緋弾のアリア~Sランクの頂き~   作:鹿田葉月

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はいどうも、最近バイトに向かう途中に余所見運転していた車に引かれそうになった、鹿田(ろくた)葉月(はづき)(*`・ω・)ゞデス。

まず最初に

スターライトさんに評価9。
ロム専さんに評価9。
きら@さんに評価1。

を付けていただきました!ありがとうございます!

それでは、第59話、始まります。



59話~作戦開始~

「――遅い!何やってるのよ、あのバカ(理子)は!」

 

(*´∀`)ノヤァ、零だ。今日は6月13日。『大泥棒大作戦』開始の日だ。そのため今、俺・アリア・キンジは、朝早くに待ち合わせとしていたモノレールの駅で、理子を待っている。

が……待てど暮らせど、来ない。

淡いピンクのシフォンワンピースを着ているアリアが、イライラし出してガバを抜きそうになるくらいに。

 

(理子のヤツ。今日もアニメとか漫画とかで遅れた、なんて言うつもりなんじゃないだろうな……?)

 

そんなことを思いながら、イラつき過ぎてキンジに八つ当たりしだしたアリアを止めていると。

 

「キーくん、アリア、レイレイ~、ちょりーっす!」

 

背後から理子の声がした。

まったく。ようやく来たか。

 

「おい理子、遅――」

 

さっきまでアリアに理不尽に八つ当たりされていたキンジの不機嫌そうな声を聞きながら、後ろを振り返ると――

 

(――なっ!?カ、()()!?)

 

時が静止した錯覚が起きた。

カナ……いや、違う。

あれは理子が変装したカナだ。声が理子だったし、背格好も違う。

俺が覚えているのは10歳の時までだが、そこからはキンジに詳細を聞いたことがある。確か、今のキンジとほぼ同じだと言っていたはずだ。

 

「……り、理子……なんで、その顔なんだよ!」

 

とそこで、我に帰ったのだろうと思われるキンジが、理子に問い詰めていた。

その顔には真剣そのもの――その中に、少しの安堵が垣間見えていた。

多分だがキンジは、『ニセモノで良かった』と思っているだろう。

だが、それは俺もだ。もし本物のカナだったら……キンジは金縛りにかかったように、しばらく動けないのだろうから。

本物のカナは――周囲の時が止まるほどの美しい人で。

その柔和そうな、長いまつげの目は――視線そのものに引力をもち、男も女も無関係に人の心を虜にした。

優しげな笑みを形作るその唇は、どんな荒れた心も穏やかに変える――魔法のかかった薔薇の花びら。

キンジ曰く――『神々(こうごう)しくて、崇高(すうこう)な存在』なのだ、カナは。

 

「くふっ。理子、ブラドに顔が割れちゃってるからさぁ。防犯カメラに映って、ブラドが帰って来ちゃったりしたらヤバイでしょ?だから変装したの」

「だったら他の顔になれ!なんで……よりによってカナなんだ!」

 

武偵高では『ネクラ』とか『昼行灯』とまで言われるキンジが、珍しく感情を隠しきれていない。

普段とは違うキンジの様子に、アリアはカメリアの瞳を真ん丸にして驚いている。

 

「カナちゃんが理子の知ってる世界一の美人だから。それにカナちゃんはキーくんの大切な人だもんね。理子、キーくんの好きな人のお顔で応援しようと思ったの。怒った?」

「……いちいち……ガキの悪戯(いたずら)に腹を立てるほど俺もガキじゃない。行くぞ」

「心の奥では喜んでいるくせにぃ」

 

理子に言われたキンジは何も答えず、自動改札へと向かう。

 

「れ、零?何かキンジの様子がおかしいんだけど。誰なのよ、理子が変装してきたの」

 

キンジと理子のやり取りをポカーンと見ていたアリアがハッとした表情になると、俺の所によってきた。

だが、俺もどう説明すればいいのか、検討もつかない。なので俺は。

 

「あれは……キンジの大切な人だ。そして、俺の知り合いでもある」

 

差し障りのないところだけを話して、改札口へと向かうしかなかった。

だからなのだろうか。

――アリアが俺の背中に、何か聞きたそうな目線を送っていることに、気付かなかった。

 

 

 

 

 

横浜へ向かう京浜東北線の中で、理子はカナの顔のまま、キンジにずっと喋りかけていた。

キンジは冷たい反応ながらも――カナの変装している理子の表情を見て懐かしく感じたのか――「まあな」とか、「そうかよ」とか受け答えしていた。

それを見ていた俺も、懐かしく感じている。

まだ小さかったころ、俺とキンジで戦闘訓練(当初の俺は、実力を隠していた)を終えた後、カナと良く喋っていた。

キンジが目を輝かしてカナに喋りかけ、カナがそれを聖母のような笑みを浮かべてキンジの頭を撫でる――そんな光景が、日常だった。

 

「――おっと、そろそろだよレイレイ!今の内に、()()()()()?」

 

――と、先程までキンジと喋っていた理子が、急にこちらを見てそう言った。

そろそろ……ってことは、もうすぐ降りるってことだな。

理子に分かったと返事して立ち上がり、両手を広げた。

 

錐椰(きりや) (れい)の名の下に』

『髪の色を黒。瞳の色を茶色に』

 

詠唱とともに少しだけ視界が白く染まり――フッと元に戻る。

そして武偵手帳を取りだし、武偵手帳についている小さな鏡を見る。

――そこには、髪・瞳共に紅色(あかいろ)である普段の俺ではなく。

黒い髪に茶色の瞳をした、如何にも純日本人の外見になっている俺が映っていた。

 

「へぇ~。レイレイって、子供の時はそんな感じだったんだねぇ」

「あんまり近付くな。後、今の俺は東京武偵高2年の錐椰 零じゃなくて、神奈川武偵高2年の桐ヶ崎(きりがさき) 蓮斗(れんと)だから。間違えるなよ?」

 

――さて。何故俺がこんなことをしてるのかというと……単純に変装しているだけだ。

今回、表面上はあくまで任務。それも難易度が低い方の。

そんな低いやつなのに、アリアという名の知れたSランク武偵に、更に『Sランク内最強』である『紅電(こうでん)』が一緒だと依頼主(クライアント)が知ったらどうなるか。

身近な人物を例に出すと、『たまたま入ったファミレスで店員にオーダーを頼もうと思ったら、その店員がシェイだった』ってことになる。

つまり、まず驚き、そして何かがあると勘ぐられる。そうなると、非常にやりにくくなる。

だから『紅電』の特徴たる所以の、紅色の目と髪を変える。ついでに名前も以前使っていた偽名にしておく。

さらに、神奈川武偵高の方にも少しハッキングをかけて、『桐ヶ崎 蓮斗』の偽プロフィールを創っておいた。これでまず、バレることはない。

 

「――零の今のカッコ、昔の零をそのままおっきくしたみたいな感じね」

 

俺の隣の席に座っていたアリアが、覗きこむようにして俺を見ている。

その表情にはありありと、『懐かしい』という感情が浮き彫りになっていた。

 

「まぁ、あのまま成長していたら、今はこの状態になってただろうな」

「へぇ~……ねぇレイレイ!何でレイレイは、髪と瞳が(あか)く――」

「おい、ついたぞ」

 

理子が興味津々に何かを聞こうとした時、キンジが窓を見ながらそう言った。

つられて窓を見ると、確かに横浜についている。

それを見た理子は俺から離れて、ピョンッと席から立ち上がり。

 

「じゃあ皆、いっくよー!ここからはタクシーで行くからねー!」

 

トテテテ。と、一足先に降りていった。

……相変わらず、忙しいやつだな。もう少し落ち着けよ。

とはいえ理子を一人にさせる訳にもいかないので俺達もモノレールから降りて、タクシー乗り場に向かう。

そしてタクシーに乗り込み、横浜郊外にある、紅鳴館(こうめいかん)に向かう。

タクシーに乗っている最中、何故かアリアは俺の方をチラチラと見ながら落ち着き無さそうにしていたが……紅鳴館についた途端、不安そうな表情へと変わった。

昼なのに薄暗い、鬱蒼(うつそう)とした森の奥にあったその館は……

 

「の、呪いの館……ってカンジね……」

 

と呟くアリアの表現が当てはまりすぎる、ホラー・ゲームにでもでてきそうな、(あや)しーい洋館だったのだ。

こういった雰囲気が大のニガテであるアリアが。ぎゅっ。

俺の制服の裾を握って、後ろに隠れた。

 

「初めまして。正午からで面会のご予定をいただいております者です。本日よりこちらで家事のお手伝いをさせていただく、ハウスキーパー3名を連れて参りました」

 

と言う理子がちょっと引きつった顔で挨拶している『管理人』の姿を見て……。

俺も、思いっきり不安になった。

 

(おい……この潜入作戦、いきなり失敗じゃないのか?)

 

と俺が何故そう思うのかというと。

門の前で執事とメイドのバイトを出迎えた『管理人』が――。

 

「い、いやー。意外なことになりましたねぇー……あははー……」

 

と苦笑いする、武偵高のイケメン非常勤講師である、小夜鳴(さよなき)先生だったからだ。

 

 

 

 

 

 

「――いやー。武偵高の生徒さんがバイトですかぁ。まぁ正直な話、難しい仕事でも無いので誰でもいいといえばいいんですが……ははっ。ちょっと、気恥ずかしいですね」

 

館のホールに入った俺達(アリアがホールの物騒な装飾品を見て怯えまくってた)は、小夜鳴先生に案内されたソファーに腰かけて話し始めた。

 

「小夜鳴先生、こんな大きなお屋敷に住んでたんですね。ビックリしましたよ」

「いやー、私の家じゃないんですけどね。私はここの研究施設を借りることが時々ありまして、いつの間にか管理人のような立場になってしまっていたんです。ただ……私はすぐ研究に没頭してしまう癖がありますからね。その間に不審者に入られたりしたら、あとでトラブルになっちゃいますからね……むしろ、ハウスキーパーさんが武偵なのは良いことかもしれませんね」

 

キンジの発言に律儀に答えた小夜鳴先生はどうやら……。

そのトラブルを起こす予定である不審者こと俺達を、予定どうり雇ってくれるらしい。

 

「ですが……遠山君に神崎さんは私の生徒であるため知り合いではありますが、そちらの君はどちらの方なんでしょうか?」

「……ああ。申し遅れました。僕は神奈川武偵高2年、強襲科(アサルト)Aランク、桐ヶ崎 蓮斗といいます。こちらにいるキンジとは家が近所であり、アリアとは依頼(クエスト)中に共に行動することがあったので、旧知の仲です。今回僕は潜入捜査の練習という形式でハウスキーパーをやることになりました。よろしくお願いいたします」

 

小夜鳴先生が俺を見て不思議そうにしていたので、俺はもともと考えていた自分のプロフィールをスラスラと述べていく。

ここで大事なのは、如何に相手に信用してもらえるかということと、仲間のボロを未然に防げるかだ。

前者は少し準備すればいいだけだが、後者はついいつもの癖で間違えられてしまい、矛盾が生ずることがある。

だから、偽プロフィールの中に、あえてある程度の本当のことを話す。実際にキンジとは近所だったし、アリアとは何度も依頼をこなしてきた。

こうすることで、本人達もいつも通りに接することができる。流石に名前は変えなければいかないが、そこは武偵なので大丈夫なはずだろう。

 

「そうでしたか。旧知の仲なら、二人共とも気兼ねなく行動ができますね」

「はい。それと……小夜鳴先生、でよろしいですか?その腕に巻いている包帯はどうしたのですか?」

 

あくまで今の俺は小夜鳴先生のことを知らないので、名前を確認しながら疑問をぶつける。

今の小夜鳴先生は、何故か腕に包帯を巻いていたのだ。

最後に小夜鳴先生と会ったのは、保健室に狼が出現した時。その時は包帯をつけていなかったし、狼が襲ったわけでもないので腕を怪我することはなかったはずなのだが……。

 

「ああ、これですか?お恥ずかしながら、うっかり階段で転んでしまいましてね。その時に腕を出してしまったもので」

 

アハハ。と苦笑いをしながら、包帯をしていないほうで後ろ頭を掻いている小夜鳴先生。

 

「そうですか、それはお気の毒ですね……それにしても、まさか偶然、学校の先生と生徒だったなんて。ご主人様がお戻りになられたら、ちょっとした話の種になりますね。まあ、この三人の契約期間中にお戻りになられれば……の話ですが」

 

本当に想定外だったらしい、派遣会社の人間を装う理子が少し困惑ぎみながらも、さりげなく館の主人・ブラドが潜入中に戻ってくるかどうか確認している。

 

「いや、()()()()()()()()()()()()()()。しばらく、帰ってこないみたいなんです」

 

……ッチ。帰ってこないのか。帰ってくれば、俺が特大サービスで『お☆も☆て☆な☆し』してやろうと思ってたのに。

 

「ご主人は――お忙しい方なのですか?」

 

理子が、カナの顔で小夜鳴先生に訪ねる。

 

「それが実は、お恥ずかしながら……詳しくは知らないんです。私と彼はとても親密なのですが……直接話したことが無いものでして」

 

と苦笑いしながら語った小夜鳴先生は、なんだか不思議なことを言い出した。

親密だが、話したこともない?

小夜鳴先生は研究熱心でも有名だ。メールのやり取りとかで知り合ったとかではないのだろう。

少し引っ掛かりを感じていた俺だったが、小夜鳴先生はホールにあった時計を見てソファーから立ち上がり。

 

「申し訳ないんですが、私は今から研究施設に戻ります。仕事については前のハウスキーパーさんたちがメモを台所に残していってあるので、適当にやっちゃってください。暇になったらビリヤードとかも遊戯室にあるので遊んでくださっても構いません。夕食の時間になったら教えてくださいねー」

 

なんて言いつつ……コツコツコツ……と、螺旋階段を降りて……パタン。

地下にある研究施設に閉じ籠ってしまった。

あまりにも機敏な動きだったため、俺達四人はしばらく固まっていたが――。

 

「じゃ、じゃあ理子は行くから、後はよろしくね」

 

と言って帰った理子で我に返り。

 

「とりあえず……着替えるか」

「そうだな」

「そうね」

 

なんとも締まらない感じで、『大泥棒大作戦』が始まったのであった――。




はい、どうでしたでしょうか。

ここで皆様に一つ、お願いがあります!

実は、この章が終わった後、閑話を挟もうと思っております。そこで一つ、皆様にアンケートをしたいと思っております。
詳しくは活動報告にて、確認していただけるとありがたいです。初めての人でも大歓迎です。

期限は第三章が終わるまでなので、よろしくお願いいたします。

それでは、ごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ。

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