緋弾のアリア~Sランクの頂き~   作:鹿田葉月

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どうも、鹿田(ろくた) 葉月(はづき)(*`・ω・)ゞデス。
いや、あの、なんというかですね……息抜き代わりに他の方のss読んでいたら執筆欲が出てきてですね……気付いたら完成してました。
というわけで、今年の締めくくりも兼ねての急な投稿です。

では、第51話、始まります。


51話~スポーツテストと三度目の――?

(*´∀`)ノヤァ、零だ。久し振りだな……えっ、誰だお前だって?そうか、記憶障害か……踵落としすれば思い出すかもな(黒笑)

まあそんなことはさておき、午前中に中間テストを終えた俺達は、昼休みを挟んでスポーツテストをしている。

元々偏差値が50切っている学校なので生徒達のほとんどが流すか就寝に当てるので、今の生徒達はやる気に充ちており、曰く付きの教師陣達の目に怯えながらもスポーツテストに精を出している。

 

「零、ここにいたんだ」

 

声のする方を見てみると、先程まで短距離走を行っていたアリアがやってきた。

その髪はいつものようにツインテールにしていなくて、ストレートに伸ばしている。

……なんだろう、どことなく灼眼を思わせるな。

 

「ああ、アリア。お疲れ」

 

んしょ、と俺の隣に座るアリアに労いの言葉をかける。

 

「うん。キンジは?」

「あいつなら、自分の競技が終わった途端にすぐ着替えに行ったよ」

「ふぅん……あっそうだ。零の記録は?」

「俺のか?……こんな感じだが」

「……うわぁ」

 

手に持っていた記録用紙を見せると、アリアは引いたような顔をした。

 

「何よこの、『測定不能』のオンパレード。1500メートルでも1分32秒って……どんなスピードで走ればできるのよ」

「これでもまだ調節した方なんだけどな」

「……本当に有り得ないわ」

 

アリアが頭を抱えていると、あかりちゃん達やシェイなどが、競技を終えたのか近づいてきた。

 

「零先輩、こんにちは!」

「(*´∀`)ノヤァ、あかりちゃん」

「見てましたよ零先輩。もう圧巻の一言ッスね」

「ですの!」

「まぁそうだろうね」

「零先輩に勝てる相手なんて、いるのでしょうか?」

 

ライカの言葉に麒麟(きりん)ちゃんが肯定し、志乃が疑問に思ったことを口にすると――

 

「――零。私のタイム測って」

 

と、俺の目の前に白に近い銀髪の少女――ネリーがいつの間にかストップウォッチを突き出していた。

 

「……なんで俺なんだ?」

「あなたしか、私のタイム測れないでしょ?」

「なるほど」

 

ネリーの言葉に納得しつつ、ストップウォッチを受けとる。

それを確認したネリーは、女子なので1000メートル走のスタートラインに立った。

 

「――おい見ろよ、『疾風』のネリーが走るぞ」

「おっ、本当だ。これは見物だな」

「CランクからイキナリSランクに昇格し、付いた二つ名が『疾風』。その身体能力はいかに……」

 

ネリーがスタートラインに立った瞬間、他の生徒達がガヤガヤと騒ぎだした。

見れば教師陣も、一同揃ってネリーのことを見ている。

 

(……まぁ、数日前に起きた()()があればそうなるわな)

 

――それは、ネリーが入学してきた直後のこと。

あの日の放課後にネリーは強襲科(アサルト)に来て、取り敢えず担当教師である蘭豹先生の所に向かった。

……が、その時の蘭豹先生は酒に酔っていて、「よぅし、強襲科(アサルト)に入りたかったら今いる1・2年生のSランク以外の奴を倒せや!できんかったら他の科に移りな!」ということを言い出した。

……ちなみに言っておくと、本来Cランクということになっているネリーが、総勢100人以上――しかもAランクもいる状況での全員抜きは絶対に不可能。余興にもならないレベルだった。

――しかし、『リバースランカー』ではなくなり、更に俺みたいにリミッターをつけていない状態のネリーである。

つまりこれが何を意味するかというと……瞬殺である。それはもう見事なまでに。もう相手が可哀想だったね。

それを見た蘭豹は大慌てで教務科(マスターズ)に報告。すぐに緊急ランク考査を行い、見事ネリーはSランクになった、ということだ。

 

「じゃあ、準備はいいか?」

「ええ。良いわよ」

 

たーん、たーんと軽くその場でジャンプしながら了承するネリー。

そしてライン前に立ち、軽く前傾姿勢になった。

 

「――On your mark」

 

――パァンッ

ピッ、ピッ――

カチッ。

 

『――は?』

 

その瞬間、見ていたギャラリー全員が唖然とした。今目の前で起こったことが理解できなかったのだろう。

そのギャラリー達が目にしているのは――既に走り終えたネリーの姿だった。

 

「ネリー・リチャード。1000メートル走、記録――2秒17」

 

そんな中、俺はため息をつきつつ、そう報告した。

 

「……お、おい。冗談だろ?」

「2秒って……もはや分単位でもねぇじゃねぇか!」

「どんな脚力してんだよ……」

 

驚嘆、困惑。この2つの言葉が、武偵高の運動場を包み込んだ。

そんな中、異常なタイムを叩き出した張本人が近づいてきた。

 

「どうだった?あたしのタイム」

「……どうもこうも、狙って出したんじゃないのか?」

「あら?何でそう思ったの?」

「このタイムの数字、()()()()()()()()()()()()()()()()

「せいか~い♪」

 

――ザワッ

 

動揺していたこの場の雰囲気が、更に動揺に包まれるのを感じた。

それはそうだろう。この尋常どころか、陸上競技自体にケンカを売っているようなタイムを叩き出しておいて、狙って出したもの――つまりまだ本気じゃない発言をしたのだから。

 

(……ああ、そう言えば志乃の質問に答えてなかったかな)

 

と、先程の会話の途中だったことを思い、一人呟いた。

 

「――俺も、速さではネリーに勝てねぇよ」

 

 

 

 

 

スポーツテストを終えた後は放課後となり、各自の学科での自習をするか、任務(クエスト)を受けるかのどちらかとなる。

キンジは探偵科(インケスタ)で単位がもらえる小テストに参加しているし、理子も悪い顔をしながらそれについていったのでキンジをからかいに行ったのだろう。

アリアはあかりちゃん達とどこかに行ったし、今は俺一人の状態。

それで今は強襲科(アサルト)で射撃訓練を行っている。

――ガァン、ガァン。

紅のガバメントから射出される45.ACP弾が、ターゲットである犯人の武器を捉える。

そのターゲットには、風穴が1つしかなかった。

 

「――おい見ろよ。錐椰の奴、1発しか当たってないぞ」

「あれ?本当だ、珍しいな」

「調子でも悪いのか?」

 

ギャラリー達は俺が1発目以外すべて外していると思っているのだろう、ザワザワとざわめきだした。

まぁ、これは外しているんじゃなくて――

 

「――まあ、零様が行っていらっしゃることがご理解いただけませんとは……これだから低俗で野蛮な男はキライですわ」

 

その時、少し高めの声が、ギャラリー達を挑発するような感じで発せられた。

そっちを見てみると――1人の女子生徒が、こちらを向いて立っていた。

身長は162程。地毛であろう綺麗なブラウン色の髪にウェーブをかけている。

スタイルが良く、モデルと言われても信じるだろう。

 

「ごらんなさい。零様が的にしていたターゲットの穴を。いくら零様の使っているのが大型拳銃(ガバメント)とはいえ、あの大きさはおかしいとは思わなくて?つまりこれは、零様が不自然に思われないように少しずつ精密に広げた――という訳ですわ」

『――ッ!?』

 

その女子生徒が言ったことにギャラリー達が驚き、急いで俺が撃っていたターゲットを見る。

 

「……本当だ!よーく見れば、確かに大きい!」

「てことは、本当に少しずつ広げていったのか!?」

「有り得ねぇだろ!銃弾の構造上、一体何ミリのレベルで広げていかないといけないと思ってんだよ!?」

 

ギャラリー達が俺のしたことに対して驚いている中、その女子生徒がこちらに向かって歩いてきて、ペコリとお辞儀した。

 

「こんにちは、零様。やはり素晴らしい腕前ですね。1度撃ち込んだ所にしか撃たないピンホールショットではなく、わざと少しずつ広げていくとは、恐れ入りました。流石は零様です」

 

……この女子生徒、アレに気付いただけじゃなく、俺の考えすら分かっていたのか。

そう、俺はわざとピンホールショットにしなかった。やっても良かったが、それじゃつまらない。

なら少しずつ広げていって、どのくらいになったらギャラリー達が気付くのかを検証していたのだが……まさか広げようとしていた穴の10%で気付かれるとは思わなかったぞ。

 

「……こんにちは。確か君は――四葉(よつば) 美樹(みき)さん、だったよね」

「あら、(わたくし)のことをご存知でいらっしゃったなんて……光栄ですわ」

 

そう言って女子生徒――四葉さんはニコリと笑った。

――そう、四葉 美樹。それがこの女子生徒の名前だ。1年生、強襲科Aランク。氷の超能力(ステルス)持ちで、前衛・後衛・支援どれでもできるオールラウンダーだ。

更に家はかの有名な四葉。規模は同じ一年の高千穂家以上というお嬢様だ。

……氷とは言ったが、それは公式上の話。彼女の実際の戦闘映像を見たときに違和感があった。恐らく何かを隠しているのだろう。

 

「ああ、君のうわさは聞いているよ。それにしても良く分かったね。ターゲットにも、俺の考えていたことも」

「いえいえ、気付くことができたのは、零様の眼のおかげですわ」

「眼?」

「はい。ただ狙っているのではなく、かといって投げやり的な感じでもなく、何か目的意識のある眼をしていらっしゃったので」

「……凄いな、一年でそこまで気付けるとは」

 

普通はそんなにできないぞ。てか今の二年ですらそこまで気付ける奴はそういないだろう。すごい洞察力だ。

と、そんな感じで四葉さんに感心していると――

ヒュンッ。

パシッ。

と、イキナリ()()が飛んできたので、()()()()()()()小指と薬指で掴んだ。

 

「――クソッ、今度こそはと思ったのに……」

 

と言いながら、()()()()()()()大勢の男子生徒を率いてやってきた男。

 

「なんだ()っちゃん。こりずにまた狙ってきたのか?」

()っちゃん言うな!俺は三井だ!」

「あ~はいはい。それで?今日もやられに来たのか、KAS(カス)の皆さん?」

「このヤロウゥ……!」

 

プルプルと怒りで肩を揺らしているのは、ことあることに俺を暗殺(という(てい)での公開殺人)しようとしている、KAS(錐椰零を暗殺し隊)の奴ら。

実は最近は一日に一回は必ずくるようになってきた。数打ちゃ当たる作戦なのだろうか。俺としては迷惑なことこの上ない。

 

「フッフッフッ……今日の俺達は一味違うぜ……」

「元から味わってすらいないんだが」

「そんな軽口を叩けるのも今の内だ……おい、持ってこい!」

 

三井がそう言うと、手下の者が何か持ってきて、それを三井に渡した。

あれは……

 

「……火炎放射機、か?」

「ああ、良く分かったな」

「いや。良く分かったな、じゃねぇよ」

 

何そんな大層なモノ持ってきてるんだよ。お前ら武偵法9条忘れたのか?それ人に使ったら確実に死ぬぞ。そして教師陣、生徒達が犯罪者になるぞ。さっさと止めろよ。

 

「ハァーッハッハッハ!今日こそ非リア充の祈願が果たされる時……皆の者、構え!」

 

ガシャンッ。とKASの全員が火炎放射機を構え、いつでも撃てるようにした。

そして――

 

「――てぇー!」

 

――ゴォウッ

 

三井の合図とともに勢い良く火炎放射が発射され――

 

「――『Brinicle(ブライニクル)』」

 

――突如、でかいつららのようなものが現れ、火炎放射をすべて凍らせた。

横を見ると、四葉さんの足元に、水色の紋章のようなモノが広がっていた。

 

『……は?』

「――『Penitente(ペニテンテ)』」

 

KASの全員が呆気に取られる中、更に四葉さんが声を発する。

と同時に、KASの足下から氷の刃が現れ――グサッグサッ!とKASを()()()()()()

 

(――ってええっ!?アレ思いっきり刺さってね!?え、死んでないよな!?大丈夫だよな!?)

 

「グフ……ま、まだだ……まだやれ――」

「下等生物が動かないでくださいます?不愉快ですわ」パァンッ

「カハッ……」

 

と最後に三井に対して拳銃――アストラ・コンスタブル・スポーツを発砲し、意識を刈り取った。

それが終わった後、四葉さんは腕につけている時計――に見えた、通信機を使いだした。

 

「ごきげんよう、宮野(みやの)さん。四葉ですわ」

『はい。どうされましたか?』

「また下等生物が零様にたてつきました。これはもう2番隊隊長紅野(あかの)さんとも相談した方が良いと思います」

『またですか……そうですね。最悪、()()に進言して、会議を開かなければなりませんね』

「ええ。そうですわね」

『じゃあ今日の19:00に、329号室で』

「分かりました。では、後程」

 

ピッ、と通話を切ってこちらに向く四葉さん。それと同時に俺はKASがいつの間にかいなくなっていたことに気付いた。

だが、これは触れてはいけないことだと、今の四葉さんの通話の相手だった宮野(みやの)さんの時に知っているので触れない。

 

「零様。少し用事が入りましたので、失礼させて頂きます」

「あ、ああ」

「では、ごきげんよう」

 

ペコリ、と最後に頭を下げて、四葉さんは帰っていった。

 

「……今日はトンカツにしようかな」

 

色々ありすぎた俺は考えるのを放棄し、今日の夕食の材料を買いにいくため、その場から離れたのだった――




はい、どうでしたでしょうか?

今年もこの作品にお付きあい頂き、ありがとうございました。来年も是非、この作品のことをよろしくお願いいたします。

そしてオンリーさんより高評価を頂きました、ありがとうございます!

では、良いお年を!(´・ω・`)/~~バイバイ。



――S頂!へ~んしゅ~ぶ!――

「じゃあ、準備はいいか?」
「ええ。良いわよ」

たーん、たーんと軽くその場でジャンプしながら了承するネリー。
そしてライン前に立ち、軽く前傾姿勢になった。

「――On your mark」

――パァンッ

ピッガゥンッ!

『……は?』

その瞬間、見ていたギャラリー全員が唖然とした。今目の前で起こったことが理解できなかったのだろう。
そのギャラリー達が目にしているのは――

――ゴォォォォォォォウ!

と荒れ狂う、楕円の形をした砂嵐だった。

「……ヤバ、加減間違えた♪」
「このど阿呆!収録機器全部吹っ飛んだじゃねぇか!」
「えへ、ゴミィ」
「ゴミィじゃねーよ!」



ネリー・リチャード。匙加減で竜巻を起こすことができる。色んな意味での破天荒女である。

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