緋弾のアリア~Sランクの頂き~   作:鹿田葉月

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はいどうも、鹿田(ろくた) 葉月(*`・ω・)ゞデス。
前回言ったあとがきについて、おまけを書くことにしました!
内容は『儀談のアリア』みたいに、全員が『緋弾のアリア』を演じていると言った感じです。そちらも読んでくださると有りがたいです。

では、第49話、始まります。


49話~英仏対決~

(*´∀`)ノヤァ、零だ。今俺はアリアと非常階段を駆け上っている最中だ。

 

「それにしてもアリア……よく俺が理子に呼び出されたことに気付いたな」

「キンジ達の所に行ったら、『零と女子寮で話があったんじゃないのか?』って言われて、急いで来たのよ」

「なるほどな」

 

そして屋上へと繋がるドアを蹴り開けながら屋上に飛び込むアリア。おいおい、バイオハザードみたいに攻撃も一緒にできるドア先輩じゃないんだぞ?

 

「――理子!」

 

屋上に出た俺達が見たのは――屋上のフェンスに腰掛けた理子が、子供のように足をぷらぷらさせていた。

夜空に輝く、満月。

月明かりが、理子の笑顔を――どこか妖艶(ようえん)に、照らす。

 

「あぁ……今夜はいい夜。オトコもいて、硝煙のニオイもする。理子、どっちも大好き」

「あぁ、そう。そりゃ良かったな。後……いいかげん姿を現したらどうだ――ネリー?」

「……あら?」

 

俺がそう言うと、ちょうど俺達がいる場所から死角になっている場所からネリーが現れた。

 

「気配を消していたはずなのに……零、あなたもしかして」

「その通り。非常階段を駆け上ってくる際に、ついでにリミッターを外してサーチしていたんだよ。どうせいるだろうと思っていたが……ビンゴだったな」

「理子!今度こそ逮捕よ!ママの冤罪償わせてやる!」

俺が戦闘態勢に入ると、アリアが理子に向かって二丁の拳銃を突き付ける。

対する理子は妖艶の笑みをしながらフェンスから飛び降りる。

 

「やれるものならやってみな、ライム女(ライミー)?」

「言ったわね、カエル女(フロッギー)……」

 

と、二人はイギリス人とフランス人の蔑称(べっしょう)を応酬する。

ホームズ四世とリュパン四世による、英仏戦争だな。

 

「あら?私達だって、イギリス()フランス()の戦争じゃない」

「……勝手に人の心をよむな。それに俺達の場合は戦争じゃなくて核兵器の撃ち合いだろ」

 

そんな小言を言いつつ、俺達も戦闘態勢に入る。

6月の重い雲に、月が遮られ――

バッ!と四人同時に動いた。

 

「理子!」

 

アリアが二丁拳銃を発砲しながら理子の正面に突っ込んでいく。

 

「くふっ!」

 

初弾を側転で躱した理子が、屋上の中央で月面宙返り(ムーンサルト)を切りながら背負っていたバックから小ぶりな拳銃――ワルサーP99を取り出し応戦する。

 

「やっ!」

 

ネリーが俺に近付いて速さ重視の掌底や下段蹴りを仕掛けてくる。

 

「ふっ!」

 

俺はそれを躱し、受け流し、受け身をとりながらカウンターの裏拳をつきだす。

 

緋・金・銀・紅の四色が雲の隙間から月に照らされ、銃声という音楽によって華麗に舞う。

 

「かわいー!戦うアリアってかわいー!アリアかわいいよアリア!」

 

早口言葉のようにそんな事を言った理子は――笑っていた。

 

(なるほど……アドレナリンに酔ったような表情。典型的な戦闘狂(ガンモンガー)だな)

 

「――余所見してる暇あるの」

 

と、ネリーがローばかり狙っていたところを急にハイキックを放つ。

ネリーの足が俺の側頭部を捉える――

 

「ああ、あるぜ。今の俺は全体が見えるからな」

 

――前に顔の前に腕をおいてガードする。

ガードされたネリーはすぐにもう一方の足で地面を蹴って後退する。

そこまでして……銃声が止んだ。

見ると、アリアと理子二人ともが距離を取って小太刀とナイフを抜いていた。弾切れか。

 

「アンタ、ブサイクだから今気付いたんだけど」

 

アリアが背を剃らし、理子をムリヤリ見下ろすような視線を作って言う。

……そんなことしても身長は伸びないと思うが。

 

「髪型、元に戻したのね」

 

アリアは先日のハイジャックで自分が切断した、理子のツーサイドアップのことを皮肉げに持ち出した。

今の理子は改めて髪の毛を()い、髪型を元に戻している。

 

「よく見ろオルメス。テールが少し短くなった。お前に切られたせいだ」

「あら。ごめんあそばせ」

 

男喋りで言った理子に、アリアはわざとらしくほほほと笑った。

 

「言ってろ、チビ」

「何よブス」

「チビチビ」

「ブスブスブス!」

 

……ガキのケンカかよ。ネリーも呆れてるし。

 

「チビチビチビチビ」

「ブスブスブスブうっぷぇ!」

 

どうやら口撃は理子が勝ったみたいだ。アリア噛んだし。

さて……

 

「ネリー、そろそろじゃないか?」

「……ええ、そうね」

 

俺とネリーは会話をしつつ、それぞれコウヒノホダシと風月を取り出した。

そして今までのやり取りでお互いしか見えなくなったアリアと理子が、ざっ――!

と疾風のように距離を詰めた、その中間に。

――俺とネリーは割り込んだ。

――ギィィィンッ!

アリアの日本刀が、ネリーの風月と。理子のナイフが、俺のコウヒノホダシと切り結ぶ。

 

「――ネリー!?」

アリアは犬歯を剥いて、ネリーが割り込んできたことに驚きの声をあげた。

理子は俺と目を合わせたあと、フンっ、と鼻を1つ鳴らす。

 

「アリア、一端落ち着いてくれ。そして……理子。()()()()()()()理由を教えてくれ」

 

そう。理子は明らかに本気ではなかった。

本気だったら――あのハイジャックで見せた、髪で武器を操る『双剣双銃(カドラ)』を出してアリアを苦しめたハズ。

そしてネリーもそうだ。本気だったらあのハイキックの後、後退せずにもう片方の足で顎を蹴り上げにきたりするハズ。『技神』の称号を持つネリーのことだ。それくらい余裕でやってのける。

疑問に思ったことを聞いた俺に、理子は寂しげな目つきを返してきた。

そして俺達から距離をとり、背中のランドセルを振ってカバーを開け、落ちてきた二本のナイフを見もせずに中に受けとめ――頭を振って、カバーを閉じた。

 

「……流石だね、レイレイ。今の理子は万全じゃない。だから、アリアとは……まだ決着つける時じゃないんだよ」

「……そうか」

 

俺はコウヒノホダシを仕舞った。

 

「アリア。理子と戦うな」

「なっ……どうし――」

()()()()、だろ?」

「あったりー!そうでぇーす!理子とネーちゃんはもう4月の事件についてはとっくに司法取引を済ませているんですよー、きゃはっ!」

 

――司法取引とは、犯罪者が犯罪捜査に協力したり共犯者を告発することで、罪を軽減――もしくは無かったことにできる制度だ。

 

「つまり理子とネーちゃんを逮捕したら、不当逮捕になっちゃうのでーす!」

 

ちっちっち、と立てた人差し指を口の前で振る理子にアリアは歯軋りをしている。

そういえば……と、俺は近くにいたネリーに声をかける。

 

「ネリー。俺の予想だと、お前は――」

「……ええそうよ。私はもう――『リバースランカー』じゃない。例え相手が元リバースランカーだとしても、私が負けたことに変わりはないもの。今の私は強襲科(アサルト)2年、ネリー・リチャードよ」

 

……やっぱりか。リバースランカーはリバースランカー以外の者に負けることは許されないからな。

 

「どうだ?今の心境は?」

「……不思議な感じ。今まで当たり前だったことがなくなったから。まぁでも……」

 

と、そこまで言ったネリーは大きく伸びをする。

 

「――今度は、『Sランク内最強』でも目指そうかな?」

「……はっ。上等だな」

 

そんなやり取りをしていると、アリアがびしっ!と理子に刀を突きだした。

 

「――もし司法取引をしていたとしても、ママに『武偵殺し』の濡れ衣を着せた罪は別件よ!理子!その罪は最高裁で証言しなさい!」

「いーよ」

「イヤというなら、力ずくでも……って……え?」

 

セリフの間に理子が了承したことに、アリアが目を真ん丸にした。

 

「証言してあげる」

「ほ……ほんと?」

 

再び言った理子に、アリアは疑うフリをしながらも嬉しさを隠しきれていない。

あー……アリア。人をすぐ信じるなよ。将来が心配になってくる。

 

「ママ……アリアも、ママが大好きなんだもんね。理子も、お母様が大好きだから……だから分かるよ。ごめんねアリア。理子は……理子は……」

 

そこまで言った理子は顔を伏せ、

 

「お母様……ふぇ……えぅ……」

 

といきなり泣き出したのだ。

 

「え……えっ……えっえっ?」

 

そんな理子にアリアは戸惑いオロオロしている。これアタシが泣かしたの?みたいな顔で。

場違いなのだが、オロオロしているアリアに微笑ましさを感じる。

 

「ちょ、ちょっと。なに泣いてんのよっ。ほ、ほら……何よ。ちゃんと話しなさい」

 

アリアは泣きじゃくる理子に母性でも目覚めたのか……なだめるような口調になっている。まさにロリおかんだ。

しかし……本当に騙されやすいな、アリア。

今だって理子、口の端がニヤッて笑ったぞ。

まぁこれで闘争する気配は完全になくなったけど……理子の目的がまだ分かっていない。

まさか、ただかなえさんの証言をするためだけに来た訳じゃないだろう。

そんな疑問を察したのか、理子はえうえう泣きながら語りだした。

 

「理子、理子……アリアとレイレイとキーくんのせいで、イ・ウーを退学になっちゃったの。しかも負けたからって、()()()に――理子の宝物を取られちゃったんだよぉー」

 

理子の一部分の発言に……

ぴりっ、と周囲の空気が張り詰める。

 

「……理子。ブラドってのは、イ・ウーのNo.2。『無限罪のブラド』のことか?」

「そーだよ。理子はブラドから宝物を取り返したいの。だからレイレイ、アリア、理子を()()()()

「たすけてって……何をすれば良いんだ?」

 

ときくと、理子は「泣いちゃダメ理子。理子は本当は強い子。いつでも明るい子。だから、さぁ、笑顔になろっ」などとまぁわざとらしく独り言し、

 

「レイレイ、アリア、一緒に――」

 

にやっ、と笑顔になって――

 

()()()()()()()()!」

 

と言った。

……これからどうなるか分からなくなったな。

俺は一人静かに溜め息をついたのだった――




――S頂!へ~んしゅ~ぶ!――


「アリア、一端落ち着いてくれ。そして……理子。()()()()()()()理由を教えてくれ」

そう。理子は明らかに本気ではなかった。
本気だったら――あのハイジャックで見せた、髪で武器を操る『双剣双銃(カドラ)』を出してアリアを苦しめたハズ。
疑問に思ったことを聞いた俺に、理子は寂しげな目つきを返してきた。
そして俺達から距離をとり、背中のランドセルを振ってカバーを開け、落ちてきた二本のナイフを見もせずに中に受けとめ――

ゴツンッ

「あイタッ!」

――られずにナイフのグリップの所が理子の頭に当たる。

「いったーい!」
「……キンジ、カットで」
「もう、理子!ちゃんとしなさいよ!これ何テイク目だと思ってるのよ!先に進まないじゃない!」
「だってこれ超ムズイんだよ!?見ないでやらないとダメなんだよ!」
「良いから早くしてよ理子ちゃん。もう私疲れた。後シャワー浴びたい」
「誰も庇ってくれないの!?」

(……哀れだな、理子)

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