まずは一言、遅れてすみませんでした。最近部活動の練習がピークを迎えていて、携帯触る余裕がありませんでした。
そして執筆活動が停まっている間にも読んでくださった方々やまだお気に入り登録してくださっている方々、新しくお気に入り登録してくださった方々には本当に頭が上がりません。ありがとうございます。
では、第46話、始まります。
ーsideキンジー
初め、炎……白雪有利に見えた炎と氷の戦いは、互角のような雰囲気になっていた。
「――ッ!」
白雪はまるで息を止めているかのように、歯を食いしばりながら刀を振るう。
体当たりするようなその一撃に、とうとう、ジャンヌが半ば尻餅をつくような姿勢で、壁際に倒れた。
だが……
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
グロッキーなのは、押し倒した白雪の方に見える。白雪の息が上がっているのを象徴するように、刀を包む炎も今はだいぶ小さくなっていた。
「剣を捨てて、ジャンヌ――もう、あなたの負けだよ」
「ふ……ふふ」
投降を促した白雪。だが返ってきたのは微笑のみ。
「ハァッ!」
「――ッ!」
そしてジャンヌは素早く立ち上がり、白雪に斬りかかる。
白雪も咄嗟に受けようとするが、力が入らずに押し切られた。
そしてさっきの状況と逆転し、白雪が倒れこみ、立ち上がろうとした時に、剣の切っ先を首の前に出されていた。
「くっ……!」
それを察した白雪は、何故か刀を鞘に納めた。
勝利を諦めたように見えるが……違う。おそらくあれは、次の攻撃に向けて、できるだけ力を貯めている。
それが分かったからこそ、俺とアリアも何とか自制している。
「――甘い女だ。私を狙わず、剣ばかりを狙うとは。聖剣デュランダルが斬られることなどないというのに」
そう言ったジャンヌの周囲に再び――ダイヤモンドダストが、舞い始める。
そしてそれが、見る間に吹雪のように室内に吹き荒れた。
「見せてやる、『
そしてジャンヌのデュランダルが、見る間に青白い光を蓄えていく。
「銀氷となって――」
そしてジャンヌがデュランダルを振り上げ――
「――ジャンヌ。あなたには、理由があるの?」
――と言った白雪の声で、ジャンヌの動きが止まる。
「――理由だと?一体何の理由だ」
「勿論、この戦いに勝つ理由だよ」
「……いきなり何を――」
「私には、あるよ」
――白雪がそう言った瞬間、雰囲気が変わった。
先程まで荒々しかった息も、今は整っている。
「――アリアがいる。アリアはいつも私と相談してくれる。他にも外に行かない私に、外での出来事を教えてくれる」
白雪が俺の隣にいるアリアを見る。
「――レンちゃんがいる。レンちゃんは私が何かする時、いつも影から支えてくれる」
今度は戦っている零の方を向きながら立ち上がる。
「そして――キンちゃんがいる」
そして再び、刀を掴み、ジャンヌを見据える。だが鞘に納めたままで。
その様子に、ジャンヌは――ズリッ、と後退した。
「キンちゃんはいつも、私を、私の知らない世界へ連れて行ってくれた。その度に怒られたりもしたけど……それでも、私にとっては大切な思い出」
そう言いながら白雪は鯉口を見せる。そこから、今までとは比べように無い程の炎が舞い上がった。
「その三人が、私の背中を押してくれた。だから私は、負けるわけにはいかない」
「――ッ!『オルレアンの氷花』!」
白雪の気迫に一瞬怖じ気づいたジャンヌ。だが、すぐさま白雪に向かって絶対零度のデュランダルを斬りつける――
「星伽候天流――
そこに、居合い切りの要領で燃え盛る炎に覆われたイロカネアヤメがぶつかる。
ぶつかり合う、炎と氷。そして――
氷が、消えた。
ジャンヌの超能力が底をついたんだ。対して白雪の超能力はまだ続いている。
勝った――と思ったその時、
――ギィンッ!
と、白雪の刀が弾かれた。ジャンヌに押し戻された訳ではない。
見ると、白雪とジャンヌの間に、何か水膜のようなものができている。
「――『水面鏡』」
と呟く声。
そちらを見ると、サイアが自分の体の周りに水を浮かべている。恐らくサイアの超能力だろう。
――マズイ、白雪は今、完全な無防備だ!
ここでようやく止めに入ろうとするが、それよりも速くジャンヌがデュランダルを振りかぶり――
「――白雪!受け取れ!」
とその時、白雪に向かって何かが投げられる。
パシッ、と白雪が掴んだ物は――刀身が紅く染まっている、2本の日本刀だった。
投げられた方向には、零の姿が。
「今くらい、その羽で飛んでみろ!」
その声に応えるように――
再び、炎が舞い上がる。
「
2本の日本刀を交差させ、十字に振るう。
そして、
バキィンッ――
という音と共に、聖剣・デュランダルが切断された――
ーsideキンジoutー
ーside零ー
「終わった、な……」
そう思った俺は、ふぅ、と息をつく。
「私の……聖剣が……」
ジャンヌは自分の剣が折られたことに動揺していて動けない。
そこへ、
「
先程までずっと見届けていたアリアがジャンヌに襲い掛かるように近付き、両手両足に手錠をつけた。まるで猫がネズミを見つけた時並の速さだったぞ、今。
「あ~らら、捕まっちゃったか……」
と、俺の隣にサイアが歩いてきた。
「どうしたサイア?まだ俺達の方は終わってないぞ?」
「いや、もういいよ。
そう言いながら手甲を外すサイア。どうやら本当にやる気はないらしい。まぁ元々サイアは非好戦的だしな。
それより……
「サイア……
「……」
サイアに望の情報を聞こうとすると、サイアは無言になる。
「別に俺自身は負けてないけどな……まぁいいか。少しだけ、教えてやるよ」
そう言ったサイアはコチラに向き直る。そしてポケットの中から、何かを取り出した。
取り出した物は――
「写真……?」
「見てみろよ」
サイアがそう言ってきたので見てみると……
――多少ぶれている、海の背景に。
砂浜の上に立つ、濃緑色のボブカットの少女。
「――ッ!」
ぶれているため、顔までは判別できないが……間違いない。
これは、望だ――
「おいサイア……これは、一体どこで……」
隣にいるサイアにより詳しく情報を聞こうとすると、
――そこにはもう、サイアはいなかった。
「……」
俺はもう一度写真を見る。
この海がどこの海かまでは特定できない。
だが良かった……望が
そう思った俺は写真をポケットの中に入れて、白雪達の方に向かう。
白雪は全力を出しきったのだろう、その場から動けずにペタンと座り込んでいる。
それに気付いたキンジが白雪に近寄る。
「白雪」
「キ、キンちゃん」
白雪が何か今にも謝りそうな感じになっている。
「白雪、謝るのは検討違いじゃないか?」
「レンちゃん……そうだね……」
俺が遠回しに諭すと、白雪は謝りそうになるのを止めて、
「アリア、レンちゃん、キンちゃん。ありがとう」
と笑顔で言ってきた。
「白雪、よく頑張ったな。白雪のお陰で――
「こ……怖くなかった?」
「何がだい?」
「さ……さっきの私……あ、あんな……」
……どうやら、さっきまで使っていた超能力のことを恐れていると思い込んでいるらしい。
「怖いもんか。とてもキレイで、強い火だったよ。この間の打ち上げ花火より、ずっと、ずっとな」
「キンちゃん……う……うあ……」
あーん……とキンジに抱きつきながら泣き出した白雪の傍から離れ、アリアの方に向かう。
「アリア、お疲れさま」
「アタシは今回何もしてないわよ。今回頑張ったのは白雪と零でしょ?」
俺の労いの言葉にそう返してきたアリアの言葉は、少し震えていた。
おそらく、白雪の涙を見て貰い泣きしたのだろう。
そんなアリアの頭に手を置いて撫でる。
「まぁともかく――これで一段落、だな」
「ええ、そうね」
しばらくホールには、かごの鳥が、新たな人生を踏み出すための囀りが響き渡った――
――また、両手両足に手錠をしていたジャンヌをお姫様だっこで運んだ際に一悶着あったのは別の話で。
どうでしたでしょうか?
誤字・脱字・ご意見・ご感想・質問などがありましたら、是非感想の方へ。
それでは、ごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ。