まず始めに、
absurdさんに評価9という好評価をいただきました。ありがとうございます!
それでは、第55話、始まります。
先程筆記試験を終わらせたあたし達ランク考査生は今、体育館に来ています。
ここでの審査内容はCQC――つまり、ナイフ術をメインに審査します。
考査生複数人が十分に距離を取った後、
「ではぁ、えーっと……あぁそうだ。CQC審査ぁ、始めぇ」
綴先生が気だるげに開始の合図をしました。
――まずは、普通に、確実に……
あたしは
――おお……
すると、審査員の先生達が驚嘆の声をあげた。
え、そんなに良かったかな?
チラリと審査員の先生達を見てみると、先生達はあたし――の後ろで警棒を振るっている、乾さんを見ていた。
乾さんは正に教科書通りといった感じで、イメージビデオとかに抜擢されそうなくらいに完成されていた。
するとあたしの視線に気付いたのだろうか、少し口元が緩ませていた。
(むぅ。先輩相手にその態度……いい度胸だよ!)
初めて零先輩にあった時の対応を棚に上げながら、あたしは意気込んでいた。
(先生達はあたしの後ろを見ている。あたしが小さ――身長的にそこまで視線がずれている訳ではない。なら――零先輩に教えてもらった、
――それは、ランク考査が始まる、数週間前のこと。
『あかりちゃん。
『どんな時にって……具体的にいうとどんな感じですか?』
訓練を始める前の軽いストレッチを行っていると、零先輩が両足を開いて体を地面につけながらあたしに話しかけてきた。
うう、零先輩柔らかいな……あたしそこまでできないよ。
『例えば、【足場が悪いと安定して使えない】とか、そんなやつ』
『ああ……えっと、そんなことはないです。ただ、相手の懐に入らないと、腕のリーチ的に届かないですけど……』
『ふむ……』
ストレッチを先に終わらせた零先輩はそのまま片手倒立を始め、更に人差し指と中指だけにしながら、何やら考え始めた。
……毎回思うけど、何で平気な顔してやることなすこと凄いのかな、零先輩は。もう慣れてきたけど。
『それってさ……
『……ええと、どういうことですか?』
『だからさ――』
(そこからできたのが――これ!)
そう思いながらあたしは――
『――ッ!?』
突然あたしが起こしたアクションに、先生達が驚いたような表情をした。
――零先輩だけが何をするか気付き、笑ったまま。
そして先生達の目線があたしのナイフに移動した時――
(――
姿勢を低くしながら、
重力の抵抗だけを受けていたナイフのグリップを素早く掴み、そこから前方に向かって斬りかかる。
――おお……。
ブー。
先生達が驚嘆の声をあげるのと、審査終了のブザーが鳴るのは、ほぼ同時だった――
「次、射撃訓練――始め」
CQC審査が終了した後、そのまま射撃レーンに向かい、次の審査が始まった。
ここでは単純に射撃訓練――人型のターゲットに向かって撃ちつづけ、人型が持っている銃のターゲットにどれだけ命中させられるか、といった内容です。
バララッ。バラッ。
パンッ。パァンッ。
ドンッ。
ランク考査生が持つ様々な銃の発砲音が、射撃レーンに響く。
バララッ。バラッ。
『あかりちゃんが持っている銃はマイクロUZI。片手でも扱えるタイプの
零先輩に教わったことを思い出しながら、ターゲットに向けて銃を放つ。
前まではかすりもしなかったけど、今はある程度までなら当てられるようになってきた。
……まぁ、未だに外れる弾のほうが多いけど。
「――終了。各自で自らの成績表を提出してから、最後の実戦試験へと望むこと。以上!」
数分経った後、男の先生が終了の合図を行い、それによってランク考査生が銃を射撃レーンの物置用机に乗せる。
そして自分が使用していた射撃レーンの後ろにある計測器から成績表を印刷し、審査員の先生に渡した。
(――うん。しっかりできた!)
成績表の結果を思い出しながら、あたしは一旦みんなのもとに向かう。
成績自体は良いとはいえないけど、あたしなりには頑張った。きっと上手くいってる。
それに、零先輩に教えてもらったモノもできたし。
(アレって確か……ミスディレクション、っていうんだったっけ?」
「――そうだよ」
「わきゃあ!」
考え事をしていたら、いつの間にか零先輩が隣にいた!
ていうか零先輩、あたしの考えていた事を読まなかった!?
「たぶん今あかりちゃんが思っている疑問に答えるけど、最後の方声に出てたよ」
「えっ、ホントですか?」
うわぁ、全然気付かなかった。恥ずかしい……
「前にも言ったけど、あかりちゃんに教えたアレはミスディレクションという一種の技。最近とある漫画で有名になった奴。戦闘中において最も人間が注意を払うのが武器である以上、どうしてもそちらに目が奪われてしまう。そこでわざと武器を投げてそちらに目線が動いた瞬間、『
人差し指をピッと立てて歩きながら解説してくれる零先輩の右腕には……大きな紙をクルクルと巻いて抱えていた。さっきの実技試験の中間発表のものかな?
はぇ~と零先輩の解説を聞いていると、皆のもとに着いた。
「あ、あかりさん。どうでしたか……?」
志乃ちゃんが片方だけ目を描いてない達磨を手にしながら聞いてきた。さっきのこともあるし、余計に心配してるのかな?
他にもライカや
「まぁ、結果は今分かるから、まずはそれを見てからだな」
そう言った零先輩はトコトコと掲示板の所まで向かうと、バサッ。
手に持っていた紙――やっぱり中間発表だった――を張り付けた。
ざわざわと他のランク考査生が集まる中を掻い潜って結果を見る。
――間宮 あかり
CQC訓練・評価――Cランク
射撃訓練・評価――Dランク
中間総合結果・評価――Dランク
「あっ……」
書いてあった評価に、あたしは思わず声が漏れた。
(やっ、た――やった!Dランクだ!)
「やったなあかり!」
「やりましたねあかりさん!」
「おめでとうですの!」
あたしの結果を確認した皆が喜んでくれてる。まだ中間発表だから、確定じゃないけど。
それでも、それでも。今まで
やった、やったと喜んでいるあたしの頭に、ぽんっ。
「やっぱりアレが響いたみたいだ。よく頑張ったな」
と、零先輩が手を置いて、そのまま撫でてくれた。
「でも、まだ試験は終わってないわ。あかり、しっかり最後まで頑張るのよっ」
「ハイ!」
最後にアリア先輩に応援されて、あたしは最後の試験に向かった――
最後の試験は、実戦試験。
他のランク考査生一人と条件付きでの実戦勝負となっています。
その準備のため、あたしは更衣室で着替え――女子は何故かスクール水着――を行っています。
「――『時の運』って、あるものなんですね」
あたしが着替え終えると――後ろから誰かの声がした。
「私は運も
後ろを振り返ると、
「対戦カードの確認が遅いですよ、先輩」
下着も取り外しながら(あたしよりも少しだけスタイルが良い……少しだけ!)、桜ちゃんが言う。
(対戦カード……?)
あたしは自分のスカートのポケットから、先程もらった対戦カードを取り出して見る。
――実戦試験(MMA)
16:30~16:45 第4会場
No.7 乾 桜
VS
No.23 間宮 あかり
と書いてあった。
「……運も持ってるって……どういう意味?」
この状態でそれを言うってことは、つまり。
「校内ネットによればいくつか事件を解決されてるようですが……今回の試験成績から考えて、間宮先輩は受験生の中で一番弱そうですから」
ブチッ。
あたしの何かがキレるような音が聞こえた。
(せ……先輩への口の利き方を知らんのかー!こいつはー!)
想像の遥か上を言ったよ!?もっとオブラートに包んでくると思ったよ!?
「いいですよ、棄権しても」
「……ッ!勝負はやってみないと分かんないんだよ!」
桜ちゃんの言ったことにあたしはキレ気味に返す。
それが何か癪に障ったのか、桜ちゃんもムッとした表情になった。
「――あなたな有名な
「――ッ!?」
桜ちゃんの一言に、あたしは冷水をかけられたような感覚に陥った。
――アリア先輩のキャリアに、傷……?
「――知らなかったんですか?」
あたしの表情を見て理解したのだろう桜ちゃんが、驚いたような表情をする。
「私には現在
「えっ……そんな……」
アリア先輩はそんな事一言も……!
「――ただ、あなたが棄権すれば、評価記録は残りません」
桜ちゃんの言葉に、あたしの心が揺れる。
アリア先輩――!
『ベストを尽くしなさい』
……そうだ。何を迷ってたんだ、あたし。
ぎゅっと両手を握りしめて、桜ちゃんに向き直る。
「……あたしはベストを尽くすっ!アリア先輩のためにも……!」
「……そうですか。まぁそれならそれで好都合です」
あたしの言葉を聞いた桜ちゃんは、失望したと言わんばかりの表情をしつつ、更衣室のドアに向かう。
「私はこの試験が終了した後、錐椰先輩に
「――ッ!?」
――乾 桜 ノーランク
「錐椰先輩の
――CQC訓練・評価――Aランク
「錐椰先輩の元で一年間教えてもらい、人数制限のあるSランク武偵には先輩の
――射撃訓練・評価――Aランク
「――先輩はそこへの踏み台になってください」
「――ッ」
――中間総合結果・評価――Aランク
これが……
あたしの、相手――
どうでしたでしょうか。
次回、あかりvs桜!果たして結果はどうなるのか――
というわけで今回はここで終わります。
では、ごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ。
――S頂!へ~んしゅ~ぶ!――
「私はこの試験が終了した後、錐椰先輩に
「――ッ!?」
――ピーポピーポピーポニャン♪
「錐椰先輩の
――ピーポニャン♪ピーポニャン♪
「錐椰先輩の元で一年間教えてもらい、人数制限のあるSランク武偵には先輩の
――ピーポピーポピーポニャン♪
「――先輩はそこへの踏み」警察官だよ~♪「台になってくださいってちょっと待ってください」
「――えー!?何で最後まで言ったのに止めちゃうの桜ちゃん!」
「何でも何も、なんですかこのBGM!」
「何って、桜ちゃんの好きなピーポニャンのOP――」
「何故それを今使うんですか!?」
原作であかりにこんなこと言ってた娘が今じゃキャラ建ちすぎている件について。