緋弾のアリア~Sランクの頂き~   作:鹿田葉月

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ハーメルンよ……私は帰ってきた!



はいどうも、鹿田(ろくた) 葉月(はづき)(*`・ω・)ゞデス。
ついに……ついに終わりました!いや、とっても長い受験でした。終わってから唐突に、「あ、高校生活終わったんだ」っていう感じになりました。

それから、活動報告に返信をくださったゼットフォースさん、ありがとうございます。そして返信遅れてすみませんでした。

では、第53話、始まります。


53話~一匹とよく言われるが実際は群れで生活する動物~

(*´∀`)ノヤァ、零だ。今俺はシェイと一人の教師と廊下を歩いている。

 

その教師の名は、小夜鳴(さよなき)先生。救護科(アンビュランス)の非常勤講師であり、海外の大学を飛び級で卒業した20歳の先生だ。

メガネの奥の目は明らかにイケメンのそれで、スラッとした細身で長髪が似合い、背は高く、鼻も高く、ブランドもののスーツにネクタイでキメていて、足は長く――

まぁ一言で言うと、超優等生美青年なのだ。しかも性格も優しく、女子からは「王子」と呼ばれている人だ。

ホント、何で武偵高の教師なんかやっているんだろな、この人。

 

錐椰(きりや)くん、荷物運びを手伝ってくださってありがとうございます。ストロームさんも、採血の手伝いを引き受けてくださってありがとうございます」

「いえ。ただ保健室に運ぶだけですし、この量は一人では運びづらいですから。気にしないでください」

「私も、こういうのは慣れてますから。むしろ手伝いの依頼をしてくださったことに感謝しているくらいです」

 

雑談を交え、廊下を歩く俺達。他の奴等は授業を受けているが、これくらいなら別に良いだろう。

 

「――しかし……錐椰くんの能力は凄いですね……」

「そうですか?」

 

すると、小夜鳴先生が苦笑しながら俺達の後ろを見たので、俺もつられてそっちを見る。

――そこには、フワフワと浮いている、10~15程の段ボールがあった。

それは俺達が前に進むと、自然とついてくる。まぁ、ついてくるように俺がしているんだが。

 

「このくらい、念動力(PK)持ちなら誰でも出来ますよ」

「零君は一回、超能力操作研究科(SSR)に道場破りをしてくるべきだよ。数十キロの壊れ物扱いの段ボール十数個を、喋ることに専念しながら規則的に宙に浮かせるなんてこと、滅多にできる人いないから」

 

超能力を知らない小夜鳴先生にこれが普通だと言ったら、シェイが飽きれながらそう言ってきた。

そうなのか?このくらいなら誰でも出来ると思っていた。だから教室掃除の時に机全部テレポートで動かしたら、皆目を丸くしていたのか。これで納得した。

 

「凄いですね……錐椰くん。もし良かったらですが、女子達の採血が終わったら、君の採血もお願いしたいのですが」

「何でですか?」

「いや、ただ単に君の血がどうなっているのかを知りたいのです。君の家系は言い方が悪くなってしまいますが……あまり有名ではない。それなのに君のような人物が産まれてきたことに対して、学者としての血が騒いでいるですよ。君の血を調べたいって」

 

そう言って、アハハと笑う小夜鳴先生。言ってることは怖いのだが、イケメンオーラで普通のことに感じる。

 

「イケメンって得するんだな……イテッ!何だよシェイ、いきなり小突いてきて」

「何だかこうしないといけないと思って」

「何だよそれ」

「アハハ、生徒同士の仲が良いのは教師としては嬉しいことですね……と、着きましたよ」

 

喋りながら歩き、ようやく保健室へと辿り着いた。

ガチャリ、と小夜鳴先生がドアを開けると――

 

「「「……え?」」」

「なっ――れ、零!?」

「レイレイ!?」

「「「零先輩ッ!?」」」

「……」

「……何しに来たのよ、零」

 

――知り合いばかりがいた。アリアに理子、レキやネリー、更にあかりちゃん・志乃・ライカの一年生コンビもいる。

他にも装備科(アムド)であり、違法改造でも無邪気に改造し、法外な金を取る平賀(ひらが) (あや)。キンジの戦妹(アミカ)である風魔(ふうま) 陽菜(ひな)などがいる。

それだけなら別に何も問題ない――全員が、()()姿()()()()()()

トランプ柄、ハニーゴールド、無地、パープル、白、赤、黒、クマさん刺繍、ふんどし――等、下着専門売り場かと勘違いするかのように色とりどりとなっている。

 

(――って、暢気に見てる場合じゃねぇ!)

 

我に返り、慌てて保健室の外に出ようとするが……

ガシッ。

と誰かに肩を掴まれ、

ドタンッと地面にうつ伏せに倒され、馬乗りにされた。

 

(――ッ!男子に下着見られた後にすぐに行動に出ることができて、なおかつ俺を拘束できる相手――)

 

「何逃げようとしてんのよ、理由を言いなさいよ」

「――ネリー!」

 

女子にしては若干低めの声で、俺に馬乗りになっているネリーがそう言ってくる。

 

「落ち着けネリー、俺は別に覗こうと思って――」

「それは分かってるから、何でこうなったのか理由を教えてって言ってるのよ。他の子も混乱してるし」

 

マウントを取られた以上何もできないので必死に弁明しようとすると、ネリーは澄まし顔(うつ伏せで見えないので予想だが)で再度理由を聞いてくる。

 

「……ネリー。俺が覗こうとしてきた訳じゃないってこと、信じるのか?」

「むしろあなたがそんなことする奴なら、私はあなたとチーム組もうとしないわよ」

「……それもそうか。昔のネリーは――」

「問答無用で手錠(ワッパ)掛けても良いんだけど?」

「マジスイマセンでした」

 

今掛けられたら裁判で勝てる気がしねぇ。そのまま武偵3倍法で無期懲役コースだ。それだけはやめてほしい。

うつ伏せのまま両手を挙げて降伏を示すと、スッと体が軽くなった。ネリーがどいてくれたのだろう。

 

「で、納得できる形で説明してもらえるかしら。小夜鳴先生にもお願いいたします」

「ええと……何でこうなったのか分かります、小夜鳴先生?」

「いえ、私にもさっぱり……あの、皆さんは採血だけ行うので、制服のままで結構ですよ?」

「え、そうなの?」

 

小夜鳴先生の言葉に、先程から顔を真っ赤にしていた(と思われる)アリアが反応した。

他にもザワザワとしてきたため、どうやら身体検査か何かだと勘違いしていたようだ。

流石の武偵娘(ブッキー)でも全員勘違いしていたことが恥ずかしいのか、そそくさと着替えに向かっているようだ。そして、俺が来たことに対しては不問のような感じになっている。

小夜鳴先生が女子達の着替えを覗かないようにカーテンがある所に移動したので、俺もそちらへと移動する。

 

(……そういえば、今の女子の面子(メンツ)、有名所ばっかりだったな)

 

アリアや理子は言うまでもないし、レキも詳しくは知らないが、有名所なのは違いないだろう。

あかりちゃんは間宮林蔵――裏の一族であり、ライカは火野バット。志乃は佐々木小次郎の者だ。

他にも平賀さんは平賀源内だし、風魔は風魔一族のものだろう。

有名所が揃う中、しかし一人だけ違和感がある。

そう――ネリーの存在だ。

ネリーは特別有名所では無い。それなのになぜ呼ばれているのか。

 

(……まあ、俺が考えすぎているだけかもしれないが)

 

そう思っていると、バタンッ!と大きな音がした。

――人間、いや、動物は音に敏感である。大きな音は自分への被害を及ぼす危険なモノとして、生存本能が働き、その方向を見てしまうものだ。

そして、武偵は普通の人よりも更に音に敏感になる。日常から常に生と死の隣り合わせである武偵は、一瞬の油断が命取りとなるからだ。

この場合の俺も例によらず、女子が着替えていることを完全に忘れて、音の発生源を見る。

するとそこには――

 

「うおっ!?」

「ま、待てレキ!話せば分かる――」

 

――掃除用ロッカーを開け放った下着姿のレキが、ロッカーの中にいた()()()を引っ張り出していた。見ると剛気もロッカーの中に入っている。

――いや、何してんだよお前ら。

キンジが好き好んでこんなこと(覗き)をするはずがないので、恐らくそこで口の端が緩んでいる理子が何か仕掛けたんだろう。

とはいえ俺とは違って覗きをしていたことと見なされるため、弁解しようがない。

必死に言い訳をしようとしているキンジと剛気に静かに合唱しようとする――ッ!

 

「剛気!ロッカーから出ろ!」

「は?どうした零、いきなり――」

 

俺が忠告し、剛気が訳が分からないような顔をしていると――

パリィンッ!

と、イキナリ窓が割れ、ドゴンッ!

 

「ウオッ!」

 

何かが剛気が入っているロッカーに衝突し、ロッカーが倒れて剛気を下敷きにする。

倒された剛気は危険を感じたのだろう、懐から愛銃であるコルト・パイソンを取り出す。

 

「……嘘だろ?」

 

だが、自分を下敷きにしている正体が分かると、剛気は固まってしまった。

その正体は――銀色の毛を纏った、一匹の()()()()だった――

 

ーside零endー

 

 

 

 

 

ーsideキンジー

 

理子に特別演習と騙されて保健室に呼ばれ、ロッカーに何故かいた武藤と一緒に入り、女子達のストリップショーを見ないようにするなどと不幸なことが連発したが――これはシャレにもならねぇぞ。

今、武藤を下敷きにしている奴は――

圧倒的な殺気、どこか気品すら感じさせる逞しい肉付き。

そして、100キロに迫ろうかという巨体。

間違いない。絶滅危惧種・コーカサスハクギンオオカミの成獣だろう。

しかし、何故……こんな所に!?

 

「……お前ら、早く逃げろ!」

 

武藤が女子達に叫び――ドォンッ!

.357マグナム弾を使用するコルト・パイソンで、天井に向けて威嚇射撃を行った。

通常、動物は大きな音に弱い。しかし――この狼は、.357弾に全く怯まなかった。

 

「――武藤、銃を使うな!跳弾の可能性がある!女子が防弾制服を着ていない!」

 

武藤に伝えながら、どうするか考える。相手は獣だ。どんな動きをするか予測できない――

 

「――オオカミ……だと……」

 

その時、誰かが小さく、何かを呟いた。

辺りを見回してみると――零が、コーカサスハクギンオオカミから目を離さずに驚いていた。

そしてコーカサスハクギンオオカミの目も、零を捉えている。

スッ――と、零の足が動いた。

そのまま、一歩ずつ、一歩ずつオオカミに近づいていく。

対してオオカミは、動かない。

やがて零とオオカミの距離はなくなり……

さわっ。

――零が突然、オオカミの口元を触った。

 

『……は?』

 

全員が驚愕する中、触られているオオカミすら驚いていることを気にするわけでもなく。

口元から頭、次第に胴体へと手を動かし、触っている零。

その目は、今まで見たことないくらいにキラキラとしていた。

 

「いや、ちょっ……零!何してんだよ!」

 

我に返り、注意を呼び掛けるが、どこ吹く風のようにオオカミをさわり続ける零。

 

「あー……()()()わね」

「そうだね」

 

その光景に、シェイとネリーが口々にそう言った。

 

()()()って……一体どういうことなんだ、ネリー?」

「アレ、知らないの?」

 

俺に聞かれたネリーは、スッ――と零を指差し、

 

あいつ()――大の動物好きよ」

 

と言った……まったくの初耳なんだが。

 

「そうそう。よく任務で捨て猫を見つけては、たくさん愛でた後に近隣にしっかり世話できる人がいるか、能力使って探したり」

「『廃棄処分など言語道断』なんて言って、自分で施設建てて飼えなくなった人達の動物を預かったり」

「あげくの果てには獣耳つけてる人を膝の上に乗せて頭を撫でる始末だしね」

 

シェイとネリーが口々にそう言う中、先程の間に素早く着替えたアリアが近付いてきて、

 

「……それ、アタシもされたわ。仮装パーティーの時に。おかげで凄い恥ずかしい思いしたわ」

 

メヌなんかそれを知った時にどこからかネコミミ取り寄せて、零と会う時に必ず着けてるし……と続けるアリア。メヌって誰だよ。

 

「それに、何故か動物達は零君に(なつ)くし」

 

と言ったシェイの言葉通り。

零に触られているオオカミは、段々と目をつむり、零に縋るように体を近づけ――

そこで、ハッとしたように目を開けて体を起き上がらせて。

パリンッ――と、再び窓から飛び出していった。

 

(マズイ、あんなのが町中にいたらパニックになるぞ――)

 

慌ててオオカミを追おうと窓に向かうが……

 

『錐椰 零の名の下に』

『バイク、召喚(サモンズ)

 

ドンッ!といきなり零のバイクが表れ、思わず足を止めた。

 

「まだ足りてないぞ!勝手に行くな!」

 

ドルゥンッとバイクに股がった零は、そのまま窓へと向かい――

いつの間にか後ろに乗っていた下着姿のレキと共に、窓から飛び出していった――

 

 

――その後。妙に艶々した顔の零と、オオカミ(ハイマキという名前にしたらしい)に首輪をつけたレキが帰ってきて。

俺と武藤は、覗き見したということでアリア達に折檻されたのだった――




どうでしたでしょうか?
最近零のチート分が足りないように感じたので、ここで一気に3つ解放しました。やはり零はこうでなくては。
ご意見・ご感想・質問・コラボ等々、いつでもお待ちしております。
それでは、ごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ。


――S頂!へ~んしゅ~ぶ!――

「イケメンって得するんだな……イテッ!何だよシェイ、いきなり小突いてきて」
「何だかこうしないといけないと思って」
「何だよそれ」
「アハハ、生徒同士の仲が良いのは教師としては嬉しいことですね……と、着きましたよ」

喋りながら歩き、ようやく保健室へと辿り着いた。
ガチャリ、と小夜鳴先生がドアを開けると――

「「「……え?」」」
「なっ――れ、零!?」
「レイレイ!?」
「「「零先輩ッ!?」」」
「……」
「……何しに来たのよ、零」

そこには――()()()()()()()()、下着姿の女子達がいた。

「……」
「ちょっ!待って止まって零君今愛でるようなことしたら問答無用で捕まるから一旦落ち着いて素数でも数えてだから止まってっていうか何で皆獣耳してるの誰こんなこと提案したの一旦カメラ止めて零君止めて~!」
(……フフ、零様のことについて、私達(RKS)が知らないことなど、ありませんわ)

シェイが必死に零を抑えている中、一人静かに『零様ノート』を閉じる四葉であった――

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