外さないまま、自らの後ろにいる二人を親指で差す零。

その仕草や表情は、普段の社交的な彼のモノではないのは、誰の目にも明らかだ。

 

「うーん、白雪ちゃんとレキちゃんが来るのは少し予想外だったけど、まぁ別にいいかな」

「質問に答えろ、シェイ」

「そんなに怒らないでよ、零君。ちゃんと答えるから……。ねぇ、零君」

「なんだ」

「――零君は、いつまで過去のことを隠し続けるつもりなの?」

 

その一言に、零の身体が思わずといった反応を示した。

 

「……これは俺の問題だ。コイツらには関係ない。勿論、『GOW』のメンバー達も――」

「――『関係ない』、なんて言ったらぶっ飛ばすわよ」

 

零の発言を途中で遮った、少し低めの女性の声。乱暴な言葉。もちろん、シェイがそんな発言をすることはない。

 

「おいおいやめてくれよ。只でさえ今、両腕が粉砕骨折しているんだ。今おっ始められたら流石に庇いきれないぜ?」

「その時は両足を粉砕骨折すればいいだけじゃないですか」

「そのまま最期に顔面に貰うのがベストです」

「お前ら二人揃って酷いな!後『サイゴ』の発音が不吉過ぎるわ!」

 

更に続けて陽気な声に、冷静に淡々と話す声が二つ。

それは全て、先程零が入ってきたリビングの扉から聴こえてきた。

――白に近い銀髪を肩くらいまでに伸ばした少女、ネリー・リチャード。

――蒼いツンツン髪で、190くらいの大柄な男子、サイア・クロニクル。

――橙色の髪をボブカットにしている双子、Bと、G。

『GOW』のメンバー全員が、ここに姿を現した。

尤も、ネリーは全身ボロボロ。サイアは両腕をプランと力なく下ろしており、B・Gからは疲れが容易に見てとれるが。

 

「アンタ、いい加減にしときなさいよ」

 

自分の身体の状況を(かんが)みることなく、零の胸ぐらを掴む。

身長が近い二人の目が交差し、互いに睨み付ける。

 

「何が言いたいんだ?(のぞみ)のことは、俺が必ず見つけ出す。他の奴がどうこうする問題じゃない」

「あたし達だって、(のぞみ)ちゃんのことを探しているわよ!そのためにイ・ウーにわざわざ存在を知らしてまで近付いて、情報を集めていたのよ!」

「それで?お前らが見付けてどうするんだ?さっきリミッターを掛けた俺に負けたお前らが、俺が全力でやって勝てなかった奴に勝てるのか?」

「……ッ!」

 

――パァンッ!

部屋に響く、乾いた音。

ネリーの手が振り上げられたような位置にあり。

ぶたれた本人は――

 

「いっ……てぇなこの状態だとシャレになんねぇなチクショーがぁぁぁっ!」

 

――床を転げ回っていた。

 

「……サイア、何故中に入った?お前が受ける理由は無かったハズだし、そもそも折れている腕で庇う理由が思い付かない」

「そうよサイア!バカやってんじゃないわよ!」

「イツツ……こうすればお前らの頭を冷えるだろうからやったんだよ。現にいつもみたいに毒舌吐いてこないほど(いきどお)っているだろ、お前ら」

 

零とシェイの二人が視線を向けているのに対し、両腕が使えないため起き上がらずに仰向けになりながら、へへっとでも言いそうな表情のサイア。

ただし、その顔には冷や汗がツゥ――と流れている。防御力が強い彼でも、折れた腕に追撃をされたのは流石に(こた)えたようだ。

 

「お二人だけで盛り上がるのもいいけどさ、これだけの人数を無視するのは、無作法にも程があるだろ。それに、過去のことを話すのが、そんなに悪いことなのか?」

 

彼はそう言って、アリア達の方を顎でしゃくった。その動きにつられるようにして、この時初めて零がアリア達の顔を見る。

険しい表情の者。不安そうな表情の者。いつも通り無表情の者。

十人十色の表情だが、(みな)一様(いちよう)にして零と視線が交わっている。

 

「零……」

 

普段の様子とはまるで別物の、消え入りそうな、高いアニメ声。

 

「……アリア」

 

いつも勝ち気なつり目は垂れており、不安そうな表情を浮かべているアリア。

そんな彼女の様子に、零の(いきどお)っていた表情が揺らぐ。

 

「零……教えて。零のこと」

「……アリア。いくらアリアでも、このことは――」

「教えて」

 

零の拒否しそうな言葉を遮り、アリアは一歩前に出る。

いや、アリアだけではない。

理子。あかり。志乃。ライカ。麒麟(きりん)(さくら)。キンジ。白雪。レキ。

この場にいる誰もが、零の話を聞くことを望んでいる。

その様子に零は続く言葉が出せず、口を閉ざして黙っている。

 

「教えるくらいなら、いいんじゃないか?」

「……サイア。余計なことを」

()()()()()()()()()()()()()、すればいいんだよ」

「……」

 

サイアの言葉に、零は黙りこむ。

そして、もう一度ぐるりと皆の顔を見て、大きく息を吐き……。

 

「――シェイ。『Link』してくれ」

「……場所は?」

「知ってるだろ?――俺の実家だ」

 

 

 

 

 

「ここが……零の実家」

「ああ、アリア以外は初めてだよな」

「お……大きいっ!志乃ちゃんの家よりも大きい!」

「アリアの実家はこれ以上だぞ、あかりちゃん」

 

――今、治療のためにサイアとシェイが抜けたこの集団がいるのは、キンジの部屋ではない。

シェイの『Link』によって場所は変わり、零の実家――つまり、イギリスに来ている。

あまり有名では無かったが、それでも貴族である零の実家は、佐々木家より少し大きいものだった。

門をくぐり、玄関の前に立ち、呼び鈴を鳴らす。

十数秒といったところだろうか。ガチャリと音をたてて、大きな扉が開いた。

 

「おぼっちゃま、お久しぶりでございます」

 

中から出てきたのは、初老だと思われる、白髪の男性。

ただし身長は180程あり、背筋がピンとしている。

しっかりとしたスーツを身に(まと)い、彼が執事に当たる者だとは誰の目にも明らかだ。

 

「お久しぶりです、ひぃじぃ。元気にしてましたか?」

「おっほっほ。まだまだ、おぼっちゃまの晴れ姿を見るまではこのじぃや、死ぬわけにはいかないですぞ」

 

零の挨拶の言葉に、『ひぃじぃ』と呼ばれた初老の男性は肩を揺らし、楽しげに笑っている。

普段から仲が良いのだろう、零の方も表情は明るい。

 

「えっと、零。この人は……」

「おや、そういえば自己紹介が遅れましたな。(わたくし)(ひいらぎ)(さとる)。零おぼっちゃまの執事の者です」

 

零に対して呟いたキンジの発言に、柊が素早く答える。

イギリスにいるハズなのに先程から日本語での会話になっていることに、英語のできない者は安堵した。

 

「ネリー様やB・G様も、お久しぶりでございます。サイア殿とシェイル様はいないようですが」

「あの二人は後で合流の予定です」

「「シェイさんだけ通しておいて下さい」」

「おっほっほ。相変わらず、サイア殿は人気のようですな」

「に、人気ってことですましていいのかな?」

 

当たり前のようにサイアをハブるように伝え、それを軽く受け流した状況に、武偵校の人気者である理子が思わず疑問を口にした。

その疑問に誰も答えることなく、柊が零に向き直り。

 

「さて、零おぼっちゃま。ここに来られたということは……」

「そういうことです。誰にも近寄らせていないですか?」

「勿論でございます。では、どうぞ」

 

扉を更に開け、皆に中に入るよう(うなが)す柊。

それに対して零・ネリー・B・Gが直ぐに入り、慌ててアリア達も中に入る。

大きなシャンデリアや、広々としたホール。大きな階段。高級そうな絵画の数々。

こういった物に関わりがないキンジやあかりはキョロキョロとしていたが、零はそれらには目もくれず、どんどんと廊下の奥へと歩いていく。

数分ほど歩いただろうか。廊下の幅は狭くなり、明かりも乏しくなる。普段から使われているような感じは無く、それゆえに醸し出す雰囲気は暗い。

アリアの表情が引きつりだして、今にも走り出しそうになった時。

 

「――ここだ」

 

零の足が止まり、前を指差す。

指差された方向へと皆が視線を向けると、一つの扉があった。それは、この大きな屋敷には相応しくない、木製の扉だった。

 

「……この奥に何が?」

「まぁ、よく見てろ」

 

キンジの問いかけに応じず、零は胸元へと手をやる。

制服の中へするりと手をいれ、取り出したのは――綺麗な銀色の外見に、小さなエメラルドが付けられているペンダントだった。

首に掛けていたそれを扉の前まで持って行き、扉の真ん中にある小さな(くぼ)みへと――入れた。

すると、カチリ。

小さくて聞き取りづらいモノだったが、鍵が開く音がした。

 

「入るぞ」

 

零がドアノブを引く。

扉の向こうにあったモノ。それは……。

 

「――」

 

――絶景だった。

緑が生い茂り、透き通った川が流れ、小鳥の(さえず)りが聴こえてくる。

暖かな太陽と、心地好(ここちよ)い風に当たる一同は、先程まで薄暗い廊下にいたことの差もあり、言葉を失った。レキですら、いつも被っているヘッドホンを外して、風に髪をなびかせている。

 

「――ここは、(のぞみ)の好きだった場所だ。世界のどこにあるかも分からない、たった一つの場所」

 

近くにある崖の先端部分に座り込みながら、遠くを見渡すように目線を上げる零。

その発言を聞き、ようやく皆が気付いた。先程まであった、自分達が入ってきた扉がないことに。

零の発言した内容から察するに、ここは世界にはない場所なのだろう。そして先程零がペンダントを扉に嵌めたのは、ここと繋ぐための鍵だということ。

現実的に考えれば馬鹿馬鹿しいことだが、それが今現実に起こっている。

 

「さて……B・G」

「「はい」」

 

たった一言。内容の無い、名前を呼んだだけ。

それなのにBとGは呼ばれた意味を理解し、集団を挟むような位置に立った。

 

「今からB・Gの『夢物語』を使って、俺の過去を『夢』として見る」

「そ、そんなことができるの?」

「本来B・Gの『夢物語』は実戦用ではなくて、犯人達の犯行現場を『夢』として見ることを主としている。それを応用して俺の過去を『夢』として見た方が、俺が話すよりも分かりやすいだろう」

 

ポウッ……と、BとGの手に、青白い光が(とも)る。『夢物語』を使用するときに出る光だ。

 

「俺と(のぞみ)の関係。何故俺が(のぞみ)を探しているか。そもそも(のぞみ)とは誰か。言っておくが、面白いことなんて何も無いぞ……B・G、やれ」

「「『夢物語』」」

 

その瞬間、皆は光に包まれ、意識が飛んだ――




はい、どうでしたでしょうか。
今回は過去の話に繋げるためのものですので、次からが零の過去の話になります。

それではごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ。

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