最近気づいたのですが、2巻って、キンジと白雪がメインだから、零が介入するところが少ない……。もしかしたら、第一章よりもはるかに少ない話数でできるかもしれません。
では、第39話、始まります。
「――星伽さんもぜひ、せめて閉会式のアル=カタには出ていただきたいわ」
「ええ。枠も一人分、ちゃんと空けてありますし」
「え、えっと……」
(*´∀`)ノヤァ、零だ。現在俺とキンジは『アドシアード準備委員会』として動いている生徒会に来ている。理由は白雪の護衛。生徒会会長でもあるからな、白雪。
だが俺とキンジは居づらいことこの上ない。何故かって?生徒会役員が女子しかいないからだよ!
これはかつて男子に任せていたら、部費の取り合いで撃ち合いに発展してしまったからである。さすが武偵高、くだらないことで銃が簡単に出てくるよ。
「星伽先輩は美人だし、報道陣も好印象を持つと思います」
「あたしもそう思うなー。武偵高、ううん、武偵全体のイメージアップになるはずだよ」
「今回の振り付けを考えたのだって、星伽さんですし……アル=カタのチアは、自分でもできますよね?」
「は、はい。でも、私はその――あくまで裏方で貢献させてください」
そこで白雪はチラッとキンジを見た。
おいキンジ、何『とっとと切り上げろ』みたいな顔してやがる。失礼だろ。確かに
「――では今日はもう時間ですし、これで会議を終了したいと思います」
白雪はよく通るキレイな声で、一同にそう宣言した。
こういう時の白雪って、発音がキレイだから頼もしい感じがする。アリアは声優だとしたら、白雪はアナウンサーかな……何か今、『くぎゅうぅぅぅ!』って聞こえてきたんだが……
そしてお開きになってからしばらくすると、女子達がキャイキャイしだした。
「――ねぇ、これから台場に行きませんこと?」
「あっ、賛成です!」
「行く行く!マルイ改装したんだよね」
「あたし夏物のミニほしいー!」
「台場で思い出した!エスケーラの限定シュガーリーフパイ、今日発売だよー!」
「でた、色気より食い気!モテない
「星伽先輩もどうですか?夏に向けて、私服とか見に行きませんー?」
皆で喋っている中、一年が話しかけると、白雪は、えっ、という顔になった。
「あ、私はこれから帰宅して、S研の課題と、アドシアードのしおり作成を……」
「さすがですね。勉強熱心……」
「疲れを知らないんですね、星伽さんは」
「本当に超人だわ……」
などと、イヤミじゃなくて本気で白雪を尊敬している模様だった。同時に、なんか一歩引いている感じがする。
「じゃあ、錐椰君はどう?一緒に行かない?」
「あ、それ良い!ねぇねぇ、錐椰先輩も行きましょうよ~」
「えっ……アハハ、俺はちょっと用事があるから……」
白雪を誘えなかったからか、今度は俺を誘ってきた。
――ヤバイ。このまま誘いを断りきれなかったら、買い物に付き合わされる……!女子の買い物は本当に長いし、持たされる。これ経験談。相手はシェイとネリー。
なんとか女子の誘いを断り、夕焼けの道を三人で帰る。
「きょ、今日はキンちゃんが見てたから、緊張しちゃった。私……どうだった?」
体の前に提げた学生鞄を両手で持つ白雪が、キンジと下校するのが心底嬉しそうな顔をしている。てか、俺がいたことはスルーですか。いや、別に良いけど。
「みんなに信頼されてるカンジがしたよ。いいんじゃないか?」
「……き、キンちゃんに……ほめ……ほめられちゃった……」
白雪は顔を真っ赤に染めて、俯きながら独り言している。
あ、電柱にぶつかった。それ、結構痛いよな。
「そういえばお前、アル=カタのチアには出ないのか?みんな、出てくれって言ってたじゃんか」
「だ、だめだよ。出られないよ。チアは……もっと、明るくてかわいい子の方がいいよ。私みたいな地味な子が出たら、武偵高のイメージが悪くなっちゃう」
「……白雪。あまり自分を卑下するな。悪いクセだぞ?」
「零の言う通りだ。チアなんか、やってる時だけ明るい演技すりゃいいだろ。演技している内に、本当に明るくなるかもしれないし。で、本番で大勢の人にそれを見せて、自信をつけるんだよ」
「でも……」
「ひょっとして教務科の――
「うん……分かってるよ……でも、ダメなの」
「それはどうしてだ?」
「星伽に、怒られちゃうから」
星伽。
と、こう白雪が言う時は、星伽神社、つまり実家を意味する。
「なんで怒られるんだ。そんなことで」
キンジが白雪に聞くが、
「私は――あまり、大勢の人前には出ちゃダメなの」
少し頑なな、白雪の声。理由を説明するのではなく、否定を繰り返した。
何がなんでも、ダメなのだろう。星伽神社は格式を重んじるあまり、あれこれ制限つけるからな。
「……さっき生徒会の後輩に台場行くの誘われてたのに、断ってたな。あれもひょっとして星伽か?」
「うん」
「お、おい」
「私は――神社と学校からは、許可なく出ちゃいけないの……星伽の巫女は、
「白雪……」
「それにね、私、何も外のこと知らないから会話も持たないし……どんな服着ればいいのかも分からない。何も知らないから……みんなと、理解し合えないの」
「……」
「でも」
でもね、と白雪は続ける。
「でもいいの。私にはキンちゃんがいる。レンちゃんもいる。アリアもいる。私には、それで十分だよ」
白雪のそう言った後の笑顔は、少し寂しそうだった。
それきり、誰も喋らなくなってしまったので、どうにかしようとして何か考えていると――
「そ、そういえば、この三人でいるの、久し振りだね!」
と、白雪も焦っていたのだろう。必死に話題をふってきた。よし、それに便乗するか。
「そうだなぁ。俺が10歳の頃から世界を旅してたから、その前になるな」
「ああ……俺と零で星伽神社に行った時だな」
俺とキンジは4~5歳くらいの時、星伽神社に行ったことがある。そこで出会ったのが、まだ星伽神社から出たことのない白雪だった。
「星伽神社は男子禁制なのに、何故か俺達は許されたしな」
「あの時の白雪は俺達を怖がって近づいてすらこなかったな」
「だ、だって、男の人がくるなんて初めてだったし……それにキンちゃんは普通だったけど、レンちゃんは本当に怖かったんだよ?」
「えっ?俺が怖かった?いつもはしゃいでいたと思ってたんだけど……」
「いや、全然はしゃいでいなかったぞ。寧ろ今の俺より他人とのコミュニケーションをとれてなかったし。なんか気難しい顔してたから」
「マジで!?」
初耳なんですけど!?何、俺そこまで酷かったの!?全然そんなこと……あぁ、そういえばあの時はリバースランカーだったから、あまり関係を持とうとしてなかったんだっけ。それで無愛想になっていたのか。OK,納得した。
「で、段々キンちゃんだけと仲良くなった時にキンちゃんが町の花火大会にすっごく興奮してて……私のこと、神社から連れ出してくれたんだよ。物心ついてから星伽神社の外に出たのは、あれが初めてだったよ。あの時の花火、すっごくキレイだった……」
「あー……あれか。よく覚えてるな、そんなこと」
「それで帰ってきて怒られるかと思ったら、何故かレンちゃんが大人達に殴られていて……それなのにレンちゃんは、『かくれんぼしているだけ』とか大人達に言ってて……こっちに気づいた時に、『よう、楽しめたか?』って初めて笑ったの」
「あぁ、そういえばそうだったな」
『白雪はどこにいる!?』って言ってくる大人達を探しに行かせないようにしていたなぁ。あまりにも外に出られない白雪が可哀想すぎて、せめてこの時間だけは白雪を解放してあげたかったんだったな。結局白雪は怒られたけど。
「それからもキンちゃんとレンちゃん、よく星伽に遊びに来てくれたよね」
「兄さんの仕事について行ったんだよ。近所に同い年ぐらいの子供も零しかいなかったしな」
「俺も同様だな」
何して遊んだんだっけ。サッカーとかは他の小さな巫女たちの多数決で否決されて、ママゴトとか、折り紙とか、かごめかごめばっかりやってたな。まぁその時から拳銃握っていたから、どんなことでも平和的で楽しかったけどな。
――かーごめ かごめ かーごのなーかの とーりぃーは――
あの歌は、今でもよく覚えている。
金一さんが白雪達を、『かごのとり』と、哀れむように呼んでいたから。
「あ……寮に着いたよ。中に入ろ?」
と言って中に入っていく白雪。それが何故か俺には、かごの中に戻る小鳥に見えた。
白雪……まだ、まだなのか?
まだ、かごのとり、なのか。
どうでしたでしょうか?
誤字・脱字・ご意見・ご感想・質問などがありましたら、是非感想の方へ。
それでは、ご機嫌よう。(´・ω・`)/~~バイバイ。