少し早く投稿できました。次はどうなることやら……
まぁそんなことはともかく、第29話、始まります
さっきのスィートルームに逃げ込んでバタンと扉を閉める。と同時に体が悲鳴を上げて思わず倒れこんだ。
「零!」
フラッシュグレネードにやられた目が回復したアリアが、急いで倒れた俺の容態を確認する。
俺の体にはあちこちに傷があり、特に直撃をもらった腹と背中からはいまだに血が流れている。
「零、しっかりしろ!」
キンジがそう言って部屋にあった救急箱から包帯を取り出して俺の元にやってくる。
そして俺の体に巻き付けようとするが、俺がキンジの手から包帯をひったくって自分で巻き付ける。
「零、無理すんな!」
「大……丈夫だ……それに、俺は
そう言って素早く自分に包帯を巻き付け、ユラリと立ち上がろうとするが、フラフラとしてしまい、近くにあったベッドに倒れこむ。
――チッ……思ったよりダメージが酷いな……
その様子を見ていたアリアが無言で弾切れを起こした拳銃をリロードして、構えながら扉の方に向かっていく。まさか……
「アリア……何を……」
「――アイツ等の所よ。あたし一人で行くわ」
「バ……バカ野郎……アリア一人じゃ、あの二人は止められない……」
「元々アタシが狙われたことなの。これ以上零が傷つくくらいなら、アタシ一人で行くわ!」
そう言って扉を開けて出ていこうとするアリアの両腕を、体の激痛を無視して掴む。
「グッ……アリア落ち着け!あの二人相手にするのはムチャだ!殺されるぞ!」
「手を離して零!」
「離すもんか、パートナーの死が分かっているのに止めない訳にはいかない!」
「アタシだって、これ以上パートナーが傷つくのを見てられないわよ!いいから離して零!」
両腕を掴んでいるため、正面向かっている状態でアリアが俺の手を離そうともがく。その手には拳銃が握られていて、俺が手を離したら、例え俺を撃ってでもあの二人の元へと向かって行くだろう。ならばこの手は離せない。
どうする、どうすればいい。この状況でアリアを止める方法は――
(……イヤ、あるにはある。だが、それは……)
だが迷っている時間はない。この間にもあの二人がこちらに迫ってきているかもしれないのだ。
「零、離し――」
ああ、アリア。
――許せ!
「――――!!!」
恋愛沙汰はとことんニガテなアリアは、俺からの突然のキスに――
思った通り、完全に、固まってくれた。
黙るどころか、両手の先までまるで石化したようにびびんとつっぱっている。
桜の花びらみたいなアリアの唇は、小さくて、柔らかくて、そして熱かった。
――ぷは!
と俺とアリアは口を離し、同時に息を継いだ。
「アリア……悪い、許してくれ」
「零……」
先程までは飛び出さんとばかりにして開いていた
そして、ふら、ふらら、へなへなと、その場に倒れこんだ。
「れ、零……ア、アタシ、ふぁ、ふぁ……ファーストキス……」
「……悪いな、アリア。俺もだよ……少しは冷静になれたか?」
「う、うん……」
「そっか……おいキンジ」
とりあえずアリアの頭を撫でながらさっきまで黙って見ていたキンジの方を見ると、
「何だい、零?」
――いつもより遥かに落ち着いていて、低くなっている声が返ってきた。
「おい、まさかキンジ……」
「ああ、
こ、コイツ……人のを見てヒステリアモードになりやがった……マジかよ……
ま、まぁこれでこちらに重要な戦力が増えたので、
「ま、まぁともかく二人とも聞いてくれ……俺に案が一つある」
「何、案って」
「アイツ等二人を同時で戦うのは厳しい。それに今の俺がネリーを倒すこともな。だから分断させる。この部屋にキンジとアリアが残って、俺がバーに向かう。理子はアリアが目的だから俺とは戦わずにこの部屋に向かってくるだろうし、ネリーは俺が来たから相手するだろう。だから二人はこっちに来た理子を協力して逮捕してくれ」
「でも、そんなことをしたら零がまた――」
「俺はネリーの足止めをしているさ。ネリーは雇われの身。雇い主の理子が逮捕されたら早々に引き上げるはずだ」
「……分かった。でも、無理だけはしないでね」
「勿論」
こうしてキンジとアリアが部屋に残って作戦を考えている間に俺は部屋を飛び出し、バーへと向かった。
「あれ?後もう少ししたら行こうと思ってたけど、そっちから来たんだ~……って、レイレイ一人だけ?」
俺がバーまで戻ってくると、カウンターに座っていた理子が話しかけてきた。その隣にネリーも座っている。
「部屋まで来たら歓迎会開くってよ。俺はその招待状代わりってところだな」
「へぇ~、そうなんだ。楽しみだな~」
「因みに招待されたのは理子だけだぜ?」
「くふっ。良いよ。ネーちゃん、レイレイの相手は任せたよ」
「ええ、行ってらっしゃい」
理子はスタッと立ち上がり、そのままルンルンとスキップしながら部屋に向かった。ここまでは予定通りだ。
「それで?歓迎会に招待されなかった私には一体どんなことをしてくれる訳?」
「俺が一緒に踊ってやるよ。剣劇という舞台でな」
「……私と張り合うつもりなの?リミッターをかけていて、立っているのもやっとな状況の中で」
「誰も勝負をするとは言っていない。目的は足止めをすることさ。後は俺のパートナーと親友に任せた」
「……足止め?簡単に言ってくれるわね」
次の瞬間、ネリーは立ち上がったと思ったら一瞬で俺の目の前まで来て、俺の首を掴んで持ち上げた。
元々ほとんど動けない俺は反応できずになすがままとなっている。
「カッ……グッ……」
「ふざけないで」
そのままネリーは俺を壁に投げる。
その衝撃で切られた背中の血が滲み、痛みが増す。
「――そう。そんなにリミッターを外したくないなら、そのまま殺してあげる……その前に、その胸元に隠してある
「――何……?」
――その瞬間、さっきまでの激痛が嘘みたいに消えた。
そして、俺は胸元から――綺麗な銀色の外見に、小さなエメラルドが付けられているペンダントを取り出した。
『これはね、私の大切な宝物なんだけど、お兄ちゃんにあげる。それでね、私との写真を入れておいて。二人がずっと側にいられますようにって』
脳に流れる、はにかむ少女の表情。
――次の瞬間、辺りは殺気で満ち溢れてた。
「――ネリー、その言葉は禁句だぜ。例え冗談でもよ」
「冗談なんかじゃないわ。私は本気よ」
「……そうか。ならこっちも
そう言って、俺は目を閉じ、両手を左右に広げてある言葉を口にする。
『錐椰 零の名の下に』
『リミッターコード・0000Z。全ての超能力及び身体能力のリミッターを解除。リバースランカー・破壊神、再起動開始』
そう言った俺は目を開ける。外見的には何も変わってないが、
「……久し振りだけど、やっぱり凄い気迫ね」
と、さっきまで余裕の顔だったネリーの頬に冷や汗が流れる。それと同時にネリーは腰を落として構えた。
「どうしたネリー?さっきまでの表情がなくなっているぞ?」
「……そうなるわよ。速さではあたしが圧倒してるけど……今のあんたの超能力だけは喰らいたくないもの」
「そうか……なら、早速喰らえよ」
そう言った途端、俺の周りにいきなり無数のナイフが集まり、ネリー目掛けて飛んでいく。
それをネリーは自分に当たりそうなやつだけを『風月』で叩き落としながら避ける。
「テレポートにサイコキネシス……いきなり二つ同時に使ってきたわね。普通、一つだけしか使えないのに」
そう言ったネリーの声は後ろから聞こえたが……
「無駄だ」
ガキンッ!
俺は既に背中に回していた刀でガードし、距離をとる。
「先読み……嫌なモノ使ってくれるじゃない」
「どうした?こんなものだったか、ネリー?」
その言葉にカチンと来たのか、好戦的な目を向けてきて、
「……じゃあ、先読みしても間に合わないようなスピードにしてあげる」
ネリーがそう言った途端、ゴウッと機内の中なのに風が吹き荒れ始めた。
「ネリーもようやく本気ってことか」
「私はスロースターターなだけよ」
「よく言うぜ。任務の時に一番先に突撃して終わらせるくせに。俺とか他のやつらほとんど仕事出来ないんだぞ」
「あら?ごめんあそばせ」
そうな風に向かい合う二人。お互いに重心を低くし、いつでも動けるようにする。
「さぁ……大陸一つを一人で制覇できる『リバースランカー』同士の対決、始めようぜ!」
どうでしたでしょうか?
ついに零が本気を出す!そしてペンダントをくれた少女とは!?
誤字・脱字・ご意見・ご感想・質問などかありましたら、是非感想の方へ。
それでは、ごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ