緋弾のアリア~Sランクの頂き~   作:鹿田葉月

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まだだ……まだ終わらんよ!(受験が)


はいどうも皆様、明けましておめでとうございます(いまさら)、鹿田(ろくた) 葉月(はづき)です(*`・ω・)ゞデス。

とりあえず私立は落ち着いたので、後は国公立だけとなりました。それが終わったら本格的に投稿再開となります。

では、第52話、始まります。


52話――日本の代表とする喫茶店――

――ザワザワザワザワ……

(*´∀`)ノヤァ、零だ。今俺とアリアとキンジは、秋葉原――別名、『武偵(ぶてい)封じの街』に来ている。

秋葉原は常に人が溢れかえっていて拳銃が使いにくく、路地が入り組んでいるため犯人の追跡もしづらい。まぁ翼がある俺にとってはどうだっていいことだが。

 

「理子の奴、何でこんな所を指定したんだよ……」

「何ボヤいてるのよキンジ、さっさと行くわよ」

 

キンジが不満顔で辺りを見回し、それをアリアが(とが)める。

とはいえアリアも初めて秋葉原を訪れたせいか、キョロキョロと辺りを見回しているため、あまり説得力がない。

 

(……まぁ、無理もないな。ここには色々と個性的な人達が集うからな)

 

アリアを見た人達が口々に、「ツインテだ」「アホ毛だ」「ミクだ」「いや、シェイちゃんがツインテにした方がリアルミクだ」等と言っているのを聞きながら考えていた……なんか一人シェイのこと言っていたが。

 

「――っと、ここだな」

 

しばらくして、理子が指定した店に到着した。

すると突然キンジとアリアが、まるで犯罪組織のアジトに突入するかのように扉の脇に移動する。

 

(おいおい。何してんだ、お前ら。ここは――)

 

がちゃ。

緊張の面持ちで扉を開け、中に突入し――

 

「「「ご主人様、お嬢様、お帰りなさいませー!」」」

 

中にいる、ヒラヒラとした衣類を身に(まと)っている美女・美少女に丁重に挨拶されて驚く二人だった。

 

(――ただの、メイド喫茶だぞ?)

 

 

 

 

 

――メイド喫茶。

悲しいことに、現代の日本人なら入ったことはなくても、その存在を知らない人はいないと思う喫茶店。

基本的に美女・美少女が様々なメイド服を着て、客を奉仕する、といった場所だ。

アリアとキンジの顔が引きつっている中、近くにいたメイドさんに峰理子という少女と待ち合わせしている旨を伝えると、店の奥の個室に案内された。

 

「……じ、実家と同じ挨拶だわ……まさか、日本で聞くとは思わなかった……」

 

アリアは先程の挨拶にまだ引いていた。まぁアリアはイギリス産まれの貴族だし、こういったことは知らなかっただろうしな。

一方のキンジはというと……ああ、既に帰りたそうな表情をしている。個室もピンクや白といった少女趣味バリバリの内装だし、メイドという病気(ヒステリアモード)持ちなら猛毒に近い場所だからな。

 

「なんで零は平気そうな顔をしているんだよ……」

「……キンジ、ネリーとシェイの趣味に付き合わされていたら、自然と慣れるものだぞ。一回経験してみるか?」

「……いや、良い。それよりそのハイライトの消えた目をなんとかしてくれ。見てて怖い」

 

フフフ、男一人で『GOW』の女子達に付き合わされるのがどんなに大変なことか……その時に限ってサイアがいないし。

――よし、今度サイアに会ったら一発殴ろう。

 

「……な、何よあの胸、じゃなくて衣装っ!いくら給料が良くても、あれはないわ。イギリスならともかく、日本で着るなんて場違い。恥っずかしい。なんて店なの。アタシだったら絶対着ない。絶対絶対、あんなもの着ないっ!」

 

と、どうやってサイアを殴ろうか、いっそのこと踵落としでも良いな……と考えていると、アリアがメイドを指さしながらそう言った。

アリアが指している指の方向を見てみると、少々どころかやたらと胸を強調した衣装を着ているメイドさんがいた。

……今度から栄養が体に届きやすい料理を中心にしようかな。

 

「理子さまお帰りなさいませ!」

「きゃあーおひさしぶりー!」

「理子さまがデザインされた新しい制服、お客様に大好評なんですよー!」

 

しばらくして、枝毛を探していたアリアと水ばかり飲んでいるキンジ、何故か周囲にいるメイドさん達に写真を求められる俺(普通逆じゃね?てかメイド喫茶って写真撮影ダメじゃなかったか?)の耳に、玄関付近にいたメイドさん達の歓声が聞こえてきた。

内容的に、理子が来たのだろう。

 

「ごっめぇーんチコクしちゃったー!急ぐぞブゥーン!」

 

いつものゴスロリ制服に、首もとに鈴を増設した理子が、飛行機の物真似をしながら走ってくる。その両腕には、恐らくゲームやフィギュアといった物がパンパンになった紙袋を提げていた。

 

(……遅れた理由が自己主張し過ぎて、注意する気力がなくなったな)

 

「んと、理子はいつものパフェとイチゴオレ!根暗なほうにはマリアージュ・フレールの花摘(はなづ)みダージリン。ダーリンにはエスプレッソ・リスレットのブラックと抹茶アイス!そこのピンクいのにはももまんでも投げつけといて!」

 

席にポスン、と座った理子は、メニュー表を見ることすらなくスラスラと勝手に注文した。

……なるほどな。秋葉原に慣れている理子にとっては、ここはホームグラウンド。ここで話をすることによって、慣れていない俺達への会話権のアドバンテージを取るってことか。流石理子、狡猾に考えているな。

 

 

 

 

 

「――まさか、リュパン家の人間と同じテーブルにつくとはね。偉大なるシャーロック・ホームズ郷もきっと天国で嘆かれてるわ」

 

イヤミったらしく文句を()れつつ、アリアはモフモフとももまんを食う。基本的にももまんを食べる時は静かなので、本当に理子と一緒な席が嫌なのだろう。

かたや理子は、流石に冗談だろうとキンジと一緒に言ってしまった、タワーのような巨大パフェをすでに半分まで平らげている。

 

「俺だったら甘すぎて途中で食べられないぞ。絶対に3分の1くらいでダウンするな」

「……すり(ばち)大の器いっぱいにある抹茶アイスをひたすら食っているやつが言えることじゃねぇぞ」

「バカめ、抹茶アイスは別腹だ」

「他のスイーツでも一緒だろうが……理子。俺達は茶を飲みに来たんじゃない。アリアと俺にした約束は、ちゃんと守るんだろうな?」

 

紅茶を一度口にしてから、キンジが訊ねる。アリアの約束は、かなえさんの裁判で証言すること。

――ん?キンジにした約束?それは初耳だが……ああ、金一さん(兄貴)のことについてか。可能性としては考えられるが、いつの間にしたんだ?

 

「もちろん!理子は約束はきちんと守る子なのです!ダーリンもそう思うよね♪」

 

キンジに訊ねられた理子は頷き、俺を見てウィンクしながらイチゴオレの入っているマグカップを両手で持ち、んくんく飲む。

 

「……なぁ理子。さっきから気になってたんだが、ダーリンって誰のことだ?」

「ぷは。レイレイに決まってるじゃーん!理子たちコイビトじゃーん!」

「そんな関係になったことはない。だいだい何で俺の好物を知ってるんだよ。コーヒーもリスレットにしてるし」

「ふっふっふっ。理子はレイレイのことなら、なんでも知っているのです!」

「意味分かんねぇよ!」

 

――だんっ、だんっ!

理子と俺がヒートアップしてると、アリアが『静粛に、静粛に!』と言う裁判長みたいに机を叩いた。拳銃で。

 

「そこまで。理子、風穴あけられたくなければ――いいかげんミッションの詳細を教えなさい」

 

……アリア。言っていることはいいのだが、(はた)から観れば拳銃で脅しているヤーさんと何も変わらんぞ。身なりは可愛らしい少女だが。

対する理子は――

 

「――お前が命令すんじゃねぇよ、オルメス(Holmes)

 

いきなり乱暴な男言葉と三白眼になって、アリアを射殺すように見えた。

アリアすら一瞬怯ませる凄みを見せた()()()()(キンジ命名)は、紙袋からノートパソコンを取りだして起動させつつ――

 

「――では只今より、『大泥棒大作戦』作戦会議を始めたいと思いまーす!」

 

と、()()()()()に戻りながら、声高らかに宣言した。

――そう、俺達がここ、秋葉原に来た理由。それは、理子の宝物を取り返す、『大泥棒大作戦』の作戦会議のためだ。どうでも良いことだが、『大』という漢字が2つ入っていて非常に語呂が悪い。

 

「横浜郊外にある、『紅鳴館(こうめいかん)』――ただの洋館に見えて、これが鉄壁の要塞なんだよぉー」

 

カタカタとパソコンを操作し、くるっと俺達にディスプレイを見せる。

地下3階・地下1階建てと思われる建造物の詳細な見取り図と、そこにびっしり仕掛けられた無数の防犯装置についてが資料にまとめられていた。

……スゲェ。侵入経路や必要な道具とかまで、ビッシリ書かれている。プロでもこのレベルだと半年はかかるぞ。

 

「これ……アンタが作ったの?」

「うん」

「いつから?」

「んと、先週」

 

……アリアの目が真ん丸になってる。まぁそれもそうか、アリアは弾丸みたいに突っ走るだけだから、こういった作戦はロクにたてないし。

 

「どこで誰に作戦技術を学んだの」

「イ・ウーでジャンヌに習った」

 

ジャンヌって……この前戦った策士(笑)のやつか。白雪を誘拐しようとした、魔剣(デュランダル)

――そういえばジャンヌ逮捕後、両手両足に手錠つけていたから運ぼうと思ってお姫さま抱っこしたら、何故か顔真っ赤にして暴れてたな。アリアは噛みついてくるし、大変だった。

 

「……で、理子。ブラドはここに住んでるの?見つけたら逮捕しても構わないわね?知ってると思うけど、ブラドはアンタ達と一緒にママに冤罪(えんざい)を着せたカタキの一人でもあるんだからね」

「あー、それムリ。ブラドはここに何十年も帰ってきてなくて、管理人とハウスキーパーしかないの。管理人もほとんど不在で、正体がつかめてないんだけどねぇー……」

 

理子の言葉に不満顔のアリアだが、自制したのか口をへの字に曲げただけだった。

 

「まぁ……分かった。で、俺達は何を盗み出せばいいんだ?」

「――理子のお母さまがくれた、十字架」

「アンタって――ほんと、どういう神経してるのっ!?」

 

ガタンッ!とアリアは眉をつり上げ犬歯をむき出し、立ち上がった。

……ヤバイな。さっき自制した分、興奮が止まらないぞ。

 

「アタシのママに冤罪を着せといて、自分のママからのプレゼントを取り返せですって!?アタシがどんな気持ちか、考えてみなさいよ!」

「おいアリア、落ち着け。理子の言うことでいちいち頭に来てたらキリがないぞ」

「頭にも来るわよ!理子!アンタはママに会いたければいつでも――」

「――アリア」

 

ヒートアップしそうになるアリアの頭に手を置く。そして、痛くないように気を付けつつ、アリアの頭をくりん、くりんと回す。

 

「――な、何するの零!」

「落ち着けアリア」

「落ち着いていられるわけ――」

 

くりん、くりん。

 

「きゃっ……な、何――」

 

くりん、くりん。

 

「きゃっ……わ、分かった!分かったから、頭回さないで!」

「ん。よろしい」

 

頭を回されることに多少の違和感を感じたのか、アリアがギブした。頭から手を離すと、アリアは不満げに座ったので、俺は理子の方を見る。

――その顔は、ひどく悲しげなものだった。

 

「……レイレイ。どうしてアリアを止めたの?」

「……理子。お前には――家族がもう、いないんだろ?」

「……え?」

 

俺の発言にアリアが驚いた表情をする。その中に、先程までの怒りはない。

 

「……何で、知ってるの?」

「ネリーから聞いた」

 

――理子ちゃんの両親は、理子ちゃんが8つの時に寿命でなくなってるの。あの子は、両親が大分(だいぶ)年を()されたあとにやっとできた一人っ子よ――

 

「……あは。ネーちゃんも意外とお喋りさんだね……」

「それは違うぞ。あいつは戦闘中にも冗談かましたり、平気で毒舌吐くが――大事なことは必要な時にしか話さないやつだからな」

 

実際、それを言っている時のネリーは、真剣そのものだった。

 

「……そうだよ。理子の両親は、もういない。十字架は、理子の5歳のお誕生日にくださった物なの。あれは理子の大切なもの。命の次に大切なものなの。でも……」

 

そこで理子は少し顔を伏せたかと思うと……

 

「ブラドのヤツ。アイツはそれを分かってて、あれを理子から取り上げたんだ。それを、こんな警戒厳重な所に隠しやがって……ちくしょう……」

 

憎悪に満ちた声で、ボソボソと続けている。その目にはうっすらと涙が滲んでいた。

 

(分かるよ、理子。大切な人からの贈り物が、どんなに大切な物か。そしてそれをどれだけ取り戻したいのか)

 

――制服の下にある、エメラルドが嵌め込まれたペンダントをそっと触りながら、思う。

 

「ほ、ほら。泣くんじゃないの。化粧が崩れて、ブスがもっとブスになるわよ」

 

ぽん。

泣いている理子の前に、アリアは横を向きつつトランプ柄のハンカチを投げた。

アリアは根は優しい子だ。さっき理子に対して親がどうこう言おうとしたことへのお詫びのつもりだろう。

 

「ま、まぁ……とにかく、その十字架を取り戻せばいいんだな?」

 

と、場の空気を元に戻すようにキンジが言うと、こくり。

理子はアリアのハンカチで少し目を押さえ、涙を吸い込ませながらうなずいた。

 

「泣いちゃダメ理子。理子はいつでも明るい子。だから、さあ、笑顔になろっ」

 

まるで自己暗示をかけるように独り言した理子が顔を上げた時に、ちょうどメイドさんが入ってきて……楚々(そそ)とお冷やを注いで回ってくれた。

おかげで少し雰囲気も和やかになり、理子はいつものいたずらっぽい笑顔を取り戻す。

 

「……とはいえ、このマップね」

 

ノートパソコンを閉じながら、理子はテーブルに身を乗り出す。

マップ、と言っているのは第三者(メイド)がいるから、ゲームの話を装っているんだろうな。

 

「ふつーに侵入する手も考えたんだけど、それだと失敗しそうなんだよね。奥深くまではデータが無いし、お宝の場所も大体しか分かんないの。トラップもしょっちゅう変えてるみたいだから――しばらく潜入して、内側を探る必要があるんだよ!」

「潜入、か……」

 

確かに、その方が急なトラブルの対策もしやすいし、妥当な所だろう。

――だが、何か嫌な予感がするのは何故だ。

 

「潜入って……どうすんだよ」

 

キンジが尋ねると、理子はばんざいするように両手を挙げて、

 

「三人には――紅鳴館の()()()()()()()()()()()になってもらいます!」

 

――Oh...

 

俺はハトが豆鉄砲をくらったような顔をしている二人を尻目に、一人空を仰いだのだった――




う~む……ここは重要な所だったので、あまり手を加えられませんでしたね……次からなんとかしないと。

後いまさらですが、本作品では零がアリアのストッパーになるので、

・アリアが主人公にツンツンしない(デレデレ)
・喧嘩になりにくい(恋愛面を除く)
・零の妹的存在感(&小動物感)

となっております。ご注意下さい。

また、紗々音様に高評価9を頂きました。ありがとうございます!

では、ご機嫌よう。(´・ω・`)/~~バイバイ。



――S頂!へ~んしゅ~ぶ!――

キンジに訊ねられた理子は頷き、俺を見てウィンクしながらイチゴオレの入っているマグカップを両手で持ち、んくんく飲む。

「……なぁ理子。さっきから気になってたんだが、ダーリンって誰のことだ?」
「ぷは。レイレイに決まってるじゃーん!理子たちコイビトじゃーん!」
「そんな関係になったことはない。だいだい何で俺の好物を知ってるんだよ。コーヒーもリスレットにしてるし」
「ふっふっふっ。理子はレイレイのことなら、なんでも知っているのです!例えば――」

(……あれ、ここで理子のセリフは終わりなのに。アドリブかな――)

「朝起きるのは4時でそこからタンスの下から二番目にあるトレーニング用のジャージを取り出して着替えて朝練行くしそれが終わったら帰ってきて朝ごはんとお弁当作って制服に着替えてバイクで学校に登校して三井君達を軽くいなして教室に入って筆箱と教科書とメモ用の付箋(ふせん)とりだして授業受けて放課後は大抵強襲科(アサルト)であかりちゃん達の指導して帰宅して靴を右足から脱いで部屋の電気つけてお風呂の準備して夕食の準備して食べた後にお風呂に入ってその時に左肩から洗って――」

――この後のテープが不自然に切れていて、その後のことは誰も覚えてないと言う――

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